相続放棄の手続きが完了したことは、原則として本人しか知り得ません。
そのため「相続放棄したのに債権者から督促状が届いた」「他の相続人から遺産分割協議に参加するよう求められた」といった事態が起きることがあります。
そこで必要なのが、相続放棄したことを公的に証明する“相続放棄申述受理証明書“です。
本記事では、相続放棄申述受理証明書が必要となるケース・交付を受けるための手続き方法と注意点について解説します。
【この記事でわかること】
- 相続放棄申述受理証明書の役割
- 相続放棄の証明が必要となるケース
- 証明書の交付を受ける際の手続き方法
- 交付請求時の注意点
1.相続放棄申述受理証明書とは?
「相続放棄申述受理証明書」とは、ある相続人が遺産を放棄する手続きを行い(=相続放棄の申述)、これを家庭裁判所が認めた(=受理)ことを証明する書類です。
交付窓口は家庭裁判所であり、相続放棄の手続きが終了した段階から交付請求が認められます。
1-1.受理証明が必要となる理由
相続放棄するにあたり、関係者の承認は法律上不要です。そのため、申述が認められた事実が広く告知されることはありません。黙っていれば申述人本人とその代理人(弁護士など)しか知り得ず、債権者や他の相続人は「当然相続権に基づいて遺産を受け継ぐもの」として申述人に接触します。
こうした状況下で、対外的に相続放棄したことを知らせてその真正を証明するために、相続放棄申述受理証明書が必要となります。
1-2.相続放棄申述受理通知書との違い
相続放棄申述受理証明書のほかに「相続放棄申述受理通知書」と呼ばれる書面があります。 ※以下「証明書」「通知書」とも呼称します。
証明書・通知書ともに、記載内容の違いはほとんどありません。
ただし、債権者や他の相続人に提示するのは「証明書」と考えるべきです。証明書が対外的な文書であるのに対し、通知書はあくまでも申述人本人に受理を知らせるためのものに過ぎないからです。
証明書なら申述人本人でなくても交付請求できる点を含め、通知書との違いをまとめたものが以下表です。
【参考】相続放棄申述受理証明書・相続放棄申述受理通知書の違い
比較項目 | 「証明書」 | 「通知書」 |
特徴 | 相続放棄したことを第三者に対して証明するための文書 | 申述受理を裁判所から申述人本人に知らせるためのもの |
交付のタイミング | 申述受理後、交付請求があったとき(随時何度でも発行) | 相続放棄申述の受理時(1回限り発行) |
交付請求できる人 | 申述人本人・申述人の代理人・利害関係人(他の相続人や債権者など) | 交付請求不要(自動的に交付される) |
書面の内容 | ・管轄の家庭裁判所名 ・事件番号 ・受理日 ・申述人の氏名と本籍地 ・被相続人の氏名と本籍地 |
・管轄の家庭裁判所名 ・事件番号 ・受理日 ・申述人の氏名と本籍地 ・被相続人の氏名と本籍地 ・死亡年月日 |
再発行 | できる | できない |
2.相続放棄申述受理証明書が必要な場合とは?
