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ーコラムー
税務調査
税理士監修記事

税務調査の有効な対策方法!調査対象となりそうな会社の特徴とは?

公開日:2021.4.5 更新日:2021.04.05
目次

1.税務調査とは?
2.相続・事業承継の時期に税務調査されるデメリット
3.税務調査の種類
4.税務調査の流れ
5.税務調査のチェックポイント
6.税務調査の対象に選定されやすい会社とは
7.有効な税務調査対策とは
8.まとめ

1.税務調査とは?

税務調査とは、過去の申告内容が正しいか決算書や帳簿書類等を確認し、申告内容の誤りや無申告が発見された時に課税額の修正するための取り組みです。法人税や消費税の申告状況に関しては、職員がその机上でデータベース内に蓄積された資料を分析し、必要に応じて事務所や社長の自宅の訪問が行われます。

税務調査の通知はある日突然やってきます。自社の経理・会計の処理を不安に思うことは、どの企業でも1度はあるのではないでしょうか。とはいえ、過度に恐れる必要はありません。一方で、経営者の高齢化が見られる企業が税務調査の対象になるのは問題です。

事業承継・M&Aで存続を目指す企業とその代表者は、他記事で紹介する「相続税の税務調査とは?」と合わせ、法人税等に対する調査の内容や対策をチェックしておきましょう。

なお、国税庁で公表する法人税等の調査実績(令和元事務年度 法人税等の調査実績の概要)によると、訪問による調査は令和元年事務年度中に7万6千件実施され、これは同年度の法人税申告件数(294万9千件/引用元)の2.5%程度です。

国税庁等の職員が訪問するケースは近年減少傾向にありますが、申告書だけでは把握できない事情を直接確認するため調査官がやってくることは、いつでも・どの会社でもあり得ます。

2.相続・事業承継の時期に税務調査されるデメリット

会社経営者の相続、あるいは事業承継のタイミングで税務調査されるのは、どんな問題があるのでしょうか。

万一申告内容が否認されると、追徴課税(詳細は後章で解説)だけでも手痛いところですが、さらに「次期以降の課税に対するペナルティ」や「対外的な信用の低下」まで招来します。

これらの問題につき、事業の後継者は、先代からの情報引継ぎやスキル集積が不十分な状態で対応しなければなりません。後継者が上手く対応できなければ、会社の株式を相続した人全体に悪影響が波及します。

税務調査され、その結果として法人税等の申告を修正しなければならなくなった場合の影響の内容としては、具体的に下記5点が挙げられます。

デメリット1:税務上の手間が増える

第1の影響は、修正申告や業務改善にかかる手間の発生です。
修正申告にあたっては、経理にかかる資料を改めて整理・確認し、さらに申告書を正確に作り直す作業があります。また、申告漏れの再発防止策として、内部統制や会計システムの見直し・人材探し等も欠かせません。

事業承継のタイミングで税務調査を受けた場合、突発的に上記の作業が発生し、そのまま後継者に引き継ぐことにならないか、懸念が生じます。

デメリット2:青色申告承認が取り消される

第2の影響は、青色申告承認が取り消され、赤字欠損金の繰越控除等の優遇が無くなってしまうことです。左記取消しがあり得るものとして、以下のようなケースが挙げられます。

【青色申告の承認が取り消されるケース】

①帳簿書類の備付けや提示など、税務署等からの指示に従わない
②所得金額や欠損金額につき、税務調査で不正が指摘された
③調査の通知まで自主的に修正申告しなかった
④2期以上連続で無申告だった

上記③のように、税務調査の対象になっただけでも青色申告承認の取消しが行われる可能性があります。国税庁の事務運用指針では、今後の適正な記帳・申告が期待できる場合等は個別に検討し承認取消しはしないとしていますが、油断は出来ません。

デメリット3:資金調達が困難になる

第3の影響は、資金調達の難易度が上がる点です。
例えば銀行から融資を得ようとすると、納税にかかる証明書類を提示しなくてはなりません。この際、税務調査において申告漏れ等が指摘されていると伝われば、審査において著しく不利になります。

