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ーコラムー
不動産の相続
税理士監修記事

相続した不動産を売却するには?税負担を軽くする方法は?

公開日:2020.8.19 更新日:2022.07.12

土地建物を相続する際は、名義変更(相続登記)した後の扱いについて長期的な目線で検討しなければなりません。不動産は「ただ所有するだけでは税や維持管理コストのせいで赤字化してしまう性質」を持つからです。

今後上手に運用して収益を得る計画に検討がつかないのであれば、相続と前後して売却し、現金資産に変換すると良いかもしれません。

売却時の問題点は「対価にかかる譲渡所得税をどう節約するか」「そもそも売却手続きをどう進めるべきか」の2点です。下記ではまず登記など相続不動産の扱い方の基本を押さえた上で、売却時の課税の仕組み・特例による控除、さらに売却方法について解説します。

目次

1.不動産を相続した場合はどうする?
2.相続不動産を保有し続けるメリット&デメリット
  2-1.保有のメリット
  2-2.保有のデメリット
3.相続不動産を売却するメリット&デメリット
  3-1.売却のメリット
  3-2.売却のデメリット
4.相続不動産の売却にかかる税金
  4-1.課税譲渡所得金額の計算方法
  4-2.取得費
  4-3.譲渡費用
  4-4.特別控除額(3,000万円控除)
5.相続不動産の売却時にかかる税負担を軽くする方法は?
  5-1.取得費加算の特例
  5-2.被相続人の住まいの譲渡益にかかる特例(空き家特例)
  5-3.【注意】特例の併用関係
6.相続不動産を売却する方法
  6-1.売却手続きの流れ
  6-2.売却先候補ごとのメリット&デメリット
7.まとめ

1.不動産を相続した場合はどうする?

不動産の所有者が亡くなったときは、まず法務局での名義変更手続き(相続登記)を実施しなければなりません。※相続登記の流れや必要書類はこちらのコラム「相続登記に必要な書類と取得方法まとめ」で詳しく解説しています。

土地活用に向けた手続き(売却や造成など)は登記後に行いますが、活用方法そのものについては、取り分を決める「遺産分割協議」(もしくは遺言書の検認)と検討しておくべきでしょう。売却するか否かに関わらず、土地建物の検査や診断・解体あるいは造成などの長い道のりがあることに加え、不動産の分割方法も不動産の使い道に影響を及ぼすからです。

なお、相続登記後の不動産の代表的な用途として、以下の4つが挙げられます。

【相続不動産の活用方法】
①自分で住む
②貸し出して賃料収入を得る
③担保にして融資を受ける
④売却して現金化する

相続不動産を保有し続けるか(上記①②③)それとも売却するか(上記④)は、土地建物固有の事情をベースに、メリットとデメリットの大きさを比較しながら判断します。
どの相続ケースにも当てはまる事項として、まずは保有し続けた場合の長所と短所から解説します。

2.相続不動産を保有し続けるメリット&デメリット

相続不動産を無理に売却する必要はありません。親から子へと次々に相続を繰り返すことで、新しい価値が生まれることもあるからです。しかし、維持管理コストや被災リスクについては十分理解しておかなければなりません。

2-1.保有のメリット

自分で住む予定がないとしても、相続不動産を収益化することは可能です。

保有目的かつメリットとして最も好まれるのは、アパートや駐車場の経営です。周辺住民や地域を訪れる人のニーズを満たすことが出来れば、固定資産税などの支出を上回る収入を狙うのも難しくありません。

土地保有の他のメリットとして、不動産を担保に金融機関と融資契約を結び、事業や生活費に充てられる点も挙げられます。信用力(収入や職業)を上回る金額の借入を希望するのであれば、十分な市場価値がある不動産は審査通過の切り札となるでしょう。

2-2.保有のデメリット

相続不動産には、固定資産税や維持管理費などの「ただ所有しているだけで発生するコスト」が付きまといます。支出をカバーするためにアパートや駐車場の経営を始めてみても、入居率低下による赤字転落の可能性と常に向き合わなければなりません。さらに、被災や住民トラブル(もしくは利用者トラブル)による価値毀損リスクに備え、保険加入や手元資金の確保等の備えも必須です。

