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ーコラムー
遺言書を作成する
税理士監修記事

遺言書の効力が及ぶ範囲とは?無効になる場合や効力を保つポイント

公開日:2023.10.31 更新日:2024.03.01

遺言書では、遺産の相続方法などさまざまな事柄を指定可能です。

ただし、効力が及ぶ範囲は限定されているため、関係ないことまでを指定することはできません。

そして、適切な方法で作成しない場合には、すべての効力が失われてしまう場合があります。

そこで本記事では、遺言書の効力が及ぶ範囲や効力の期間を解説。

また、無効になる場合や効力を保つためのポイントも紹介します。

遺言書を作成したい・無効にしたくないという方はぜひご覧ください。

1. 遺言書の効力が発揮される範囲・事柄

遺言書の効力が及ぶ範囲は限定されていますが、さまざまな事柄を指定可能です。

<遺言書の効力によって指定可能な事柄>

  • 誰にどの財産をどのくらい相続させるか
  • 相続人でない人に遺産を遺贈する
  • 遺産分割を禁止する
  • 非嫡出子を認知する
  • 相続人を廃除する
  • 遺言執行者を指定する
  • 後見人を指定する
  • 遺産を寄付する
  • 生前贈与していた遺産の処理方法を指定する
  • 生命保険金の受取人を変更する

