相続手続きにおいては、相続税の計算や申告だけに限らずさまざまな手続きを行う必要があります。
また手続きの中には期限が設けられているものがあり、期限内に終えることができない場合には不利益を被ってしまう場合があります。
そのため相続手続きにおいては、手続きの内容だけでなく期限までも把握しておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、相続手続きの期限を経過期間ごとにまとめて解説します。
どんな手続きがあるか知りたい、手続きごとの期限を知りたいという方はぜひご覧ください。
目次
1. 相続手続き全体の流れを整理しよう
相続手続き全体の流れを期間ごとにまとめ、表にしましたのでご覧ください。
相続手続きにおいては、まず最初に保険や年金などの公的な手続きを完了させることが求められます。
その後、財産の把握などを進めていき相続税の申告を進め、申告完了後に保険金の請求などを行うことが一般的な流れです。
実は手続き内容によっては、期限を過ぎてしまってもそこまで問題ないものもあります。
しかし、相続放棄や相続税の申告など期限を過ぎてしまうとペナルティが課せられたり、取り返しがつかなかったりといった手続きもあるため注意しましょう。
以下ではそれぞれの手続きについて、詳しく解説していきます。
2. 相続手続きにおいて死後7〜14日を期限として行うべきこと
まず最初に、被相続人の死後7〜14日までに行う必要がある、緊急度の高い手続きを解説していきます。
<7〜14日以内に行うべき手続き>
被相続人の死後すぐのタイミングではありますが、行わなければいけない手続きがいくつかあります。
それぞれの手続き内容を把握して、1つずつ完了できるように備えましょう。
2-1. 死亡届・火葬許可申請の提出【7日以内】
身内が亡くなってしまった場合には、まず死亡届を提出する必要があります。
配偶者や同居家族が提出することが一般的ですが、提出自体は特段誰が行っても問題はありません。
病気で亡くなった場合には、治療を担当していた医師やかかりつけの先生に死亡診断書を交付してもらいましょう。
また、交通事故など病気以外の場合には、警察を通して医師に死体検案書を交付してもらいます。
どちらかの書類+提出人の印鑑を持参して、故人の本籍地や死亡地または、届出人の本籍地を管轄する役場で申請しましょう。
提出先 |
・被相続人の本籍地や死亡地を管轄する役場 ・届出人の本籍地を管轄する役場 |
必要書類 |
・死亡診断書または死体検案書 ・届出人の印鑑 |
故人の火葬・納骨の際には火葬許可申請が必要になるため、死亡届の提出と同じタイミングで申請することがおすすめです。
なお死亡診断書や死体検案書は、保険金の請求に必要となる場合があるためコピーを保管しておきましょう。
また、プロである葬儀屋に相談することで手続きを代行してもらえる場合もあります。
2-2. 年金受給停止に関する手続き【10〜14日以内】
亡くなった方が年金を受給していた場合には、年金の受給停止手続きが必要になります。
万が一手続きが遅れてしまい、過剰に年金を受け取ってしまった場合には、後から返却する必要がありますので注意しましょう。
なお、受給していた年金が厚生年金であった場合には10日以内、国民年金の場合には14日が期限に設定されています。
提出先 |
・厚生年金:社会保険事務所 ・国民年金:住民地の市区町村役場 |
必要書類 |
・死亡診断書のコピーまたは戸籍抄本 ・年金受給者の死亡届 ・年金証書 |
未支給の年金が存在している場合には、受給停止手続きとともに申請するとスムーズに進められるためおすすめです。
2-3. 世帯主変更届の提出【14日以内】
故人が世帯主であった場合には、住民票関連の手続きが必要になりますので世帯主の変更届を提出しましょう。
なお、世帯主の変更届が必要になるのは世帯員が故人を除き2名以上いる場合です。
(1名の場合には次の世帯主が明白なため提出の必要なし)
提出先 | 故人の住所地を管轄する役場 |
必要書類 | ・住民異動届 ・本人確認書類 ・届出人の印鑑 |
基本的には同一の世帯員が行いますが、事情によっては代理人による提出も可能です。
その場合には、委任状が必要になりますので注意しましょう。
2-4. 健康保険に関する手続き【14日以内】
