相続をした場合に相続税申告が必要となる場合があります。
実は、すべての相続において相続税の申告が必要なわけではありません。
では、どのような場合に相続税の申告が不要になるのでしょうか。
本記事では、相続税の申告がどのような場合に不要なのかについてお伝えします。
申告不要な場合について知りたいという方はぜひご覧ください。
目次
1. 遺産総額が基礎控除額内であれば申告が不要!
相続税は、遺産総額が基礎控除額内であれば申告が不要です。
相続税は相続をした遺産総額に対して課される税金ですが、どのような相続でも相続税を課すわけではなく、一定の額以上の遺産を持っている場合にのみ相続税を課すことになっています。
そのラインとなるのが基礎控除額です。
<相続税の基礎控除額> 多くの相続では基礎控除額のラインを超えることはありません。 しかし、人が住みやすい地域で土地を持っているような場合には、基礎控除額を超えることも多いので注意が必要です。 |
2. 相続税の申告が不要か判断する方法
相続税の申告が不要かどうかを判断するためには次のようなステップによって判断します。
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1つずつ順番に確認していきましょう。
2-1. 基礎控除額を計算する
まず、基礎控除額を計算します。
基礎控除額は、「3,000万円+(法定相続人の数✕600万円)」で計算されます。 |
たとえば相続人が3人であれば、「3,000万円+(法定相続人3人✕600万円=1,200万円)=4,800万円」となります。
遺産総額が基礎控除額の範囲内であれば、相続税が発生しないため申告が不要になります。
申告において大きな基準となるため、はじめに計算しましょう。
2-2. 相続財産をリストアップする
相続財産は、プラスの財産とマイナスの財産に区分されます。
<マイナスの財産の例> プラスの財産だけでなく、マイナスの財産についてもきちんとリストアップして合算するようにしましょう。 プラスの財産だけならば相続税の基礎控除額を超える場合でも、多額の借金があり差し引きすれば基礎控除額を超えない場合には、相続税申告は不要となります。 また、プラスの財産の中には、法律上の遺産ではないものの、相続税法上では遺産として取り扱われる「みなし相続財産」というものがあります。 代表的なものが、死亡保険金と死亡退職金です。 死亡保険金と死亡退職金は非課税枠が設けられており、その枠を超える場合にはみなし相続財産も遺産に合算しますので注意しましょう。 |
2-3. 非課税枠の適用・非課税財産を除いたうえで合算
前述の通り、死亡保険金・死亡退職金については非課税枠があり、また遺産の中には相続税との関係では遺産にカウントしない非課税財産というものがあるので、これらを除いて遺産を合算します。
死亡保険金・死亡退職金については、「500万円✕法定相続人の数」という非課税枠があり、この金額は相続財産から除きます。
遺産に合算しない非課税財産としては次のようなものがあげられます。
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これらの財産は経済的な価値を持ちますが、非課税財産に該当するため、相続税の計算に含む必要はありません。
2-4. 課税対象となる贈与があれば相続財産に加算する
生前贈与のうち、生前3年以内に贈与したもの、相続時精算課税制度を選択した場合の生前贈与分については、相続財産に加算します。
相続時精算課税制度とは、贈与税の計算方法の一つです。
贈与時には2,500万円まで非課税、これを超える贈与をする場合は20%の贈与税として、相続時に贈与したものを相続財産に合算して相続税を計算します。
これらは、相続税の計算において抜け漏れが多い財産のため注意しましょう。
<生前贈与・相続時精算課税制度の改正> 現状では上記の内容で相続時精算課税制度は運用されていますが、2023年の法改正によって2024年から内容が変更されます。 具体的には、2024年1月1日以降の相続において、生前贈与の課税範囲や内容に変更が加えられます。 <相続税精算課税制度の変更点>
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改正によって相続時精算課税制度を利用しつつも、毎年110万円まで贈与税控除が利用できるようになります。
相続税の加算期間が延長されるため、暦年贈与を選択した場合には、相続開始前7年前までに行われた贈与が相続税の対象になります。
しかし、相続時精算課税制度の場合には、110万円分の基礎控除について7年以内の贈与であっても相続財産に含む必要がありません。
そのため、基礎控除額をうまく活用することで、相続税の節税につながります。
2-5. 基礎控除額と相続財産の総額を比較する
ここまで情報を財産の整理ができたら、すべての財産価額を合算しましょう。
その後基礎控除額と相続財産の総額を比較して、どちらのほうが多いかを比較します。
そして、基礎控除額の方が多い場合には、相続税申告が不要となります。
3. 基礎控除額を超えた場合でも申告不要になるケース