    効力が及ぶ範囲や指定できる事柄を1つずつ解説します。

    1-1. 誰にどの財産をどのくらい相続させるか

    遺言書では、誰にどの財産をどのくらい相続させるかといった指定が可能です。

    民法では各相続人の取り分(法定相続分)が規定されていますが、これはあくまで原則なため、遺言書では自由に取り分を指定できます。

    法定相続分を上回る場合でも下回る場合でも、遺言書で指定された内容が優先されます。

    また、相続させる財産も細かく指定できます。

    たとえば「息子には不動産Aを相続させる」といった指定が可能です。

    1-2. 相続人でない人に遺産を遺贈する

    遺言書では、相続人でない人への遺贈も指定できます。

    孫や従兄弟などは、法定相続人にはなれないため、通常の相続では遺産を遺すことができません。

    しかし、遺言書を利用すれば、遺贈という形で相続人でない人へも財産を遺すことが可能です。

    1-3. 遺産分割を禁止する

    遺言書では、遺産分割の禁止を最大5年間指定可能です。

    相続人同士が遺産分割で揉めそうな場合など、冷却期間を設けるために指定される場合があります。

    また、相続開始時点で未成年者の相続人がいる場合にも、遺産分割を禁止することがあります。

    期間は5年以内であれば自由に設定でき、期間に指定がない場合には、自動的に5年間禁止の効力を発揮します。

    1-4. 非嫡出子を認知する

    遺言書では、非嫡出子を認知できます。

    非嫡出子とは、結婚をしていない内縁関係の相手との間の子どもです。

    非嫡出子は認知を受けない限り、相続人としての権利がありませんが、認知を受けることで実子と同じ相続権を取得できます。

    財産を相続させたいという非嫡出子がいる場合には、遺言書で認知することを記載しましょう。

    1-5. 相続人を廃除する

    遺言書では、相続人の権利を剥奪する相続廃除者を指定できます。

    相続廃除とは、被相続人の意思によって相続権を剥奪することを指します。

    生前に家庭裁判所に申し立てることもできますが、遺言書での実行も可能です。

    特定の相続人から虐待を受けていた場合などは、自分の死後に効力が発揮される遺言書を利用すると安心でしょう。

    なお、相続廃除を指定する場合には、遺言執行者の選任が必要です。

    1-6. 遺言執行者を指定する

    遺言書では、遺言執行者を指定可能です。

    遺言執行者とは、遺言者に代わり遺言内容の実現に向けてさまざまな手続きを行う人を指します。

    遺言執行者の選任は必須事項ではありませんが、指定しておくことで遺言を確実に実現できる可能性が高まります。

    遺言執行者には「未成年者」・「破産者」以外であれば誰でもなることが可能です。

    なお、遺言書で「相続廃除」・「非嫡出子の認知」・「特定遺贈」を指定する場合には、必ず遺言執行者も指定する必要があります。

    1-7. 未成年後見人を指定する

    遺言書では、未成年後見人を指定可能です。

    未成年後見人とは、親権者がいない未成年者の代理人として、養育や財産管理・契約などを行う者を指します。

    未成年者の子どもがいて、自分の死後親権者がいなくなってしまうという場合には、遺言書で未成年後見人を指定しましょう。

    なお、未成年後見人を指定する場合には、その後見人を監督する未成年後見監督人も指定することが推奨されています。

    1-8. 遺産を寄付する

    自分の遺産を特定の団体などに寄付したいという場合にも、遺言書による指定が可能です。

    慈善活動に役立ててほしい場合や遺産を遺す相手が誰もいないという場合には、遺言書に遺産を寄付することを記載しましょう。

    1-9. 生前贈与していた遺産の処理方法を指定する

    遺言書では、生前贈与した遺産の処理方法が指定可能です。

    特定の相続人に対して生前贈与をしていた場合には、その相続人は特別受益者となります。

    特別受益は遺産の前渡しと解釈されるため、遺産分割を計算する場合に持ち戻されることが一般的です。

    <特別受益取り戻しの例>

    • 特別受益者Aの本来の相続分:2,000万円
    • 特別受益:1,000万円
    • 持ち戻し後の相続分:1,000万円

      通常であれば、上記のように法定相続分から特別受益が差し引かれた分を相続することになります。

      しかし、遺言書によって特別受益の持ち戻しを免除する旨を記載した場合には、特別受益者であっても本来の相続分を受け取ることが可能です。

      1-10. 生命保険金の受取人を変更する

      遺言書によって、生命保険金の受取人を変更することが可能です。

      本来であれば契約変更の手続きが必要ですが、平成22年4月1日以降に締結された契約であれば遺言書によって変更ができます。

      ただし、変更ができない場合もあるため、必ず保険会社に確認しましょう。

      また、生命保険金の受取人を変更する場合には、遺言内容を保険会社に連絡する必要があります。

      なぜなら保険会社側が知らない場合には、元の受取人に生命保険金が振り込まれてしまうからです。

      2. 遺言書の効力はいつから発揮される?

      遺言書の効力は、遺言者の死亡時点から発揮されます。

      そのため遺言によって遺産相続が確定している人でも、遺言者が存命の間はその財産に対して何の権利も発生しません。

      遺言者の死亡を起因として効力を発揮する遺言書ですが、有効期間はあるのでしょうか。

      2-1. 遺言書の有効期間は?

      遺言書には有効期間がなく、効力は半永久的に持続します。

      そのため、たとえ30年前に作成された遺言書であっても有効です。

      ただ、作成した遺言者であれば、内容の修正や作り直し・撤回ができます。

      2-2. 勝手に開封すると効力はなくなる?

      遺言書を検認せずに開封してしまった場合でも、効力が失われることはありません。

      秘密証書遺言と法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は、開封前に家庭裁判所の検認手続きを受ける必要があることが規定されています。

      仮に開封してしまった場合には、正直に申告したうえで検認手続きを受けましょう。

      ただ、効力がなくなることはありませんが、開封者に5万円以下の罰金が課せられる場合があります。

      3. 遺言書の効力がなくなることはある?

      遺言書は遺言者の死亡から半永久的に効力が発揮されますが、効力がなくなることもあります。

      下記では、遺言書が無効になってしまうパターンを解説します。

      <遺言書の効力がなくなる場合>

      • 作成方法に則っていない場合は無効になる
      • 部分的に無効になる場合がある
      • 認知症などの場合には無効になる可能性がある

        遺言書を有効にするためにも、無効になってしまうパターンを理解しておきましょう。

        3-1. 作成方法に則っていない場合は無効になる

        遺言書には種類ごとに作成方法が規定されており、その方法に則っていない場合には効力が認められません。

        たとえば自筆証書遺言の場合には、自筆の署名と押印が各所に必要です。

        この署名と押印が1箇所でもなかった場合には、遺言書全体の効力が無効になってしまいます。

        ほかの遺言書も同様なため、作成方法の不備には十分に注意しましょう。

        3-2. 部分的に無効になる場合がある

        遺言書作成時から状況が変化することで、遺言書が部分的に無効になる場合があります。

        たとえば「指定された相続人が亡くなった・財産がなくなった」場合には、その部分の記載のみが無効になります。

        一部が無効になったからといって全体が無効になるわけではありません。

        しかし、無効になる箇所があると遺産分割が不平等になってしまう可能性があり、トラブルに発展してしまう場合があります。

        3-3. 認知症などの場合には無効になる可能性がある

        遺言書の形式に不備がなかったとしても、状況によって遺言書全体が無効になってしまう可能性があります。

        たとえば、遺言書の作成当時に認知症を発症していた場合には、意思能力が欠如しているとして遺言書が無効になってしまいます。

        しかし、認知症だからといってすべての場合で無効になるわけではありません。

        作成当時に明確な意思能力があったことを証明できれば、認知症であっても有効な遺言書が作成できます。

        認知症のほか下記のような場合には、遺言書が無効になる可能性があります。

        1. 複数人で書いている
        2. 作成時に15歳未満であった
        3. 本人の意思で書いていない可能性がある
        4. 証人が不適格者だった

