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ーコラムー
相続のトラブル
税理士監修記事

相続における不当利得についてわかりやすく説明!

公開日:2020.6.15 更新日:2020.11.16

相続財産の使い込みが判明したときは、法律上の「不当利得」を指摘して返還させられる可能性があります。ただし、その立証手段を得た上で適切な請求手続きを踏むには、不当利得が成立する要件や時効について理解しておかなければなりません。

本コラムでは「不当利得」について、相続トラブルへの対処に役立てられる実践的な知識を紹介します。

目次

1.不当利得について
  1-1.相続における「不当利得」の具体例
2.不当利得が成立する要件
3.不当利得が認められやすい状況とは
  3-1.被相続人が財産管理できる健康状態になかった
  3-2.遺産の使い込みを自覚していた証拠がある
  3-3.財産引き出しが「不必要に高額」かつ「頻繁」である7.
  3-4.財産引き出しの時期が「死亡前後」である
  3-5.不当利得を認めた判例
4.不当利得返還請求の方法
  4-1.不当利得(相続財産の使い込み)の証拠になるもの
  4-2.自力で獲得できない証拠は弁護士or裁判所へ
  4-3.売却or費消されそうなときは「保全処分」を
  4-4.不当利得返還請求権の時効
5.不当利得返還請求が難しい場合も
6.まとめ

相続における不当利得についてわかりやすく説明!

1.不当利得について

「不当利得」(民法第703条~第708条)とは、本来の帰属先に損失を与えるかたちで、契約などの法律上の原因なしに得た利益を指します。相続トラブルに当てはめると、本来の帰属先とは“共同相続人”であり、契約とは“遺言書”あるいは“生前贈与の約束”となります。

相続における不当利得返還請求のケースとして、下記のようなものが挙げられます。

遺産は相続開始時点で相続権を持つ人の共有となり、遺産分割協議の終了まで、各人の持分は「法定相続分」(続柄ごとに定められた取り分)に従います。

共同相続人やその他の親族が、その持分を超えて財産を自分のものにしようとするなら、被相続人がその意志を示していることが前提です。しかし、遺言書や生前贈与の約束には一切なかったにもかかわらず、勝手に遺産を着服したり売却したりするケースが後をたちません。

このように、被相続人ひいては共同相続人に損失を与えながら得た相続財産は「不当利得」に該当し、共同相続人に返還請求権が生じます。

1-1.相続における「不当利得」の具体例

相続における不当利得返還請求のケースとして、下記のようなものが挙げられます。

【不当利得返還請求権が生じる具体例】

・預貯金が同居家族によって使い込まれている
・不動産を無断で占有し、売却している
・被相続人の財産による収益(賃料など)を無断で受領し、着服している

上記ケースの多くは、被相続人の判断能力低下(認知症など)や、共同相続人が相続開始当時に成人に達していなかったことを背景とするものです。言うまでもなく悪質であり、不当利得を得ていた時期に関わらず、返還請求権の立証責任を果たした上で断固とした対処をとらなければなりません。

ここで指す「立証責任」とは、裁判外での交渉や調停・審判・訴訟などで証拠を提示することを指します。

では、どのような証拠が望ましいのでしょうか。まずは法律上の不当利得の構成要件を押さえ、個別のケースで司法が判断する際の着眼点について確認してみましょう。

2.不当利得が成立する要件

法律上「不当利得」が成立するのは、客観的な状況が下記の4要件をすべて満たすときとされています。個別のケースで“使い込みの証拠”を提示するときは、各要件を証明できるものをすべて揃える必要があるのです。


【不当利得成立の4要件】

  1. 他人の財産や労務から利益を得た
    …被相続人の財産そのものや、財産から生じる収益・在職中の功労に基づく退職金あるいは慰労金から「利益」を得ていることを指します。
  2. 他人に損失を及ぼしている
    …使い込んだ財産が遺産に属するものであり、本人の持ち分を超えて他の相続人の取り分を害していることを指します。
  3. 1と2の両者に因果関係がある
    …“本人の利益”と“共同相続人の損失”がイコールで結ばれるか、十分な関連性を持っていることを指します。
  4. 利益を得たことに法律上の原因がない
    …本人の利益に関して、被相続人の意思表示(遺言書や生前贈与契約)がなかったことを指します。

3.不当利得が認められやすい状況とは

個別のケースで司法が不当利得を認める上で、医学的に見て被相続人が意思表示できる状態であったか、使いこみの金額や頻度はどの程度だったかなどの「具体的な状況」が重んじられています。

遺産使い込みの証拠を集める際は、下記のような状況が分かる資料を複数揃え、法律の構成要件を満たさなければなりません。

3-1.被相続人が財産管理できる健康状態になかった

最晩年に寝たきり状態・認知症・高次脳機能障害があれば、どのようなかたちであれ被相続人の意思表示は信頼できません。医療記録や介護実績から左記のような状況を立証できれば、たとえ遺言書や生前贈与契約があったとしても、不当利得が認められやすくなります。

3-2.遺産の使い込みを自覚していた証拠がある

遺産使い込みに対する自覚は、法律用語で「悪意」と呼ばれます。民法第704条によると、悪意で得た利益は利息を付して返還し、損害が生じていた場合は賠償しなければなりません。

