登記というと、家や土地などが誰の所有であるかを登記所で手続きをして明確にしたり、会社を作るときにどのような会社なのかを登記所で手続きをして明確にするというイメージがあります。
相続時においては不動産の登記名義を変更することができ、これを「相続登記(そうぞくとうき)」といいます。
今回は、相続登記とはどのようなものか、相続登記をしないとどうなるのか、相続登記の手続きの流れなどを解説していきます。
目次 |
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1.相続登記とは何か |
相続登記とは何か
(1)相続登記の概要
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったとき、つまり相続発生時に被相続人(亡くなった方)の登記名義を相続人に変更することをいいます。
相続登記をすることで、被相続人の名義だった不動産は相続人の名義になります。
(2)相続登記の期限
相続登記には、いつまでにしなければならないといった期限はありません。ということは、わざわざ面倒な登記変更手続きをしなくても、法律上は問題がないということになります。
相続登記をしなくても罰則などもありません。 ただし、法律上は問題はなくてもさまざまな不都合が発生することがあります。どのような不都合があるのでしょうか。
相続登記をしないことによる問題点
そもそも登記は、公開されている帳簿にある事項を記載することで、その事項を広く一般に示し、その事項に関係のある人が思わぬ損害を受けないようにするための制度です。
家や土地などの不動産においては誰が所有者なのかということを登記しておくことで、他の人もその不動産についての情報を得ることができ、取引をしようとしたら違う人の所有物だったというような事態を防ぐことができるのです。
相続登記をしないと、不動産の名義人は被相続人の名義のままになってしまっているので、次のような問題が発生します。
(1)相続時にトラブルになりやすい
相続によって不動産を取得した場合に、その不動産を誰が取得したのかを登記しておかないと、その不動産が誰のものかを法律的に主張するのが難しくなります。
特にトラブルになりやすい相続時の遺産分割協議において、相続登記を行うことが大切になってきます。
相続が発生して遺産分割協議を行うときには、法定相続人が全員で話し合い、遺産分割協議書を作成することになります。
相続登記をしないまま相続人が亡くなった場合に、新たに別の方が亡くなり相続が発生した場合など、その方の法定相続人が新たに登場することになり手続きが複雑になってしまいます。
このような場合に、いざ不動産の売却をして財産を処分しようと思ったときに、多くの法定相続人がいることで遺産分割協議が進まず不動産の売却手続きも進まないという結果になります。
相続登記をしていない期間が長ければ長いほど、相続人の中の誰かが亡くなり新しく相続が発生して法定相続人が増えることが予想されます。法定相続人が増えれば増えるほど、遺産分割協議の同意を得ることも難しくなり、手続きは複雑化していきます。
相続人の誰かが亡くなるといったケースだけでなく、高齢の相続人がいることでその方が認知症などになってしまい判断能力が低下してしまうというケースも考えられます。
このような場合には、裁判所を通して成年後見人を選定し遺産分割協議を行うことになります。成年後見人というのは多くの場合に身内が行うものですが、相続時の遺産分割協議においては利害関係がある人が成年後見人になった場合には、特別代理人を選ぶ必要があります。
相続時において身内は利害関係がある場合が多いので、事前に身内でない利害関係でない人を選ぶこともできますが、成年後見人を解任させるときに裁判所の許可が必要になります。
(2)不動産の処分時に不都合が発生する
不動産を売却しようとしたり、不動産を担保にして借入をしようとした場合に、相続登記をしないままでいるとこれらの手続きができないことになります。不動産売買契約や担保提供契約をするには不動産の名義人が契約をする必要があるからです。
ただし、被相続人が売買契約をして登記をしないまま亡くなった場合には、相続登記をしなくても登記変更ができます。この場合には、登記変更をしていなくても契約は成立しているので、相続人は登記を被相続人のかわりに申請するだけだからです。
長い間、相続登記をしないでいても、不動産の処分時に相続登記をすればいいのではないかと思われる方もいらっしゃると思います。相続人が自分ひとりだけで遺産分割協議のトラブルはないと予想される場合などです。
しかし、この場合にも、被相続人の住民票や戸籍などは保存期間が決まっているために、いざ相続登記をしようと思ったときに必要書類を入手することが困難になっていることが考えられます。
さらに、相続人の誰かが借金があって財産を差し押さえられるような事態になっているときには、裁判所の判決などによって相続財産を差し押さえられることがあります。
相続登記をしていなければ、債権者は相続人の法定相続分を差し押さえることができてしまいますので、差し押さえを受けた相続人の持ち分は債権者に売却されるというケースもあげられます。その場合には不動産は他の相続人と不動産の一部の持ち分を買い受けた人との共有名義になり、共有名義の場合に不動産を処分すると手続きが複雑になります。
法律上は問題なくとも、相続登記をしないことで数々のデメリットが生じてくることがわかりました。それでは具体的に相続登記の手続きはどのように進めていけばよいのでしょうか?順を追ってみていきましょう。
相続登記の流れ
相続登記をするには、不動産の所在地を管轄する法務局で行います。また、相続登記には以下のものが必要になります。
(1)被相続人に関係する書類
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本などが必要です。相続税申告書の添付書類としても必要になるものです。
このほかに、被相続人の住民票の除票が必要になります。 転籍や婚姻がある場合には、転籍前や婚姻前の本籍地で除籍謄本などを取得しなければならず、どこの市役所に行けばよいのか調べるのが大変であったり、本籍地が遠方であったりする場合には手間がかかります。
(2)相続人に関係する書類
相続人”全員”の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書、実印のほか遺産分割協議書、相続登記をする不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書が必要です。
相続人全員分の戸籍謄本などを集めるのは、相続人が多い場合には手間と時間がかかります。
(3)手続き時に必要なもの
登録免許税として、固定資産税評価額の0.4%が必要になります。
相続登記のまとめ
相続時における相続登記は、さまざまなトラブルを防止するために、速やかに行いたいものです。
しかし、相続時の気分が沈みがちな中でさまざまな雑務が発生することが予想される中、手間と時間をかけて相続登記を個人で行うのは大変な作業です。必要書類も多いので、必要書類を把握してそろえる手間と時間を考えると、司法書士などの専門家に依頼するなどの方法をとることがよいのではないでしょうか。
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