マンションの相続税評価額の計算方法|区分所有補正率の計算例と2027年の改正案

監修
中村亨
日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士
マンションの相続税評価額は、建物(区分所有権)と土地(敷地利用権)をそれぞれ評価して合計します。
2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した居住用のマンションには、築年数や階数などから求める「区分所有補正率」が使われ、築浅の高層マンションほど評価額が上がりやすくなりました。
この記事では、国税庁の計算式を使って評価額と相続税額を具体的に計算し、賃貸マンションや今後の改正案まで解説します。
この記事の要点
- 評価額=区分所有権(固定資産税評価額×区分所有補正率)+敷地利用権(敷地全体の価額×敷地権の割合×区分所有補正率)です。
- 評価額が「市場価格の約6割」を下回ると推計されるマンションは、約6割の水準まで引き上げられます。築古・低層のマンションは補正がかからないこともあります。
- 賃貸しているマンションも、構造上居住用であれば対象です。さらに、相続などの前5年以内に購入した貸付用不動産を取引価格ベースで評価する通達案が2026年9月に公表されました(2027年1月以降の相続等が対象、確定前)。
マンションの相続税評価額は「建物+敷地利用権」
マンションの一室は、建物部分の「区分所有権」と、土地を他の住戸と共有する「敷地利用権」に分けて評価します。
- 区分所有権:その部屋の固定資産税評価額(×1.0)
- 敷地利用権:敷地全体の評価額(路線価方式または倍率方式)×敷地権の割合
2023年まではこの2つを足した金額がそのまま評価額でした。
しかし、高層マンションほど一戸あたりの土地の持分が小さく、建物の評価も市場価格を反映しにくいため、評価額と市場価格の開きが大きいことが問題とされていました。
2024年からの新ルール「区分所有補正率」とは
2024年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得した「居住用の区分所有財産」は、上の2つの価額にそれぞれ「区分所有補正率」を掛けて評価します。
補正率は、築年数・総階数・所在階・敷地持分の狭さの4つから「市場価格が評価額の何倍か(評価乖離率)」を推計して決めます。
| 評価水準(1÷評価乖離率) | 区分所有補正率 | 意味 |
|---|---|---|
| 0.6未満 | 評価乖離率×0.6 | 市場価格の約6割まで評価額を引き上げる |
| 0.6以上1以下 | 補正なし | 従来どおりの評価額 |
| 1超 | 評価乖離率 | 評価額を引き下げる |
対象になるマンション・ならないマンション
対象は、分譲マンションなど区分所有建物のうち、構造上主として居住用に使える専有部分です。登記簿の種類に「居宅」を含むものが原則として該当します。
次のものは対象外です。
- 事務所や店舗など、構造上居住用でないもの
- 区分所有の登記がされていないもの(一棟所有の賃貸マンションなど)
- 地階を除く総階数が2以下のもの
- 居住用の専有部分が3室以下で、すべてを区分所有者やその親族が使っているもの(二世帯住宅など)
- たな卸商品等に該当するもの
- 借地権付きマンションの底地など
区分所有補正率の計算方法(4つの指標)
評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
| 記号 | 内容 | 計算式 | 端数処理など |
|---|---|---|---|
| A | 築年数 | 築年数 × △0.033 | 1年未満は切り上げ |
| B | 総階数指数 | (総階数 ÷ 33)× 0.239 | 指数・Bとも小数点以下第4位切り捨て(指数が1を超える場合は1) |
| C | 所在階 | 所在階 × 0.018 | 地階は0階、複数階にまたがる場合は低い方の階 |
| D | 敷地持分狭小度 | (敷地利用権の面積 ÷ 専有部分の床面積)× △1.195 | 狭小度・Dとも小数点以下第4位切り上げ |
敷地利用権の面積は、一棟の建物の敷地面積に敷地権の割合を掛けて求めます(小数点以下第3位切り上げ)。総階数には地階を含めません。
計算例:築浅の高層マンションと築古の低層マンション
計算例1:築20年、15階建ての10階、専有面積70㎡
前提:敷地面積2,000㎡、敷地権の割合100分の1、建物の固定資産税評価額1,200万円、敷地全体の路線価評価額10億円(この部屋の持分は1,000万円)。
| 項目 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| A 築年数 | 20 × △0.033 | △0.660 |
| B 総階数指数 | 15 ÷ 33 = 0.454 × 0.239 | 0.108 |
| C 所在階 | 10 × 0.018 | 0.180 |
| D 敷地持分狭小度 | 2,000㎡ × 1/100 = 20.00㎡、÷ 70㎡ = 0.286 × △1.195 | △0.342 |
| 評価乖離率 | A+B+C+D+3.220 | 2.506 |
| 評価水準 | 1 ÷ 2.506 | 約0.399(0.6未満) |
| 区分所有補正率 | 2.506 × 0.6 | 1.5036 |
| 区分所有権 | 1,200万円 × 1.5036 | 約1,804万円 |
| 敷地利用権 | 1,000万円 × 1.5036 | 約1,504万円 |
| 評価額合計 | 従来の2,200万円 → | 約3,308万円(約1.5倍) |
計算例2:築45年、5階建ての2階、専有面積60㎡
前提:敷地面積600㎡、敷地権の割合100分の4(敷地利用権の面積24.00㎡)。
