遺産の寄付には税制上の優遇があり、要件を満たせば寄付者・寄付先ともに課税されません。
上記の経済的なメリットも注目に値しますが、遺産の寄付で重要なのは「確実に無駄なく社会に役立ててもらえること」でしょう。
「遺産を継ぐ人に心当たりがない」「承継した遺産を持て余している」等の状況にある人へ、遺産寄付の課税関係を中心に、具体的な寄付方法と相続トラブル対策としての効果について解説します。
1.遺産を寄付する3つのメリット
遺産寄付の何よりのメリットは「大切な財産を余さず社会に役立ててもらえる安心感」にあります。まずは、実際に行われることの多い寄付の例を確認してみましょう。
【遺産寄付の例】
- 生涯未婚の人から、生前馴染みのあったボランティア事業を行う団体へ
- 子どものいない夫婦から、お世話になった老人ホームへ
- 相続財産をもらい受けた人から、生前の意思を尊重して公益性のある団体へ
上記の例かそれ以外かに関わらず、寄付による経済的利益はほとんど生じません。たしかに、寄付した財産を非課税とする税制は存在しますが、これは手放した財産について課税される不利益をなくすためのものです。
最初に強調したように、寄付のメリットはむしろ「精神的な面」にあると考えるべきでしょう。
メリット1:必要とする人や場所に財産を残せる
民法では、相続財産について「親族であれば有効に活用できる」ことを前提にしています。しかし現実は、必ずしも民法規定の前提通りではありません。
親族の不在や障害が原因で、財産の管理や活用が将来にわたって途切れてしまう場合も少なからずあります。いずれは、せっかく築いた財産が国庫で眠ることになったり、第三者の私欲の実現に利用されたりするなど、望まない結果を招いてしまうでしょう。
あらかじめ相続財産を公益性の高い事業に寄付すれば、以上のような心配はありません。それを必要とする人・場所に遺産を託し、かつ望む方法で確実に活用してもらえます。
メリット2:相続トラブルをある程度まで防げる
子孫がいないケースでも、法律上は兄弟姉妹や父母を通じて相続権が発生します。血縁関係の遠い相続人ばかりいる状況では、亡くなった人の意志より相続人の利益が重んじられ、骨肉の争いに発展する恐れが高いと言わざるを得ません。
亡くなった人本人や相続人自身で寄付の手続きをとることで、相続財産を有益に扱いながら、争いの芽を摘めます。
とはいえ、寄付によって「相続トラブルを確実に回避できる」とは断定できません。この点については、相続人に認められた法律上の権利を交えて後章で検討します。
メリット3:相続人による寄付は税制上の恩恵が大きい
いったん相続した財産を寄付するケースでは、寄付先により相続税と所得税の両方で税額の優遇があります。例えば遺産を全て寄付したケースであれば、相続税は非課税とされた上で、寄附金控除により所得税の還付を受けられる可能性があるのです。
「相続財産を持て余している」「亡くなった人が社会貢献に特別な想いを抱いていた」等のケースでは、個別に税理士の診断が必要ではあるものの、寄付が最適解である場合があります。
2.遺産を寄付する方法
実際に遺産を寄付する際は「生前のあいだに意志を示す方法」と「死後相続人の意向で寄付する方法」の2パターンが考えられます。
どちらの場合でも、寄付の受け入れ先に対して必ず事前連絡を入れましょう。金額や資産種類によっては、体制が整っている法人でも受け入れ準備が必要となるからです。
ここからは、寄付のパターンごとに具体的な方法を紹介します。
3.生前のあいだに寄付の意志を示す方法
生前のあいだに遺産寄付を決意するパターンでは、遺言書もしくは贈与契約書を作成して意思表示します。作成する書面で法律上の寄付(=贈与)の効力が異なり、この点を押さえてから手配に入ることで、意図通りの寄付が実現します。
【遺言書で寄付する場合(遺贈)】
遺言で寄付する場合、遺言する人の一方的な意思だけで贈与が成立する「遺贈」として扱います。遺贈は拒否できるため、寄付先の都合によっては財産を受け入れてもらえません。
ただし、撤回して寄付先を再度選びなおすのは容易です。
【贈与契約書で寄付する場合(死因贈与)】
贈与契約書で寄付する場合、寄付者と寄付先の双方の合意で成立する「死因贈与」として扱います。拒否や撤回に関しても双方の合意を要するため、寄付先に確実に財産を受け入れてもらえるのがメリットです。
上記の点に関しては、死因贈与で気持ちよく財産を受け入れてもらう上で、ますます打ち合わせの重要性が高くなるとも言えます。
