相続手続きは、書類の収集から相続税の計算・申告書の作成など、さまざまなことを行う必要があります。
相続についての知識がない場合には、手続き自体が非常に困難になってしまうため、専門家への依頼を検討する方もいるでしょう。
では、相続手続きを専門家に依頼した場合には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
本記事では、相続手続きにおけるおすすめの依頼先や、専門家に依頼した際の費用を解説します。
目次
1. 相続手続きを自分で行う流れや費用
相続手続きは、細かくみていくとさまざまな手続きの集合体であることがわかります。
それぞれの手続きで行うことが異なり、手続きによっては期限が設けられているものもあります。
下記にて、相続全体で行う手続きを期限ごとにまとめましたのでご覧ください。
相続に必要な手続き | 手続き期限や注意点 |
---|---|
相続発生から7日以内 | 死亡届・火葬許可申請の提出 |
相続発生から14日以内 | 年金受給停止に関する手続き |
世帯主変更届の提出 | |
健康保険に関する手続き | |
介護保険資格の喪失届の提出 | |
相続発生から3ヶ月以内 | 公共料金の名義変更・解約 |
遺言書の確認・検認 | |
法定相続人の調査・確定 | |
相続財産の調査・財産目録の作成 | |
相続放棄・限定承認 | |
相続発生から4ヶ月以内 | 被相続人の準確定申告 |
相続発生から10ヶ月以内 | 遺産分割協議・遺産分割協議書の作成 |
銀行口座・証券口座の名義変更 | |
不動産の名義変更 | |
財産の名義変更 | |
相続税の申告・納税 | |
相続発生から1~5年以内 |
遺留分侵害額請求 健康保険の埋葬料・葬祭費の請求 生命保険金の請求 遺族年金の請求 |
自分で相続手続きを行う場合には、これらの手続きを1つずつこなしていく必要があります。
すべてを自分で行った際にかかる、主な費用をまとめましたのでご覧ください。
<相続手続きで必要となる費用>
項目 | 費用 |
---|---|
戸籍謄本(抄本)の収集費用 | 450円/1通 |
除籍謄本(抄本)の収集費用 | 750円/1通 |
改製原戸籍の収集費用 | 750円/1通 |
戸籍の附票の収集費用 | 300〜400円/1通 |
住民票・住民票除票の収集費用 | 300〜400円/1通 |
印鑑登録証明書の収集費用 | 300円/1通 |
不動産の固定資産評価証明書 | 400円/1通 |
登録免許税 (相続登記をする場合) |
固定資産税評価額の0.4% |
残高証明書 | 300〜1,000円/1通 |
取引明細 | 200円〜 |
移転登録手数料(車) | 500円 |
車庫証明取得費用 | 2500〜3500円 |
ナンバープレート代 | 1500円前後 |
最低限必要となる戸籍の収集などを行うと、最低でも3,000円〜程度の費用はかかるでしょう。
ただ、相続登記など相続する財産の内容によって、全体でかかる費用は変動します。
自分で相続手続きを行う際は3,000円以上の費用がかかること、いくつもある手続きを期限内に行う必要があることを知っておきましょう。
関連記事: 相続税申告は自分でできる?判断基準や手続きの流れを解説!
2. 相続手続きは専門家に依頼できる!依頼するべきケースについて
相続手続きにはさまざまな手続きがありますが、専門家に依頼して代行してもらうことが可能です。
相続は一般の方にはあまり馴染みがないため、経験者でもない限り専門的な知識を持っている人は少ないでしょう。
その状態で手続きを行うことはとても難しいため、専門家への依頼がおすすめです。
とくに専門家に依頼するべきケースについてまとめましたので、検討材料としてお役立てください。
<相続手続きを専門家に依頼した方がいいケース>
想定できるケース | 依頼すべき理由 |
---|---|
相続が初めてで不安がある |
専門的な知識が必要となるため 特例の利用など知らないと使えない控除があるため |
相続財産が多い | 財産の数・種類が増えるごとに必要書類や手続きが増加するため |
相続人が多い |
必要書類が多くなる 遺産分割協議が進まない可能性が高いため |
相続手続きを行う時間がない | 基本的に時間がかかり、なかには平日に必要な手続きもあるため |
相続人同士の仲が悪い |
遺産分割協議で揉める そもそも連絡が取れなく手続きが進められない可能性が高いため |
相続財産に不動産がある | 土地や建物の評価は複雑かつ専門的な知識を必要とするため |
申告や相続放棄などの判断がつかない | 申告漏れや相続後の負担につながる可能性が高いため |
相続税法では相続人の負担を考慮して、相続税の控除ができる特例がいくつか用意されています。
特例は自分で申請しなければ利用できないため、とくに相続手続きが初めての方は、節税のためにも専門家への依頼がおすすめです。
3. 相続手続きにおすすめの専門家と依頼費用
相続手続きは士業をはじめ、銀行などの専門家に相談・依頼できます。
具体的には、下記5つの窓口がおすすめです。
<相続手続きにおすすめの依頼先>
|
士業は独占業務が設定されている場合があるため、各士業によって対応できる手続きは異なります。
それぞれの士業が対応できる業務範囲は下記のとおりです。
弁護士 | 税理士 | 司法書士 | 行政書士 | |
---|---|---|---|---|