実際に相続放棄申述受理証明書が必要となる代表的な状況としては、以下2点が挙げられます。
【相続放棄申述受理証明書が必要となるケース】
- 債権者に弁済を迫られたとき
- 放棄しなかった他の相続人が遺産の名義変更手続きを行うとき
ケース1:債権者に弁済を迫られたとき
亡くなった人(=被相続人)の借金が原因で相続放棄したケースでは、冒頭で述べたように「相続放棄後に督促状が届いた」という事態に見舞われることがあります。
債権者である金融機関等の弁済要求を交わすためには、証明書を提示して債務を相続していない旨を知らせなければなりません。
ケース2:他の相続人が遺産の名義変更を行うとき
遺産を放棄しなかった相続人のためにも、相続放棄の受理証明は必要です。
預貯金や不動産等の名義変更手続きを行う際は、窓口で「法定相続人の範囲が分かる資料」(もしくは遺言書や遺産分割協議書)が求められます。左記資料でリストアップされている人のなかに相続放棄申述人が存在するなら、その証明も左記書類に添付しなければなりません。
<【参考/一例】相続放棄申述受理証明書を必要とする手続き>(カッコ内=窓口のある場所)
- 預金相続(被相続人名義の口座がある銀行)
- 有価証券の相続(被相続人名義の口座のある証券会社)
- 不動産の相続登記(管轄法務局)
- 相続に伴う株主名簿の書換請求(株式発行元企業)
では、遺産を承継しようとする人の目線で「相続放棄した人と連絡がとれない」といった困った事態に陥ったとき、どう対処すればいいのでしょうか。
こんな状況下でも、利害関係人として相続放棄申述受理証明書の交付を請求することで、問題なく相続財産の名義変更を受け付けてもらうことができます。
3.申述人本人による相続放棄申述受理証明書の申請手順
前述の通り「相続放棄申述受理証明書」の交付請求は申述人本人でなくとも可能ですが、請求者の立場により手続きのプロセスや必要書類が異なります。
ここではまず、申述人本人からの交付請求手順を解説します。
3-1.交付請求の流れ
申述人本人が証明書交付を受ける際は、必要書類を準備して裁判所に提出するだけで済みます。手続きにあたり、裁判所の窓口を直接訪ねる方法以外にも、遠隔地から郵送でやりとりすることも可能です。
<【申請手順】申述人本人が交付請求する場合>
- 必要書類を準備
- 窓口または郵送で管轄家庭裁判所※に提出
- 裁判所による提出書類チェック
- 証明書交付
※被相続人の最後の住所を管轄する裁判所(相続放棄の申述を行った場所)
窓口での手続きなら、早ければ当日中にそのまま証明書を受け取ることが出来ます。
郵送で手続きする場合は、郵送事情を考慮すると1週間~2週間程度(必要書類の発送後)で証明書を届けてもらうことができます。
3-2.必要書類と費用
交付請求の際は「相続放棄申述受理証明申請書」のほかに添付書類と費用が必要です。用意するものを4点に分類し、それぞれ解説します。
①相続放棄申述受理証明申請書
申述人氏名などの必要項目を記入し、提出します。所定の書式があるため、記入用紙を管轄家庭裁判所で受け取るか、裁判所公式サイトからダウンロード・プリントアウトして使用しましょう。
参考:東京家庭裁判所の記入用紙DLページ http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/syosiki03/index.html
②添付書類・印鑑
申請書に添付する書類として、以下すべて用意しましょう。窓口請求する場合は印鑑持参も忘れずに行います。本人確認書類については、窓口請求する場合は原本・郵送請求する場合はコピーを準備します。
<【添付書類】申述人本人が証明書交付を請求する場合>
- 相続放棄申述受理通知書
- 申述人の認印(スタンプ印不可)
- 申述人の本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)※
- 法定代理人の本人確認書類(申述人本人=未成年者や被後見人の場合)
- 返信先住所を記入した返信用封筒(郵送での請求時のみ必要/82円分の切手貼付要)
※相続放棄申述時と住所が異なっている場合、転居先との住所のつながりを示すものとして、別途戸籍謄本または戸籍附票も必要です。
郵送で交付請求する場合、証明書を送付してもらうための返信用封筒が必要となる点に要注意です。
③交付手数料
「交付手数料150円分×交付を受ける証明書の枚数分」を収入印紙で準備し、①相続放棄申述受理証明申請書の所定欄に貼り付けます。
④委任状(弁護士に任せる場合)
弁護士に手続きを依頼する場合は、代理人に手続きを委任する旨を記載した「委任状」を準備する必要があります。依頼先弁護士に文面を作成してもらい、申述人は署名捺印するだけで済む場合がほとんどです。
