ーコラムー
遺言書を作成する

遺言には何を記載できる?~法定遺言事項と付言事項について

2017.3.13

遺された家族間の争いがない相続を実現するには、遺言書の作成が有効です。

遺言書には法律上、法的効力が認められている法定遺言事項(ほうていゆいごんじこう)」と自分の希望や家族への感謝の気持ちを伝える等、自由に記載することができる付言事項(ふげんじこう)」があります。

今回の記事では、法定遺言事項で指定できる内容と、付言事項の活用例をまとめていきたいと思います。

法定遺言事項

法定・付言1

原則、遺言には何を書いても問題はありませんが、その中でも法律上、法的効力を認められている遺言事項のことを「法定遺言事項」と言います。 法定遺言事項の主なものは以下のとおりです。

1.財産の承継方法、処分方法について

遺産分配は法律で「法定相続分」が定められていますが、この法定相続分と異なる割合で遺産を分配することを「相続分指定(そうぞくぶんしてい)」と言います。

遺言で相続分指定を行うことで、”相続人の遺留分を侵害しない範囲に限り”、被相続人が相続財産を好きなように割り振ることが可能になります。

2.相続人の廃除と取消しについて

相続人の廃除(そうぞくにんのはいじょ)」とは遺留分を有する推定相続人が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えた場合、または推定相続人に著しい非行等がある場合に被相続人の請求に基づいて家庭裁判所の調停や審判手続により、その推定相続人から相続権をなくすことができる制度です。

手続きは被相続人が生前に行うことができる他、遺言によって行うことも可能です。

3.婚外子(非嫡出子)の認知について

婚姻届を出しておらず、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子を「婚外子(こんがいし)」、「非嫡出子(ひちゃくしゅつし)」と言います。

婚外子(非嫡出子)には相続権がないため、婚外子(非嫡出子)にも相続財産を遺したい場合には、婚外子(非嫡出子)を認知し、相続権を発生させる必要があります。

婚外子(非嫡出子)の認知は生前に行うこともできますが、法定遺言事項とされているため、遺言により認知を行うことができます。

4.未成年の子供の後見人や後見監督人の指定について

親権者のない未成年者や成年被後見人の財産に関する全ての事項において、法定代理人になる者のことを「後見人(こうけんにん)」と言います。

また、後見人を監督する者のことを「後見監督人(こうけんかんとくにん)」と言います。

親権者が亡くなった場合等に備えて、後見人に関する遺言を残すことで、未成年である子供の後見人を指定することができます。また、後見人が任務を怠ったり不正な行為を行わないように、後見監督人も遺言で指定することができます。なお、未成年後見監督人を選定するかどうかは任意です。

5.遺言執行者について

遺言の内容を実現するために必要な、一定の行為等を行う者のことを「遺言執行者(ゆいごんしっこうしゃ)」と言います。

遺産相続手続きをスムーズに行いたい場合は、遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。また、相続人の廃除や婚外子(非嫡出子)の認知を行う場合は、遺言執行者の指定が必須です。

6.祭祀の承継者について

「祭祀(さいし)」とは、神々や祖先を祭ることをいいます。また、系譜(家系図)や祭具(位牌・仏壇等)、墳墓(お墓・墓地)のことを「祭祀財産(さいしざいさん)」と言います。

祭祀財産は相続財産には含まれないため、相続税の課税対象にはなりませんが、近年、管理をする遺族の負担等のトラブルが増加傾向にあります。

相続トラブルを回避するためにも、祭祀の承継者を遺言で指定することが重要になってきています。

7.負担付遺贈について

「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」とは文字通り負担の付いた遺贈のことで、一定の義務を負担してもらうことを条件にして、財産を「遺贈」することです。

受遺者は「遺贈の目的の価値を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行しなければならない」とされているため、貰った財産の範囲を超える以上の部分を負担する必要はありません。

従って、負担付遺贈をする場合には、与える財産の価値に見合った内容を遺言として遺す必要があります。

上記のとおり、法定遺言事項には様々なものがあり、状況によってはトラブル回避に非常に有効な内容もあるのではないでしょうか。 また遺言は原則、何を記載しても自由であるため、付言事項を活用することで法定遺言事項になっていない事項についても思いを伝えることができ、円満相続につなげることができます。 

ここからは付言事項の活用例を紹介します。

付言事項とは?