故人が健康保険に加入していた場合には、保険証の返却と資格喪失手続きが必要です。
加入している健康保険は人によって異なり、保険によって手続きの方法が異なりますので確認していきましょう。
<国民健康保険>
対象者 | 学生・自営業者・フリーランス |
提出先 | 亡くなった方の住所地を管轄する役場の国民健康保険窓口 |
必要書類 | ・国民健康保険異動届 ・国民健康保険証の原本 ・戸籍謄本 ・世帯主の印鑑 ・本人確認書類 ・高齢受給者証 ・委任状 |
提出人 | ・配偶者や親族 ・同居人 ・代理人 |
<後期高齢者医療保険>
対象者 | 75歳以上 |
提出先 | 亡くなった方の住所地を管轄する役場の国民健康保険窓口 |
必要書類 | ・後期高齢者医療被保険者資格喪失届 ・被保険者証 ・戸籍謄本 ・世帯主の印鑑 ・本人確認書類 ・委任状 |
提出人 | ・世帯員 ・代理人 |
<その他(会社や協会けんぽなど)>
提出期限 | 死亡日から5日以内 |
対象者 | 会社員・公務員 |
提出先 | 勤務先・協会けんぽ・健康保険組合など |
必要書類 | ・被保険者資格喪失届 ・健康保険被保険者証 ・死亡退職届 ・会社から求められる書類 |
会社員として勤務先の保険や協会けんぽなどの保険に加入している場合のみ、死亡日から5日以内が期限となりますので注意しましょう。
なお会社員の場合には、亡くなったことを会社に知らせることで、担当の方が手続きを行なってくれる場合がほとんどです。
扶養家族として故人の保険に加入していた場合には、併せて資格喪失となるため注意しましょう。
2-5. 介護保険資格の喪失届の提出【14日以内】
故人が要介護認定を受けていた場合には、介護保険資格喪失届の提出・保険証の返却が必要になります。
提出先 | 亡くなった方の住所地を管轄する役場の福祉課窓口 |
必要書類 | ・介護保険資格喪失届 ・介護費保険の保険証 |
なお、介護保険の対象となるのは要介護者であることを前提として、65歳以上の高齢者・40歳〜64歳までの医療保険加入者で特定疾患の患者です。
未納分や過払い金がある場合には、申請のタイミングで精算されます。
2-6. そのほか各種契約の名義変更【14日以内】
公共料金やクレジットカードをはじめとして、故人が契約していたものがある場合には、すべて名義変更や解約が必要になります。
<主に名義変更や解約・返却が必要な契約>
それぞれ提出先や必要書類をまとめましたので、手続きの際にお役立てください。
<公共料金>
提出先 | 電力会社・ガス会社・水道局など |
必要書類 | 各契約先によって異なる |
<免許証>
提出先 | 警察署(どこでも可能) |
必要書類 | ・免許証 ・死亡診断書 ・死亡の記載のある戸籍謄本 ・届出人の本人確認書類 ・印鑑 ・警察署から求められるもの |
<パスポート>
提出先 | パスポートセンター・旅券課窓口 |
必要書類 | ・パスポート ・死亡診断書 ・死亡の記載のある戸籍謄本 ・そのほか求められたもの |
<クレジットカード>
提出先 | 各契約会社 |
必要書類 | 各契約会社の求めるもの |
<携帯電話・インターネット>
提出先 | 各契約会社 |
必要書類 | 各契約会社の求めるもの |
契約している会社によっても求められる書類が異なりますので、その都度何が必要か確認することが必要です。
14日以内に行うことは意外にも多いため、抜け漏れがないようにしましょう。
3. 【相続手続きの流れ】3〜4ヶ月を期限として行うこと
続いて、3~4ヶ月目までに行うべきことをまとめましたので解説します。
<相続開始後3〜4ヶ月目までに行うべきこと>
3〜4ヶ月目からは相続税の申告に関する手続きを開始していきます。
それぞれどのようなことを行うのか整理しましょう。
3-1. 遺言書の確認・検認【3ヶ月以内】
相続税申告の手続きは遺言書の確認・検認からはじめましょう。
なぜなら遺言書は法的な効力を持つため、遺産分割協議よりも優先されるからです。
遺産分割協議を行った後に遺言書が見つかったという場合には、協議に費やした時間や労力がすべて無駄になってしまいます。
厳密に3ヶ月以内に行わなければいけないということではありませんが、申告手続きを始める際には真っ先に取り掛かるべき手続きでしょう。
なお検認とは、遺言書の状態や日付・署名など検認日における遺言書を明確にして、偽造や変造を防止するための手続です。
