「相続税を払わないと延滞税がかかるって本当?」
「相続税の延滞税の税率はどのくらい?」
相続税を支払わずに放置していると相続税にくわえて、延滞税がかかってしまいます。
また放置している期間が長くなれば、延滞税の金額も大きくなっていきます。
相続税の支払いに遅れてしまった方の中には、延滞税の税率や計算方法について知りたいという方も多いでしょう。
そこで本記事では延滞税の税率を中心に、計算方法や免除期間について解説します。
支払いが遅れてしまった、延滞税について知りたいという方はぜひご覧ください。
目次
1. 相続税の延滞税とは?税率には2つの段階がある!
相続税の延滞税は、相続税を納税せずに法定納期限を過ぎてしまった場合にかかります。
相続税の法定納期限は「被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内」と定められていますので、期限内に申告・納税をしなければなりません。
万が一、法定納期限を過ぎてしまった場合には延滞税がかかり、本来の相続税額にプラスして課税金を支払う必要があります。
その延滞税の税率には2つの段階が設けられており、納期限を起算日として2ヶ月以内・2ヶ月を超えた場合で税率が異なります。
<相続税の延滞税の税率>
納期限から2ヶ月以内 |
・年7.3% ・延滞税特例基準割合+1% いずれか低い方の税率 |
納期限から2ヶ月超え |
・年14.6% ・延滞税特例基準割合+7.3% いずれか低い方の税率 |
2ヶ月を超えた場合には税率が2倍〜3倍になってしまい、支払わなければいけない金額が急激に増加しますので注意しましょう。
1-1. 延滞税の税率は毎年変動する!令和5年度の税率は?
相続税の延滞税の税率は、年7.3%・年14.6%が適用される場合は少なく、延滞税特例基準割合をもとにした税率が適用される場合がほとんどです。
「延滞税特例基準割合」とは 平均貸付割合に、年1%の割合を加算した割合をいう(租税特別措置法第94条第1項)。 引用元:関東信越厚生局 |
つまり、毎年延滞税特例基準割合をもとに税率を算出しているため、延滞税の税率は毎年変動しています。
適用期間 | 納期限から2ヶ月以内 | 納期限から2ヶ月超え |
令和5年1月1日~令和5年12月31日 | 2.4% | 8.7% |
令和4年1月1日~令和4年12月31日 | 2.4% | 8.7% |
令和3年1月1日~令和3年12月31日 | 2.5% | 8.8% |
平成30年1月1日~令和2年12月31日 | 2.6% | 8.9% |
平成29年1月1日~平成29年12月31日 | 2.7% | 9.0% |
平成27年1月1日~平成28年12月31日 | 2.8% | 9.1% |
平成26年1月1日~平成26年12月31日 | 2.9% | 9.2% |
<令和5年度の相続税の延滞税の税率>
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1-2. 延滞税の税率の適用に重要な「納期限」とは
延滞税の税率には2つの段階がありますが、税率が変化するのは「納期限」から2ヶ月というタイミングです。
この納期限はケースによって異なりますので解説します。
ケース | 納期限 |
期限内に申告したが未納付の場合 | 法定納期限と同日 |
期限後申告や修正申告をした場合 | 期限後申告書や修正申告書を提出した日 |
税務署から更正・決定処分を受けた場合 | 更正通知書を発した日から1か月後 |
たとえば、期限内に申告したが未納付で法定納期限が9月1日の場合には、10月31日までは2ヶ月以内、11月1日以降は2ヶ月越えの税率が適用されます。
納期限の認識を誤ってしまうと、延滞税の計算にも支障が出てしまうので注意しましょう。
2. 相続税の延滞税はどんな場合に発生する?3つのケースを解説
相続税の延滞税は法定納期限までに納付をしない場合に発生しますが、なかでも大きく3つのケースに分けることができます。
<相続税の延滞税が発生する3つのケース>
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どんな場合に延滞税が発生するのか整理しましょう。
2-1. 申告済みだが法定納期限までに納税していない場合
1つ目のケースは、申告済みだが法定納期限までに納税をしていない場合です。
相続税は、原則として法定納期限までに現金一括で納税しなければなりません。
申告書の提出だけでは不十分のため注意しましょう。
このケースの場合には、法定納期限から完納までの日数に対して延滞税が発生し、納期限は法定納期限と同日です。
例
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2-2. 期限後申告・修正申告をした場合
期限後申告・修正申告をした場合にも、相続税の延滞税が発生します。
<期限後申告・修正申告とは>
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このケースの場合にも法定納期限から完納までの日数に対して延滞税が発生し、どちらの場合でも申告書を提出した日が納期限となります。
例
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納期限はあくまでも、2ヶ月以内であるか判断するための起算日でしかないので、法定納期限から納期限の間にも延滞税は発生します。
またこのケースの場合には、延滞税だけでなく、過少申告加算税・無申告加算税が課せられる場合がありますので注意しましょう。
2-3. 税務調査によって更正・決定処分を受けた場合
税務署の税務調査によって更正・決定処分がされた場合にも延滞税が発生します。
<税務調査・更正・決定とは>
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更正処分の場合には、税額が増える増額更正処分と,減る減額更正処分がありますが、延滞税の対象となるのは増額更正処分の場合です。
このケースの場合にも、法定納期限から完納日までの期間に延滞税が発生し、納期限は更正通知書を発した日から1ヶ月後となります。
例
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更正・決定処分を受けた場合には、「過少申告加算税」・「無申告加算税」・「重加算税」、いずれかの加算税も課せられてしまうため注意しましょう。
