相続税の税務調査とは?来る確率・時期・選ばれやすい家庭と対応

監修
中村亨
日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士
相続税の税務調査は、提出された申告内容に誤りや漏れがないかを税務署が確認する手続きです。国税庁によると、令和6事務年度(令和6年7月〜令和7年6月)の相続税の実地調査は9,512件で、その82.3%で申告漏れ等が指摘され、1件あたりの追徴税額は平均867万円でした。
この記事では、税務調査が来る確率と時期、調査に選ばれやすい家庭の特徴、当日の流れと追徴税、調査の連絡が来たときの対応を、相続税申告に携わる税理士の立場から解説します。
相続税の税務調査で知っておきたい3つのこと
- 実地調査は令和6事務年度で9,512件。文書や電話での「簡易な接触」も含めると約3万1,000件です。
- 実地調査を受けた家庭の82.3%で申告漏れ等が見つかっています。「調査が来た=何らかの指摘がある」と考えて準備するのが現実的です。
- 税務署から調査の連絡が来る前に誤りに気づいて自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかります)。
すでに税務署から調査の連絡があった方は、税務調査対応コースをご覧ください。
相続税の税務調査とは
相続税の税務調査は、相続税の申告内容が正しいかどうかを税務署(規模の大きい事案では国税局)が確認するものです。申告をしていない場合に、申告が必要ではないかを確認するためにも行われます。目的は罰することではなく、正しい税額を確定させることにあります。
実地調査と「簡易な接触」の違い
| 種類 | 内容 | 令和6事務年度の件数 |
|---|---|---|
| 実地調査 | 調査官が自宅などを訪問し、通帳や書類を確認しながら聞き取りを行う | 9,512件 |
| 簡易な接触 | 文書の送付や電話、来署依頼により、申告内容の確認や修正申告の勧奨を行う | 21,969件 |
「お尋ね」の文書が届いた場合も簡易な接触にあたることがあります。無視せず、内容を確認して期限内に対応してください。
税務調査が来る確率【国税庁の最新統計】
国税庁が令和7年12月に公表した、令和6事務年度の相続税の調査状況は次のとおりです。
| 項目 | 令和6事務年度 | 前年比 |
|---|---|---|
| 実地調査件数 | 9,512件 | 111.2% |
| 申告漏れ等の非違件数(割合) | 7,826件(82.3%) | 割合は1.9ポイント低下 |
| 重加算税の賦課件数(割合) | 1,065件(13.6%) | 109.7% |
| 1件あたりの申告漏れ課税価格 | 3,093万円 | 96.4% |
| 1件あたりの追徴税額(加算税を含む) | 867万円 | 100.9% |
| 簡易な接触の件数 | 21,969件 | 117.0% |
| 無申告事案の実地調査(追徴税額) | 650件(142億円) | 追徴税額は平成21事務年度以降で最高 |
同じ時期に公表された令和6年分の相続税の申告(被相続人166,730人分)と単純に比べると、実地調査は約6%、簡易な接触を含めると約19%にあたります。ただし、調査の対象は主に過去数年分の申告なので、この割合はおおよその目安としてご覧ください。
税務調査に選ばれやすい家庭の特徴
税務署は、提出された申告書と、過去の所得税の申告や金融機関から得た情報などを照らし合わせて、調査の対象を選んでいます。次のような家庭は、調査の対象になりやすい傾向があります。
財産規模が大きい家庭
遺産総額が大きいほど、申告漏れがあった場合の追徴税額も大きくなるため、調査の優先度が高くなりやすいと考えられます。
預貯金や現金の動きが説明しにくい家庭
亡くなる前に多額の現金が引き出されている、家族名義の預金が多い(名義預金の疑い)、生前の収入に比べて相続財産が少ない、といったケースです。申告漏れとして指摘されやすい財産の代表が、現金・預貯金です。
不動産や非上場株式など評価が難しい財産が多い家庭
土地の形状による補正、貸家建付地、小規模宅地等の特例、自社株の評価などは、評価方法や特例の適用要件の判断を誤りやすい分野です。
申告していない、または海外に財産がある家庭
国税庁は、無申告事案と海外資産関連事案を重点的に調査しています。令和6事務年度は、海外資産関連事案の実地調査が1,359件(前年比143.5%)に増えました。
税務調査はいつ来る?時期と調査できる期間
税務署の事務年度は7月に始まるため、実地調査は秋から冬にかけて行われることが多いといわれます。実務上は、申告から1〜2年後に連絡が来るケースが中心です。
税務署が申告内容の誤りを正せる期間(更正の期間制限)は、原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。「時間が経ったから大丈夫」とは言えない点に注意してください。
税務調査の流れ
- 事前通知:税務署から、原則として税理士(税務代理人)または納税者に電話で連絡があり、調査の日時・場所・対象となる税目や期間が伝えられます。
- 準備:申告書の控え、通帳、相続人と被相続人の預金の取引履歴、遺産分割協議書などを確認します。税理士に依頼している場合は、事前に打ち合わせを行います。
- 実地調査(通常1〜2日):午前中は被相続人の経歴や生活状況の聞き取り、午後は通帳や印鑑、貸金庫などの確認が行われるのが一般的です。
- 調査結果の説明:後日、問題点がなければ「申告是認」、誤りがあれば修正申告の勧奨または更正が行われます。
- 修正申告・納付:修正申告をする場合は、提出日が納期限です。加算税と延滞税もあわせて納付します。