生前の望みを確実に達成する上では、寄付の効力のほかにも、本人がいなくても確実に寄付が実行できる仕組み作りを意識する必要があります。そのためには、書類の作成手段や、死後の手続きを検討しなければなりません。
3-1.公正証書を作成する
遺言書や贈与契約書は、最寄りの公証役場に依頼して「公正証書」を作成してもらうのがベストです。
公正証書とは、法務大臣に任命された公証人(※法曹職の経験者)が、契約や証言の内容を当事者から聞き取って文書化したものです。完成した公正証書は、行政で電子システム等を活用して安全に保管され、記載された約束事は高い信頼性を備えます。
3-2.遺言執行者を指定する
寄付を実現するには、意志を遺すだけでなく、実際に財産を移転させる手続き(名義変更)を担う人物も必要です。そこで、遺贈で寄付する場合は、遺言の内容を実現するための一切の権利義務を負う「遺言執行者」(民法第1010条)も併せて指定すると安心です。
遺言執行者の候補として、弁護士や司法書士などの法曹職のほか、信託業者として登録する銀行の担当者が挙げられます。
4.死後になって相続人の意向で寄付する場合
死後相続した人が寄付しようとするパターンでは、寄付先との打ち合わせの上で贈与契約書を作成して実施するのが一般的です。
この際、大前提として「共同相続人全員の同意」を得なければなりません。亡くなった時点での財産は相続人の共有扱いになるため(民法第898条)、たとえ善意の行為であっても、寄付等による処分を無断で行うことは出来ないのです。
もちろん、相続人が1人しかいないケースや、他の相続人との話し合い(遺産分割協議)でもらい受けた財産については、断りを入れる必要なく寄付にあてられます。
なお、寄付を実行した後は、後述の税制上の優遇を受けるために必要な「寄付の明細書」と「寄付先が公益法人であること等の一定の証明」を請求します。
5.寄付した遺産に対する課税の仕組み
寄付する側と受け入れる側が最も問題にしているのは、課税関係でしょう。
原則上は寄付も課税上の「贈与」扱いになるため、相続税・贈与税・法人税などの課税義務が生じます(下記参照)。この点に関して、減税あるいは免税に繋がる特例はないのでしょうか。
5-1.被相続人が寄付先を決めておく場合の課税関係
生前の意志表示に従って寄付するパターンは、寄付先の人格に合わせて「相続税」または「法人税」が課せられます。
遺贈や死因贈与の場合、財産をもらい受けた人が「相続税」の課税の対象になるのが原則です。ところで、そもそも相続税や贈与税個人(正確には“自然人”)にしか課税できません。受贈者が法人である場合は、もらい受けた財産を会計上「受贈益」として処理し、相続税の代わりに「法人税」が課税されます。
【表】遺贈or死因贈与による課税関係
寄付先 | 申告・納税義務を負う人 | 課税の種類 |
法人 | 寄付先 | 法人税 |
個人 (「代表者または管理者の定めのある任意団体」※1と「持ち分の定めのない法人」※2含む) | 寄付先 | 相続税 |
※1)任意団体とは:
法人登記をしていない、仲間同士で一定の目的を達成する結成された団体を指します。税法上では「人格のない団体」とも呼ばれ、具体例として研究会・社会人サークル・同業者組合などが挙げられます。
※2)持ち分の定めのない法人とは:
定款や法令の定めにより、所有財産について分配や従業員等への払戻請求ができない法人を指します。政府から公益認定を受けた法人や、お寺などの宗教法人が該当します。
5-2.相続人が寄付する場合の課税関係
死後になって相続人が遺産の寄付を行うパターンは、いったん寄付者が遺産を承継していることを踏まえ、寄付当事者双方に課税されます。
寄付者には「相続税」、寄付先にはその人格に合わせて「法人税」または「贈与税」が課税されるのです。
【表】相続人による寄付の課税関係
寄付先 | 申告・納税義務を負う人 | 課税の種類 |
法人 | 寄付者&寄付先 | 寄付者:相続税 寄付先:法人税 |
個人(「代表者または管理者の定めのある任意団体)と「持ち分の定めのない法人」を含む) | 寄付者&寄付先 | 寄付者:相続税 寄付先:贈与税 |
ここまでが原則上の課税関係ですが、寄付者に対しては「相続税の特例」と「所得税の寄附金控除」、寄付先には「公益法人関係税制」とのように、それぞれ対応した税制上の優遇があるのです。
5-3.【相続税】相続財産を公益法人等に寄付した場合の特例