検認は民法の1005条によって定められている必要な手続きで、検認せずに遺言書を開封・執行した場合には、5万円以下の過料が課せられます。
遺言書を探すとともに、見つけた場合には検認を行うことも忘れないようにしましょう。
3-2. 法定相続人の調査・確定【3ヶ月以内】
遺言書の有無が確認できたら、法定相続人を調査し確定しましょう。
法定相続人とは、民法の886条から890条において定められている、被相続人の遺産を相続する権利を持つ人です。
法定相続人が誰になるのかによって、遺産分割協議に誰が参加するのか、基礎控除額はどうなるのかが変化するため事前に調査・確定しましょう。
こちらの手続きも厳密には3ヶ月以内という規定はありませんが、相続税の計算や遺産分割協議において重要になるため早めに行うことがおすすめです。
なお、法定相続人には相続順位が設けられており、相続順位が高い人ほど法定相続人になる可能性が高くなります。
3-3. 相続財産の調査・財産目録の作成【3ヶ月以内】
法定相続人の調査と並行して、相続財産の調査を行いましょう。
調査を進めるとともに財産目録も作成して、被相続人がどんな財産を保有していたのかすべての財産をリストアップしましょう。
なお、相続財産は大きく下記の4種類に分類可能です。
<相続財産の区分>
相続財産が後から見つかってしまうと、相続税の計算や遺産分割協議をやり直す必要がある可能性があり負担が増加します。
プラスの財産であれば相続税の増加などで済みますが、マイナスの財産(負債)であった場合には、相続人の生活に負担が発生してしまいます。
生前から話し合い、相続人が知らない財産がない状態を作っておくことがおすすめです。
なお、こちらの手続きも厳密に3ヶ月以内ということが定められているわけではありません。
しかし、この後に説明する相続放棄などを考えた際に、3ヶ月以内に済ませておくことが望ましい手続きとなっています。
3-4. 相続放棄・限定承認【3ヶ月以内】
相続放棄や限定承認選択する場合には、期限が3ヶ月以内と定められています。
相続人は被相続人が遺した財産を、必ずしも相続する必要はありません。
相続人には相続方法を選択する権利が保障されており、下記3つの方法から選択可能です。
<相続方法>
3ヶ月を過ぎてしまうと、自動的に単純承認したものとみなされすべての財産を相続することになります。
つまり3ヶ月以内に財産の整理を終えていなければ、適切な判断を下すことができません。
相続方法の選択期限を逃して、不利益を被らないように注意しましょう。
3-5. 被相続人の準確定申告【4ヶ月以内】
被相続人が亡くなった年に所得を得ていた場合には、4ヶ月以内に準確定申告(被相続人の確定申告)を行わなければなりません。
しかし準確定申告はすべての場合に必須の手続きではなく、下記いずれかのパターンに当てはまる場合にのみ必要です。
<準確定申告が必要な場合>
確定申告とは所得税の申告を行う手続きです。
所得税の課税対象は無くなった人も例外ではないため、被相続人に代わり所得税の申告を行わなければなりません。
提出先 | 被相続人の住所地を管轄する税務署 |
必要書類 | ・準確定申告書第1表、第2表、付表 ・源泉徴収票 ・被相続人の所得を証明するもの など |
提出は届出人ではなく、被相続人の住所地を管轄する税務署となるので注意しましょう。
4. 【相続手続きの流れ】10ヶ月を期限として行うこと
続いて、相続税の申告・納税の期限である10ヶ月以内に行うことを解説します。
<相続開始の翌日から10ヶ月以内に行うこと>
とくに相続税の申告・納税期限を過ぎてしまうと、ペナルティが課せられてしまうので注意しましょう。
それぞれの手続きで行うことを解説します。
4-1. 遺産分割協議・遺産分割協議書の作成【10ヶ月以内】
財産の分配を決めるために、遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割協議とは、遺言書がない場合に相続人同士で遺産の分配方法を決定する協議です。
相続税は相続人各人が相続した財産価額に応じて収める税金のため、遺産分割協議による決定が相続税の申告・納税に関わってきます。
決定した内容をまとめたものを遺産分割協議書と呼び、財産の名義変更をはじめとしてさまざまな手続きで必要となります。
