不動産の相続

不動産取得税とは|課税されるタイミングや計算方法を解説

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士

不動産を取得した際に「不動産取得税」という税金が課されることをご存知でしょうか。

不動産売買や贈与時などに課税されるため、すでに納税経験がある方もいらっしゃるでしょう。

不動産取得税は固定資産税とは異なり、不動産を取得したことに対して一度だけ課される地方税です。

しかし、いつ・いくら課されるのか、詳しい内容を知らない方も少なくありません。

本記事では不動産取得税の基本的なしくみから、課税されるタイミング、計算方法を中心に詳しく解説します。

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1. 不動産取得税とは

不動産取得税とは、土地や建物を取得した際に1度だけ課税される地方税です。

売買による購入だけでなく、新築・増築、贈与など有償・無償の有無にかかわらず不動産を取得した場合に課税対象となります。

納税義務は個人・法人のいずれも対象となり、取得した側が支払います。

不動産という大きな資産を得たことに対する負担金と理解するとわかりやすいでしょう。

この章では不動産取得税の概要を詳しく解説します。

1-1. 課税されるタイミング

不動産取得税が課税されるタイミングは、原則として不動産を「取得した日」に納税義務が発生します。

  • 売買の場合: 売買契約を締結し、不動産の引渡しを受けた日
  • 新築・増築の場合: 建物が完成し、使用できる状態になった日
  • 贈与の場合: 贈与契約が成立し、不動産の引渡しを受けた日

ただし、納税通知書が送られてくるのは取得日から数ヶ月後になることが一般的です。

都道府県によって異なりますが半年程度かかる場合もあります。

納税の時期が気になる場合は、不動産を管轄する各都道府県税事務所へ確認しましょう。

1-2. 課税されるケース

不動産取得税は、おもに以下のようなケースで課税対象となります。

  • 売買による不動産の購入
  • 新築・増築による建物の取得
  • 贈与による不動産の取得
  • 交換による不動産の取得
  • 建築請負契約による建物の取得

なお、不動産の共有持分の取得については、課税されないケースがあります。

元々共有していた土地について、持分に応じた現物分割を行う際には譲渡や贈与などには該当しないため不動産取得税は課税されません。(所得税基本通達33-1の7)

ただし、持分に応じた現物分割でも、一方が取得する土地の評価が高く、価値が異なっている場合は贈与となり、不動産取得税も発生します。

持分の割合を上回った取得についても課税対象です。

参考:国税庁 共有物の分割

1-3. 不動産取得税は原則相続時には課税されない

不動産取得税は「取得」に対して課税される税金ですが、相続によって不動産を取得した場合には、原則として不動産取得税は課税されません。

ただし、例外的に不動産取得税が課税されるケースがあるため注意が必要です。

不動産の取得方法

法定相続人

法定相続人以外

相続

非課税

-

包括遺贈

非課税

非課税

特定遺贈

非課税

課税される

死因贈与

課税される

課税される

2. 【2025年最新版】不動産取得税の計算方法とは

不動産取得税は定額ではなく、「不動産の固定資産税評価額」をベースに税率を乗じて計算されます。

しかし、住宅用不動産など特定の条件を満たす場合には、様々な軽減措置が適用されるため、最終的な納税額は計算式通りではないケースが多くあります。

2-1. 税率はいくら?

不動産取得税の計算は、土地または建物の固定資産税評価額に対して税率をかけることで計算できます。

ただし、軽減措置も用意されており、家屋・非住宅の家屋・土地によってわけられます。

不動産取得税の税率は「4%」に設定されています。

しかし、特例により2027年(令和9年)3月31日までは以下の軽減税率が適用されています。

 

軽減税率
(2027年3月31日まで)

土地

3%

建物
(住宅)

3%

建物
(非住宅)

4%

軽減税率は、期間延長がなければ2027年4月1日以降は本則税率に戻ります。

最新の情報は各都道府県税事務所へご確認ください。

2-2. 土地の計算方法

土地の不動産取得税は、上記の軽減税率(3%)を基に計算されますが、さらに特別な軽減措置が適用される場合があります。

計算式: 不動産取得税額(土地)= (固定資産税評価額 × 1/2) × 3% − 控除額

  • ポイント1:固定資産税評価額の1/2特例

 2027年3月31日までは、土地の固定資産税評価額が「課税標準」の特例により1/2に軽減されます。

  • ポイント2:住宅用土地の控除

土地の上に新築住宅を建てる場合や、中古住宅が建っている土地を取得する場合など、特定の要件を満たす住宅用の土地には、さらに以下のいずれか高い方の金額が控除されます。

