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ーコラムー
不動産の相続
税理士監修記事

土地・不動産の時効取得とは?要件・ケース例を解説

公開日:2020.1.14 更新日:2020.02.03

相続した不動産の一部が「所有者が分からない」「登記名義が知らない人だった」といった状況のとき、そのまま相続人名義で登記してしまってもいいのでしょうか。

これを認める制度が、本コラムで解説する時効取得です。
相続をきっかけに時効成立を理由として登記することで、承継した不動産全体の売却や活用の道を見出すことが出来ます。

そもそも時効取得とは何か・相続登記の際にどんな費用がかかるのか、専門家に依頼する必要性も併せて解説します。

【この記事で分かること】
時効取得の仕組み&要件
相続登記時に時効取得する場合の費用
自力でせず専門家に依頼したほうがよい事例

目次

1.時効取得とは
2.時効取得の4要件
3.不動産を時効取得するための必要な手続き
4.登録免許税の算出方法
5.登録免許税以外にかかる税金
6.相続登記を専門家に頼んだ時の相場費用は?
7.専門家に依頼したほうがいい場合とは?自分でもできる?
8.まとめ

1.時効取得とは

時効取得とは、本来の持ち主が所有権主張しないモノ・土地建物について「一定期間自分のものとして利用(=占有)することで所有権が得られる」とするものです。

これは民法で定められた所有権の原則であり、売買や相続以外での所有権移転が認められる数少ない例です。

【民法162条】時効取得

  1. 二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
  2. 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

1-1.時効取得の具体例(不動産相続)

不動産の所有権とは、法務局に届けられている登記名義そのものです。
必要なのは登記だけではありません。占有者に対しては「自分の土地だから明け渡してほしい」と主張しなければ、実質的に不動産を支配しているとは言えないでしょう。

ところが、これら不動産の所有権主張にかかせない行為が全く行われていない事例が、主に占有者側の相続発生をきっかけとして多数見られます。

【所有権主張されていない不動産の具体例】

  1. 相続手続きのために登記簿謄本を閲覧したところ、生前の親が植栽していた敷地について、実は隣家のものだったと分かった。隣家の住民から苦情が出たことはない。
  2. 祖父母世代の相続で農地を共有名義としていたが、実際に土地全体を利用して維持管理を行っているのは自分の一家だけ。当時のほかの共有者やその子孫とは、一切連絡がとれず、祖父母世代以降に相続登記されている気配もない。

1.の例は隣家の住民・2.の例で当時の他の共有者とその子孫が「所有権主張をしない本来の持ち主」にあたります。

1.2.の例に共通するのは、被相続人の占有者としての地位が相続人に承継される点です。これにより、相続をきっかけに時効取得を主張し、相続人のものとして所有権移転登記することが認められるのです。

1-2.なぜ時効取得を認めるのか

時効取得が認められている背景には、次のような考え方があります。

【時効取得を認める理由】

  • 法律関係の安定
    権利の所在をはっきりさせ、争いごとの火種は処理しておくべきという考え方。
  • 証明が困難な事実の救済
    数十年以上前からの事実(=占有していたこと)を立証するのは難しいので、期間を区切って権利の行方に決着をつけようとする考え方。
  • 権利しない者は保護にあたらない
    権利(ここでは所有権)があることを登記や管理行為で示さずに放置している人について、法律でその利益を守る必要はないとする考え方。

こうした発想のほかに、不動産に関しては「放置され続けることで景観悪化や災害リスクに繋がる」とも考えられています。

以上のことから、占有者(もしくはその相続人)に土地建物を帰属させることは、法律上適当な措置だとされているのです。

1-3.時効取得できる権利の種類

所有権のほかにも、不動産に対する権利には「他人の土地を自分のために使う権利」があります。該当する以下のような権利も、時効取得の対象となります。


【一例】時効取得が認められる権利

  • 地上権
    工作物や竹林所有のために他人の土地を利用する権利
    【例】地下通路を作る目的で、自分の土地に国が設定したもの
  • 地役権
    自分の土地使用のために他人の土地を利用できる権利
    【例】隣家の出入り用通路として、自分の土地に住民が設定したもの
  • 永小作権
    耕作or牧畜目的で他人の土地を利用する権利
    【例】代々続く営農者が自分の土地に設定したもの
  • 賃借権
    居住などの様々な用途で他人の土地を利用する権利
    【例】親類の住居として貸した自分名義の土地建物