協議といっても全員が顔を合わせて行う必要はなく、メールや電話・ビデオ通話などで行っても問題ありません。
各相続人が財産の分配内容に納得していることが一番重要です。
そのため故人が存命のうちから、誰がどの財産を相続するのかなどを話し合っておくといいでしょう。
なお、遺産分割の方法には下記4つの方法があります。
<相続財産の分割方法>
不動産など、そのままでは分割が難しい場合には換価分割を選択するなど、分割の方法についても遺産分割協議で決定しましょう。
4-2. 銀行口座・証券口座の名義変更【10ヶ月以内】
遺産分割協議書が完成すれば財産の名義変更が行えるため、実際に財産を引き継ぐ手続きを行いましょう。
まずは、銀行口座・証券口座の名義変更方法を解説します。
<銀行口座・証券口座の名義変更の流れ>
流れは手続きを行う会社によって異なりますが、必要書類はほとんど共通しています。
主に下記の書類が必要になりますので、事前に整理しておきましょう。
基本的に必要な書類 | ・相続人の本人確認書類 ・通帳(相続人・被相続人どちらも) ・キャッシュカード(相続人・被相続人どちらも) など |
遺言書がある場合 | ・相続手続依頼書 ・戸籍謄本や住民票など ・相続人全員の印鑑証明書 ・遺産分割協議書 など |
遺言書がない場合 | ・相続手続依頼書 ・遺言書 ・戸籍謄本や住民票など ・相続人の印鑑証明書 |
4-3. 不動産の名義変更【10ヶ月以内】
被相続人が所有していた不動産を相続する場合には、不動産の名義変更が必要になります。
この相続に伴う名義変更手続きを相続登記といいます。
不動産を売却・処分することを決めている場合でも、一度被相続人から相続人へと名義変更を行う必要がありますので注意しましょう。
また、相続登記には登録免許税がかかりますのでご注意ください。
登録免許税とは:登記手続きの際に納める税金(不動産固定資産評価額の0.4%)
提出先 | 不動産の住所地を管轄する法務局 |
必要なもの | ・登記申請書 ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の住民票除票または戸籍附票 ・相続人の戸籍謄本 ・印鑑証明書 ・遺産分割協議書または遺言書 など |
相続登記は現在、必ず行わなければいけない手続きではありません。
しかし、相続税法の改正により2024年の4月1日より義務化されます。
相続登記を行わなかった場合には、10万円以下の過料が科されるため注意しましょう。
4-4. その他財産の名義変更【10ヶ月以内】
銀行口座・証券口座・不動産以外にも、財産の内容によっては名義変更が必要な場合があります。
<名義変更が必要な財産>
それぞれ提出先と必要な書類をまとめましたのでご覧ください。
<自動車の名義変更>
提出先 | 運輸局または自動車検査登録事務所 |
必要なもの | ・移転登録申請書 ・自動車税申告書 ・自動車検査証 ・自動車の車庫証明 ・戸籍謄本 ・相続人の印鑑証明書 ・手数料納付書 ・遺産分割協議書または遺言書 など |
そのほか手続きの際に、求められる書類があれば必要に応じて用意しましょう。
なお、手数料として500円がかかります。
提出先 | ・125cc以下:市区町村役場 ・126cc以上:運輸局 |
必要なもの | 原動機付自転車(50㏄以下)の場合 ・廃車申告書 ・ナンバープレート ・標識交付証明書 ・印鑑 軽二輪自動車(126㏄~250㏄)の場合 ・被相続人の戸籍謄本 ・相続人の住民票 ・車検証 ・自動車税 ・取得税の申告書 ・車庫証明 小型二輪自動車(250㏄以上)の場合 ・被相続人の戸籍謄本 ・相続人の住民票 ・車検証 ・自動車税 ・取得税の申告書 ・車庫証明 |
バイクの場合には排気量によって、提出先・必要書類が異なりますので注意しましょう。
<損害保険の名義変更>
提出先 | 契約中の保険会社 |
必要なもの | ・名義変更申請書 ・保険証券 ・被相続人の戸籍謄本 ・相続人の戸籍謄本 ・相続人の印鑑証明書 ・本人確認書類 |
保険会社ごとに必要とされる書類が異なる場合がありますので、どんな書類が必要になるか確認しましょう。
<ゴルフ会員権の名義変更>
提出先 | ゴルフ場 |
必要なもの | ゴルフ場により異なる |
ゴルフをはじめとした会員権は、場合によって名義変更ができない場合もありますので注意しましょう。