相続人の調査 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
相続財産の調査 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
相続税の申告 | △ | ⚪︎ | × | × |
遺産分割協議書の作成 | ⚪︎ | △ | △ | △ |
相続放棄の申立 | ⚪︎ | × | △ | × |
相続登記 | △ | × | ⚪︎ | × |
預貯金の払い戻し | ⚪︎ | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
株式の名義変更 | ⚪︎ | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
自動車の名義変更 | × | × | × | ⚪︎ |
相続トラブルの解決 | ⚪︎ | × | △ | × |
遺言書の検認申立 | ⚪︎ | × | △ | × |
遺言書の作成 | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ | ⚪︎ |
※ △はケースによって対応可能性あり。
士業によって得意とする手続き業務が異なるため、財産内容や状況によって依頼すべき士業を判断できるようになりましょう。
下記では、それぞれの相談先について費用を含めて詳しく解説します。
3-1. 弁護士への依頼費用と対応できる手続き
弁護士は法律の専門家として知られる士業で、相続手続きにおいては、相続トラブルの解決について独占業務を持っています。
相続トラブルに発展した場合の遺産分割協議書の作成や調停・審判などにおいて、相続人の代理人となれるのは弁護士のみです。
そのため、相続トラブルに発展する可能性がある、相続中にトラブルに発展してしまったという場合には、弁護士に相談・依頼しましょう。
弁護士に、相続手続きの依頼をした場合の費用例は下記のとおりです。
内訳 | 費用 |
---|---|
相談料 | 5,000円〜:30分 |
着手金 | 20万円〜 |
報酬金 |
経済的利益の金額に応じて異なる <例> 300万円以下:16% 300万円超え3,000万円以下:10%+18万円 |
実費 | ケースにより異なる |
日当(出張) | 1日5万円程度 |
そのほか、遺言書の作成や遺言執行者の依頼などをした場合には、追加報酬として別途費用が発生するため注意しましょう。
弁護士に依頼する場合には、費用が高額になる可能性が高いですが、相続人トラブルに発展しそうな場合には依頼することがおすすめです。
3-2. 税理士への依頼費用と対応できる手続き
税理士は会計・税金のプロとして知られる士業で、相続においては、相続税の申告に独占業務を持っています。
相続税を計算し、依頼人に代わって書類の作成・申告ができるのは税理士のみです。
また、節税について専門的なアドバイスを行えるのも税理士のみ。
そのため、相続税の申告に不安がある、節税について相談したいという場合には、税理士へ相談・依頼しましょう。
税理士に、相続手続きの依頼をした場合の費用例は下記のとおりです。
<当事務所の基本報酬>
遺産総額 | 報酬額 |
---|---|
5千万円未満 | 20万円(税込22万円) |
6千万円未満 | 25万円(税込27.5万円) |
7千万円未満 | 30万円(税込33万円) |
1億円未満 | 40万円(税込44万円) |
1億5千万円未満 | 60万円(税込66万円) |
2億円未満 | 70万円(税込77万円) |
2億5千万円未満 | 100万円(税込110万円) |
3億円未満 | 120万円(税込132万円) |
3億円以上 | 別途お見積もりいたします |
<当事務所の加算報酬>
共同相続人 | 相続人(受遺者)が 2人以上の場合 | 基本報酬 ×10% ×(相続人の数 - 1人) |
財産評価 | 土地(1利用区画につき) | 5万円(税込5.5万円)~ |
未上場株式 (1銘柄につき) | 1銘柄につき | 15万円(税込16.5万円)~ |
当事務所では無料相談を実施しておりますので、相続税の申告でお困りの場合にはぜひご相談ください。
無料個別相談は『ご自宅からオンライン』『ご来社による対面』ご希望の方法で実施いたします。
予約受付電話番号:03-3593-3243
3-3. 司法書士への依頼費用と対応できる手続き
司法書士は、登記や供託のプロとして知られる士業で、相続においては相続登記を独占業務として持ちます。
(相続登記は弁護士も可能だが、司法書士に任せる場合が多い)
司法書士は登記を専門としているため、相続登記に関しては、弁護士よりも信頼して任せることができるでしょう。
また、弁護士よりも費用相場は低いため、相続費用を抑えたいという場合には司法書士への相談がおすすめです。
司法書士に、相続手続きの依頼をした場合の費用例は下記のとおりです。
内訳 | 費用 |
---|---|
相談料 | 5,000円〜:1時間 |
着手金 |
事務所により異なる 部分的な依頼の場合には設定していない事務所も |
報酬金 |
依頼内容に応じて異なる <例> 相続登記:5万円〜 預貯金の払い戻し:3万円〜 株式の名義変更:3万円〜 など |
実費 | ケースにより異なる |
日当(出張) | 1日5万円程度 |