事業承継では、後継者の代で事業転換や新分野への進出を計画しているケースが多いのではないでしょうか。資金調達が困難になると、これらの計画は当然延期せざるを得なくなるばかりか、現時点で行う事業すら継続が危うくなります。

デメリット4:取引先との信頼関係が失われる

信用リスクは金融機関等だけでなく、取引先に対しても発生します。
近年、中小規模の企業であっても、大口取引の際は必ず相手企業を調査する傾向があります。調査機関への依頼、あるいは決算申告書の提示などを通じて「税務調査され追徴課税が発生している」と分かれば、取引に応じてもらえません。

デメリット5:自社株の価値が低下する

以上4点の影響に経営者が上手く対応できなければ、当然企業価値は低下します。親族等の株主は、元々の株価に対応する多額の相続税等を負担するだけに留まり、保有する株式から何の価値も得られません。

そこで、経営者以外の株主が事業の方針に口を出してくる、さらには「会社に株式を買い取ってほしい」と迫られる等のトラブルの可能性が浮上します。

3.税務調査の種類

ここまでは税務調査によって発生する中長期的な影響を紹介しましたが、一度も経験のない経営者が気になるのは「どんな調査が行われるのか」でしょう。

まず押さえておきたいのは、税務調査には「任意調査」と「強制調査」の2種類がある点です。結論として、ほとんどのケースが任意調査であり、強制調査が行われることは滅多にありません。

3-1.任意調査とは

任意調査とは、その名の通り「納税義務者の協力を得て進める調査手法」です。
注意したいのは、質問への回答や帳簿提出は拒めない点です。国税通則法により、担当官には「納税義務者に質問し資料提出を求める権利」(質問検査権/第74条の2)が与えられるからです。

万一にも、調査を拒んだり調査官の指示を無視したりすると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます(国税通則法第128条2号)。

3-2.強制調査とは

一方の強制調査とは、国税犯則取締法に基づいて令状が取られ、査察官と呼ばれる担当者が納税義務者の意向に関わらず調査する手法です。

なお、強制調査が行われるのは、組織的かつ悪質な不正が常態化している・悪質かつ大口の所得隠しが行われている(またはその可能性がある)といったケースに限られます。したがって、単に申告内容に不安があるというだけなら、強制調査の可能性は無視して良いでしょう。

4.税務調査の流れ

税務調査には「突然調査官がやってくる」「代表者が質問攻めにされる」といったイメージが付きものです。しかし実際には、ほとんどのケースで事前連絡があり、当日は同席する税理士に大半の対応を任せられます。

以降では、税務調査の流れを俯瞰した上で、調査対象に選定された後の各プロセスについて詳しく解説します。


【税務調査の流れ】

  1. 調査対象選定のための「事前調査」
  2. 準備調査
  3. 事前通知
  4. 実地調査
  5. (指摘事項有の場合)修正申告または更正処分
  6. (更正処分に不服がある場合)国税不服審判所に申立て

4-1.準備調査

調査対象に選定された後の「準備調査」では、担当官が直近3年~5年分の申告書を分析します。この時、各期の決算書を並べて推移の概観を行い、併せて勘定科目内訳明細書も精査しながら、整合性や合理性に関する要確認項目がピックアップされます。

また、確定申告書に添付された「法人事業概況説明書」の内容や、過去の税務調査時の記録も参照されます。基本的な会社情報(事業内容や従業員など)や、以前調査した時の状況(代表者の性格や会社が抱える課題など)から、調査の必要性をさらに見極めるためです。

加えて、一般消費者を顧客層とする業種(飲食業や宿泊業など)や、その他土地建物の状況を目視で確認しなければならないケースでは、以下の調査が行われることがあります。

<内偵調査>
店舗付近で客の入りを確認して売上予想を立て、必要に応じて担当官が客を装って入店し従業員数や客単価を調査するものです。内偵で立てた収支予測と申告内容との間に乖離がある場合、実地調査の必要性が高いと認識されます。

<外観調査>
社長の自宅や事務所を訪れ、過度に華美でないか・修繕痕はないか・どんな自販機を何台設置しているかといった情報を調べます。社長個人の支出を損金として計上している、雑収入関係を適切に計上していない等の不正の推察が目的です。

