年金の相続

年金と相続税の関係|遺族年金・未支給年金・老齢年金は相続税の対象?

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士

「親が亡くなったとき、受け取っている年金はどうなるの?」「遺族年金は相続税の対象になるの?」と疑問をお持ちの方は多いでしょう。

年金と相続税の関係は複雑で、年金の種類によって相続税・所得税・非課税と扱いがまったく異なります。間違えると税務調査で指摘を受けるケースもあるため、正しく理解しておくことが重要です。

本記事では、相続専門税理士が「年金と相続税の関係」を、①遺族年金、②未支給年金、③老齢年金(受給権)の3つに分けてわかりやすく解説します。

1. 年金の種類と相続税の関係:早わかり一覧表

まず、年金の種類ごとに相続税がかかるかどうかを一覧で確認しましょう。

年金の種類 相続税の扱い 根拠
遺族年金(遺族基礎・厚生) 非課税(相続税も所得税もなし) 相続税法・所得税法の非課税規定
未支給年金(受け取れなかった年金) 所得税の対象(相続税ではない) 受給者固有の権利として所得税法上の雑所得
老齢年金の受給権(死亡時点で受け取っていた) 相続財産ではない 一身専属権のため相続されない
死亡退職金・弔慰金(年金形式での支給) みなし相続財産として相続税の対象 相続税法第3条
個人年金保険(死亡時の残余部分) みなし相続財産として相続税の対象 相続税法第3条

2. 遺族年金は相続税の対象になるか?

2-1. 遺族年金は「非課税」

遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)は、相続税も所得税もかかりません。

遺族年金は「相続によって取得した財産」ではなく、遺族が自らの権利として受け取る給付です。そのため、相続税の課税対象に含まれません。また、所得税法第9条により、遺族年金は非課税所得とされています。

ただし、遺族が65歳になると自身の老齢年金と調整されるケースがあります(老齢年金部分は課税)。

2-2. 注意:「遺族年金」と「個人年金」は別物

公的年金(国民年金・厚生年金)に基づく遺族年金は非課税ですが、民間の「個人年金保険」の死亡給付金は相続税の課税対象(みなし相続財産)になります。混同しないよう注意が必要です。

遺族年金の受給条件や受給額の詳細については、遺族年金はいつまでもらえる?受給条件・金額は?をご参照ください。

3. 未支給年金は相続税の対象になるか?

3-1. 未支給年金とは

亡くなった人が受け取るはずだったが、まだ支払われていなかった年金を「未支給年金」といいます。

年金は2か月に1回後払いで支給されます(例:2月と4月が合わせて3月に支払われる)。そのため、死亡した月によっては、受け取っていない年金が発生します。

3-2. 未支給年金は「所得税(雑所得)」の対象

未支給年金は、相続税ではなく所得税(雑所得)の対象です。

未支給年金を受け取る権利は、生計を同じにしていた遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹など)にあります。これは亡くなった人の権利が「相続」されるのではなく、遺族固有の権利として取得するものとされています(国民年金法第19条、厚生年金保険法第37条)。

受け取った遺族は、確定申告で「雑所得」として申告する必要があります(ただし他の収入と合算して一定額以下の場合は不要なケースもあります)。

3-3. 未支給年金の請求手続き

未支給年金の請求は、死亡後に年金事務所や市区町村役場に「未支給年金請求書」を提出します。請求できる遺族の範囲と優先順位が決まっており、亡くなってから5年以内に請求しないと時効になります。

4. 老齢年金の受給権は相続財産になるか?

4-1. 老齢年金の受給権は「相続されない」

老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権は、一身専属権であるため、被相続人が死亡すると消滅し、相続財産にはなりません。

つまり、亡くなった人が老齢年金をもらっていた場合でも、その「受給権」は遺族に引き継がれません。遺族は自身の年金を受け取るか、遺族年金を請求するかになります。

4-2. 死亡後に振り込まれた年金の扱い

亡くなった後に、故人の銀行口座に年金が振り込まれるケースがあります。この場合、死亡後に振り込まれた年金は「受け取る権利のない金銭」として返還が必要です(日本年金機構に返還手続き)。

誤って使用してしまうとトラブルの原因になりますので、相続手続きの際に確認しましょう。

5. 死亡退職金・個人年金は相続税の対象

5-1. 死亡退職金はみなし相続財産

被相続人の死亡によって受け取る死亡退職金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、500万円×法定相続人の数の非課税枠が適用されます(相続税法第12条)。

5-2. 個人年金保険の死亡給付はみなし相続財産

被相続人が契約者・被保険者であった個人年金保険の死亡給付金も、みなし相続財産として相続税の課税対象です。こちらも生命保険金と同様の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が適用されます。

相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)との関係については、相続税の基礎控除とは?計算式と適用方法を解説もあわせてご確認ください。

6. 相続税申告で年金関連を見落としやすいポイント

相続税申告の際に年金関連で見落とされがちなポイントを確認しましょう。

  • 未支給年金の確定申告漏れ:相続税の申告では計上しなくてよいが、受け取った遺族は所得税の確定申告が必要な場合がある
  • 個人年金保険の申告漏れ:公的年金ではない民間の個人年金保険は相続税の申告が必要
  • 死亡後振り込まれた年金の返還未処理:返還せずに使用した場合、相続財産と見なされる可能性がある
  • 企業年金・確定拠出年金の扱い:企業年金(DB・DC)の死亡一時金はみなし相続財産として相続税の対象

7. まとめ:年金と相続税の関係

年金と相続税の関係を整理します。

  • 遺族年金(公的)→ 相続税も所得税も非課税
  • 未支給年金 → 相続税の対象ではないが、所得税(雑所得)の対象
  • 老齢年金の受給権 → 一身専属権のため相続されない(相続財産ではない)
  • 死亡退職金・個人年金保険 → みなし相続財産として相続税の対象(非課税枠あり)

年金と相続税の関係は複雑で、申告漏れや誤りが起きやすい分野です。「うちの場合はどうなの?」と疑問がある場合は、相続専門の税理士にご相談ください。

よくある質問

Q. 遺族年金は相続税の申告に含める必要がありますか?

A. 遺族年金は相続税も所得税も非課税のため、相続税の申告に含める必要はありません。ただし、相続税の申告書を作成する際には「非課税財産」として記載が求められる場合があります。

Q. 未支給年金を受け取った場合、何か税金はかかりますか?

A. 未支給年金は相続税の対象にはなりませんが、受け取った遺族の「所得税(雑所得)」の対象になります。一定額を超える場合は確定申告が必要です。

Q. 亡くなった父の老齢年金を遺族が受け取ることはできますか?

A. 老齢年金の受給権は「一身専属権」のため相続されません。ただし、亡くなった月の前月分まで(または死亡した月分まで)が未払いの場合、その未支給年金は一定の範囲の遺族が請求できます(未支給年金として所得税の対象)。

監修

中村亨

日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士

2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

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