Aは△1.485、Bは5÷33=0.151×0.239=0.036、Cは0.036、Dは24÷60=0.4×△1.195=△0.478で、評価乖離率は約1.329、評価水準は約0.752です。
0.6以上1以下に入るため補正はなく、評価額は従来どおりです。
このように、築浅・高層階・敷地持分が小さいマンションほど、新ルールの影響を受けやすくなります。
ご自身のマンションで試算したい方は、日本クレアス税理士法人の生前対策コース(現状分析・相続シミュレーション)をご覧ください。
相続税はいくら変わる?(小規模宅地等の特例との関係)
計算例1のマンションと預金3,000万円を、子2人が法定相続分どおり相続した場合(基礎控除4,200万円、その他の財産・債務なし)の概算です。
| ケース | マンションの評価額 | 相続税の総額(概算) |
|---|---|---|
| 2023年までの評価 | 2,200万円 | 約100万円 |
| 2024年からの評価 | 約3,308万円 | 約216万円 |
| 同+小規模宅地等の特例(敷地利用権を80%減額) | 約2,105万円 | 約91万円 |
小規模宅地等の特例は、区分所有補正率を掛けた後の敷地利用権の価額に適用します。
ただし、子が同居していた、家なき子特例の要件を満たすなど、取得者ごとの要件を満たす必要があり、特例を使うには相続税の申告が必要です。
詳しくは小規模宅地等の特例とはをご覧ください。
賃貸しているマンションの評価
賃貸している部屋も、構造上居住用であれば区分所有補正率の対象です。
補正後の価額をもとに、建物は「貸家」として借家権割合(30%)を、土地は「貸家建付地」として借地権割合×借家権割合を差し引きます。
計算例1を満室で賃貸し、借地権割合70%の地域だとすると、区分所有権は約1,804万円×(1−0.3)=約1,263万円、敷地利用権は約1,504万円×(1−0.7×0.3)=約1,188万円です。
貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例(200㎡まで50%減額)の対象になる場合もあります。
2027年以降:貸付用不動産の評価見直し案
令和8年度税制改正大綱を受け、国税庁は2026年9月18日に「貸付用不動産の評価について」の通達案を公表し、10月18日まで意見公募を行いました。
案の概要は次のとおりです。
- 対象:相続・贈与などの前5年以内に、購入など対価を伴う取引で取得・新築した貸付用不動産と、一定の不動産小口化商品(小口化商品は取得時期を問わない)
- 評価:原則として「通常の取引価額」。取得価額をもとに地価の変動などを考慮して計算した金額の80%で評価できる例外も示されています
- 適用:2027年1月1日以後に相続・遺贈・贈与で取得する財産(予定)
通達は本記事の執筆時点で確定しておらず、内容が変わる可能性があります。
直近5年以内に賃貸マンションを購入した方や、これから購入を検討している方は、確定内容を踏まえて対策を見直すことをおすすめします。
評価に必要な書類と調べ方
| 必要な情報 | 調べる書類 |
|---|---|
| 建物の固定資産税評価額 | 固定資産税の課税明細書、固定資産評価証明書 |
| 築年数・総階数・所在階・専有面積・敷地権の割合 | 登記事項証明書(建物の表題部・敷地権の表示) |
| 敷地全体の評価額 | 国税庁の路線価図・評価倍率表、敷地の登記事項証明書・公図 |
国税庁は「居住用の区分所有財産の評価に係る区分所有補正率の計算明細書」を公開しています。相続税の申告では、この明細書を作成して申告書に添付するのが一般的です。
マンション以外の財産も含めた全体の洗い出し方は、相続財産調査のやり方で解説しています。
よくある質問
Q. タワーマンションの相続税対策はもう効果がないのですか?
新ルールでも評価額は市場価格の約6割の水準とされるため、現金より評価額が低くなることはあります。ただし、以前より差は小さく、賃貸用は2027年以降の見直し案もあります。
購入の判断は、税金以外のリスクも含めて検討が必要です。
Q. 2023年以前に購入したマンションも対象ですか?
対象かどうかは「購入した時期」ではなく、「相続・贈与で取得した時期」が2024年1月1日以後かどうかで判定します。
Q. 評価乖離率がマイナスになったらどうなりますか?
評価乖離率が0以下の場合、区分所有権と敷地利用権の価額は原則として0とされます(一棟を単独で所有する場合などの例外あり)。築年数が非常に古い場合などに生じます。
Q. 贈与する場合も同じ評価方法ですか?
はい。2024年1月1日以後の贈与で取得した場合も同じ評価方法が使われます。
まとめ
2024年から、居住用マンションの相続税評価額は区分所有補正率で市場価格に近づけられ、築浅・高層階の物件ほど評価額が上がりやすくなっています。
対象かどうか、小規模宅地等の特例が使えるか、賃貸用なら2027年の見直し案の影響を受けるかで、税額は大きく変わります。
日本クレアス税理士法人では、マンションを含む財産の評価と相続シミュレーションを無料相談で承っています。
お電話(0120-55-4145/平日・土曜 9:00〜18:30)または無料相談フォームからお問い合わせください。
出典:国税庁タックスアンサー No.4667「居住用の区分所有財産の評価」(根拠:相続税法22条、令5課評2-74ほか)、国税庁「貸付用不動産の評価について」(法令解釈通達案、2026年9月公表)。本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。

監修
中村亨
日本クレアス税理士法人 代表
税理士
公認会計士
2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。