4-1.事前通知

準備調査で「実地調査の必要性」ありとされた場合、担当官から会社に日程調整のための通知・連絡が行われます。なお、税務代理を依頼している場合は、連絡先は会社ではなく税理士となります。

調査官から連絡がきた時は、調査を拒否せず、協力する姿勢を見せながら、目安として2週間以内で対応できる日時指定しなければなりません。

実務において、上記の実地調査に関する連絡は「事前通知」と呼ばれます。加えて、国税通則法では、事前通知において「担当官から下記事項を全て伝えなければならない」と定められています(第74条の2)。

【事前通知の内容】

・調査開始の日時
・調査する場所
・調査の目的
・調査対象となる税目・期間・帳簿書類その他の物件
・その他、調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

なお、事前通知が行われず、突然会社に担当官がやってくるケースも稀にあります。

通知の省略が認められるのは「調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合」(国税通則法第74条の10)だけです。言い換えれば、不正やこれの隠蔽について明確な悪意がある(と客観的に予想される)会社でなければ、通知省略はあり得ません。


【参考:書面添付制度について】

「書面添付制度」とは、申告書に計算の合理性等を示す書類を添付した税理士につき、事前通知前・更正処分前・更正処分に対する不服申立てにかかる調査の前の各タイミングで、税務署から「意見聴取」の機会を与える制度です。

本制度導入済の税理士に任せた申告分には、事前通知以前の段階で実地調査が省略され、調査担当官から会社への接触も更正処分等もないまま調査が終了する可能性が生じます。

国税庁等の調査事務を効率化すると共に、税理士の責任を明らかにし、信頼性を高めるための制度として実施されています。

なお、書面添付制度は相続税・法人税での両方で活用できます。特に、M&Aで多額のリターンを得る、あるいは親族後継者に事業を引き継ぐ予定のある会社では、相続税申告も制度導入済の税理士に依頼することをおすすめします。

※個人の相続税にかかる書面添付制度については、こちらの記事「税理士による書面添付制度とは?相続にはどんなメリットがある?」でさらに詳しく解説しています。

4-2.実地調査

実地調査は2日程度で終了し、準備調査で要確認事項となった項目(帳簿とその他資料に矛盾がないか等)について精査されます。一般的な当日の流れは下記の通りです。

  • 初日午前:会社代表者のヒアリング
    …事業内容や業務のプロセス等、内部統制の課題などについて、調査官から雑談形式で質問されます。この時、税務代理を依頼した税理士が同席できます。
  • 初日午後:資料確認
    …総勘定元帳や補助元帳をはじめとし、領収書等の原始記録(=金額や数量を記載した最初の記録)、その他契約書や納品書等の証憑書類の確認が行われます。以降の対応は、経理担当者や税理士にバトンタッチできます。
  • 2日目午前~午後:担当官の再訪問
    …初日に用意できなかった資料の提出、追加のヒアリング対応などを行います。税務署では、預金の動きを確認するための「銀行調査」や、提出された資料について取引先や運送会社などに裏を取るための「反面調査」が行われます。

【参考:実地調査で提出する資料】

実地調査では、下記のような資料等も提出・確認の対象です。調査官側で、取引等と実際の処理の整合性を厳正にチェックしつつ、さらに経営者が予測していない不正リスクについて検討するためです。

  • 会社組織・事業内容に関する資料
    …会社組織図、資本系統図、商品の説明資料(サンプル等)、役会等議事録、経理やその職務分掌に関する規程、その他会計システムの概要を示す資料等
  • 人件費に関する資料
    …給与台帳、源泉徴収簿、タイムカード、就業規則、社員名簿、シフト表、配席図等
  • その他の資料
    …業務日報、税務署への各種届出書の控え、海外送金や受金に使用するアプリケーション等

4-3.修正申告または更正処分

実地調査後の精査で申告漏れが見つかった場合、国税庁または税務署側で課税額を修正する「更正」の処分を受けます(国税通則法第24条)。なお、無申告だったケースの処分名は「決定」です(同法第25条)。