4-5. 相続税の申告・納税【10ヶ月以内】
相続開始の翌日から10ヶ月以内に、必ず相続税の申告・納税を行いましょう。
なぜなら、申告・納税漏れはペナルティの対象となり追加で課税されてしまう可能性があるためです。
相続税の申告・納税のためにも、まずは相続税を計算しましょう。
<相続税の計算方法>
相続税の計算は複雑なため、不安な場合や財産が多い場合には税理士に相談しましょう。
続いて各人の相続税が計算できたら、申告書を入手して記入していきます。
<相続税申告書の入手先>
相続税の申告書は1〜15表までで構成されていますが、すべてを記入する必要はありません。
相続内容や利用する特例によって必要な箇所のみ記入しましょう。
申告書の記入が完了したら、被相続人が亡くなった場所の住所地を管轄する税務署に提出します。
<相続税の申告方法>
相続税の申告方法は全部で3つありますので、自分に合った方法を選択しましょう。
なお、税務署に直接提出する場合にはそのまま納税もできますので、同時に済ませてしまうことがおすすめです。
そのほか、相続税の納税方法は下記から選択できます。
<相続税の納税方法>
こちらも自分が納付しやすい方法を選択しましょう。
ただ、方法によっては納付上限額なども設定されていますので注意が必要です。
5. 相続税申告・納税後1〜5年を期限として行う手続き
最後に相続手続き後、1〜5年以内に行う手続きを解説します。
<申告・納税後に行うこと>
相続税の申告・納税が完了しても終わりではありませんので、どんな手続きを行う必要があるのか知っておきましょう。
5-1. 遺留分侵害額請求【1年以内】
法定相続人には遺留分というものが定められており、遺留分が侵害されている場合には遺留分侵害額請求を行うことが可能です。
遺留分とは:遺言によっても侵害されない財産の取得割合
ただし、被相続人の兄弟には遺留分がありませんので注意しましょう。
この遺留分侵害額請求は、遺言や生前贈与によって多くの財産を受け取った相続人に対して行うことが可能です。
<遺留分侵害額請求が認められる期限>
この期限を過ぎてしまうと、請求できなくなりますので注意しましょう。
5-2. 健康保険の埋葬料・葬祭費の請求【2年以内】
健康保険では埋葬料・葬祭費が支給される場合がありますが、この請求は被相続人が亡くなった日から2年以内と定められていますので注意しましょう。
また勝手に支給されるのものではなく、自分で請求しなければいけないため注意が必要です。
提出先 | ・市区町村の国民健康保険窓口 ・社会保険事務所 |
必要書類 | ・葬祭費支給申請書 ・国民健康保険証 ・費用の領収書 ・受け取り先の通帳 ・相続人の印鑑 |
埋葬料・葬祭費の請求には、かかった費用の証明として領収書が必要になるので必ず保管しておきましょう。
5-3. 死亡保険金の請求【3年以内】
被相続人が生命保険に加入していた場合には、死亡保険金を請求できます。
この請求は、被相続人の死亡日から3年以内と期限が設定されているため注意しましょう。
また、生命保険の受取人に設定されている人が請求する必要がありますのでご注意ください。
提出先 | 契約している保険会社 |
必要書類 | ・保険金受取人と被相続人の戸籍謄本 ・死亡診断書 ・死亡保険金請求書 ・保険証券 ・最後の保険料領収書 ・受取人の印鑑証明書 |
保険会社によって、必要書類が異なる場合がありますので契約中の会社に確認しましょう。
5-4. 遺族年金の請求【5年以内】
遺族年金とは年金の被保険者であった方によって、生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
たとえば、配偶者や子供(未成年者)などは遺族年金を請求できる可能性があります。
請求期限は5年以内となっていますが、生計の維持のためにも早めに請求することがおすすめです。
提出先 | 住所地を管轄する役場の国民年金窓口 |
必要書類 | ・被相続人の年金手帳 ・戸籍謄本 ・死亡診断書のコピー ・源泉徴収票 ・国民年金遺族基礎年金裁定請求書 ・受取先金融機関の通帳 ・受取人の印鑑 |
申告・納税後の手続きにも漏れがないように、必要な手続きを整理しましょう。
6. 相続手続きの期限についてよくある質問
相続手続きの期限に関連してよくある質問を4つピックアップして紹介します。
- 手続き期限がないものは?