そればかりでなく「相続した土地建物がまったく経営や担保供与に適さない」という事態も考えられます。不動産の市場価値は固有の性質(形状・接道状況・建築関連法への適合状況・自然災害の頻度等)によって異なり、居住も一時利用も敬遠されてしまうものが多くあるからです。

3.相続不動産を売却するメリット&デメリット

効率よく運用できる見込みのない相続不動産は、早々に売却するのが最適解です。売却により現金資産が生まれることで、相続手続きそのものの難題も解決します。

3-1.売却のメリット

不動産売却の最大のメリットは、納税資金を確保できる点です。
相続事例には「遺産全体に対して現預金の割合が少ない」というものが稀ではありません。こうしたケースでも不動産を現金化すれば、相続人の懐を傷めずに納税を達成できます。納税資金の不安とともに、不動産を巡る“遺産の押し付け合い”トラブルも解消可能です。

相続登記よりも早い段階、つまり取り分を決める話し合い(遺産分割協議)の時点で売却に踏み切るのも良い選択です。

不動産の分割方法は自由ですが、共同名義にするとその後の経営や二次相続で問題が生じ、単独名義にすると相続人のあいだで不公平が生じがちです。そこで、いったん売却したのちに代金を分け合う方法(=換価分割)をとれば、公平で明快な遺産分割が可能になる上、相続人各自で思いのまま気軽に遺産を処分してもらえます。

3-2.売却のデメリット

不動産売却の対価は、その全額が相続人の懐に入るわけではありません。手にした利益は「譲渡所得」として扱われ、売却翌年に確定申告して所得税と住民税をそれぞれ納めなければならないからです。他にも「査定や買い手探しはどう進めるのか」という問題が生じます。

ここまでの解説をいったん総括すると、相続不動産を巡る選択肢として「保有」「売却」の2つがあります。不動産運用に不慣れで本職を大切にしたいと考えるなら、運用によるリスク(継続的な課税・維持管理・災害による価値毀損)を負うよりも、売却するほうが望ましいでしょう。

それでは、売却の問題点のひとつである「税金」は、具体的にどのくらいかかるのでしょうか。

4.相続不動産の売却にかかる税金

相続不動産の売却代金は、亡くなった人(=被相続人)の代からの所有期間に応じて「長期譲渡所得」もしくは「短期譲渡所得」のいずれかとして扱われます。
各種税率は以下の通りです。

【相続不動産にかかる譲渡所得税の税率】

  • 長期譲渡所得(所有期間が5年を超える場合)…所得税15%+住民税5%+復興特別所得税2.1%
  • 短期譲渡所得(所有期間が5年以下である場合)…所得税30%+住民税9%+復興特別所得税2.1%

※申告は所得全体で行うものの、譲渡所得に対する課税額は、それ以外の所得(給与等)とは分離して算出します。
※平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。

4-1.課税譲渡所得金額の計算方法

課税されるとはいえ、売却対価(=譲渡価格)の全体が対象となるわけではありません。売却までにかかったコストのほか、一定の条件下で特別控除額も課税対象外となるからです。
課税譲渡所得金額(売却代金のうち課税対象となる金額)の計算方法は以下の通りです。

【相続不動産を売却した場合】課税譲渡所得金額の計算方法

譲渡価格-(取得費+譲渡費用)- 譲渡時の特別控除3,000万円

下記ではさらに、算出式中にある「取得費」「譲渡費用」「特別控除額」の考え方について解説します。

4-2.取得費

下記のような“売却までの各プロセスでかかったコスト”は「取得費」として扱われ、課税されません。

【取得費に含まれるもの】

  • 測量費
  • 造成費用(埋立て・土盛り・地ならしなど)
  • 借主に立ち退いてもらうために支払った費用
  • 所有権確保のために必要になった訴訟費用
  • 各種税金(登録免許税・不動産取得税・特別土地保有税・印紙税)
  • 土地購入代金・取り壊し費用(※当初から土地利用が目的であったと認められる場合)
  • 土地購入のための借入資金の利子(実際に使用開始する日までの期間に対応する部分)
  • 他物件取得のために購入契約を解除したときの違約金