また、更正処分を受ける前に自主的に経理・会計を見直し、修正申告を行うことも可能です。

なお、国税通則法や国税局の事務運営方針では、不正に繰戻し還付を受けた場合・使途不明金がある場合等の不正行為について「重加算税」を課すとしています。

重加算税の税率は、過少申告について35%にも及び、5年以内に2度目の指摘であれば税率は10%アップします。最悪の場合は納税により倒産の危機に直面することから、少なくとも不正の指摘だけは避けるべきです。

5.税務調査のチェックポイント

税務調査で否認(申告内容が否定されて課税額が追加されること)される事例の多くは、それまで経営者が思いもよらなかったことが背景となっています。具体的には、経理担当者の潜在的なスキル不足から来るミス、処理の誤解などが挙げられます。

以降では、処理の不正や誤りを疑われやすいケースを上げ、さらに税務調査官が重点的にチェックする事項(=不正やミスの生じる部分)を項目別に紹介します。

5-1.調査官から疑われやすいケース

税務調査官の疑いを招きやすい申告書や帳簿の内容には、一定の傾向があります。とはいえ、いずれも資料により整合性と合理性を説明できれば、否認は回避できます。

【一例】税務調査官から疑われるケース
・売上の増減が激しい。
・原価率や経費の増減が激しい。
・売掛金・在庫等が減少している。
・買掛金・未払金・役員借入金等が増加している。
・外注比率が高い。
・消費税の還付金が多い。
・海外送金がある。

以降では、税務調査官がよくチェックするポイント(=処理の誤りの多い項目)を、「売上・仕入・棚卸資産」「人件費」「関連会社間の取引等」の3つに分類して紹介します。

5-2.売上・仕入・棚卸資産のチェックポイント

売上・仕入・棚卸資産については、税務調査において最も注目されているポイントです。

在庫の動き、運送記録、取引先への聞き込み等を通じて「売上除外」や「架空仕入れ」が見つかれば、当然不正を指摘されます。よくある指摘事項としては、下記のようなものが挙げられます。

売上・仕入の期ずれ

よくチェックされるのは、期末・期首付近の処理です。

3月決算の企業では、商品引渡日が3月であるにも関わらず4月に請求書を発行してもらう等して売上計上がずれている、同様に3月に取引先からの納品等があったにも関わらず4月に仕入を計上している、等の状況が指摘される可能性があります。

在庫の計上漏れ

実地棚卸では、発注したものの期末になってまだ届かない「未着品」(=預け在庫)がカウントから漏れてしまうケースがよく見られます。未着品は本来、注文した時点で計上しなければなりません。

付随費用の計上漏れ

棚卸資産の取得価格には、下記の「付随費用」も計上しなくてはなりません。購入代価の概ね3%以内の金額なら算入不要との規定があるものの、要注意です。

棚卸資産の評価方法

棚卸資産の評価方法には、原価法と低価法の計2種類です。評価方法は法人設立時に税務署に届出しているのが普通ですが、届出がない場合の法定評価方法は、数種類ある原価法のうち「最終仕入原価法」と呼ばれるものです。

節税策として利益圧縮に繋がる「低価法」を用いたいのであれば、評価方法を採用したい事業年度開始日の前日までに税務署で変更手続きしなければなりません。

評価損・廃棄損の妥当性

抱えている在庫について評価損・廃棄損として計上してよいのは、災害による損傷や陳腐化以外に、破損・型崩れ・たなざらし・品質変化等の理由で「通常の方法により販売することが出来なくなった場合」に限られます。単に「流行遅れで売れ行きが悪いから」といった理由で評価損等とするのは認められません。

5-3.人件費のチェックポイント

給与や役員報酬等、税務調査では「人件費」もよく確認されます。
実際には存在しない従業員に給与を支払う不正行為はもちろん、手続き上のミスなど、以下のような項目に対する指摘が代表的です。

役員給与・役員報酬の増減

役員に支払う給与や報酬は、定期同額給与・利益連動給与・事前確定届出給与のいずれかである必要があります。例えば、定款等で定期同額給与を採用しているなら、業績を理由に増額した部分は損金算入できません。

