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相続税
税理士監修記事

遺言書と法定相続分はどちらが優先される?

公開日:2018.4.20 更新日:2022.10.11

遺言を残すことで、被相続人が自身の遺産の分配について指定できることはご存知のことと思います。遺言は故人の最後の遺志ですから相続人はこれを尊重しなければなりません。

一方で、民法にも法定相続分として分配割合が規定されています。

遺言書の内容と法定相続分が異なるケースではどちらが優先されるのでしょうか。

なお2019年1月13日以降に作成された自筆証書遺言については方式緩和が行われ、財産目録についてはワープロで作成したものや不動産の登記簿全部事項証明書などの別紙添付等も可能となっています。今回はこの遺言書の優先度について解説します。

目次

1.そもそも法定相続分とは?
2.相続では遺言が優先する
3.一定の相続人に認められている遺留分に注意
4.遺留分は請求しなければ確保できない
5.兄弟姉妹には遺留分が無い
6.相続欠格・相続廃除・相続放棄とは
 6-1.相続欠格の条件と効力
 6-2.相続廃除の条件と効力
 6-3.相続放棄の条件と効力
7.相続税の税率は法定相続分で判断する
8.まとめ

遺言書と法定相続分はどちらが優先される?

1.そもそも法定相続分とは?

法定相続分というのは、民法上で規定されている遺産の分配割合のことです。

親族間で遺産を分配するにあたって、被相続人との関係の深さを考慮して「公平性」を考えて各相続人の取り分を規定しています。

被相続人が遺言を残さなかった場合には相続人同士が話し合って遺産を分配しなければなりませんが、皆、遺産を多く貰いたいために衝突することが予想されます。法定相続分はそのような場合に一定の「指標」として機能し、どのように分配するのが公平かという道筋を示してくれます。

付け加えると、法定相続分がある人のことを指して「法定相続人」と呼んだり、「相続権がある」と表現したりします。

ただし強制力があるものではないので、必ずしも法定相続分通りの分配内容とする必要はありません。

2.相続では遺言が優先する

もし被相続人が遺言書を残していた場合は、法定相続分よりも遺言書の内容が優先されます。

ですから被相続人となる人は法定相続分にとらわれずに、遺産の分配割合を考えることができます。

なぜ法律よりも遺言書が優先されるのかというと、我が国の法体系における私的自治の原則所有権絶対の原則が働くからとされています。

  • 私的自治の原則・・・私人間の関係については原則として国家はできるだけ干渉しないというもの
  • 所有権絶対の原則・・・自分の所有する財産の扱いについては何者の干渉も受けず自由に決めることができる、というもの

生前の所有財産の扱いについて、遺言書でどのように指定するかも個人の自由ということで。 ですから遺言書がある場合には、国が決めた法定相続分より優先されることになるのです。

ただし法定相続分とは別の問題として、実際には遺言書が残されていたとしても残された遺族は別途遺産分割協議を行って、相続人全員の合意が取れれば遺言の内容とは異なる分配内容にすることは可能です。

例えば、相続税の納税資金が足りなくなる相続人が出そうな場合に、その者に現預金を多めに分配するなど、現実に即した微調整も可能です。

さてここまでで、遺産の分配は基本的に被相続人が自由に決めることができる、ということがわかりました。しかし残される家族の中には、被相続人の遺産がないと路頭に迷ってしまう人がでてくるかもしれません。

ここまで説明したとおり、基本的に自身の残す遺産の分配は自由に決めることができるわけですが、完全に自由としてしまうと、例えば愛人に全財産を残すことも可能となり、残された家族が路頭に迷ってしまうかもしれません。

そこで民法では、一定の相続人に「遺留分(いりゅうぶん)」という最低取り分を保障しています。この「遺留分」について詳しくみていきましょう。

3.一定の相続人に認められている遺留分に注意

遺留分が侵害される遺言が残された場合には、所定の手続きをとることで遺留分を取り戻すことができるようにしています。 全相続人分の総体的遺留分としては次のようになります。

  • 直系尊属のみが遺留分権利者となる場合・・・相続財産の三分の一
  • 遺留分権利者が上記以外の場合・・・相続財産の二分の一

相続人が一人の場合は上記がそのまま自身の遺留分になりますが、遺留分権利者が複数いる場合には、上記の総体的遺留分に各自の法定相続分をかけて遺留分を算出します。

例えば子ども二人が相続人となる場合、各自の法定相続分は均等に二分の一となります。 この場合総体的遺留分二分の一に各自の相続分の二分の一を掛けることになりますから、各々遺産の四分の一を遺留分として確保できることになります。

4.遺留分は請求しなければ確保できない

最低取り分を保障する遺留分ですが、遺言書が遺留分を侵害する内容となっていた場合、そのままでは遺言の方が優先されます。

もし遺留分を確保したいのであれば、他の相続人等に対して「遺留分侵害額(減殺)請求」を行って遺留分を取り戻す必要があります。通常、内容証明郵便など証拠が残る手段で相手方に請求します。

相続が「争続」になってしまう火種と言われることもある遺留分ですが、遺留分侵害額(減殺)請求についてはコラム「相続争いの火種?~遺留分と遺留分侵害額(減殺)請求について」でご紹介しています。注意点を含めご参考ください。

これを踏まえると、遺言を残す側となる人はあらかじめ遺留分を侵害しないような分配割合にすることが望まれますが、理由があって遺留分を侵害する内容とする場合はその理由もしっかりと遺言書に記載するか、事前に相続人予定者と話し合って了解を得ておくなどの工夫をすると良いでしょう。