  • 45,000円
  • (土地1㎡あたりの固定資産税評価額 × 1/2) × (新築建物の床面積)×2 × 3%
    なお、床面積の上限は一戸あたり200㎡

この控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 土地の取得から3年以内に住宅を新築すること
  • 新築住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること
  • 取得者がその住宅を居住用とすること
  • その他、取得日や住宅の築年数に関する要件など、詳細な条件があります。

2-3. 建物の計算方法

建物の不動産取得税は、その建物が「住宅用」か「非住宅用」かによって税率や軽減措置が異なります。

2-3-1. 建物(住宅用)

自己の居住用やセカンドハウス、賃貸マンションなど居住の用に供される建物が対象です。

計算式: 不動産取得税額(住宅)= (固定資産税評価額 − 控除額) × 3%

ポイント:住宅の床面積による控除 

新築住宅の場合、以下の控除額が固定資産税評価額から差し引かれます。

  • 1,200万円(長期優良住宅の場合は1,300万円)

新築の建物の控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 床面積が50㎡以上240㎡以下であること(賃貸用共同住宅の場合は40㎡以上240㎡以下)
  • 個人の取得であること(住宅の場合)

中古住宅の場合も同様の控除がありますが、要件が厳しく設定されており築年数によっても控除額が異なります。

詳しくは以下をご参考ください。

参考:東京都主税局 不動産取得税の軽減制度に係るQ&A(非課税・住宅の軽減制度等)Q13 

2-3-2. 建物(非住宅用)

事務所や工場、倉庫など居住以外の目的で利用される建物が対象です。

計算式: 不動産取得税額(非住宅)= 固定資産税評価額 × 4%

非住宅用建物には、住宅用の建物に適用されるような床面積による控除の特例はありません。

本則税率の4%が適用されます。

2-4. 軽減措置の適用申請と必要書類

不動産取得税の軽減措置を適用するためには、取得した不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所に申請を行う必要があります。

自動的に適用されるわけではないため注意が必要です。

例・東京都における新築住宅の土地を取得し、3年以内に建物に関する軽減措置における必要書類

①土地

  • 不動産取得税申告書(原本のみ)
  • 建築確認済証と確認申請書第三面
  • 建築工事請負契約書
  • 平面図(共同住宅、二世帯住宅、併用住宅である場合)
  • 長期優良住宅認定通知書(認定長期優良住宅である場合)
  • 分合筆の経過が確認できる書類(土地を分合筆する場合)

② 建物(建設後、建物の軽減措置申請時)

  • 賃貸借契約書(一戸建て以外の住宅で貸家の場合)
  • 検査済証
  • 登記事項証明書(建物の全部事項証明書)
  • 建物引渡証明書
  • 請負業者の印鑑証明書(原本)

ご状況によって追加で書類の提出を求められたり、一度課税された上で還付されるケースもあります。

事前に管轄の都道府県税事務所に確認することをおすすめです。

参考:東京都主税局 土地を取得して、3年以内に住宅を新築する予定の場合

3. 不動産取得税を納税するまでの流れ

不動産を取得した後に、不動産取得税を支払うまでの流れとは具体的にどのようなものでしょうか。

そこで、この章では納税資金の準備にも役立つ納税への流れを解説します。

3-1. 各都道府県税事務所へ不動産の取得を申告する

不動産取得税は自動車税や住民税と同じ地方税ですが、毎年課税されるものではないため課税通知が来るタイミングは不動産を取得した人によって異なります。

不動産を取得したら、原則として不動産を取得した日から一定期間内に申告が必要です。

例として東京都の場合は30日以内、一般的には20日~60日程度に設定されています。

不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所へ申告を行う必要があるため注意しましょう。(※)

この申告は軽減措置の適用申請も兼ねています

軽減措置の申請を怠ると、本来受けられるはずの減額が受けられず、通常の税額を支払うことになってしまいます。

必要な書類を漏れなく揃えて提出しましょう。

※不動産を取得した日から一定期間内に登記している場合は申告不要

3-2. 納税通知書が届く

都道府県税事務所から後日、不動産取得税の納税通知書が送付されてきます。

この納税通知書には、納税すべき金額と納税期限が記載されています。

東京都は毎月7日前後に発送され、発送月の月末が期限です。

3-3. 納税方法を選択する

納税通知書が届いたら、支払い方法はご自身で指定された方法で納税を行います。

おもな納税方法は以下のとおりです。

  • 金融機関・郵便局・各都道府県税事務所での支払い
  • コンビニエンスストアでの支払い (納税金額30万以下)
  • クレジットカード払い (システム利用料別途必要)
  • スマホ決済
  • ペイジー

