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ーコラムー
相続税
税理士監修記事

相続税はいくらからかかる?3,600万円の目安と課税額計算の基本

公開日:2023.5.11 更新日:2023.09.05

相続税がかかるのは、遺産総額(一定範囲の生前贈与等を含む)が少なくとも3,600万円を超える場合です。個別の課税額の計算は、民法で定められる法定相続のルールに沿い、家族構成によって相続税がかからない限度も変わります。本記事で解説する下記の要点を押さえれば、

・相続税はいくらからかかるのか(基礎控除額について)
・相続税の計算方法(課税価格から税額の算定まで)
・相続税計算に必要な知識(法定相続と特例・控除制度)
・相続税の目安となる速算表・早見表

課税に備えていくらかかるのか計算できます。納税資金の準備や、今後の相続対策に役立つでしょう。

1. 相続税の課税があるのは遺産総額3,600万円超から

相続税の課税があるのは、課税される財産が最低3,600万円の基礎控除額を超える時だけです。もっとも、法定相続人の数しだいで課税されない限度はより大きくなるほか、資産の評価や税額自体を下げた結果として課税額がゼロになる場合もあります。

1-1. 相続税の基礎控除額=最低3,600万円

相続税の基礎控除とは、概ね三親等以内に存在する相続権を有する人(法定相続人)の生計手段を守るため、一定額まで課税しないとする制度です。
法定相続人が1人でもいれば基礎控除額は3,600万円あり、1人増える度に600万円ずつ上乗せされます。

【相続税の基礎控除額の計算方法】
土台部分3,000万円に「600万円×法定相続人の数」を加算する

関連記事: 相続税の基礎控除とは?控除の種類・控除額の計算方法

1-2. 3,600万円を超えても課税されない場合とは

課税対象となる財産が3,600万円を超えていても相続税の課税がない場合は、基本的に下記のいずれか(もしくは複数)に該当する場合です。

・法定相続人が2人以上いる場合
・資産の評価減ができる場合
・課税されても税額控除でゼロになる場合

2. 相続税の計算方法

相続税の計算は、課税される財産の評価の合計(課税遺産総額)につき、各人の法定相続分に応じた税率で行います。最終的に各人が負担する税を知りたい時は、これから解説する手順で計算しましょう。計算のため必要な情報は下記の通りです。

・亡くなった時点の財産の評価額
・相続開始前3年以内の贈与価格
・相続時精算課税を適用した贈与価格
・債務額(医療費やローンの残債など)
・葬祭費用(お葬式のため支払う額)
・法定相続人の数及び取得割合(戸籍の調査要)

2-1. 課税価格を計算する

相続税の課税対象は、亡くなった時点の財産(民法上の相続財産)だけではありません。一定の範囲の生前贈与も対象に含まれ、一方で債務などのマイナスの財産は適切に控除します。上記の考え方を踏まえ、まずは下記の式で基礎控除前の「課税価格」を計算しましょう。

【課税価格の計算方法】
相続財産の評価額 - 非課税財産の評価額 + 相続時精算課税制度を適用した贈与価格 − 債務及び葬式費用 + 相続開始前3年間の生前贈与の価格
※財産を取得した人ごとに計算し、最後に合計する

課税価格の計算では、必ずしも個別の資産の評価をそのまま採用するとは限りません。特例を使い、あらかじめ評価額を減らしたり、控除できたりする場合があります。

2-2. 相続税の総額を計算する

相続税の計算では、法定相続人の数と合わせて、その取得割合(法定相続分)を調べる必要があります。
人数から計算した基礎控除額を課税価格から差し引くと、相続税が総額でいくらかかるのか知るための基礎となる「課税遺産総額」が分かります。

【課税遺産総額の計算方法】
課税価格 - (3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)

課税遺産総額から相続税の総額を調べる時は、実際の取得割合にこだわらず「仮に法定相続分で課税価格を分け合うもの」とします。分配した時の各人の税率を調べ、税額を計算し、最後に合算した結果が、相続税の総額です。

【相続税の課税額の計算方法】
課税遺産総額 × 法定相続分の割合 × 各人の相続税の税率 - 控除額
※法定相続人ごとに上記計算を行い、最後に相続税の合計額を出す

2-3. 各人の負担額を計算し、税額控除を適用する

相続税の総額は、実際の財産の取得割合に応じて分配します。それぞれの負担とするのです。

【各人の課税額の計算方法】
相続税の合計額 × (各人の課税価格 ÷ 課税価格の合計)

上記方法で計算した課税額は、法定相続人の状況しだいで軽減される場合があります。税額軽減の制度は余さず使いましょう。

3. 相続税計算のための前提知識

相続税を計算するための情報は、民法及び税法その他規則の前提知識が必要です。前もって理解しておきたい法律上のルールは、次の3点に絞れます。

・相続財産やみなし相続財産の範囲(税法)
・法定相続人・法定相続分の判定(民法)
・適用できる特例の種類(相続税評価額の控除に繋がる制度)
・適用できる税額控除の種類(課税額の控除に繋がる制度)