4-3.譲渡費用

下記のように“売るために直接かかったコスト”は「譲渡費用」として分類され、やはり課税対象になりません。

【譲渡費用に含まれるもの】

  • 売買仲介業者に支払った手数料
  • 印紙税のうち売り主が負担したもの
  • 賃貸物件を売るために賃借人に支払った立退料
  • 売却目的で建物を取り壊したときの費用・損失額
  • より高く売るために締結済みの売買契約を解除したときの違約金
  • 借地権売却時に地主の承諾の対価として支払った費用(名義書換料など)

4-4.特別控除額(3,000万円控除)

売主である相続人や被相続人が住んでいた不動産を売却するときは、取得費・譲渡費用のほかに特別控除が認められます(=以下“譲渡時の3,000万円控除”)。所有期間が10年を超えているなら、さらに軽減税率(所得税10%・住民税5%※)が適用されます。

※課税長期譲渡所得金額(特別控除額の適用後)のうち6,000万円を超える部分については、所得税15%・住民税5%となります。

5.相続不動産の売却時にかかる税負担を軽くする方法は?

節税して手元に残る利益を最大化するのであれば、相続から3年以内の売却成立を目指すと有利です。

売却時期の要件を満たすことで、取得費・譲渡費用・3,000万円控除の他にも下記の特例控除が認められるからです。後述の通り、各種特例の併用可否には注意しましょう。

5-1.取得費加算の特例

「取得費加算の特例」とは、売却前に相続税の負担があったことを考慮し、控除できる売却コストに一部上乗せを認めるものです。本特例を適用することで譲渡所得税の課税対象外となる金額が増え、節税に繋がります。

なお、特例の適用対象となるのは「相続税の申告期限(死亡の翌日から10か月経った日)から3年以内に売却した不動産」のみです。

■加算額の計算方法

本特例で上乗せできる取得費加算額は以下のように計算します。

【取得費加算の特例】加算額の計算方法(※平成27年以降に相続した場合)

売主負担の相続税の課税額×{不動産にかかる売主負担の相続税の課税評価額÷(売主負担の相続税の課税評価額+売主の相続税負担分に対応する債務控除額)}

※注意:加算額の上限は「取得費加算特例や特別控除を適用する前の譲渡所得金額」(売却代金から取得費と譲渡費用を控除した金額)です。

5-2.被相続人の住まいの譲渡益にかかる特例(空き家特例)

下記の①土地建物にかかる要件・②売却にかかる要件の両方をすべて満たすものは、譲渡価格に対して3,000万円の控除が認められます(=以下“空き家特例”)。

なお、本特例は「相続した年から3年目の末日まで」かつ「平成28年4月1日から令和5年12月31日までのあいだ※」に売却したものが対象となります。

※令和2年7月現在。今後、特例適用期間が延長もしくは短縮される可能性があります。


【空き家特例の要件①】土地建物にかかる要件

  • 相続開始直前において被相続人が単身で居住していた※
  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物である
  • 相続時から売却時まで、事業・貸付の用途に転用していない

【空き家特例の要件②】売却にかかる要件

  • 売却代金が1億円以下である
  • 相続により土地及び家屋を取得した
  • 譲渡先が特別な関係者(親族・内縁関係者・売り手に関わりのある法人)でない

※老人ホームや障害者支援施設への入所により相続開始前に空き家になっていた場合でも、引き続き被相続人所有の物品を保管する場所として使っていた場合(事業や貸付の用途に転用していない場合)も、特例の適用要件を満たせます。

5-3.【注意】特例の併用関係

注意点として、以上で解説した「取得費加算の特例」と「空き家特例」は併用できません。そのほかにも表のように、マイホーム売却関連の特例併用は制限があります。

【特例の併用可否表】

特例の通称 取得費加算の特例 空き家特例 買換え特例 譲渡時の3,000万円控除
取得費加算の特例 必要書類 併用可能 併用可能
空き家特例 必要書類 併用可能 併用可
※控除額の上限は3,000万円
買換え特例 併用可能 併用可能 併用不可
譲渡時の3,000万円控除 併用可能 併用可
※控除額の上限は3,000万円
併用不可