4.利害関係人からの相続放棄申述受理証明書の申請手順
利害関係人以外から相続放棄申述受理証明書の交付を求める場合は、事前に把握しておかなければならない情報があること・利害関係を証する書類が必要になることの2点に要注意です。
具体的な交付請求手順の解説に先立ち、どのような立場の人が利害関係人にあたるのか改めて整理します。
<【一例】申述人以外で交付請求できる人(利害関係人にあたる人)>
- 他の相続人(代襲相続人※含む)
- 被相続人の債権者
※代襲相続人とは
死亡した(あるいは相続人から除かれた)親から相続権そのものを承継し、世代を超えて相続する立場の人です。具体的には「祖父母→孫」「おじ・おば→甥・姪」といった相続財産の流れを代襲相続と呼び、矢印の先にいる孫・甥・姪を代襲相続人と呼称します。
4-1.利害関係人が事前に把握すべき情報
利害関係人が相続放棄申述受理証明書を取り寄せる上で、最低でも「管轄家庭裁判所(被相続人の最後の住所)」「事件番号」の2つの情報を把握しておく必要があります。
申述人本人ならばともかく、証明書交付請求先である家庭裁判所(被相続人の最後の住所が属する管轄機関)が分からないと、そもそも申請することが出来ないでしょう。
また、申述受理の情報は事件番号で管理されています。事件番号が分からなければ、裁判所の担当者に照会してもらうことが出来ません。
さらに問題なのは、利害関係人が証明書を取り寄せるケースの多くは「申述人本人の協力が得られない」といった状況下にあることです。
以上のことから、証明書交付請求前に必要最低限の情報を得るため、調査が必要になる可能性が高いと考えるべきでしょう。
4-2.交付請求の流れ
事件番号・管轄家庭裁判所のどちらも把握できていれば、申述人本人による請求と同じく、必要書類を提出するだけで証明書交付を受けられます。
いずれの情報も不明の場合、以下のフローで手続きしなければなりません。
<【申請手順】利害関係人が交付請求する場合>
- 被相続人の最後の住所を調べる
- 申述照会を行う
- 証明書の交付請求(窓口または郵送での手続き可)
⇒証明書交付
上記1・2の方法は後述とし、ここではまず3の証明書交付請求時の手続きから解説します。
4-3.証明書交付請求時の必要書類&費用
証明書交付請求の際に必要なものは、申述人本人から請求を行う場合とほとんど同じです(以下①〜⑤)。違いが生じるのは、相続放棄申述受理通知書ではなく「③利害関係を証する書類」を要する点です。
①相続放棄申述受理証明申請書
申述人氏名などの必要項目を記入し、提出します。
所定の書式があるため、記入用紙を管轄家庭裁判所で受け取るか、裁判所公式サイトからダウンロード・プリントアウトして使用しましょう。
参考:東京家庭裁判所の記入用紙DLページ:http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/syosiki03/index.html
②基本的な添付書類・印鑑
申請書に添付する書類として、以下すべて用意しましょう。窓口請求する場合は印鑑持参も忘れずに行います。本人確認書類については、窓口請求する場合は原本・郵送請求する場合はコピーを準備します。
<【添付書類】利害関係人が証明書交付を請求する場合>
- 利害関係を証する書類
- 請求者の認印または法人印(スタンプ印不可)
- 請求者の本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)※
- 返信先住所を記入した返信用封筒(郵送での請求時のみ必要/82円分の切手貼付要)
※請求者が法人の場合は、以下いずれかの組み合わせの書類が必要です。
- 法人代表者が手続きする場合:代表者の本人確認書類+法人資格証明書の原本
- 従業員が手続きする場合:従業員の本人確認書類+代表者印のある社員証明書+代表者作成の委任状+法人資格証明書の原本
③被相続人との利害関係を証する書類
交付請求で必要な「利害関係を証する書類」は、個別のケースで異なります。準備すべき書類については、請求前に管轄家庭裁判所へ確認をとりましょう。
ここでは一般的な必要書類の紹介に留め、交付請求者が相続人である場合(パターン1)・債権者である場合(パターン2)に分けて解説します。
<パターン1:相続人=交付請求者の場合>
相続人が交付請求を行う場合は、以下2点の書類が全て必要となります。相続の優先順位が低い(=被相続人との関係性が薄い)ほど用意する戸籍謄本が増えるため、漏れや請求ミスに要注意です。
- 請求者の住民票
- 請求者と被相続人との相続関係が分かる戸籍謄本(発行3ヵ月以内/以下表)
<【参考】請求者と被相続人との相続関係が分かる戸籍謄本の組み合わせ>
請求者の続柄 | 戸籍謄本の組み合わせ |