司法書士への依頼は、依頼する業務によって必要となる費用が異なりますので注意しましょう。
出張を依頼する場合には、1日5万円程度の日当がかかりますが、出張を依頼しない場合には費用は0円です。
3-4. 行政書士への依頼費用と対応できる手続き
行政書士は、書類作成のプロとして知られる専門家で、相続においては財産の名義変更などを得意としています。
また、許認可業務も司法書士の得意とする領域のため、個人事業主の相続や事業承継を含む相続の場合に強みがあります。
ほかの士業に比べ費用相場が低いことも特徴なため、できるだけ費用を抑えたいという場合には行政書士へ相談しましょう。
行政書士に、相続手続きの依頼をした場合の費用例は下記のとおりです。
内訳 | 費用 |
---|---|
相談料 | 3,000円〜:1時間 |
着手金 |
事務所により異なる 部分的な依頼の場合には設定していない事務所も |
報酬金 |
依頼内容に応じて異なる <例> 遺言書の原案作成:5万円〜 相続人調査:3万円〜 自動車の名義変更:3万円〜 など |
実費 | ケースにより異なる |
日当(出張) | 1日2万円程度 |
行政書士は、相続税の申告や相続登記などを行うことはできませんので、書類作成を依頼したい場合に部分的な業務の相談がおすすめです。
3-5. 銀行への依頼費用と対応できる手続き
実は、銀行にも相続に関する相談が可能です。
銀行はさまざまな士業と提携しているため、相続手続きをワンストップで提供しています。
銀行はコンサルタントのような立場で、相続税申告であれば税理士を、トラブルであれば弁護士を紹介するというイメージです。
銀行が仲介に入るため、依頼費用は士業に直接依頼する場合に比べると、かなり高くなってしまいますので注意しましょう。
銀行に、相続手続きの依頼をした場合の費用例は下記のとおりです。
遺産総額額 | 報酬額 |
---|---|
5,000万円以下 | 2.2% |
5,000万円超~1億円以下 | 1.65% |
1億円超~2億円以下 | 1.1% |
2億円超~3億円以下 | 0.88% |
3億円超~5億円以下 | 0.66% |
5億円超~10億円以下 | 0.55% |
10億円超~ | 0.33% |
相続税申告における税理士報酬相場は、遺産総額の0.5%~1%といわれているため、比べるとかなり高額に設定されていることがわかります。
相談する窓口を一本化できるという点以外に大きなメリットがないため、基本的には士業に相談することがおすすめです。
4. 相続手続きは親族に依頼することも可能!費用はかかる?
実は相続手続きは、親族にも依頼することができます。
親族に依頼する際には委任状が必要となり、委任状と必要書類を揃えることで、親族でも相続手続きが可能になります。
では、親族に依頼する際にはどのくらいの費用を支払うことが一般的なのでしょうか。
また、委任状の作成方法や委任時の注意点についても解説します。
4-1. 親族に相続手続きを依頼する費用
親族に相続手続きを依頼する際には、基本的に報酬は必要ないでしょう。
普通の関係性がある親族であれば、費用を請求されることもないはずです。
ただ、報酬を渡してはいけないということではないため、当人同士で納得したうえで報酬を渡すことについては、何も問題ありません。
忙しい自分に代わって手続きを行なってもらうため、気持ち程度の報酬と手続きにかかる実費(書類の収集費用など)を渡すといいでしょう。
些細なことで後々の関係にヒビが入らないよう、気を使うことが大切です。
4-2. 委任状の作成方法や委任時の注意点
委任状に決まったフォーマットはなく、下記の要件を満たしていれば、委任状として効力が生まれます。
<委任状の作成要件>
|
委任事項とは「〇〇に相続登記手続きを委任します」など、委任する具体的な内容を指します。
委任事項を「〇〇にすべて任せます」など、委任する範囲を抽象的にしてしまった委任状を「白紙委任状」と呼びます。
白紙委任状を利用すれば、相続に関係ない手続きも行えるため、借金や契約など悪質な利用をされてしまう可能性があるため注意が必要です。
どれだけ良好な関係の親族であろうとも、委任事項は明確に記載しましょう。
また、親族は相続の専門家ではないため、少なからずトラブルに発展してしまう可能性は否定できません。
手続きを間違い問題を起こしてしまうなど、専門家ではないため間違ってしまう可能性は十分にあります。
その点専門家であれば、相続に必要な知識を有しているうえに、金銭をもらって行う仕事になるため、確実に依頼を完了してくれるでしょう。
簡単な内容なら問題ありませんが、難しい内容の場合には専門家に依頼した方が安心です。
5. まとめ
ここまで相続手続きにかかる費用について解説しました。
相続手続きは、自分で行うことも親族に委任することも可能ですが、専門知識を有していない場合には不安が残るでしょう。
その点、税理士や弁護士などの専門家であれば専門的な知識と経験により、確実に相続手続きを完了することができます。
税理士は相続税・弁護士は相続トラブル・司法書士は相続登記など、それぞれの専門家によって得意分野が異なりますので、相続内容によっておすすめの専門家は異なります。
本記事を参考に、相続手続きの依頼先や費用についての理解を深め、実際の相続の際にお役立てください。
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