【参考】買換え特例とは
10年を超えて所有かつ居住している居住用不動産を売却したとき、一定の要件のもとで譲渡価格に対する課税を将来に繰り延べることが出来る特例です。

6.相続不動産を売却する方法

それでは、不動産売却の2点目の課題である「査定や買い手探しなどの進め方」はどう解決するのでしょうか。

相続事例のほとんどは、購入希望者に心当たりがない状態から売却手続きを開始します。査定は法令理解を含む専門知識を要するため、売主本人で進めるのは困難です。そこで売却にあたっては、不動産取引を専門とする業者に依頼して買い手を探すのが一般的です。

近年は相続法や税法に沿ったアドバイスができる特化型業者が増加しており、こうした専門性の高い依頼先を選ぶことで相続手続きの窓口をある程度まで一元化できます。

6-1.売却手続きの流れ

売却手続きの流れは、前後する可能性があるものの以下のように進みます

【相続不動産】売却手続きの流れ
相続開始(不動産所有者の死亡)
  ▼
遺言執行or遺産分割協議
  ▼
法務局での名義変更手続き(相続登記)
  ▼
売却手続き(査定・造成や解体・売却条件の話し合い)
  ▼
(②のステップで決定していた場合)代償分割
  ▼
税申告

最初に触れたように、不動産の次の名義人が決定したときは「相続登記」を速やかに行わなければなりません。登記が済むまでは、売却の具体的な手続きに入れないのです。


■名義変更(相続登記)はなぜ必要なのか
法務局で誰でも閲覧できる不動産の登記簿は、近隣住民や買主などの第三者に対する「所有を証明する唯一の手段」です。所有者の死亡が周知の事実であったとしても、登記簿に名義人として記載されない限り、土地建物を無断占有する人物に立ち退きを求めることすらできません。
売却するかまだ決められない状態でも、必ず登記手続きを済ませておきましょう。


■相続登記の方法・必要書類
相続登記の手続きは不動産所在地を管轄する法務局で行います。この際、登記簿に加えて登記原因(=相続)が分かる書類と登録免許税が必要です。

【相続登記の必要書類】※以下すべて要

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人の戸籍謄本一式(被相続人との関係が分かるもの)
  • 遺言書または遺産分割協議書+印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書
  • その他…登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)

6-2.売却先候補ごとのメリット&デメリット

なお、買主候補を大別すると「自己所有目的の個人や法人」と「不動産業者」の2種類に分かれます。買主によって商談がまとまるまでの時間や売却条件に違いが出るため、仲介業者選びと並んで重要なポイントです。


自己所有目的の個人や法人に売却する場合
市場の取引価格に近い売値がつき、利益の最大化を狙えるのがメリットです。
一方で、相続不動産特有のデメリットとして「築年数や現状に難があり、なかなか買い手がつかない可能性がある」という点が指摘できます。


不動産業者に売却する場合
築年数や現状に依らず、早々に査定のち売却手続きを完了できるのがメリットです。
引き換えに、自己所有目的の個人や法人と取引する場合よりも売値(買取価格)が下がってしまう点には目をつむらなければなりません。

業者選びの方針として、売買を仲介してもらう場合は「早期商談成立を可能とする販売広報活動スキル」、業者による買い取りを希望する場合は「査定価格」に着目しましょう。

7.まとめ

収益性の高くない不動産は売却するのが最良策ですが、譲渡所得税の節約・売却手段の2点についてはよく検討しなければなりません。

節税に関しては相続した土地建物を対象とする「取得費加算の特例」「空き家特例」などが利用できますが、対象となる売却時期や特例併用可否については十分注意しましょう。他方の売却手段については、相続特化型の仲介業者(もしくは買取業者)を選ぶことで、商談成立時の条件が有利になります。

そもそも売却か保有か迷っているときは、その重要な判断材料である「税金の問題」を先に税理士に相談するのがベストです。相続専門の税理士は不動産を診断できる業者との連携を深めており、相続人が負担する課税額の全体(相続税+所得税)を最適化しながら、土地活用の悩みについてもアドバイス可能です。

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