法定・付言2

「付言事項」とは、遺言書に法的効力を持たせるために記載する法定遺言事項”以外”の内容で、遺言書の最後に記載されるものです。

付言事項には法的拘束力はありませんが、被相続人から相続人に対する感謝の気持ちや伝えたい思い、遺言を記載するに至った背景などが記載されることが多く、相続人による不要な争いを避けるために有効なものとなることが多いです。

付言事項の活用例

(1)「妻に全財産を遺したい・・・」~遺留分を行使されないために活用した事例

遺産の分配は必ずしも法定相続分で設定するわけではなく、被相続人の最後の遺志として、誰に何をどれだけ残すかは自由に決めることができます。

ただし、各人には「遺留分(いりゅうぶん)」という最低取り分の保障があり、権利を行使されれば遺言内容を実現させることはできなくなります。

「妻に全財産を遺したい」と考える被相続人は、どのようなポイントを押さえた遺言を作成すればよいのでしょうか? 下記の記事でポイントを紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

遺言書の「付言事項」活用のポイント【参考例あり】

(2)「兄弟間トラブルを回避したい!」~相続人とならない”長男の嫁”に財産を遺すために活用した事例

相続が発生した際、介護に関する兄弟間トラブルに悩まされていらっしゃる方が比較的多くいらっしゃるようです。

よくあるケースとして、「世話をしてくれている”長男の嫁”に財産を遺したいが、長男の嫁は相続人とならないため兄弟間のトラブルが不安だ」という悩みを抱える方がいらっしゃいます。 ここでも「遺留分」がポイントとなります。

長男の嫁に対する財産の分配が他の兄弟の遺留分を侵害する場合にはその権利行使に対する牽制として、侵害しない場合でも兄弟間の軋轢防止のために、付言事項を活用していくとよいでしょう。 

 

(3)「家業である会社の経営権を長男に相続させたい」~オーナー経営者の付言事項活用事例

オーナー経営者の方で、その子供も家業に携わっている場合、後継者にもご自身と同じようにオーナー経営をしてもらいたい、と考えるケースがあります。

このようなときは、将来の安定した会社経営のためには株式の全部を家業を継ぐ予定の子供に相続させるのが望ましいでしょう。

もし、他にも家族がいると、他の家族にも相続権があり、相続の内容で争いのもととなる可能性があります。 将来の事業の継続を困難としないためには、ご自分の気持ちや、家業に貢献してきた子供の功績、他の家族への感謝の気持ちなどを付言事項として記載しておくとよいでしょう。

(4)「自分の希望する葬儀方法で葬儀を行ってほしい」~葬儀方法を付言事項に記載するときの注意点

ご自身の価値観や宗教観によって、行ってほしい葬儀方法の希望をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。

生前から葬儀の方法について話そうとしても、実際のところ現実味がなく、ご家族に話し辛いとお悩みになる方も多いようです。 また葬儀方法を巡って親族間でトラブルになってしまうこともあるようです。

トラブルを避け、残されたご家族が葬儀方法について迷わなくてすむように、付言事項に葬儀方法の希望を記載しておくとよいでしょう。 その際の注意点や効力について、具体例と合わせて紹介していきます。

(5)「実子と養子の間のトラブルを避けたい・・・」~相続対策で養子縁組を行った場合の付言事項の例

法定相続人の人数を計算する場合、養子縁組をすると、実子がいる場合には養子1名まで、実子がいない場合は養子2名まで、法定相続人の人数を増やすことができます。

このことで相続税の基礎控除額がアップし、死亡保険金と死亡退職金の非課税枠が増えます。従って節税対策になります。 しかし、養子が増えたことにより「遺留分」を巡って、トラブルに繋がりやすくなるようです。 こちらの記事で実子と養子の間の相続トラブルを避けるために、付言事項を活用した例を見ていきましょう。

(6)「死後に臓器提供したい」~遺言で臓器提供の意思表示をしたいときの付言事項活用例

臓器提供は死亡後すぐになされることが重要ですので、まずは遺言書以外で事前に臓器提供の意思表示をし、家族からの理解を得ておくことがポイントとなります。

そのうえで、付言事項で自分の意思を相続人に伝えることで、臓器移植の手続きをすすめた家族にとっては心やすらぐメッセージとなるのではないでしょうか。 以下の記事では、「意思表示カード」などで臓器提供の意思表示を行っている、という前提で、遺されたご家族に自身の意思を伝えるのに付言事項を活用する例を紹介いたします。

(7)「献体して遺体を医学発展に役立てたい」~献体について付言事項に記載したほうが良い理由は?

献体とは、医学・歯学分野の解剖学の教育や研究のために、自分の死後の遺体を提供することです。その提供は無条件・無報酬です。

献体を行うためには、事前に献体の登録と申し込みが必要で、生前に行う献体の登録には、原則として肉親の同意が必要になります。

献体が行われた場合、遺骨が長期間にわたって戻ってこない、という状況になります。遺されたご家族の中には、不安に感じるかたもいらっしゃるかもしれません。

このような場合に備えて遺言書に自分の気持ちを残しておくと、家族や親族が亡くなった人の気持ちを理解し、献体に協力することができ、手続きもスムーズに進のではないでしょうか。


ここまで見てきたように、付言事項は”自由に”記載できる項目ですので、自身の想いや希望を伝えたい様々な局面での活用可能性があります。 遺言書の作成をお考えの方は、一度、上記の例を参考に付言事項の活用を検討してみてはいかがでしょうか。