よくあるのが、相続で所有権を得た土地に「地上権」が設定されているケースです。土地を売却しようにも、このままでは自由に土地使用できない恐れがあるため、買い手がつきません。

地上権が使われておらず権利者にも連絡がとれないなら、所有者が時効取得することで、地上権は混同により消滅します。こうすることで、ようやく買い手が安心できる条件を整えられるのです。

2.時効取得の4要件

より具体的に、時効取得が成立するための要件とは何でしょうか。先述の民法162条では、次の4要件が揃うべきとされています。

【時効取得の4要件】

① 所有の意思をもった占有であること(自主占有)
② 占有が一定期間継続すること
③ 平穏・公然とした占有であること
④ 他人の物であること

※①~③については、時効主張する人に立証責任はなく、反対意見があるなら本来の権利者がその証拠を提示すべきとされています(法律用語では“推定”/民法186条1項)。

まずは各要件を押さえた上で、相続時に時効取得が認められる要件を判例から見てみまししょう。

①所有の意思をもった占有であること

「所有の意思」とは、自分のものだと思っている状態のことを指しています。
所有意思のある占有は「自主占有」とも呼ばれ、対義語として他人のものと認識した状態(賃貸契約を結んだ等)での占有を「他主占有」と呼びます。

②占有が一定期間継続すること

本要件は実際に取得時効を行う上で最重要です。法律的な表現を分かりやすく変換すると、次の2点が要件だと述べられています。

【占有の一定期間継続とは】

  • 20年間(善意無過失※の場合は10年間)
  • 上記期間中、中断されることなく占有を続けていること

※善意無過失とは「積極的に自分のものだと信じ(=善意)、そう信じた経緯に不注意がなかったこと(=無過失)」という意味です。

③平穏・公然とした占有であること

この要件も分かりやすく変換すると「本来の権利者から抵抗されることなく(=平穏)・隠すことなく自分のものだと宣言しながら(=公然)占有していたこと」を指します。
これまで本来の所有者からの苦情はなく、被相続人が自分のものとして排他的に土地を支配していたなら、この要件は当然満たされるでしょう。

④他人の物であること

この要件は、すでに形式的なものになりつつあります。
論理上当然のことと考えられる上、過去に「自己の物も取得できる」とした判例があるためです(最高裁昭和42年7月21日判決)。


【時効取得の要件に当てはまる客観的要件とは】

①~④はあくまでも主観的な要件に過ぎません。具体的にどんな状況なら時効取得できるのか、想像するのは難しいでしょう。そこで、過去の判例が参考になります。

相続時に不動産の時効取得が認められたケースを元に、時効取得が認められる客観的要件を整理してみましょう。

<過去に「時効取得の要件に当てはまっている」と判断された客観的要件>

  • そもそも相続人が不動産を現に占有している
  • 不動産からの収益を自分のものとしている
  • 不動産にかかる税金や管理コストを負担している
  • 特定の相続人が単独で不動産を相続し、他の相続人から異議が出ていない

参考判例:最高裁昭和47年9月8日判決・最高裁平成8年11月12日判決

状況として「不動産の収支を被相続人or相続人が管理していること」「不動産の占有について誰からも異議が唱えられていないこと」が司法判断の決め手になり、時効取得に至っていると分かります。

土地・不動産の時効取得とは?

