我が国の税制上、金銭や価値のある財産を誰かに贈与すると、その財産を貰い受けた側に利益が発生したとして「贈与税」が課税されることがあります。
善意で贈与した財産にも課税されてしまうことがあるので、贈与税については基本的な知識を得ておくことが大切です。
この記事では贈与税の基本的な仕組みとして、課税される財産と課税されない財産について見ていきます。
目次 |
---|
1.贈与税がかかる財産とは? |
1.贈与税がかかる財産とは?
1-1.個人から個人への贈与が対象
まずは贈与税の対象になる財産ですが、基本的に個人から個人に贈与された財産が対象になります。
原則として、個人から法人に対する贈与は法人側に法人税が、法人から個人への贈与には法人側に一定の法人税と個人側に一時所得の所得税が、法人から法人への贈与はそれぞれに法人税が課税されることになります。
現実の財産としては現金だけでなく、有価証券や不動産、宝石等貴金属類なども対象になります。 また特殊な贈与財産として「みなし贈与財産」があり、これも贈与税の対象になります。
みなし贈与財産はすこし分かりづらいのですが、上の現金や有価証券などと違って、儲けや利益などの「実益」が発生したとみられる場合に、その実益を課税対象とするものです。
例えば生命保険金のうち、契約者(保険料負担者)が夫で被保険者が妻、保険金の受け取り人が子である場合など保険料負担者と保険金受取人が異なる場合、妻の死亡によって子が受け取る保険金は生存している夫から子への贈与とみなし、贈与税の課税対象になります。
1-2.差額や利益を得た場合
それから、本来の時価よりも著しく低い価額で財産を譲渡した場合(低額譲受)には、その財産の受贈者は本来の価値との差額分儲けていることになるので、この差額が贈与財産とみなされて当該額に贈与税が課税されます。
また、自身が負っている負債について免除を受けたり、債務を肩代わりしてもらった場合もその分利益を得たとみなされて贈与税の課税対象にされます。 ただし債務者が資力を失った状態で、その扶養義務者が肩代わりするような場合は除かれます。
他にも、信託契約において委託者と受益者が異なる場合などもみなし贈与として贈与税の対象になります。
みなし贈与の判断は複雑になってしまうこともあり、慎重に生前対策としての贈与を進めるには専門家に相談しながらすすめることをおすすめします。贈与税は税率が高いですので、予想以上に贈与税がかかってしまい生前対策が上手くいかなかった、ということにもなりかねません。
さて、ここからの記事では贈与税が”かからない”財産の例を確認していきましょう。
2.贈与税がかからない財産の例
では次に贈与税がかからない財産について代表的なものを見てみます。
2-1.法人からの贈与により取得した財産
ここまでで説明したように、法人から個人に対してなされた贈与は適用される税目が異なるので贈与税は課税されません。 (法人側には法人税、個人側には所得税がかかります)
2-2.生活費、教育費
夫婦や親子間、兄弟姉妹の関係など民法上の扶養義務者が被扶養者を養うためになされる生活費や教育費の贈与で通常必要とされるものは課税されません。
ただし、その額が過大である場合は課税対象にされます。
2-3.公益を目的とする事業に使われる財産
宗教、学術、慈善など一定の公益目的の事業に使用されることが確実なものは課税対象外になります。
2-4.奨学金
奨学金の支給を目的にする特定公益信託から交付される財産も課税対象外です。
2-5.選挙運動のための寄付
公職選挙法に則った選挙運動を行う候補者が取得した財産上の利益で、当該法の規定による報告がなされたものは課税対象外になります。
2-6.香典、祝儀等
花輪代や年末年始の贈答、見舞などで受け取った金品で社会通念上相当と認められるものも課税対象外です。
2-7.心身障害者共済制度に基づいた給付金
特定障害者扶養信託契約に基づく信託受益権として、国内に居住する特定障害者にあたる者が当該契約に基づき取得した財産は、一定の手続きをとることにより信託財産の価額のうち6000万円(特別障害者以外の者は3000万円)までは贈与税がかかりません。
2-8.その他
「教育資金一括贈与」、「結婚・子育て資金の一括贈与」、「相続時精算課税制度」など特別に用意された税制上の制度に則ってなされた贈与については、当該各制度に定める一定枠の財産については贈与税が非課税になったり、課税が繰り延べられたりします。
また相続税との調整により、相続税が課税される財産については贈与税が課税されないこともあります。
相続があった年(被相続人が死亡した年)に贈与された財産については相続税の課税財産に加えて計算することになるので、原則として贈与税は課税されません。 ただし、相続財産を取得しなかった人が受けた当概年の贈与については贈与税が課税されます。
3.まとめ
今回は贈与税の基本的な仕組みの中で、課税される財産とされない財産の概要を見てきました。
基本的には個人から個人への贈与財産に贈与税の適用があり、法人が絡む贈与の場合は他の税目が適用になります。
また少し分かりにくい概念ですが、「みなし贈与財産」というものがあることも覚えておいてください。
シンプルな贈与行為だけでなく、実質的に利益や儲けが発生するのと同視できたり、財産が増加するとみられる行為も贈与税の対象に入ることがあります。逆に扶養義務者による生活費の工面などは課税されませんが、その額が過大になると課税されてしまうので一定の注意が必要です。
【お役立ちコンテンツ】
相続相談はどこにするべき?専門家(税理士、司法書士、弁護士)の強み
【クレアスの相続税サービス】
このコラムは「日本クレアス税理士法人」が公開しております。
東京本社
〒100-6033東京都千代田区霞が関3丁目2番5号 霞が関ビルディング33階
電話:03-3593-3243(個別相談予約窓口)
FAX:03-3593-3246
※コラムの情報は公開時のものです。最新の情報は個別相談でお問合せください