- 手続きしなかった場合のリスクは?
- 期限内に終わらず過ぎた場合のデメリットは?
- 期限内に手続きを終わらせるには?
それぞれの質問について疑問点を払拭しましょう。
6-1. 相続手続きの中で特に期限がないものはある?
相続手続きのなかで、下記の3つは特に期限が設けられていません。
- 遺産分割協議
- 預貯金の解約・名義変更
- 不動産の相続登記
これら3つの手続きは期限がないため、いつ行っても問題ありません。
しかし、遺産分割協議は相続税の計算や申告・納税に関わってくる手続きです。
また、預貯金の解約・名義変更は行わない限り、故人の口座から自由にお金を使うことができません。
そして不動産の相続登記は、行わないと不動産の運用などを自由に行うことができなくなってしまいます。
2024年4月1日からは相続登記が義務化されるため、相続開始から3年以内に手続きを行う必要も出てくるため注意しましょう。
これら3つは、現在実質的な期限は設けられていませんが、相続を進めていくうえで欠かせない手続きとなっています。
6-2. 相続手続きをしなかった場合にリスクはある?
相続手続きをしない場合に、考えられるリスクは大きく3つあります。
- 追徴課税
- 特例が適用できない
- 財産が承継できない
1つ目は追徴課税の対象になり、本来よりも相続税を多く払わなければいけなくなることです。
相続税には手続きの開始から10ヶ月以内に、申告・納税を終わらせることが法律で定められています。
これを破ってしまうとペナルティとして延滞税が、場合によっては無申告加算税・重加算税の対象になるので注意しましょう。
2つ目は相続税の特例が適用できなくなることです。
相続税には税額を軽減できる特例がいくつか設けられています。
特例の適用は相続税の申告を行うことが前提となるため、手続きを行わないと相続税が軽減できません。
3つ目として、財産の承継ができないことが挙げられます。
財産の承継には、相続人を決定する遺産分割協議・財産の名義変更が必要です。
これらは相続手続きのなかに含まれるため、手続きを行わないと財産の承継ができません。
このように、手続きを行わないことにはさまざまなリスクがありますので注意しましょう。
6-3. 相続手続きが期限内に終わらず過ぎてしまった場合のデメリットは?
相続手続きが期限内に終わらない場合のデメリットは、手続きしなかった場合のリスクと類似しています。
追徴課税や特例適用・財産の承継について懸念がありますが、手続きの進度によっては財産の承継は行える可能性があります。
ただ、相続手続きが期限内に終わらない原因のほとんどは、遺産分割協議が進まないことが多いです。
そのため、期限内に間に合わない場合には「一度法定相続分で申告し後から修正申告する」方法を取りましょう。
この際「申告後3年以内の分割見込書」も提出することで、修正申告のタイミングで特例も適用可能です。
間に合わなかった場合には、追徴課税され特例適用ができず、財産の承継もできなくなってしまいます。
しかし、正当に手続きを進めている場合であれば、リスクを回避する方法もありますので知っておきましょう。
6-4. 相続手続きを期限内に終わらせるにはどうすればいい?
相続手続きを期限内に終わらせるために、下記3つの点を意識して相続手続きを進めましょう。
- 遺言書がある場合にはすぐに検認手続きを行う
- 遺産分割協議を行う場合は必要項目を早めに洗い出す
- 早めに専門家に相談する
遺産分割協議を行う場合には、以下の情報をできる限り早めに整理することがおすすめです。
- 法定相続人
- 財産目録の作成
- 不動産など相続財産の評価額
これらが明確になっていれば遺産分割協議が進められるので、早めに整理しておきましょう。
ただ遺産分割協議で揉める可能性があるため、注意が必要です。
元々相続人同士の仲が悪い場合には、早めに専門家に相談しましょう。
第三者である専門家がいることで建設的な話し合いが実現でき、トラブルへの発展を防止できます。
7. 手続きごとの期限を把握して正確に申告しよう!
ここまで、相続税に関する手続きを期限とともに紹介しました。
相続税の手続きでは申告・納税が注目されがちですが、財産の名義変更や各種保険の請求なども必要となってきます。
期限を過ぎてしまうと請求できない保険金や支給金もありますので、漏れがないようにしましょう。
本記事を参考に手続きごとの期限について理解を深め、実際の相続手続きにお役立てください。
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