3. 相続税の延滞税の計算方法!計算式・事例をもとに解説
実際に事例を用いて、相続税の延滞税の計算方法を紹介します。
<相続税の延滞税の計算式> 「(相続税額 × 延滞税率 × 期間) ÷ 365」 ※相続税額とは未納付分の金額を指します。 |
納期限から2ヶ月を超えている場合には税率が変化するため、2ヶ月以内・超えをそれぞれ計算したうえで合算する必要があります。
<計算事例:申告書は提出ずみだが未納付の場合>
※令和5年度の延滞税の税率を使用 |
この事例の場合には2ヶ月越えの部分があるため、それぞれの期間に発生した延滞税を計算し合算する必要があります。
<2ヶ月以内の期間に発生した延滞税> (400万円 × 2.4% × 61) ÷ 365 = 16,045円 <2ヶ月越えの期間に発生した延滞税> (400万円 × 8.7% × 92) ÷ 365 = 87,715円 |
2つを足し合わせると今回の事例の場合には、103,760円が延滞税として追徴課税されることが分かりました。
4. 延滞税には免除期間がある!計算期間の特例を紹介
相続税の延滞税には計算期間の特例があり、延滞税の計算に含まれる期間が免除される場合があります。
具体的には期限内申告や期限後申告から1年以上経過した状態で修正申告をする場合に、申告期限の1年後から修正申告を提出した日までが計算期間から免除されます。
免除される期間がケースによって異なりますので解説します。
<延滞税の免除期間>
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それぞれの場合についてどこまでの期間が免除となるのかみていきましょう。
4-1. 免除期間①:自主的に修正申告・期限後申告をした場合
自主的に修正申告や期限後申告をした場合には、法定納期限から1年後の翌日から修正・期限後申告書の提出日までが、延滞税の計算期間から免除されます。
なお、法定期限内に申告をしていた場合にも上記の免除が適用されます。
<免除期間の例>
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4-2. 免除期間②:税務調査によって更正・決定処分を受けた場合
税務調査によって更正・決定処分を受けた場合には、法定納期限から1年後の翌日から更正通知書が発された日までが、延滞税の計算期間から免除されます。
なお、法定期限内に申告していた場合や決定通知書の場合でも同じように免除が適用されます。
<免除期間の例>
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4-3. 免除期間③:重加算税が課せられた場合
例外として重加算税が課せられた場合には、免除期間が適用されませんので注意しましょう。
重加算税とは財産をわざと隠して申告したり、故意に過少に申告したりなどして、悪質だと判断された場合に加算されるペナルティです。
重加算税は35%または40%と税率が高いうえ免除期間もありません。
そのため、相続税額がかなり高額になってしまいますので、必ず正しい申告を行いましょう。
4-4. 免除期間④:コロナや災害などやむをえない状況の場合
コロナや災害などやむを得ない事情がある場合には、法定納期限の延長が認められるため、実質延滞税が免除されます。
なお、やむを得ない事情は下記のように定義されています。
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税務署にやむを得ない事情がある場合には、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出して期限の延長を申請しましょう。
5. 相続税の延滞税についてよくある質問
相続税の延滞税についてよくある質問をまとめましたので紹介します。
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相続税の延滞税についての疑問を解消し、相続の際にお役立てください。
5-1. 遅れた時にかかるのは延滞税だけ?
相続税の納付が遅れたときにかかる税金は延滞税だけではありません。
場合によっては、「過少申告加算税」・「無申告加算税」・「重加算税」の対象となってしまうため注意しましょう。
具体的には、相続税の申告をそもそもしていない、過少に申告していた場合などに加算される可能性があります。
これらの加算税は延滞税とは別に加算されるため、対象となってしまった場合にはトータルの支払額がかなり増えてしまうので注意しましょう。
5-2. 相続税の延滞税に時効は存在する?
相続税の時効は法定納期限から原則5年、隠蔽や過少申告など悪質な場合には7年と定められています。
延滞税は相続税に対して課税される税金のため、延滞税の時効も同じく法定納期限から5年または7年です。
5年もしくは7年延滞税を支払わなければ、時効が成立し延滞税の支払い義務は消滅します。
しかし、税務署が5年・7年を何もせずに待つことはありませんので、時効の成立は実質不可能と言えるでしょう。
延滞税は遅れるほど大きくなる傾向にありますので、時効を待とうとはせず一刻も早い納税を心がけましょう。
5-3. 延滞税をずっと放置しているとどうなる?
延滞税をずっと放置している場合には、最終的に財産の差し押さえが行われます。
ただ、放置しているといきなり財産の差し押さえが行われるわけではなく、下記のような流れで財産の差し押さえまで進められます。
<延滞税の放置から財産の差し押さえまで>
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延滞税は日に日に膨らんでいくため、最悪の場合でも督促状が届いた時点で納税を行いましょう。
6. 相続税の延滞税は毎年税率が変動!期限内に支払おう!
ここまで相続税の延滞税について解説してきました。
相続税の延滞税は、法定納期限から完納日までの期間に対して課せられるペナルティです。
相続税の計算は難しいため、故意ではなく過少申告をしてしまう可能性がありますが、そういった場合でも延滞税が課せられます。
そのため、相続税の計算や申告に不安を覚える方は、相続税のプロである税理士に相談しましょう。
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