3-1. 相続税がかかる財産

民法では相続財産を「被相続人に属する一切の権利義務」としており、課税の判断もこれに準じます。実際には、被相続人ではなく相続人に属する権利も「みなし相続財産」になる場合があります。

【相続税がかかる財産】
1.預貯金、現金
2.投資用資産(株式、債券、投資信託など)
3.不動産(自宅、店舗、賃貸物件など)
4.動産(自動車、家財道具、貴金属など)
5.各種債権(貸付金など)
6.知的財産権(著作権、商標権など)
7.その他の権利(ゴルフの会員権など)
8.生命保険金(※みなし相続財産)
9.退職手当金など(※みなし相続財産)

3-2. 法定相続人・法定相続分

法定相続人は、①配偶者相続人と②血族のうち最も相続順位が高い人で構成されます。もし①がいなければ、②血族で最も相続順位が高い人だけが相続権を得ます。
なお、血族が相続放棄以外の理由(死亡や欠格・廃除)で権利を失っている時は、所定のルールで法定相続人の代襲が起きます。

【相続順位】
・第1順位:子(卑属が順に代襲)
・第2順位:直系尊属(父母・祖父母)
・第3順位:兄弟姉妹(甥・姪が代襲)

法定相続分の割合は、血族相続人の順位で判断します。同順位の血族相続人が複数いる時は、順位全体の法定相続分を平等に分けます。

【法定相続分】
配偶者+子(第1順位):配偶者2分の1、子2分の1
配偶者+直系尊属(第2順位):配偶者3分の2、直系尊属3分の1
配偶者+兄弟姉妹(第3順位):配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

【法定相続分の例】
配偶者と子2人が法定相続で3,000万円取得する場合
→配偶者1,500万円、子はそれぞれ750万円

3-3. 適用できる特例の種類

相続税評価額の軽減に繋がる制度の種類には、配偶者の取得分に適用できる特例の他、次のようなものがあります。

【配偶者の税額の軽減】
配偶者が取得する財産につき「法定相続分」もしくは「1億6千万円」のいずれか大きい方の金額まで非課税とする制度

【小規模宅地等の特例】
居住または事業の継続等を要件に、宅地等の評価減を認める制度(被相続人等の居住の用に供されていた宅地等は50%、貸付事業用の宅地等は80%)

3-4. 適用できる税額控除の種類

適用できる税額控除には、障がい者や未成年者を対象とする制度の他、農地や会社の相続人にかかる納税猶予制度もあります。

未成年者控除 当該相続人の課税額につき、成人するまでの年数1年につき10万円を控除
障害者控除 当該相続人の課税額につき、85歳になるまでの年数の1年につき10万円(特別障害者は20万円)を控除
相次相続控除 被相続人が過去10年以内に支払った相続税がある場合、その一部を今回の課税額から控除
外国税額控除 課税額につき、外国に支払った相続税額もしくは外国の財産にかかる日本の相続税額のいずれか小さい方の額を控除(二重課税の回避)
贈与税額控除 課税価格に加算された財産にかかる贈与税を、相続税から控除(二重課税の回避)
農地の納税猶予 営農継続(特定貸付けも可)などを条件に、農地の相続税の納付を猶予
事業承継税制 雇用維持などを条件に、自社株式の相続税の納付を猶予

4. 簡単に相続税の目安を知る方法

相続税の課税がある人は、実際のところ全体の1割にも及びません。課税が避けられない場合も、速算表・早見表を使ってアタリを付けられます。早めに「大体どのくらいの課税があるのか」さえ分かっていれば、資産を一部売却するなどして納税資金の準備に活用できるでしょう。

4-1. 相続税の課税のある人の割合は?

相続税が課税される可能性は、法改正による基礎控除額の変化に左右されます。土台部分3,000万円・法定相続人1人につき600万円となった平成27年1月1日以降、死亡者数に対する課税件数の割合は、例年8%程度に落ち着いています。
なお、法改正より前(土台部分5,000万円・法定相続人1人につき1,000万円)の課税件数割合は、毎年4%から6%でした。基礎控除額の減少により、課税件数は微増となっています。

参考:財務省Q&A~身近な税について調べる~

4-2. 相続税の速算表を利用する

相続税の税率や控除額は、国税庁タックスアンサーで公開されている下記の表が使えます。課税価格とその法定相続分が分かったら、表に当てはめて税額を計算しましょう。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

4-3. 相続税の早見表を利用する

相続税の計算方法がややこしいと感じる人は、下の早見表を活用しましょう。子どもの数の列と遺産総額の行が交わるところを見るだけで、おおよその課税額が分かります。
法定相続分は配偶者の有無で変わるため、早見表は「配偶者と子が相続人の場合」と「子だけが相続人の場合」で使い分けて下さい。

