相続が発生するとたいていの場合、遺産分割協議書を作成します。
しかし、全ての手続きが終わりホッとしたのも束の間、遺産分割の内容を巡って思わぬ問題が発生することがあります。
今回は「遺産分割協議書」を作成する際のポイントを確認していきましょう。
目次 |
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1.そもそも、なぜ遺産分割協議書を作成するの? |
そもそも、なぜ遺産分割協議書を作成するの?
遺産分割協議書は、相続人同士で遺産の分け方について話し合われた内容を書面にするものです。遺産分割協議書作成の目的は、主に下記の2点です。
- 相続人の間での遺産の分け方の契約を証明する
- 不動産の相続登記や預貯金の名義書換等の手続きのため
遺産分割協議書の法的拘束力は強く、いったん署名・押印すると訂正できないのが現状です。
遺産分割のやり直しが発生するケース
しかし、遺産分割協議書の作成後に、問題が発生してしまうケースもまれにあります。
例えば、遺産分割後に家族が把握していなかった「多額の財産」が見つかるケースです。例えば遺産分割協議書の最後に、
「後日、本協議書に記載のない遺産があった場合には、相続人〇〇〇(兄)がこれを取得する。」
と記載されていたとします。 これは、遺産分割協議書を作成した時点では、被相続人の財産は全てを網羅しており、もし財産が見つかっても「少額」であると考えていたためです。
このような場合には、弟は遺産分割のやり直しを兄に請求することができます。 ここでは、弟がやり直しを訴えた場合の、法律上の取り扱いをみていきます。
民法上の取り扱いは?
民法では、詐欺や恐喝などの場合、遺産分割協議を取り消すことができます。また、相続人の全員が遺産分割協議のやり直しを希望すれば、遺産分割協議を解除することができます。
ここでポイントになるのは、相続人全員の合意が必要だということです。
上記のケースの場合は、やり直しを訴えているのは弟だけで、相続人全員の同意がないため、遺産分割協議を解除することができません。
税法上の取り扱いは?
相続税では原則、遺産分割のやり直しは認められていません。
税法上では、遺産分割のやり直しにより取得した財産は、新たな取引(贈与、交換、売買)により取得したものと考え、贈与税や譲渡所得税が課税されます。
上記の例では、想定外の「多額の財産」が発見されたため、弟が遺産分割のやり直しを訴え、兄は発見された財産の一部を弟に渡したとします。
そのときは、弟に渡した財産の一部に対して贈与税が課税されます。つまり、新たな税金が発生することになるのです。
まとめ
納得して遺産分割をしたつもりでも、その後、思わぬ問題が生じる可能性があります。では、どのような記載があれば問題とならなかったのでしょうか。
遺産分割協議書に、
「本協議書に記載のない遺産については、別途協議する。」
という一文を記載していれば、遺産分割のやり直しは避けられました。 遺産分割のやり直しは、相続税のほかに贈与税・所得税を支払う事態を招きます。無駄な税金を避けるためにも、専門家に相談して遺産分割協議書は慎重に作成しましょう。


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