相続の話を聞いていると、「相続=相続税=お金持ちの問題」と考えている人が多いように思います。
確かに、一定額以上の相続財産がなければ相続税が発生することはありませんので、「相続税=お金持ち」というイメージはあながち間違いではありません。実際に、日本で発生する遺産相続のうち90%以上(※)は相続税のかからないケースとなっています。
※注:平成27年の相続税の改正により、この割合は変動する可能性が高いです
一方で、多くの人が勘違いをしている事実があります。それは、「相続税がかからない程度の相続財産なら、相続対策は必要ない」と考えていることです。
しかしながら、それは大きな間違いです。実務において、相続税のかかる相続と相続税のかからない相続を比較した場合、相続税のかからない相続の方がトラブルに繋がるケースが圧倒的に多くなっています。
相続財産が少ないから相続税がかからないのに、どうしてトラブルが発生するケースは多くなってしまうの?と疑問に思う方もいるでしょう。以下では、その理由を具体例とともに見ていきましょう。
相続財産が不動産と少しの預貯金の場合の具体例
例えば、シングルマザーで兄と弟の3人家族のケースを想像してください。この場合において、母親が亡くなってしまった場合、法定相続人となるのは残された兄弟の2人になります。
そして相続財産は不動産(1,000万円)と少しの預貯金(100万円)のみだったとします。
もしも、長男が不動産、次男が動産(預貯金)を相続するとした場合、本来であれば全財産(1,100万円)の半分(550万円)を相続する権利がある次男が、実際には100万円しか相続ができないということになればトラブルに発展する可能性は高くなることでしょう。
不動産が容易に売却できなかったり、長男が次男に差額分を支払ったりすることができない場合には、次男の不満はより一層高まることでしょう。
相続税が発生するほど相続財産がないのに、相続時にトラブルが多くなってしまうというのはこういったケースが非常に多いからなのです。
トラブル回避のためには遺言が有効
相続時のトラブルを回避するためには、遺言によって相続財産の指定をしておく・万一の際には不動産を売却しても構わないといった「明確な意思の伝達」が非常に重要です。
前述の例で、仮に長男家族が母親と同居、次男家族は別居という状況だった場合、揉めてしまうと長男家族は今住んでいる住まいに継続して住めなくなってしまうかもしれません。
そのような時は、長男には不動産を、次男には預貯金と不足している分は長男から預貯金を渡す(代償分割:特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える手法)、等、遺言に背景も含めて明確に書いておくと、円満に解決できる可能性が高くなります。
また、円満相続のためには不動産を売った方がよい、ということもあるかもしれません。しかしながら思い出がつまった家を売却してしまうことに、相続人が躊躇してしまう可能性があります。
ここで遺言で「万一、相続手続きに困る際は、不動産は売却しても構わない」と記載しておくと、相続人も後ろめたさを感じることなく、相続手続きを進められるでしょう(相続財産をすべて換金し、相続人に金銭で分配することを換価分割と言います)。
「うちには相続するほどの財産なんてないから、相続対策は必要ない」と思っている人も、今一度しっかりとした相続対策を考えてみる必要性が高いといえます。 せっかく家族の為に残した相続財産が、家族の間のトラブルの元とならないためにも、遺言を用意することは非常に重要なポイントといえるでしょう。
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