3.不動産を時効取得するための必要な手続き

時効取得を実現するには、要件を満たした上で援用(=実際に時効成立を主張すること)を行わなければなりません。時効取得の対象が不動産なら、時効援用とは所有権移転登記の手続きそのものです。

ここからは、登記に必要な協力者と書類について解説し、後章で登録免許税を含む課税内容についても解説します。


【Point】複雑な事例は専門家に任せる必要あり

実際に時効援用を伴う相続登記では「数世代前から登記されていない(数次相続)」「本来の不動産所有者が反発する」などの複雑な事例が多数みられます。

こうした事例については、専門家に任せて相当の時間をかけながら処理しなければなりません。

※詳しくは最後の章で解説します。

3-1.登記は当事者全員の協力が必要

不動産登記法60条では、登記の方法を「登記義務者と登記権利者の共同で行う」と定めています。時効援用のための所有権移転登記に置き換えると、一方の登記義務者とは本来の所有者を指し、もう一方の登記権利者とは時効取得した占有者を指しています。

しかし、相続をきっかけに時効援用を行うなら、本来の占有者はすでに亡くなっています。そこで「登記権利者=占有者から見た相続人全員」と解すことが出来ます。

【時効援用】所有権移転登記の当事者となる人

  • 本来の所有者
  • 占有者(亡くなった後は相続人全員)

3-2.本来の所有者の協力が得られないときは

相続時に時効援用するケースのなかには、本来の所有者と連絡がとれないものが数多くあります。もし連絡がついたとしても「時効援用して所有権を移転させます」という主張をあっさり受け入れてくれるとは限らないでしょう。

このように本来の所有者の協力が得られないなら、訴訟を起こして確定判決を得ることで、登記権利者(=相続人全員)だけで所有権移転登記が出来ます(不動産登記法63条)。訴訟と言っても、所有者と連絡がとれないケースにおいては、淡々と裁判所からの連絡を待つだけの事務的なものに過ぎません。

3-3.手続き方法と必要書類

登記手続きを行う際は、法務局に直接向かう方法のほかに、オンライン登記申請または郵送申請が認められています。

注意を要するのは必要書類です。登記権利者・義務者ともに収集すべき書類が多く、登記事項説明書(時効成立とその援用の経緯を説明するもの)にも所定の書式があります。

<登記義務者の必要書類>
以下すべて収集が必要です
①登記申請書
②登記原因証明情報
③委任状
④固定資産評価証明書
⑤本人確認書類(身分証)
⑥登記識別情報(または登記済証)
⑦印鑑証明書(発行から3ヵ月以内)

※協力が得られず時効取得の訴訟を提起したときは、上記①~⑦の代わりに「判決正本」を登記権利者側で用意します。

<登記権利者の必要書類>
以下すべて収集が必要です
①委任状(代理人または代表者が申請する場合)
②被相続人の戸籍謄本(死亡の記載があるもの)
③被相続人の住民票除票or戸籍附票
④相続人全員分の住民票の写し


【被相続人名義の不動産の相続登記も行う場合】
「不動産相続と同時に隣地を時効取得する」といったケースでは、従前から被相続人名義だった土地の相続登記も必要です。

この場合、上記「登記義務者の必要書類」「登記権利者の必要書類」と合わせて、登記権利者側で次の書類を準備します。

<相続登記のための追加書類>
以下いずれか+従前から被相続人名義だった土地の登記事項証明書+固定資産評価証明書

  • 遺言書がある場合
    遺言書(自筆証書遺言or秘密証書遺言は検認済みのもの/公正証書遺言は検認不要)
  • 遺産分割協議を行う場合
    遺産分割協議書+申請人以外の相続人の印鑑証明書(3ヵ月以内でなくてもOK)
  • 法定相続分に従う場合
    相続人全員分(すでに死亡した人含む)の戸籍謄本・相続関係説明図※

※相続関係説明図とは
法定相続人とその関係を家系図で示したものです。添付は必須ではありませんが、相続人が多い・婚姻関係が複雑になっている等の事例では、登記官の理解の助けとして添付します。

4.登録免許税の算出方法

時効援用(所有権登記)をする上で、ここまで紹介した必要書類のほかに「登録免許税」を納めなければなりません。

登録免許税の税率は、時効取得する土地・従前から被相続人名義だった土地にそれぞれ定めがあるため、計算時に要注意です。

【登録免許税の税率】
時効取得:課税標準額 × 1000分の20(2.0%)
相続登記:課税標準額 × 1000分の4(0.4%)