詳しい支払い方法の確認は、対象となる各都道府県税事務所のHPをご確認ください。

3-4. 納税期限内に納税する

納税通知書に記載された納税期限までに納税を完了させましょう。

期限を過ぎてしまうと、延滞金が発生する可能性があります。

やむを得ない理由で納税が遅れそうな場合や資金の準備に時間がかかる場合、分納(分けて納税すること)が認められる可能性があります。

各都道府県税事務所へ納税期限までに相談しましょう。

4. 不動産取得時にかかるその他の税金とは

不動産を取得する際には、不動産取得税以外にも取得する方法に応じて別の税金がかかります。

ここでは、特に購入時・贈与時・相続時にかかる税金について説明します。

4-1. 住宅購入時にかかる税金

住宅を購入する際には、不動産取得税の他に以下の税金がかかるのが一般的です。

  • 印紙税
    売買契約書などの課税文書に貼付する税金です。契約金額に応じて税額が変わります。
  • 登録免許税
    不動産の所有権移転登記や抵当権設定登記を行う際に課される税金です。
  • 消費税
    新築の建物や仲介手数料に対して課されます。土地の売買には消費税はかかりません。
  • 固定資産税・都市計画税
    不動産を所有している限り毎年課される税金です。購入した年の固定資産税・都市計画税は、売主と買主で協議し清算されることが多くなっています。都市計画税は対象地域のみ課税されます。

4-2. 贈与時にかかる税金

不動産を贈与により取得する場合には、不動産取得税の他に以下の税金がかかります。

  • 贈与税

不動産の贈与を受けた側に課される税金です。

贈与された財産の評価額に基づいて計算されます。

基礎控除(年間110万円)などの控除・特例があるため課税されない贈与もあります

  • 登録免許税

所有権移転登記を行う際に課される税金です。

  • 印紙税

贈与契約書などの課税文書に貼付する税金です

贈与税は次に紹介する相続よりも税率が高くなる傾向があるため、高額な不動産を贈与する際には、事前に税理士などの専門家に相談し、適切な対策を講じることが重要です。

特例や控除も多いため、上手に利用しましょう。

4-3. 相続時にかかる税金

先述のとおり不動産を相続により取得する場合には、死因贈与などを除き、原則として不動産取得税はかかりません

しかし、以下の税金がかかる可能性があります。

  • 相続税 

被相続人(亡くなった方)から財産を相続した側に課される税金です。

相続した財産全体の評価額から基礎控除額を差し引いた金額に税率を乗じて計算されます。

相続税には基礎控除のほか、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、多くの控除や特例が設けられています。

これらの特例を適用することで、大幅に税額を軽減できる場合があります。

  • 登録免許税

不動産の所有権移転登記(相続登記)を行う際に課される税金です。

相続による所有権移転の登録免許税率は、売買や贈与の場合よりも低く設定されています。

  • 所得税・住民税(売却時)

相続した不動産を売却した場合、売却益に対して所得税と住民税が課されることがあります。

これは「譲渡所得」と呼ばれ、相続の際の取得費や売却に要した費用などを差し引いて計算されます。

ただし、相続した不動産を一定期間内に売却した場合に適用される特例(空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除など)もありますので、売却を検討する際には確認が必要です。

相続税は贈与税と比較して基礎控除額が大きく、税率も異なるため、一般的には贈与よりも税負担が抑えられるケースが多いとされます

ただし、相続財産の総額、相続人の構成、適用できる特例の有無によって税額は大きく変動します。

5. 不動産取得時には税金の有無や納税期限に注意しましょう

不動産取得税は土地と建物、そしてその用途や取得時期によって計算方法や適用される軽減措置が大きく異なります。

税金を安く抑えるためにも、不動産を取得する際には、自身にどのような軽減措置が適用されるのかをしっかりと把握し、忘れずに都道府県税事務所へ申告・申請を行うことが重要です。

また、相続時のように不動産取得税はかからなくても別の税金が課税されるケースもあります。

不動産取得税をはじめとする課税は納税期限を超えてしまうとペナルティへと発展するおそれがあるため、不安がある場合は税理士などの専門家へ相談するようにしましょう。

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士

2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

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