5.兄弟姉妹には遺留分が無い

ところで、遺留分権利者となれるのは法定相続人のうち「配偶者」「子」「直系尊属」のみです。

つまり被相続人の「兄弟姉妹」には遺留分がありません。

遺留分は遺族の生活保障の意味合いも持つものであるため、通常独立して生活しており被相続人からの援助なしで暮らしていると考えられる兄弟姉妹には遺留分は保障されていないのです。

6.相続欠格・相続廃除・相続放棄とは

また、たとえ法定相続分があり、あるいは遺言で財産を譲ると指定されている人であっても、実際には遺産を一切もらい受けられなくなる場合があります。

それは、「相続欠格」または「相続廃除」で権利を失うか、亡くなった後に相続人自身で「相続放棄」の手続きをした時です。

6-1.相続欠格の条件と効力

「相続欠格」とは、自分に有利になるよう被相続人等に危害を加えた人について、遺産をもらい受ける権利を自動的に失わせる制度です。

該当する場合(相続人の欠格事由/民法第891条1号~5号)として、次の4つが挙げられています。

  • 被相続人または先順位や同順位の相続人を、故意に死亡に至らしめた(※1)
  • 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴しなかった(※2)
  • 詐欺または強迫によって、被相続人にその意志に反する遺言をさせた
  • 遺言書の偽造、変造、破棄、隠匿をした

※1:未遂に終わり、刑に処せられた場合も含みます。
※2:殺害した者が自己の配偶者や直系血族であった場合は、欠格事由にあたらないと判断されることもあります。

6-2.相続廃除の条件と効力

2つ目に挙げた「相続廃除」とは、遺産を一切譲りたくないと考える相続人につき、亡くなった人の意志で遺産の取り分を失わせる制度です。廃除の条件が整うのは、被相続人を虐待したり、著しい非行等の「重大な侮辱」を加えたりした場合です。なお、相続人を廃除する方法は2通り用意されています。

  • 生前に相続人を廃除する場合
    →被相続人から家庭裁判所へ廃除を請求する(推定相続人の廃除/民法第892条)
  • 遺言による廃除
    →遺言書に廃除したい旨を書いておき、相続が始まったら、遺言執行者に「遅滞なく」家裁に請求してもらう(民法第893条)

付け加えると、生前のうちに手続きした相続廃除は、後から取り消すことも可能です。取り消したい時は、廃除した時と同じく、将来被相続人になる人から家裁へ請求しなければなりません(民法第894条)。

6-3.相続放棄の条件と効力

3つ目に挙げた「相続放棄」とは、相続人が自分でこれを選択した場合に、亡くなった人に属する一切の権利義務を受け継がないとする制度です。主に、相続するとかえって不利益になる財産ばかり残されている場合に使われます。

なお、生前のうちは相続放棄できません。被相続人が亡くなってから3か月以内に、放棄しようとする相続人自身で家庭裁判所に申し出る必要があります(民法第915条1項)。

7.法定相続の知識が税申告で必要になる理由

はじめに「遺言は法定相続分に優先する」と説明しましたが、遺言書を作成しておけば、法定相続に関する知識は不要と言っていいのでしょうか。

結論として、それは違います。何故なら、相続税の計算は、必ず法定相続人と各人の取り分を元に実施するからです。

まず、法定相続人の数が分からなければ、基礎控除額の計算が出来ません。加えて、相続税の税率も、遺言や遺産分割協議による実際の取り分に関わらず、仮に「課税価格を法定相続したもの」として考える必要があります。

【用語1】相続税の「基礎控除」とは
→相続の状況に関わらず、必ず適用される非課税枠です。
(基礎控除額の計算方法:3千万円+600万円×法定相続人の数)

【用語2】相続税の「課税価格」とは
相続税の課税対象である遺産と生前贈与分の合計から、債務やお葬式の費用等を差し引いた金額を指します。

 

※相続税の計算はこちらの記事が参考になります。


相続税申告の際は、申告者=相続人の手で課税額を計算しなくてはなりません。この時、法定相続の知識がないと、計算を間違えてしまいます。また、以下のように、民法と税法では法定相続の解釈が若干違う点にも要注意です。

  • 養子の人数制限
    …民法では、養子にも実子と同じように法定相続分があります。しかし税法では、非課税枠の拡大を目的とする無秩序な養子縁組を抑制するため、基礎控除に算入できる養子の数が制限されています。
  • 相続欠格・相続廃除・相続放棄の扱い
    …相続欠格または相続廃除の対象になった人は、基礎控除の計算で除外されます。一方、相続人自身の意思で行う「相続放棄」は、放棄しなかった場合と変わらず、基礎控除の計算で法定相続人としてカウントします。

8.まとめ

今回は遺言書と法定相続分はどちらが優先されるのか見てきました。

法定相続分は強制力のない指針という位置づけですから、遺言書がある場合は遺言の内容が優先されることになります。

ただし一定の相続人には「遺留分」という最低取り分がありますから、これを踏まえて遺言の内容に配慮する必要があります。

また、遺言書に沿って遺産を分け合うつもりでも、相続税の申告・対策では法定相続の知識が必要です。この時、養子の扱いなど、民法と税法で解釈の違う部分があることにも注意しましょう。

法定相続の理解が足りないと、相続トラブルや申告漏れの原因になります。不安に思う時は、弁護士や税理士に相談しましょう。

2019年に施行された自筆証書遺言方式の緩和については、こちらの記事で紹介しています。あわせてご参考ください。「「『自筆証書遺言方式』の緩和」-相続・事業承継トピックス(アングルVol.69)

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