まず、特例で相続税が課税されないのは「相続や遺贈によって取得し寄付した財産」と定められています。なお、生命保険金や退職金を寄付した場合も、特例の要件に該当します。その上で、下記いずれかに対して相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月目)までに寄付していれば、相続税は課税されません。
【相続税の特例】寄付財産が非課税となる受け入れ先
- 国・地方公共団体
- 特定の公益法人等…独立行政法人、公益認定を受けている法人、認定非営利活動法人(認定NPO団体)、国立大学法人、一定の学校法人、社会福祉法人、社会福祉法人(老人ホーム等)、更生保護法人(刑事犯の更生をサポートする施設等)など
本特例を適用する際の注意点として、寄付後少なくとも2年間にわたり、公益法人(あるいは認定非営利活動法人)として承認された状態を受け入れ先が維持しなければなりません。他にも、寄付で受け入れた財産が上記期間中にまったく利用されていなかった場合は、特例の適用対象から除外されて相続税の課税対象になる恐れがあります。
5-4.【所得税】公益法人等に寄附した場合の寄附金控除
所得税において、受け入れ先により「特定寄附金」として扱われた寄付財産は、その支出額(※年度内の総所得金額の40%相当が上限)から2千円差し引いた分を課税所得から控除できます。加えて、居住地域の「条例指定寄附金」にも該当すると、住民税も税額控除の対象になります。
ここでの「特定寄附金」の要件である寄付先については、災害復興等に関するものを除き、下記①~⑥のいずれかであればよいとされています。
【所得税の寄附金控除】特定寄附金として扱われる受け入れ先
- 国・地方公共団体
- 認定非営利活動法人(認定NPO団体)
- 特定公益増進法人…独立行政法人、公益認定を受けている法人、自動車安全センター、私立学校、社会福祉法人、更生保護法人など
- 指定寄附金…公益増進に寄与する目的で、広く一般に募集され、かつ緊急性があるもの(赤い羽根募金や国宝修復費にかかる募金など)
- 認定特定公益信託…公益の増進に著しく寄与するもの(難病研究基金など)
- 政治活動に関する寄附金…政党、政治資金団体、その他の政治団体、一定の公職の候補者等への献金やカンパ
※入学に関する寄付や、政治資金規正法に違反するものなどは、特定寄附金に該当しません。
5-5.【法人税】公益法人等に対する税制上の優遇
受け入れ先が民間法人である場合に課税される法人税は、公益法人関係税制で定める一定要件を満たしていれば免除されます。
具体的には、政府から公益認定されている法人(下記表①)もしくは一定要件を満たして満たす非営利型法人(下記②)のいずれかとなります。
【参考】法人の区分
税制上の区分 | 該当する法人の特色 | 課税対象 |
①公益社団法人・公益財団法人 | 政府から公益認定を得ている法人 | 収益事業から生じた所得のみ |
②非営利型法人 | 非営利性が徹底された法人 | |
共益的活動を目的とする法人 | ||
③普通法人 | 上記以外の法人 | 全ての所得 |
5-6.公益法人等に寄付した場合の課税関係
所得税・相続税・法人税の3点について、寄付先に公益性が認められれば課税が免じられる措置があることは先述の通りです(相続税はさらに申告期限までに寄付する条件が付されています)。
これらの措置を踏まえ、適用要件を満たした場合の課税関係をまとめたものが以下の表です。
【表】寄付の課税関係(※公益法人等に寄付する場合)
寄付のパターン | 寄付者 | 寄付先 |
遺言or死因贈与による寄付 | 課税されない | 法人税 (※所定要件を満たす公益法人は非課税) |
相続人による寄付 | 相続税 (※所定要件を満たせば課税されない+所得税控除が適用できる) |
法人税 (※所定要件を満たす公益法人は非課税) |
以上のように、税制上の優遇措置の要件を意識しながら寄付した場合には、寄付者・寄付先ともに課税を免じられた状態で財産を授受できるのです。
5-7.お寺(宗教法人)は非課税対象か
注意したいのは「お世話になったお寺」等に寄付するケースです。結論として、寄付者は通常通り相続税・所得税を負担することになります。
お寺などの宗教法人は「非営利型法人」にあたり、受け入れる寄付金は非課税扱いになります。一方の寄付者側は、原則として相続税を負担し、所得税の寄附金控除も適用されません。 宗教法人は、相続税の特例における「特定の公益法人等」にも、所得税の寄附金控除における「特定公益増進法人」等にも、基本的に該当しないのです。
6.寄付先の選び方は?