親族従業員等への給与

親族だからと言って、支払う給与・賞与等を多く与えることは出来ません。ポストや業務内容において妥当性のある金額でなければ、調査官に指摘されてしまいます。

源泉徴収のミス

給与計算担当者による源泉徴収のミスはよく見られます。

例えば、アルバイト従業員の勤務時間と共に給与が増えたのであれば、源泉徴収すべき額も当然増えます。処理欄についても、甲欄で処理するのが一般的ですが、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の提出がないのなら乙欄で処理しなければなりません。

5-4.関連会社間の取引等におけるチェックポイント

関連会社間での取引や出向に関しても、税務調査のチェックポイントとなります。
近年の税務調査では、関連会社を同時に調査対象とし、一例として下記のような点を精査する動きがあります。

著しく低い額での資産売買・利息設定

関連会社間で販売等を行うのはよくあることですが、基本的にはその資産に見合う対価でなければなりません。それにも関わらず著しく低い対価を設定した場合は、原則「寄附金」として扱われ、譲受会社で損金不算入となります。

資金の借入や貸付に関しても、合理的な理由(倒産防止等)がないまま無利息とすると、同じく寄附金扱いとなります。

出向者を役員として受け入れた際の給与

関連会社の出向者を役員として受け入れる場合、給与負担金について定期同額給与・利益連動給与・事前確定届出給与のいずれかである必要があります。また、金額は出向契約であらかじめ定められ、かつ出向先の株主総会等で決議されたものでなければなりません。

さらに、給与負担金が役員に対し出向元から満額支給されていない場合、支給額との差額が出向元で寄附金扱いとなります。

6.税務調査の対象に選定されやすい会社とは

経営者として最も気がかりなのは「自社が税務調査の対象になる可能性」です。

実のところ、調査が適正に行われるようにとの観点から、対象の選定基準はほとんど公にされていません。基本的には、規模の大きい会社、不正歴のある会社、そして「同族企業あるいはワンマン経営の会社」が調査されやすい傾向にあるようです。支配権が1人ないし1つの家族に集中している会社はそれほど珍しくありませんが、業務全般において経営者の恣意で行われやすいと見られているからです。

また、下記のように、業種・業績の特徴から選定対象とされる場合もあります。

【調査対象に選定されやすい会社】
①不正の多い業種
②重点指定された業種
③短期間で急成長した会社
④類似業種と比較して業績が低い会社

6-1.不正の多い業種

税務調査の対象となりやすいのは、第1に「不正を働く傾向の強い業種」です。先で紹介した令和元事務年度の調査実績では、下記10業種が特に不正発見割合が大きいと公表されています。こうした業種で不正が多くなる背景には、基本的に現金商売である、あるいは取引1件あたりの金額が大きい等の事情が考えられます。

【不正発見割合が多い業種目】
1.バー・クラブ(63.5%)
2.その他の飲食(42.9%)
3.外国料理(42.3%)
4.パチンコ(31.5%)
5.大衆酒場、小料理(30.8%)
6.自動車修理(30.7%)
7.土木工事(30.4%)
8.一般土木建築工事(29.1%)
9.貨物自動車運送(28.4%)
10.美容(28.3%)

また「不正1件あたりの金額が多い業種」も調査強化対象です。再び同事務年度の公表データを見ると、下記業種が挙げられています。

【1件あたりの不正所得金額の大きな業種目】
・その他の飲食料品小売
・電子機器製造
・建売、土地売買
・鉄鋼製造
・不動産代理仲介
・新聞、出版
・再生資源卸売
・くぎ、ボルト、ナット、綿材製品製造
・その他の不動産
・その他のサービス

6-2.重点指定を受けた業種

第2に、各地の税務署では、地域の事情等に応じて「重点的に調査すべき業種」が毎年指定されていると考えられます。

指定方法については「繁華街では、酒類を扱う飲食店やパチンコ店に重きを置く」「前年インバウンド需要が増えた地域では、土産物を扱う業種目に重きを置く」とのようなものが予測できます。

6-3.短期間で急成長した会社

業績の面に着目すると、短期間で急成長した会社も調査対象に選定されやすいと考えられます。内部統制の見直しや経理業務のスキル集積等が不十分であり、経理ミスが発生する恐れがあると見られるからです。

