小規模宅地等の特例は一言で言うと、土地の評価額を最大80%下げる特例です。 先祖代々から受け継がれてきた土地などを、子の代へ承継しやすくする狙いがあります。
土地の区分は下記の4つの種類があり、適用される特例の内容や適用要件が異なります。
区分 | 限度面積 | 減額割合 | 限度面積(平成27年1月1日以降) |
①特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% | 400㎡ |
②特定居住用宅地等 | 240㎡ | 80% | 330㎡ |
③特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% | 400㎡ |
④貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% | 200㎡ |
①~④の宅地は、それぞれ限度面積、減額割合が違います。 歴年課税贈与、及び、相続時精算課税贈与により取得した宅地等には適用されません。
こちらの記事では土地ごとの適用要件、限度面積、減額割合をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
1.特定事業用宅地(とくていじぎょうようたくち)等
特定事業用宅地等とは?
相続開始の直前(被相続人が亡くなる直前)において、被相続人等の事業(不動産貸付事業等を除く)の用に供されていた宅地等で、それぞれに掲げる要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものを「特定事業用宅地等」と言います。
被相続人(亡くなった方)が個人事業主として事業を行っていた土地などが該当します。
特例の適用要件
被相続人と同一生計親族の事業の用に供されていた宅地等
- 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること(同一生計親族が事業を継承)
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
- その土地を無償で使用していること
被相続人の事業の用に供されていた宅地等
- その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること(親族が事業を継承)
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
- その土地を無償で使用していること
限度面積と減額割合
限度面積は400㎡、減額割合は80%、です。
土地1㎡の土地評価額×土地の面積(400㎡限度)×20%が、特例を適用した土地の評価額です。
2.特定居住用宅地(とくていきょじゅうようたくち)等
特定居住用宅地等とは?
被相続人(亡くなった人)が居住用にしていた土地のことです。
特例の適用要件
特定居住用宅地等の区分で小規模宅地等の特例を受けようとする場合、取得者が誰か、ということによって要件が異なってきます。
被相続人の配偶者が取得者の場合
適用要件なし
被相続人と「同居していた」親族が取得者の場合
- 相続開始の時から相続税の申告期限まで、その家屋に住み続けること
- その宅地等を相続税の申告期限まで保有すること
被相続人と「同居していない」親族が取得者の場合※被相続人に配偶者がいないこと。被相続人と同居していた親族がいない事の2つの要件を満たす場合
- 相続開始前3年以内に日本国内にある本人又は本人の配偶者の持つ家(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます)に住んだ事がないこと
- その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること
- 相続開始の時に日本国内に住所を有していること、又は、日本国籍を有していること
限度面積と減額割合
限度面積は330㎡、減額割合は80%、です。
平成25年度税制改正で、特定居住用宅地等限度面積が、平成27年1月1日以降の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税については、240㎡から330㎡に引き上げられました。
3.特定同族会社事業用宅地(とくていどうぞくがいしゃじぎょうようたくち)等
特定同族会社事業用宅地等とは?
相続開始の直前(被相続人がなくなる直前)から相続税の申告期限まで、一定の法人の事業(不動産貸付事業等を除く)のために用いられていた宅地等で、適用要件全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得した土地のことを言います。
なお、ここでいう「一定の法人」とは、相続開始の直前において、被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合における、その法人のことをいいます。
特定同族会社事業用宅地等を一言でいうと、役員である被相続人の親族が取得した、同族会社の事業を行なっていた土地、のことです。
特例の適用要件
- 相続税の申告期限においてその法人の役員であること
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
限度面積と減額割合
限度面積は400㎡、減額割合は80%、です。
特定事業用宅地等と同じく、土地1㎡の土地評価額×土地の面積(400㎡限度)×80%が、特例を適用した場合の土地の評価額となります。
4.貸付事業用宅地(かしつけじぎょうようたくち)等
貸付事業用宅地等とは?
相続開始の直前(被相続人が亡くなる直前)において、被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等で、要件の全てに該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものを、貸付事業用宅地等、と言います。
賃貸アパートやマンション、駐車場などが代表的なものです。
特例の適用要件
被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等
- その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
同一生計親族の貸付事業の用に供されていた宅地等
- 相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っていること
- その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
青空駐車場の場合
コインパーキングのような設備が整い事業用であることが明らかである駐車場なら問題ありませんが、ロープで区画を区切っただけ、といった整備がなされていない場合には特例を適用できません。貸付事業用の宅地で適用するには「建物または構築物の敷地である」という条件を満たす必要があるためです。これらは相続開始時点で整えている必要がある条件であり、青空駐車場を保有している場合には、生前対策の検討余地があります。
限度面積と減額割合
限度面積は200㎡、減額割合は50%、です。
特例を適用した土地の評価額は、土地1㎡の土地評価額×土地の面積(200㎡限度)×50%が、となります。
5.宅地別の適用要件まとめ
最後に、これまで見てきた土地の区分ごとの小規模宅地等の特例の適用要件、限度面積、減額割合をまとめてみましょう。
小規模宅地の特例は、手続きが複雑になってしまうことも多いため、実際に特例の適用を検討される場合は相続に詳しい税理士などの専門家に相談しながら対応を進めることをおすすめします。
区分 | 特例の適用要件 | |
①特定事業用宅地等 | 被相続人と同一生計親族の事業の用に供されていた宅地等 | •相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等の上で事業を営んでいること(同一生計親族が事業を継承) •その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。 |
被相続人の事業の用に供されていた宅地等 | •その宅地等の上で営まれていた被相続人の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること(親族が事業を継承) •その宅地等を相続税の申告期限まで有していること。 |
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②特定居住用宅地 | 被相続人の配偶者が取得者の場合 | 適用要件なし |
被相続人と「同居していた」親族が取得者の場合 | •相続開始の時から相続税の申告期限まで、その家屋に住み続けること •その宅地等を相続税の申告期限まで保有すること |
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被相続人と「同居していない」親族が取得者の場合 ※被相続人に配偶者がいないこと。被相続人と同居していた親族がいない事の2つの要件を満たす場合 | •相続開始前3年以内に日本国内にある本人又は本人の配偶者の持つ家(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます)に住んだ事がないこと •その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること •相続開始の時に日本国内に住所を有していること、又は、日本国籍を有していること |
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③特定同族会社の事業用宅地等 | 一定の法人の事業の用に供されていた宅地等 | •相続税の申告期限においてその法人の役員であること •その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
④貸付事業用の宅地等 | 被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等 | •その宅地等に係る被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその貸付事業を行っていること •その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
同一生計親族の貸付事業の用に供されていた宅地等 | •相続開始の直前から相続税の申告期限まで、その宅地等に係る貸付事業を行っていること •その宅地等を相続税の申告期限まで有していること |
※複雑な小規模宅地の特例については、シリーズで解説をしています。知りたい内容に合わせてご覧ください。
【適用条件】小規模宅地等の特例とは?適用条件をわかりやすく解説
【宅地の種類】小規模宅地等の特例が適用される土地・宅地の種類と適用要件
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