遺産の寄付行為で双方良い結果を得られるかどうかは、受け入れ先しだいでもあります。 寄付方法や課税関係の章で解説したことを整理すると、寄付先選びの基準として下記2点が挙げられます。
6-1.寄付の受け入れ体制が整っているか
寄付財産が事業に活用されるようになるまでは、会計処理・管理・利用計画の策定などのさまざまなプロセスを経ます。一方、公益性の高い事業を行っている団体等は大小存在し、上記のような処理プロセスを踏める体制が整っていないものも少なくありません。
寄付の受け入れ先で適切な処理が行われないと、寄付者の望みがなかなか実現しないばかりか、税務署から不適切な会計処理を指摘されてペナルティ(特例の適用除外や追徴課税など)が課される恐れがあります。
以上の点を考慮して、寄付先選びの際は「受け入れの実績」や「相談窓口の設置状況」などに着目しながら、体制の整っている団体等を候補に挙げなければなりません。
6-2.税額優遇の対象法人か
寄付の受け入れそのものは、社会福祉に貢献する事業者のあいだで広まっています。しかし、そうした事業者すべてが税額優遇の対象であるとは限りません。
典型的な例として、宗教法人のように寄付者に対する優遇がまったく行われないものや、所得税では優遇対象であるものの相続税では対象外になるもの(政治団体など)が挙げられます。税額優遇の対象法人かどうか判定する上では、直接問い合わせて尋ねるか、専門家に会社情報を伝えて回答をもらうのがベストです。
なお、各税制の適用要件で繰り返し紹介した「公益認定された法人」(公共社団法人・公共財団法人)は、政府が運営する公益法人インフォメーションで一覧検索できます。
7.遺産を寄付する際の注意点
寄付財産を有効活用してもらう上で注意が必要なのは、課税関係や受け入れ先の体制ばかりではありません手続きや準備を行う際は、下記2点にも注意を払い、寄付者自身が負うべき義務まで受け入れ先に転嫁しないよう配慮しましょう。
7-1.遺言で寄付する際は「特定遺贈」にする
遺言で寄付しようとする場合、具体的に「遺言者の有する○○銀行の預貯金」とのように資産を指定しなければなりません。この遺贈の指定方法は、法律上「特定遺贈」として扱われます。
もし「全財産」あるいは「全財産の〇割」との指定で寄付した場合、相続財産に含まれる債務も指定割合で寄付先の団体が負い、結果として寄付財産を有効に活用してもらうのが難しくなってしまいます。この指定方法は、特定遺贈に対して「包括遺贈」として扱われています。
参考条文:民法第964条(包括遺贈及び特定遺贈)
※遺贈は、特定遺贈と包括遺贈の大きく二種類に分かれます。それらの違いはコラム「包括遺贈と特定遺贈の違いとは」をご参考ください。
7-2.不動産の寄付は断られやすい
ほとんどの団体で、不動産の寄付は受け付けていません。
以下で引用した例のように、寄付者側で売却手続きを取って現金化しておくよう呼びかけられています。
【例1】公益財団法人日本ユニセフ協会
Q.不動産を寄付できますか?