配偶者と子が相続人の場合 法定相続人の構成※配偶者は1/2の財産を取得する
遺産総額 子供1人 子供2人 子供3人
5,000万円 40万円 10万円 0
6,000万円 90万円 60万円 30万円
7,000万円 160万円 113万円 80万円
8,000万円 235万円 175万円 138万円
9,000万円 310万円 240万円 200万円
1億円 385万円 315万円 263万円
1.5億円 920万円 748万円 665万円
2億円 1,670万円 1,350万円 1,218万円
3億円 3,460万円 2,860万円 2,540万円
5億円 7,605万円 6,555万円 5,963万円
10億円 1億9,750万円 1億7,810万円 1億6,635万円
30億円 7億4,145万円 7億380万円 6億7,433万円
子だけが相続人の場合 法定相続人の構成
遺産総額 子供1人 子供2人 子供3人
5,000万円 160万円 80万円 20万円
6,000万円 310万円 180万円 120万円
7,000万円 480万円 320万円 220万円
8,000万円 680万円 470万円 330万円
9,000万円 920万円 620万円 480万円
1億円 1,220万円 770万円 630万円
1.5億円 2,860万円 1,840万円 1,440万円
2億円 4,860万円 3,340万円 2,460万円
3億円 9,180万円 6,920万円 5,460万円
5億円 1億9,000万円 1億5,210万円 1億2,980万円
10億円 4億5,820万円 3億9,500万円 3億5,000万円
30億円 15億5,820万円 14億8,290万円 14億760万円

4-4. 相続税計算シミュレーション

ここで実際に、分かりやすい想定例を使って相続税の計算を行ってみましょう。現状分かっているのは次の情報だとします。

・相続財産:9,000万円
・生前贈与:1,000万円(Aに贈与)
・負債+葬式費用:債務700万円(配偶者が負担)
・法定相続人:配偶者、長男A、次男B
・遺産取得の状況:配偶者7,000万円、長男1,000万円、次男1,000万円

【課税遺産総額の計算】
9,000万円 + 1,000万円 - 700万円 = 9,300万円
9,300万円 - (3,000万円 + 600万円 × 3)= 4,500万円


【相続税の総額の計算】
配偶者:4,500万円 × 2分の1 × 15% - 50万円 = 287.5万円
長男A:4,500万円 × 4分の1 × 15% - 50万円 = 118.75万円
次男B:4,500万円 × 4分の1 × 15% - 50万円 = 118.75万円
287.5万円 + 118.75万円 + 118.75万円 = 525万円


【各人の課税額の計算】
配偶者:525万円 ×{(7,000万円 - 700万円)÷ 9,300万円}= 355.64万円
長男A:525万円 ×{(1,000万円 + 1,000万円)÷ 9,300万円}= 112.9万円
次男B:525万円 ×(1,000万円 ÷ 9,300万円)= 56.45万円

5. 相続税ゼロでも申告は必要?

課税遺産総額が基礎控除額を超えていても課税額ゼロとなることもありますが、その場合は必ず申告書を提出しなければなりません。相続税の申告義務に関するルール(相続税法第27条)には、申告期限も含めて注意しましょう。

5-1. 課税遺産総額が基礎控除額内なら申告不要

相続税申告をしなくても良いのは「課税遺産総額」が基礎控除額を下回っている場合です(第1項)。個別の相続事例では、亡くなった時点で残されていた財産だけで判断しないよう注意しましょう。必ず生前贈与やマイナスの財産を加味しなければなりません。

5-2. 遺産総額が基礎控除額を超えるなら申告必須

必ず相続税申告しなければならないのは、課税遺産総額が基礎控除を上回っている場合です。各種税制によって課税額ゼロになるとしても、制度適用そのものが申告書の提出を条件とします。

5-3. 申告期限に注意!相続税申告は10か月以内に

相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内(第2項)です。課税遺産総額が基礎控除額を超える場合、上記期限内に遺産分割を完了させ、申告書を作成・提出しなければなりません。申告要否の判断に迷う時は、早めに税理士に相談しましょう。

6. まとめ

相続税が課税されるのは、課税価格が基礎控除額を超えた時です。平成27年1月以降の基礎控除額は最低3,600万円からであり、法定相続人が1人増える度に600万円ずつ上乗せされます。もっとも、肝心なのは課税価格や特例・税額控除の種類であり、相続税の計算方法をきっちり理解しておくのが大切です。

相続税の計算は、知識がないと過大になりがちです。反対に「申告額が少ない」「申告が漏れている」となると、期限後も対応に追われ、経済的負担だけでなく手間も増えます。不安や不明点については、あらかじめ税理士に相談しておくと良いでしょう。

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