          このように遺言書が効力を発揮するためには、さまざまな要件を満たさなければなりません。

          4. 遺言書の効力を保つためのポイント

          遺言書の効力を保つために意識するべきポイントを紹介します。

          <遺言書の効力を保つポイント>

          • ルールに則って作成する
          • 公正証書遺言を利用する
          • 保管方法にも気を遣う

          それぞれのポイントを解説します。

          4-1. ルールに則って作成する

          前述のように遺言が効力を発揮するためには、さまざまな条件を満たす必要があります。

          遺言書の種類別のルールを紹介しますので、作成する際にお役立てください。

          <自筆証書遺言の作成ルール>

          • 遺言書の全文を自筆する
          • 作成した日付を記載する
          • 自筆で証明し押印する
          • 訂正・加筆ルールを遵守する

            <自筆証書遺言の作成ルール>

            • 公証役場で遺言者の口述のもと公証人が作成する
              (公証役場に行けない場合は、公証人の出張が可能)
            • 証人2名に立ち会ってもらう
            • 遺言者・証人2名・公証人が署名捺印する

              <自筆証書遺言の作成ルール>

              • 自筆で署名・押印する
              • 所定の方法で封印する

                これらのルールに則って、遺言書を作成しましょう。

                4-2. 公正証書遺言を利用する

                遺言書の効力を発揮させるためには、公正証書遺言の利用がおすすめです。

                自筆証書遺言・秘密証書遺言は、内容の確認を第三者にしてもらうことがないため、形式の不備によって無効になる事例が少なくありません。

                その点、公正証書遺言は公証人が作成し、形式の確認まで行ってもらえるため、最も無効になりにくい方法です。

                また、原本を公証役場で保管してもらえるため、作成後に隠蔽や偽造などによって効力が発揮されなくなる心配もありません。

                遺言書の作成目的は自分の意思を反映させることなので、一番無効になりにくい公正証書遺言を利用するといいでしょう。

                4-3. 保管方法にも気を遣う

                自筆証書遺言・秘密証書遺言を作成する場合には、保管方法にも気を遣いましょう。

                上記2つの遺言書は、悪意ある相続人によって、遺言書が破棄・偽造されてしまう可能性があります。

                そのため、わかりやすいところに保管しておくと、遺言書の効力が発揮できなくなります。

                専門家に預かってもらうことや、自筆証書遺言の場合には、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用するといいでしょう。

                5. 遺言書の効力に関してよくある質問

                遺言書の効力についてよくある質問を3つピックアップして紹介します。

                <よくある質問>

                • 遺言の効力は遺留分よりも優先される?
                • 不公平な遺言は効力を無視できる?
                • 複数の遺言がある場合効力は発揮される?

                  遺言の効力についての疑問を解消し、遺言作成の際にお役立てください。

                  5-1. 遺言の効力は遺留分よりも優先される?

                  遺言の効力が遺留分よりも優先されることはありません。

                  遺留分とは、一部の法定相続人に認められている権利で、最低限の遺産相続割合を指します。

                  仮にこの遺留分を遺言で侵害してしまった場合、相続人は遺留分侵害額請求で取り戻すことが可能です。

                  つまり、遺言よりも遺留分が優先されます。

                  5-2. 不公平な遺言は効力を無視できる?

                  自分にとって不公平な遺言であったとしても、効力を無視することは基本的にできません。

                  遺言書が効力を有する場合には、遺産相続において最も優先されます。

                  しかし、相続人と遺言執行者全員の同意があれば、遺言書の内容を無視して遺産分割協議を行うことが認められています。

                  ただ、1人だけでは遺言書の効力を無視することができませんので注意しましょう。

                  5-3. 複数の遺言がある場合効力は発揮される?

                  複数の遺言があった場合でも、形式に不備がなければすべての効力が発揮されます。

                  ただし、作成した日付の新しいものから優先的に効力を持ちます。

                  例を用いて解説します。

                  <例1>

                  ◎「長男に〇〇財産を相続させる」 日付:2023年6月1日

                  ×「次男に〇〇財産を相続させる」 日付:2022年4月1日

                  このように同じ財産に対して、矛盾する指定があった場合には、日付が新しい遺言書の内容が優先されます。

                  <例2>

                  ◎「長男に〇〇財産を相続させる」 日付:2023年6月1日

                  ◎「次男に△△財産を相続させる」 日付:2022年4月1日

                  上記のように日付は違うものの、指定する財産が違い内容に矛盾がない場合には、どちらの遺言書も効力が発揮されます。

                  形式に不備がなければすべての遺言書が効力を持つこと・内容に矛盾がある場合には新しい日付の遺言書が優先されることを覚えておきましょう。

                  6. 遺言書を適切に作成・管理して効力を発揮させよう

                  遺言書が適切な効力を発揮するためには、厳格なルールに則って作成しなければなりません。

                  遺言書ではさまざまな指定ができますが、効力が及ぶ範囲・事柄は限定されています。

                  基本的に内容に不備がない限り効力が失われることはありませんが、状況によっては無効になってしまうこともあります。

                  本記事で解説してきたように遺言書の作成は、注意点が多く難しいです。

                  そのため、不安がある・相続についてあまり知らないという場合には専門家に依頼しましょう。

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