【例】課税標準額3,000万円の土地を相続し、同時に課税標準額1,000万円の所有者不明の隣地を時効取得する場合

時効取得した土地の登録免許税
= 1,000万円 ÷ 1,000 × 20 = 20万円

相続した土地の登録免許税
= 3,000万円 ÷ 1,000 × 4 = 12万円

→合計:32万円

【課税標準額の調べ方】
登録免許税の税計算のもとである課税標準額とは、市町村役場が管理する固定資産課税台帳に掲載された価格です。毎年送られてくる固定資産税納税通知書に掲載がありますが、土地所有者もしくは借りている人が「固定資産評価証明書」の交付を受けて確認することも出来ます。

時効取得する不動産については、本来の所有者から協力が得られない場合、訴訟提起時に登記権利人(=相続人全員)から証明書交付を請求できます。

5.登録免許税以外にかかる税金

登録免許税を納付して時効援用による所有権移転登記を終えたあとも、不動産取得にあたり一回限り課せられる税金があります。それが「不動産取得税」と「所得税」です。
納税のタイミング順に税率や計算方法を紹介します。

5-1.不動産取得税

時効取得による登記が終わったら、30日~60日以内(自治体により異なる)に土地所在地管轄の税務署へ届け出なければなりません。
申告後数カ月程度で届くのが「不動産取得税」の通知です。

<不動産取得税の計算方法>
不動産所得税は登録免許税と同じく「固定資産評価証明書」に掲載された課税標準額を元に算出します。税率は期間限定で引き下げが行われており、以下で紹介する通りです。

【計算方法】時効取得した土地の不動産取得税 不動産取得税 = 課税標準額 ÷ 2 × 税率

【令和3年3月31日まで】不動産取得税の税率
土地:100分の3
家屋(住宅):100分の4
家屋(非住宅):100分の

ただし、課税標準額が土地10万円以下・家屋12万円以下のときは、不動産所得税は課せられません。

5-2.所得税

従前から被相続人のものだった不動産に関しては、よく知られている通り「相続税」がかかります。では、時効取得した不動産も一緒に相続税を支払えばよいのでしょうか。

実は、相続をきっかけに時効取得した不動産に対しては、相続税ではなく「所得税」が課せられます。財産の承継ではなく、土地の時価相当の収入を得たものと判断されるからです。

【不動産取得のきっかけ別】税金の種類/納付時期
時効取得:所得税/不動産を取得した年の翌年の確定申告(2月~3月)
相続:相続税/死亡日の翌日or相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内

従前から被相続人のものだった土地は、相続財産に含まれる他の資産(預貯金や有価証券等)と一緒に相続税を納めることになります。ただし、時効取得した不動産については、登記名義人となった人の給与や事業所得と一緒に申告しなければなりません。


<所得税の計算方法>
所得税を計算する上で、時効取得した不動産は「一時所得」扱いで課税対象額を算出します。その上で登記名義人の収入と合算し、所得税の税率(紹介する表)を乗算します。

【所得税の計算方法】時効取得した不動産の課税対象額
一時所得 = 
時効援用した時点の相続税評価額 ÷ 2 - 時効取得するために直接要した金額(裁判費用など) - 特別控除額(最高50万円)

【参考】所得税の税率

課税対象となる所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

【無番地(国有地)を取得した場合】
ごく稀に、時効取得した不動産がもともと無番地(国有地)だったケースがあります。
このケースでは、一時所得の計算式にある「時効援用した時点の相続税評価額」は「払い下げ※金額」に置き換えます。

※払い下げ…国有地が競売などで民間に売却されることを指します。

6.相続登記を専門家に頼んだ時の相場費用は?