A.当協会では不動産のご寄付(遺贈)もお受けしています。但し、不動産のご寄付は現金化が前提となりますため、ご寄付をご検討いただく際は当協会まで事前にお問合せください。
【例2】日本赤十字社
Q. 現金以外の寄付は受け付けていますか?
A. 遺贈の場合、遺言書に遺言者の有する不動産や有価証券などの財産を遺言執行者が換価換金し、必要経費・税金を控除したうえで、日本赤十字社に遺贈する旨をご記載ください。(後略)
不動産の寄付が敬遠される第一の理由は、不動産の性質上欠かせないメンテナンスのコストが、本業(公益事業)を圧迫する可能性です。第二の理由として、不動産そのものの性質(立地・形状・建築制限)により、目的に沿った利用がまったくできない可能性が挙げられます。
7-3.不動産寄付の課税上のデメリット(みなし譲渡課税)
さらに言えば、不動産の価値が購入当時より上昇している場合、寄付者側も課税上のデメリットを被ります。
不動産を法人に無償で贈与した場合、購入時の金額(=取得費)と寄付時点の価格との差が譲渡所得とみなされ、寄付者に所得税が課税されるのです。
8.遺産の寄付で相続争いの回避は可能?
ここまでは寄付を受け入れる側から見た注意点を解説しましたが、忘れてはならないのは「寄付する側もその目的が叶わない場合がある」点です。
ここで言う寄付する側の目的とは、最初にメリットとして触れた相続トラブルの回避を指します。寄付した財産に対し、相続人の権利を法的根拠として、トラブルの端緒となる主張がなされる余地があるのです(下記参照)。
8-1.寄付先に「遺留分」を請求される可能性がある
第一に、相続権を持つ人から寄付先に対して「遺留分」(民法第1042条)が請求される懸念があります。
遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人について一定割合の相続を認める権利です。さらに、権利者が遺留分を受け取れなかった場合、受贈者に対して金銭等で支払いを求める権利も認められています(遺留分侵害額請求権/民法第1046条各項)。
また、遺留分は権利者の生活保障のためにあると法律上解釈されるため、遺言であらかじめ排除しておくことも出来ません。つまり、寄付受け入れ団体が相続人から金銭等支払いを求められる可能性は、どうあっても無くせないのです。
8-2.遺言や贈与契約の無効が主張される可能性がある
第二に、遺留分侵害額請求ができない(もしくはそれだけでは不十分だと考える)相続人から「寄付は亡くなった人の意志ではない」と主張される懸念があります。より具体的には、遺言書や贈与契約書の不備が指摘されたり、第三者による改ざんや偽造があったと主張されたりする恐れがあるのです。
上記のリスクに関しては、先で紹介した「公正証書による意思表示」や「遺言執行者の指定」で回避できます。つまり、寄付の意思が生前の本人から示されたことが確かであり、寄付先と協力して法律トラブルに対処できる人物が存在することで、相続人の主張を退けられるのです。
9.香典返しの寄付もできる
相続財産だけでなく、葬儀後の「香典返し」も寄付できます。
この場合、遺族(または喪主)が会葬者に代表して寄付すれば、通常は経費や葬儀費用※とならない香典返しの購入費用を「寄附金控除」として扱えるメリットがあります。
※ここで述べる「葬儀費用」とは、相続税の課税時に遺産総額から控除できるものを指します。
課税上のメリットを受けるには、当然「特定寄附金」として扱われる寄付先を選定しなければなりません。この点に関し、実例の多くは社会福祉協議会(リンク)が選ばれています。地域に根差した活動を行っており、寄付の受け入れ体制(会葬者宛のお礼状据え置きなど)が整備されているのが理由です。
10.まとめ
遺産の寄付は「大切な財産を余さず社会に役立ててもらえる安心感」にありますが、遺留分侵害額請求等のトラブルを防げるとは言い切れません。具体的な寄付の内容が決まったら、公正証書の作成・遺言執行者の指定などを通じ、アクシデント発生時も対抗できる状態を作っておきましょう。
肝心の寄付の計画を立てる際は「税制上の優遇が適用できるか」「寄付先に受け入れの負担がかかりすぎないか」の2点に配慮します。寄付先の選定や、税制適用の条件から申告関係書類を手配する上では、特に高度な税務知識(関連税法や通達の解釈を実例に当てはめるスキルなど)が必要になるでしょう。
相続分野を専門とする税理士は、遺産寄付の計画を立てる人のアドバイザー役も得意とします。まずは相談してみましょう。
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