配偶者 | 被相続人と同一の戸籍謄本(請求者と被相続人の名前が両方記載され、被相続人の死亡が分かるもの) |
子ども | 請求者の戸籍謄本+被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 |
孫以降の直系卑属(代襲相続人) | 請求者の戸籍謄本+請求者の親から被相続人の子にいたるまでの直系尊属の戸籍謄本(出生情報が記載され家系の繋がりが分かるもの)+被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 |
父母 | 請求者の戸籍謄本+被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 |
祖父母以上の直系尊属 | 請求者の戸籍謄本+請求者の子から被相続人の子にいたるまでの直系卑属の戸籍謄本(出生情報が記載され家系の繋がりが分かるもの)+被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 |
兄弟姉妹 | 請求者の戸籍謄本+請求者の親の戸籍謄本(請求者と被相続人の出生が記載されているもの)+被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 |
甥または姪 (代襲相続人) |
請求者の戸籍謄本+請求者の親の戸籍謄本(請求者の出生が記載されているもの)+被相続人の祖父母の戸籍謄本(被相続人と請求者の親の出生が記載されているもの)+被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本 |
<パターン2:債権者=交付請求者の場合>
債権者から証明書交付を請求する場合は、以下最大4点の書類が全て必要となります。交付請求者が法人の場合、必要書類が増える点に注意しましょう。
- 金銭貸借契約書または借用書
- 請求者の印鑑登録証明書(上記書類に使用されている印鑑の証明書)
- (請求者=法人の場合)法人登記事項証明書の原本
- (請求者=債権回収会社の場合)債権回収に関する委託証明書・債権譲渡通知書などの原本
④交付手数料
「交付手数料150円分×交付を受ける証明書の枚数分」を収入印紙で準備し、①相続放棄申述受理証明申請書の所定欄に貼り付けます。
⑤委任状(弁護士に任せる場合)
弁護士に手続きを依頼する場合は、代理人に手続きを委任する旨を記載した「委任状」を準備する必要があります。依頼先弁護士に文面を作成してもらい、申述人は署名捺印するだけで済む場合がほとんどです。
4-4.管轄家庭裁判所(被相続人の最後の住所)を調べる方法
ここでいったん話題をさかのぼり、そもそも管轄家庭裁判所が分からない場合の調査方法を紹介します。
各地の管轄は裁判所公式サイトで確認可能ですが、被相続人の最後の住所がまったく分からない場合は調べようがありません。そこで、左記住所を特定するために、把握できている生前の居住地の役場で「第三者による住民票請求」を行う必要があります。
<「第三者による住民票請求」の必要物>
住民票請求の際に提出するものは、相続放棄申述受理証明書の交付請求時の必要書類(利害関係を証する書類含む)と同じもので原則問題ありません。 (役場により判断が異なるため、事前に確認をとりましょう。)
取り寄せた住民票に転居先が記載されている場合は、さらに転居先の役場へと住民票請求を繰り返すことで、死亡時の住所(死亡による除籍が行われた住所)にたどり着くことが出来ます。
【例】東京都新宿区に住んでいたはずの債務者と連絡がとれなくなり、しばらく経って亡くなったことを知った場合(死亡時点で千葉県千葉市に住んでいたと仮定)
新宿区役所で「第三者による住民票請求」を行う⇒記載されている転出先役場でさらに住民票請求を行う⇒千葉市の役場で最終居住地確定⇒千葉家庭裁判所で相続放棄申述受理証明書の交付請求開始
4-5.事件番号を調べる方法
管轄家庭裁判所が分かったら、事件番号を特定するために「申述照会」(正式名称“相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会”)を行います。 裁判所窓口もしくは郵送のどちらでも手続きでき、照会者ごとに以下すべての書類提出が必須となります。
※添付書類の注意点:
特別な記載のない場合、原本提出が求められます。原本返還を希望する場合は、書類ごとに原本+コピーの計2通を添付します。
【申述照会の必要書類】相続人=照会者の場合
- 照会申請書(管轄裁判所の所定書式のもの)
- 被相続人等目録(同上)
- 照会者の住民票
- 被相続人の本籍地記載がある住民票除票
- 照会者+被相続人の戸籍謄本(発行3ヶ月以内/相続関係がわかるもの)
- 返信用封筒(返信先住所が記載されたもの/82円分の切手貼付要)
