税制については度々法改正がなされていますが、民事法体系の核となる民法については頻繁な改正はなされてきませんでした。
これが、平成30年度の民法改正に伴い相続法分野で一部改正が出たため、今後大きな影響が出てくることが予想されます。
この章では改正点のうち「特別寄与料請求権」に焦点をあてて解説します。
目次 |
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1.元々あった「寄与分」をおさらい |
1.元々あった「寄与分」をおさらい
法改正前にも「寄与分」の制度は存在していました。
これは被相続人の生前に、同人の財産の増加や維持に特別に寄与(貢献)した相続人がいる場合に、その寄与分を考慮して当該相続人の相続分を計算上で増加させることができるものです。
例えば無償あるいは無償に近い形で被相続人の事業を手伝っていた、被相続人の療養介護に努めたなどの場合が該当してきます。
これを踏まえて、次の項で特別寄与料との違いを見てみましょう。
2.特別寄与料とはどんなもの?
寄与分は相続人のみが対象になるもので、例えば長男のお嫁さんなど相続人となり得ない者は例え被相続人に寄与したとしても寄与分は認められません。
これが、相続人以外の一定の親族の寄与についても認めていこうというのが特別寄与料です。
民法上の親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族を指し、長男のお嫁さんはこの中に含まれます。ただし、親族が対象ですから、事実婚の妻や家政婦などが介護や看病をした場合は、特別寄与者とはなれません。
3.寄与分・特別寄与料についての注意点
従来からある寄与分も、制度改正によって新設される特別寄与料も似たような問題が生じる可能性があります。
まず、両者共その権利者が一定の財産の給付を受けるものですから、それだけ相続財産全体の減少を招きます。これは他の共同相続人にとっては自分の取り分が減ることを意味しますから、決して嬉しいことではありません。
これが引き金となって、相続人間や親族間で争いが生じたり、心理的なしこりが残る可能性があります。
被相続人に対して療養介護や労務の提供などを行っている場合、まずはこの事実を他の相続人予定者や親族と共有し、さらに下記で述べるように一定の証拠材料を残しておくことが大切です。
4.特別寄与料を請求するために必要なこと
特別寄与料は他の相続人に認めてもらわなければなりませんので、まずは前項の通り日頃の貢献度合いを共有しておくことの他に、介護日記などを作成してメモを残す、治療費や介護用品代、交通費など出費した経費についてはレシートや領収書を保管しておくなどの工夫が求められます。
その他にも色々ありますが目に見える形で貢献度を証明できないと認めてもらうことが難しく、証明が困難になりがちです。
そのような事態にならないように上手な立ち振る舞いが必要になるので、あとで困ることのないように税理士にあらかじめ相談したうえで具体的な行動を検討しましょう。
4.1.寄与分の計算例
相続財産は1億円で、相続人は子A・B・Cの三人とします。
三人は法定相続分で財産を分けますが、三男のCに寄与分1,000万円があるケースです。
寄与分を相続財産から控除すると、1億円-1,000万円=9,000万円です。
すると、法定相続分としては子ABCの取り分はそれぞれ9,000万円×三分の一=3,000万円ですね。
しかし子Cだけはそれに最初に控除した1,000万円がプラスされるので、計4,000万円の取り分となるわけです。
4.2.特別寄与料の計算
相続財産は1億円で相続人は子A・B・Cの三人で法定相続分にて分けますが、こちらは特別寄与料100万円を請求できる親族のDもいるケースです。
特別寄与料を控除すると相続財産は1億円-100万円=9,900万円です。
これを相続人で取り分けると、子ABCの取り分はそれぞれ9,900万円×三分の一=3,300万円です。
最初に相続財産から控除した100万円はそのままDの取り分です。
5.まとめ
この章では法改正で新しく創設された特別寄与料について、寄与分との違いや注意点、計算方法などを見てきました。
相続人以外の一定の親族も寄与(貢献)を認めてもらうことができるようになるのが大きなポイントです。(関連記事:「親族の特別寄与料請求制度」について)
しかし特別寄与料の請求を認めてもらうためには、他の権利者と寄与の事実を日頃から共有するなど、一定の証拠を作成・保管することが求められるなど準備も必要です。
いざ相続が発生した時にトラブルが起きないように、事前に税理士に具体的な相談をしておくことをお薦めします。
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