時効援用のための所有権移転登記を含め、相続登記は司法書士または弁護士に依頼することが出来ます。専門家に相続登記を依頼した場合の相場費用の参考として、手続きにかかる実費と共に内訳を見てみましょう。

<相続登記を専門家に依頼したときの相場費用>

登録免許税 32万円※1
戸籍謄本 被相続人:750円
相続人:450円/1名
住民票 被相続人・相続人ともに300円/1名
固定資産評価証明書 400円(2件目以降100円)
登記事項証明書 500円
印鑑証明書 410円
専門家費用※2 司法書士:10万円~15万円
弁護士:20万円~30万円

※1課税標準額3,000万円の不動産を相続し、同時に課税標準額1,000万円の所有者不明の隣地を時効取得する場合を想定。
※2:公のデータは後述の「農地の相続登記費用の実態調査」に限られるため、ここでは東京都内の司法書士事務所・弁護士事務所を参考としています。

自力で行った場合には諸費用だけで済みますが、専門家費用を加えれば10万円超~30万円を想定することになります。

6-1.実際にかかっている費用(高度な専門性が求められる事例)

上記の表は、あくまでもごくスムーズに登記手続きを進められたケースです。
「ほかの相続人と連絡がとれない」「時効援用したい不動産の所有者がどうしても特定できない」といった事例なら、各種調査や法務局との連携において、専門性の高い対応を長期間求められます。

以上のような難しい事例は、こと農地に多いものです。そこで、農林水産省から各地の司法書士へ「実際にどのくらいの費用がかかったのか」というアンケート調査が行われています。

【農地の場合】相続登記が完了するまでに実際にかかった平均費用
法定相続人の特定…2.9万円
相続登記手数料(登録免許税等の費用)…3.4万円
書類作成などの必要経費…2.7万円
司法書士報酬…15.5万円

必要費用の総額の平均…25.1万円

出典:農林水産省「平成28年度相続未登記農地実態調査委託事業報告書 http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/

以上のように、対応の難しいケースでは、司法書士費用の相場ですら弁護士費用に近くなることが分かります。

6-2.【参考】司法書士と弁護士の違い

ここでいったん、司法書士と弁護士に費用差があるのは何故か考えてみましょう。結論を述べると「対応できる範囲(職務権限)」が異なるのが理由そのものです。

司法書士は不動産登記のプロフェッショナルですが、職権は書類作成に留まります。その一方で弁護士には、司法書士の職権範囲に加えて訴訟代理権(代理人としての交渉や出廷ができる権限)があるのです。

この違いから、司法書士と弁護士のどちらに依頼すべきか、ケース毎に結論が分岐します。


【司法書士に依頼できる内容】
→当事者間でもめ事がないケースのみ

  • 時効援用したい不動産の所有者が行方不明で、判決により単独で登記できる
  • 相続人が1人しかいない
  • 相続人のあいだで穏便に遺産分割協議が終わっている

【弁護士に依頼できる内容】
→当事者間でもめ事が予測されるケース

  • 時効援用したい不動産の所有者が健在で、連絡を取る必要がある
  • 被相続人の代から境界トラブルがある
  • 相続分をめぐって家族間で意見対立している

7.専門家に依頼したほうがいい場合とは?自分でもできる?

相続登記や所有権移転登記については、法務局が事前相談に対応しています。必要書類や手続き全体の流れについて案内を受ければ、自力で行うことは不可能ではありません。

相続人調査・不動産所有者の調査についても、関係各所での名寄せ照会による調査が可能です。

一方で、自力で行う相続登記には課題があります。

7-1.専門家に依頼することで手間&時間を省ける

問題は、大量の書類収集・関係者との連携のために膨大な時間を要することです。公的書類の収集には平日昼間の行動が必須であり、仕事に差支えが出る可能性が考えられます。他の相続人の都合も考える必要があるでしょう。

より注意しなければならないのは、時効援用や相続登記の目的が何であるのかという点です。不動産には継続的コスト(税金や維持管理費)がかかることを考慮すると、売却・活用目的での登記は迅速化を図るべきです。

司法書士または弁護士であれば、知識と実務経験から最適な登記プロセスを導き出せます。手続きの手間を省き、登記の目的を果たすまでの時間を短縮化する上では、なるべく専門家に依頼するのが望ましいでしょう。