- 委任状(代理人に委任する場合のみ)
- 相続関係図(手書き可)
【申述照会の必要書類】相続人以外の利害関係人=照会者の場合
- 照会申請書(管轄裁判所の所定書式のもの)
- 被相続人等目録(同上)
- 利害関係を証する書面(コピー可)
- 被相続人の本籍地記載がある住民票除票
- 照会者の資格を証明する書類
- 個人の場合:照会者(個人)の住民票
- 法人の場合:商業登記簿謄本または法人資格証明書
- 返信用封筒(返信先住所が記載されたもの/82円分の切手貼付要)
- 相続関係図(手書き可)
なお、申述照会の手数料は無料です。証明書交付請求時とは異なり、申請書類に収入印紙を貼付する必要はありません。
5.相続放棄申述受理証明書の手続きの注意点
申述受理証明の手続きにあたり、交付請求者には留意すべきポイントがあります。
ミスや見落としがあると「放棄したはずの財産から債務履行義務が生じる」「放棄しなかった人の相続手続きが進まない」等の本末転倒と言える事態が起きるでしょう。
特に間違いが起こりやすい部分について、ここで4点紹介します。
①交付請求は「受理証明したい人数分」行う
相続放棄申述受理証明書は1枚につき申述人1人分しか証明できません。複数の申述人を1枚の書面でまとめて受理証明することは出来ないのです。
例えば、一家そろって相続放棄したことを証明したい場合(債権者へ提示する場合など)には、申述人ごとにそれぞれ必要書類と印鑑を準備して交付請求を行う必要があります。
②交付申請の期限は申述後30年間
相続放棄の情報は申述受理後30年経つと破棄され、以降の証明書交付請求は不可です。
申述受理から相当の時間が立っているケースを現実的に考えると、被相続人の債権者に対しては「時効援用」(債務の時効は5年または10年)を主張すれば、証明書なしで弁済義務を免れることが出来るでしょう。
③申述人本人からの交付請求は通知書が必須
必要書類の解説章でも紹介した通り、申述人本人からの交付請求は「相続放棄申述受理通知書」が必須です。万が一通知書をなくしてしまった場合は、申述照会を行なって事件番号のわかる書類を取り寄せなければなりません。
手続きを煩雑化させないため、家庭裁判所から届いた書類は大切に保管しましょう。
④「債務の承認」にあたる行為は避ける
債務の承認とは、弁済する義務があることを認めて実際に支払いを行うことです。債務の承認にあたる行為が認められる場合、相続放棄または時効により消滅したはずの債務が復活してしまいます。
証明書交付にあたっては必要書類が大量に及ぶことがあり、準備に手間取って時間がかかってしまう可能性があります。当然、そのあいだに債権者から何度も督促が行われるでしょう。
督促をやめさせるための一時しのぎであったとしても、以下のような行動は厳禁です。
<【債務の承認にあたる行為は避ける】相続放棄申述人のNG行動例>
- その気がないのに返済約束をする
- 「一部でも支払ってほしい」と言われ、応じる
- 送られてきた「債務承認書」にサインする
債権者と接触する機会がある限り、うっかり債務承認してしまうリスクは解消できません。相続放棄申述の段階から弁護士を代理人とすることで、債権者との文面や口頭でのやりとりは一切回避できます。
6.まとめ
「相続放棄申述受理証明書」は、債権者・他の相続人・その他第三者に対して相続放棄したことを証明するために必要です。
問題となるのは、交付請求にかかる手間やコストでしょう。 申述人本人からの請求であればともかく、利害関係人からの請求は事前調査・必要書類の収集に手間取ることになります。申述人が相続放棄申述受理証明書を紛失して事件番号が分からなくなってしまった場合も同様です。
以上のことから、相続放棄の申述を始める段階での弁護士依頼は、申述人としてなるべく心がけておきたいことだと言えます。受理証明を含めてあらかじめ手続きの見通しを立て、必要なときに速やかに対応をとることが出来るからです。 被相続人の“負の遺産”に困っている人は、今後の方針を固めるため本記事をお役立てください。
日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬
2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ)
・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数
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相続相談はどこにするべき?専門家(税理士、司法書士、弁護士)の強み
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