基礎控除額を超えた場合でも、次の3つの控除を適用し相続税が非課税となる場合には、申告が不要となります。
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それぞれの控除について解説します。
3-1. 障害者控除を適用して非課税になった場合
障害者控除を適用した結果非課税となった場合には、基礎控除額を超えた場合でも、相続税の申告は不要となります。
障害書控除とは、日本に国籍を持ち障害者である相続人が受けられる税額控除のことをいいます。
障害者控除は、障害者を一般障害者と特別障害者に分け、それぞれの区分で次のように控除の制度を設けています。
<障害者控除の計算式> なお特別障害者とは、次に該当する方を指します。
また一般障害者とは、次に該当する方を指します。
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たとえば、身体障害者2級である人が30歳である場合には、(85-30=55)✕20万円=1,100万円の控除があり、この控除が適用され非課税となる場合には、相続税申告の必要はありません。
3-2. 未成年者控除を適用して非課税になった場合
未成年者控除を適用した結果非課税となった場合には、基礎控除額を超えた場合でも相続税の申告は不要となります。
未成年者控除とは、日本国内にいる未成年者である相続人が受けられる税額控除のことをいいます。
<未成年者控除の計算式> 相続開始時に10歳である場合、「(18-10=8)✕10=80万円」の控除を受けることができます。 この控除の結果非課税となる場合には、相続税の申告は不要となります。 |
3-3. 相次相続控除を適用して非課税になった場合
相次相続控除を適用した結果非課税となった場合には、基礎控除額を超えた場合でも相続税の申告は不要となります。
相次相続控除とは、数次相続が発生した相続人が利用できる控除のことをいいます。
たとえば、父・母・子といる場合で、父がなくなり次いで母がなくなる場合で、それぞれ相続税の課税対象となる場合、子は父の相続・母の相続と相次いで相続税を負担することになります。
その結果、税負担が重くなりすぎりため、数次相続が発生した場合に控除の制度を認めています。
<相次相続控除の計算式> A:今回の相続における被相続人が前回の相続の際に課された相続税額 C:今回の相続・遺贈や相続時精算課税制度を選んだ生前贈与によって財産を取得したすべての人の純資産価額の合計額 E:前の相続から相続までの期間(単位:年) |
4. 相続税がかからなくても申告が不要にならないケース
同じように控除などの制度によって、相続税がかからなくなる場合でも、申告が不要とまではならないケースとしては次のようなものがあります。
<相続税がゼロになっても申告が必要なケース>
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それぞれのケースについて解説します。
4-1. 配偶者控除を適用した場合
配偶者控除を適用した結果非課税となる場合でも、基礎控除額を超えていれば相続税の申告が必要です。
配偶者控除とは、相続人である配偶者が受けられる税額控除のことをいいます。
配偶者には、法定相続分または1億6,000万円までの課税対象であれば相続税を課税されません。
とても強力な特例のため、ほとんどの場合で相続税額がゼロになりますが、申告が必要になりますので注意しましょう。
4-2. 小規模宅地等の特例を適用した場合
小規模宅地等の特例を適用した結果非課税となる場合でも、基礎控除額を超えていれば相続税の申告が必要です。
小規模宅地等の特例とは、居住のための宅地などを相続する場合に、宅地の評価額を最大80%減にすることができる制度のことを指します。
都市部で宅地を所有している場合には、この特例を利用することも多いので注意しましょう。
4-3. 農地の納税猶予の特例を適用した場合
農地の納税猶予の特例を受ける場合でも、基礎控除額を超えていれば相続税の申告が必要です。
農地の納税猶予の特例とは、相続人が引き続き農業を行う場合などに、相続税の納税を猶予する制度となっています。
相続税の申告後にも、納税猶予期間中の継続届出を3年ごとに提出する必要がありますので注意しましょう。
4-4. 国や地方公共団体などに財産を寄付した場合
国や地方公共団体などの特定の団体に相続した遺産を寄付した場合、その財産については相続税の対象としない特例があります。
この特例を利用するためには、期限内に相続税申告をする必要があります。
期限だけでなく寄付する相手にも制限があるので、寄付を行う際には注意しましょう。
5. まとめ
本記事では、どのような場合に相続税の申告が不要になるのかについてお伝えしました。
実はすべての相続で相続税の申告・納税が必要になるわけではなく、遺産が一定額以上ある場合にのみ相続税の申告・納税が必要です。
相続税の申告が必要となるかどうかラインとなる基礎控除について確認し、相続税申告が必要かどうかを見極め、必要である場合には早急に相続税申告に向けて準備するようにしましょう。
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