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ーコラムー
相続税の申告手続き

失踪宣告と認定死亡~相続開始の例外規定について

2016.9.25

相続は被相続人の死亡により「相続開始」となります。しかし、事故や災害などの原因により、生死が不明となったり、遺体が発見できないため死亡を立証することが不能となったりすることがあります。

そのような場合被相続人「死亡したものとみなす」、もしくは「死亡したこととする」ことで相続開始、とする制度があります。今回の記事で紹介する「失踪宣告」や「認定死亡」という制度のことです。

「失踪宣告」について

失踪宣告と認定死亡-相続開始の例外規定について

失踪宣告とは、不在者(従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者)につき、一定期間生死が不明となっている場合に、法律上死亡したものとみなす効果を発生させる制度です。

家庭裁判所は申立てにより失踪宣告をすることができ、失踪宣告には普通失踪と特別失踪の二種類があります。

普通失踪

普通失踪とは、理由の如何を問わず、ある人の生死が7年間不明である場合に適用されるものを言います。

普通失踪の場合には,利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすることで、期間満了時(消息を絶ってから7年が経過した時点)から失踪宣告の効果が生ずることになり、失踪者は死亡したものとみなされます。

失踪者が死亡したものとみなされることで、相続等の各種手続を行うことが可能になっていきます。

※普通失踪の場合、失踪宣告の効果が生じるのは期間満了時であり、失踪宣告の審判が確定した日ではないことに注意しましょう。

特別失踪

特別失踪(危難失踪ともいう)とは、戦争・船舶の沈没・震災等、死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後その生死が1年間不明である場合に適用されるものを言います。

特別失踪の場合も普通失踪の場合と同様、利害関係人が家庭裁判所に失踪宣告の申立てをする必要があります

そして、特別失踪の場合は、危難が去った時に失踪宣告の効果が生ずることになり、失踪者は死亡したものとみなされます。

失踪宣告の取消

失踪宣告の効果は失踪者が死亡したものと「みなす」ものであり、認定死亡制度の場合の「推定」規定とは異なります。

従って、万が一、失踪者が生きていた場合等には、単純に生きていたことを証明するだけでは失踪宣告を覆すことはできません。

そのような場合には、本人又は利害関係人が家庭裁判所に対して失踪宣告の取消を請求し、その決定を受ける必要があります。 失踪宣告の取消ができる場合には、次の様な場合があります。

 

① 失踪者が生存することの証明があったとき

② 失踪宣告によって死亡したものとみなされた時と異なる時に死亡したことの証明があったとき

失踪宣告が取り消された場合には、原則として、従来の法律関係が復活します。すなわち、失踪宣告によって開始された相続等が、そもそもなかったものとなるのです。

ただし、失踪宣告が取り消された場合であっても、相続等で何らかの利益を得た者は、その得た利益全てを返還する必要はなく、「現に利益を受けている限度」のみを返還すればよいとされています。

これは、例えば、相続で1億円を得た者がその1億円を全て使い切って手元に1円も無くなってしまっていたら、返還しようにも返還できないということが起こり得るからです。

従って、得た利益(ここでは1億円)が手元に残っている場合(現金としてだけではなく、建物や土地等の物として残っている場合を含む)には、それを限度に変換する必要があります。

また、失踪宣告後に再婚した場合において、後婚(再婚)夫妻の双方が失踪者の生存を知らなかったときは、失踪宣告が取り消された後においても、前婚は復活しないこととされています。

なお、知っていたかどうかを要求せず、後婚を優先させるという学説もあります。これには、現在の当事者同士の意思を尊重させたいという意味がある様です。

ここまでは、”死亡したものとみなす”失踪宣告について解説しました。ここからは”死亡したと推定する”認定死亡について解説します。 似たような内容ではありますが、法的効果や取消しの方法など違いも多くみられます。

認定死亡について

死亡したと推定する”認定死亡について

実際に死亡しているかどうかわからない状況において、法律上、死亡したものとして取り扱う制度には、失踪宣告の他に「認定死亡」があります。

認定死亡とは、災害等の事由により死亡を取り調べた官庁等の報告によって、死亡と認定することをいいます。

死亡が認定されると、戸籍簿に「死亡」と記載されることになります。これにより、その人は死亡したものとして、相続等の手続きを開始することができる様になるのです。万が一、本人が生きていた場合には戸籍の訂正を行うことになります。

失踪宣告と認定死亡はどちらも、実際に死亡しているかどうかの確認はできていないが、死亡しているであろうことがほぼ確実である場合に、その人が死亡したものとして取り扱うという点で類似している制度ですが、以下に掲げる違いがあります。

① 死亡の蓋然性の強弱

失踪宣告は、不在者が一定期間生死不明となっている場合に利用することができる制度です。

一方、認定死亡は、ある人が死亡したであろうことが確実である場合に用いられる制度です。

どちらも死亡しているかどうかわからない状況で利用されますが、認定死亡の方がより死亡が確実である場合に用いられる制度といえます。

例えば、ある人が失踪して長期間不在である場合では、災害等により死亡が確実である場合とはいえず、失踪者の生死が一定期間不明である場合に該当し、失踪宣告を用いることになります。

② 法的効果

失踪宣告の場合は、死亡したものと「みなす」規定であり、認定死亡の場合は、死亡したものと「推定する」規定です。

どちらも似た様な意味ですが、失踪宣告の場合には、ある人が生きていたことを証明するだけでは失踪宣告の取消が行われず、失踪宣告の取消を行うためには再度裁判が必要になります。

一方、認定死亡の場合には、ある人が生きていたこと証明した場合、認定死亡が取り消され、戸籍上の「死亡」の記載が訂正されることになります。

③ 認定機関

失踪宣告の場合は、家庭裁判所が裁判をもって決定するのに対し、認定死亡の場合には、官庁・公署の報告によって死亡と認定することになります。


相続人が見つからないときの例外規定について解説しました。

相続の状況はケースバイケースであり、もしかしたらご自身が関わる相続で今回紹介したような制度を使うことになるかもしれません。相続について少しでも疑問やお悩みがある場合は、専門家の手を借りながら手続きを進めていくことをおすすめします。