7-2.専門家の支援が特に必要となるケース

交渉や調査が複雑化するケースでは、なるべく手続きの初期で専門家へ相談しましょう。自力で行おうとすると、手続きの長期化や係争の拡大は避けられません。
複雑化しやすい順に、特に専門家の支援が求められる3つのケースを紹介します。


ケース①:以前の世代で相続登記を行っていないケース
地方圏を中心に所有者不明土地問題に発展しているのが、以前の世代から相続登記されていない不動産です。専門性が求められる課題として、手続きの切り分け(相続登記か時効援用か)・調査の難しさの2点が挙げられます。

まずは、事例を大きく2パターンに分けて見てみましょう。

【具体例】相続登記が行われなかったケース
(A)先の世代が不動産をひとりで相続したが、その相続登記を行っていなかった

(B)先の世代が不動産を兄弟姉妹で共有名義として登記したが、その次の世代から一部の共有持分の相続登記が行われなくなった(代々持分の登記を行っている家系が土地全体を占有している)

手続きの切り分けとして(A)は相続登記・(B)は時効援用による所有権移転が望ましいと考えられます。相続登記を行う場合は、中間省略登記(行われなかった相続登記の省略)の方法も個別具体的に検討しなければなりません。

いずれにしても、相続登記の方法を最終的に判断するための手がかりは、法務局の指示や過去の判例です。

(A)・(B)両方に共通するのが、相続登記が行われなくなった当時までさかのぼって法定相続人を探さなければならない点です。一般的な家系図と相続法から考えると、法定相続人とされる人は数十人以上に及ぶでしょう。これほどの人数の調査をミスなく行うことは、1人では不可能に近いと考えられます。

以上のことから、該当の事例においては、的確な判断に長けた専門家の力がほぼ必須と言えます。


ケース②:本来の所有者が時効援用を認めないケース
時効援用するにあたり、本来の所有者と連絡がとれて意思疎通できるケースもあります。すでに述べた通り、時効援用に積極的に協力してくれるとは考えにくいでしょう。

ここから先は時効援用の訴訟となり、占有要件を満たしていることを法的に立証する必要があります。被相続人の代から境界トラブルがある事例では、これを機に境界を定めておくことも大切です。

それぞれ適切に行うために、弁護士・土地家屋調査士の力が必要になります。


ケース③:相続人のあいだで争いがあるケース
そもそも相続人の間で「不動産の分割方法をどうすべきか」「時効援用する予定の土地はだれのものになるのか」と争っている状況なら、遺産分割協議の段階から専門家の力を借りるべきです。

不動産分割にはさまざまなやり方があり、税金や維持管理費などの継続的にかかるコストも考慮しなければなりません。時効援用する予定の不動産も含め、相続財産全体・各相続人の資力を総合的に判断して帰属先を決める必要があります。

こうした状況下で的確な判断が行えるのは、弁護士・司法書士・税理士などの専門職です。相続専門の法律事務所に依頼することで、遺産分割協議の取りまとめから相続登記までワンストップで任せられます。

8.まとめ

不動産の時効取得にはさまざまな要件がありますが、最も重要なのは「時効援用を原因とする所有権移転登記」を行うことです。手続きのポイントをまとめると、次の通りです。

【相続時】不動産を時効取得するときのポイント

  • 本来の所有者&相続人全員の協力が必要
  • 本来の所有者が非協力的なときは訴訟提起要
  • 登記時~初年度にかけて「登録免許税(2%)」「所得税(5~45%)」「不動産取得税(3~4%)」がかかる

相続登記では、必要書類の収集・相続人や土地建物の調査の両方で、大変な労を要します。 先世代で相続登記が行われなかったケースでは、より作業が難航するでしょう。当事者間で係争に発展した場合は、最適解を得られるよう専門家の働きかけが必要です。

継続的コストのかかる資産であるという性質上、最終的に土地建物をどのように処分したいか(そのための近道はどれか)を意識しておくのが大切です。

「親の遺した不動産が知らない人の名義だった」といったケースを含め、手続き前に一度専門家からアドバイスをもらうことをおすすめします。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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