当日よく聞かれること
- 被相続人の経歴、職業、趣味、晩年の健康状態
- 生活費の管理は誰がしていたか、通帳や印鑑は誰が保管していたか
- 家族名義の預金や保険の原資、生前の贈与の有無
- 取引のある金融機関、貸金庫の有無
答えにくい質問には、分からないことを推測で答えず、確認してから回答する姿勢が大切です。事実と異なる説明をすると、かえって問題を大きくするおそれがあります。
申告漏れを指摘された場合の追徴税
申告漏れがあると、本来納めるべきだった相続税に加え、加算税と延滞税がかかります。主な加算税は次のとおりです。
| 加算税の種類 | どんなときに課されるか | 税率(原則) |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内に申告したが、税額が少なかった | 10%(当初の申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%) |
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 15%(50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%) |
| 重加算税 | 財産を隠したり、事実を仮装したりした | 35%(無申告の場合は40%) |
税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告した場合、過少申告加算税はかかりません。事前通知の後、調査による指摘を予知する前に修正申告した場合は、軽減された割合(5%、一部10%)が適用されます。無申告加算税の30%の区分は、令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものから適用されています。
税務調査に備えるための対策
申告前に財産を漏れなく調べる
税務調査で指摘されやすいのは、家族名義の預金や過去の贈与など、相続人が「相続財産ではない」と思い込んでいた財産です。申告の段階で、被相続人と家族の預金の取引履歴を確認し、名義預金や生前贈与の有無を整理しておくことが最大の対策になります。
贈与や資金移動の記録を残す
生前に贈与を行う場合は、贈与契約書を作成し、贈与を受けた人が自分で通帳と印鑑を管理するなど、贈与の実態を残しておきます。
書面添付制度を活用する
税理士が申告書の作成にあたって確認した内容を記載した書面を添付する「書面添付制度」を利用すると、税務署は実地調査の前に、まず税理士に意見を聴く機会を設けることになっています。疑問点がその段階で解消すれば、実地調査が行われないこともあります。
税務調査の連絡が来たら税理士に相談を
調査の連絡が来たら、調査日までに申告内容を点検し、説明が必要な点を整理しておくことが重要です。申告を担当した税理士がいれば、まずその税理士に相談してください。ご自身で申告した方や、申告を依頼した事務所以外の意見も聞きたい方は、日本クレアス税理士法人の税務調査対応コース・セカンドオピニオンでご相談を承っています。
よくある質問
Q. 相続税が0円でも税務調査は来ますか?
配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額が0円になった場合も、申告内容は調査の対象になり得ます。特例の要件を満たさないと判断されれば、税額が発生します。
Q. 調査の前に誤りに気づいたらどうすればよいですか?
税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません(延滞税はかかります)。気づいた時点で早めに税理士にご相談ください。
Q. 税務調査は断れますか?
税務調査には受忍義務があり、正当な理由なく拒むことはできません。日程の調整は可能なので、都合が悪い場合は事前通知の際に相談してください。
Q. 税務調査は何年前までさかのぼりますか?
更正の期間制限は原則として法定申告期限から5年、偽りその他不正の行為がある場合は7年です。また、預金の動きは相続開始前の数年分以上にさかのぼって確認されることがあります。
Q. 他の事務所で申告したのですが、調査の立会いだけ依頼できますか?
当社の税務調査対応コースでご相談を承っています。申告書一式を拝見したうえで、対応の方針と準備すべき資料をご案内します。
まとめ
相続税の実地調査は年間9,000件を超え、その8割以上で申告漏れ等が指摘されています。特に、現金・預貯金や家族名義の預金、評価の難しい不動産や自社株がある家庭は、申告の段階での確認が重要です。調査の連絡が来た場合は、調査日までに申告内容を点検し、専門家と準備を進めてください。
日本クレアス税理士法人では、相続税の申告から税務調査の対応まで、全国10拠点とオンラインで無料相談を承っています。お電話(0120-55-4145/平日・土曜 9:00〜18:30)または無料相談フォームからお問い合わせください。
出典:国税庁「令和6事務年度における相続税の調査等の状況」「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(いずれも令和7年12月公表)、国税庁タックスアンサー No.2024・No.2026。本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。

監修
中村亨
日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士
2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