6-4.業績が類似企業と比べて低い会社

同じく業績面に着目すると、業績が同地域の類似企業と比べて低い会社は、調査対象を選定する段階で注意を引きます。そこで申告書が精査され、例えば「変動の激しい勘定項目がある」「売上に比べて利益が著しく低い」等の正常には見えない項目を発見し、実地調査へと進むのです。

同様の着眼点から、同様に「赤字法人は調査対象にならない」とも決して言い切れません。

7.有効な税務調査対策とは

留意したいのは、税務調査を確実に避ける方法はない点です。いつ調査されても良いように、日々の経理業務や資料保管で注意を欠かさず、第三者にしっかり説明できるよう準備しておかなくてはなりません。気負わずとも、経理・会計で必要とする部分は全面的に税理士に支援してもらえます。

設立からまだあまり年数が経っていない会社も、また業務内容や統制が長らく変わっていない企業も、以下のポイントを押さえて税務調査対策をしておきましょう。

7-1.法人事業概況説明書の活用

税務調査官から疑われやすい事情を抱える会社については、確定申告書に添付する「法人事業概況説明書」の活用が考えられます。

異常数値が出た背景事情につき、本書式にある「事業内容の特異性」や「当期の営業成績の概要」にできるだけ記入しておくことで、担当官の理解をある程度まで得られるのです。

7-2.経理プロセスの見直し&徹底

導入中の会計システム、担当者の習熟度、社内間や関連会社間の情報伝達スピードは、モニタリングして適宜見直しをすべきです。また、社内の特定の人物に業務を任せきりにする「属人化」もなるべく避けなくてはなりません。

なお、同族会社やワンマン経営の企業では、長らく業務改善が行われていないケースがよく見られます。この場合、相応の時間と手間がかかることを想定し、後継者にタスクを残しすぎないよう、いっそう早く業務改革に着手すべきでしょう。

7-3.法改正のチェック

また、法人税関連法の改正に対しても機敏に反応する必要があります。

近年の法改正では「収益認識に関する会計基準」が導入され、令和3年4月以降開始の事業年度から強制適用される運びとなりました。他には、連結納税制度における変更点として、親会社と子会社が各々申告・納税を行うものとする「グループ通算制度」が令和4年4月以降開始の事業年度から適用されます。

以上のような申告・納税に直接影響する法改正の他、日々の処理に関わる情報として、人件費に影響する保険料額の変更等もチェックしておかなくてはなりません。

7-4.税理士への業務依頼

最も望ましいのは、企業対応に長けた税理士法人の支援を得ることです。

期中の段階でまず得られるメリットは、現状の経理・会計・税務の課題を考える手間が省ける点です。今後の税務調査では、対応の大部分を税理士に任せることで、代表者の不用意な発言をきっかけに「恣意的に申告内容を操作している」と認識される失敗を防げます。

【税理士のサポートを得るメリット】

  • 経理プロセスの構築・運用の手間がなくなる
  • 業務属人化による不正の可能性を排除できる
  • 自社に関連する法改正に素早く対応できる
  • 資金調達・事業承継・M&A・組織再編の支援も得られる

なお、前述の「書面添付制度」は、税理士法人の適正申告に対する自信を示すものです。依頼先の選定にあたっては、本制度の導入有無が基準の1つとなるでしょう。

8.まとめ

税務調査される会社には一定の傾向があるものの、これに該当しなければ確実に調査対象から外されるとは言えません。あくまでも決算書や勘定科目をベースとし、要確認項目の抜き出しつつ実地調査の対象が選定されています。

経営者の高齢化が進む会社で税務調査が始まるケースでは注意が必要です。万一申告漏れが見つかれば、課税・信用の両面でリスクが発生し、これらの対応に不慣れな後継者が追われ、やがて経営難や「自社株の負の遺産化」を招来することになりかねません。

とはいえ、資料保管と日々の業務をしっかりと意識していれば、過度に税務調査を恐れる必要はありません。日々の適切な業務と準備、これが税務調査の最も効果的な対策でしょう。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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