そこで、自覚を裏付ける書面や映像音声資料は「返還義務そのものと具体的金額(利息や別途賠償の合計額)」の根拠になります。

3-3.財産引き出しが「不必要に高額」かつ「頻繁」である

個人差はあるものの、晩年の被相続人のような高齢者の生活費は、通常ごくつつましい金額にとどまると考えられます。

そこで、相続財産の使い込みと思われる形跡(預金口座からの出金記録など)については、不必要に高額かつ頻繁なものが「不当利得を得た事実」の根拠と認定される傾向にあります。

3-4.財産引き出しの時期が「死亡前後」である

死亡前後に必要となる支出は、被相続人の同居家族にとってさしあたり必要な生活費程度に留まると考えられます。そこで、使い込みと思われる形跡が死亡の直前あるいは直後にある場合「不当利得を得た事実」の根拠として有力視されます。

3-5.不当利得を認めた判例

不当利得を認めた判例として、徳島地裁平成30年10月18日判決が挙げられます。
本事例では、相続人代表として預金払戻しの権限委任を受けた人物が、払い戻された預金を私的に着服し、その全額が自分に帰属すると主張して独占してしまいました。

審理ではまず、預金の管理状況・被相続人の営む事業への出資状況を総合的に判断し、預金がそれを独占した人物へ帰属するという主張が否定されました。その上で、払戻しの申請書で「遺産分割協議前の請求」という項目に丸がつけられていたことを根拠に、預金が相続人の共有に属していることが認定され、法定相続分の返還が命じられています。

本判決では、不当利得を得た本人による作成資料が決め手となっています。
また、被相続人の生前の状況(事業と財産管理の状態)に関する立証資料も十分で、預貯金の独占に全く根拠がないことも明らかになりました。

4.不当利得返還請求の方法

ここまでは不当利得と判断されるための要件について解説しましたが、実際に相続財産の使い込みが起きているときはどのように対処すればよいのでしょうか。
大きく対処の流れを示すと、下記のようになります。

【不当利得返還請求の流れ】
  証拠収集(自宅捜索・銀行等への取引履歴開示請求)
  ↓
  口頭or内容証明郵便による請求
  ↓
  裁判上の請求(調停or審判or訴訟)

4-1.不当利得(相続財産の使い込み)の証拠になるもの

ここまで触れたように、相続財産の使い込みを追求できるかどうかは「証拠の内容」にかかっています。証拠とは、たんに“該当の人物が相続財産に手を付けたこと”が分かるだけでは足りません。

極力多くの資料を収集し、①不自然かつ繰り返し財産が引き出されている状況、②被相続人の意思の有無あるいは判断能力の低下、そして可能であれば③使い込みの自覚(悪意)があったことが分かるよう整える必要があります。

【証拠になるもの①】使い込みの事実・時期・金額を示すもの
・銀行口座の取引明細書
・不動産売買の契約書
・収益受領時の明細もしくは領収書
・贈与契約書

【証拠になるもの②】被相続人の意志がなかったことが分かるもの
・医師の診断書・入院記録・介護記録
・後見開始時に裁判所から送付された資料
・(あれば)遺言書

【③使い込みの自覚の有無を示す証拠】
・ボイスレコーダー
・生前のメモ・日記
・被相続人の署名捺印が偽造されている書類
・不当利得を得た人物の口座記録

不当利得について争うケースは相当数あるものの、そのほとんどは裁判外での交渉だけで解決に至っています。上記の証拠資料を丁寧に収集するほど、トラブルの長期複雑化を避けて速やかに収束する可能性が高くなります。

4-2.自力で獲得できない証拠は弁護士or裁判所へ

証拠類のなかには、“不当利得を得た人物の口座記録“など独力で獲得しにくいものがあります。 そこで、弁護士権限による情報開示請求(23条照会)や裁判所の行う調査嘱託が役に立ちます。

【参考】相続トラブルで不当利得の“証拠”を獲得する手続き

23条照会
…弁護活動に必要である旨を説明し、官公庁や民間企業に対して情報開示を求める手続きです。開示請求を受けた団体は、弁護士より説明された理由が適当である限り、請求を拒むことは出来ません。

調査嘱託
…調停・審判・訴訟による紛争解決を目的として、裁判所から各機関に情報開示を命令してもらう手続きです。開示させられる情報の幅・内容が23条照会よりも広く、財産隠しの決定的な証拠をつかむことが出来ます。

証拠は時間が経つほど散逸する上に、共同相続人の動きを察知して隠滅される恐れもあります。また、調査嘱託の要請には相当の理由説明が必要であり、代理弁護士による裁判所への提出書類作成が不可欠です。

以上の点から、迅速かつ確実に獲得する上で、より早期から相続トラブル専門の法律家に対応を任せるのがベストです。

4-3.売却or費消されそうなときは「保全処分」を

相続財産から不当利得を得る者の多くは、資力に問題を抱えています。返還されるべきものが売却あるいは費消されてしまうと、たとえ司法が不当利得を認めたとしても、現実に返してもらうことは困難です。

こうした事態を防ぐ方法として、家事事件手続法では「保全処分」を定めています。

【参考】家事事件手続法の「保全処分」とは
調停もしくは審判が申し立てられた際、家庭裁判所は必要に応じて仮差押え・仮処分・財産管理者の選任などの適当な措置を取り、目的物の権利移転や費消を防ぐ命令を発せます。この命令を「調停前の処分」(第266条1項)あるいは「遺産分割審判前の保全処分」(第105条1項)と呼びます。

裁判所に保全処分をとってもらうには、調停・審判を申し立てる側(=不当利得返還請求を行う側)から別途申立書を提出する必要があります。本申立書には処分を必要とするまでの経緯を列記しなければならず、独力で対処するのは難しいと言わざるを得ません。 やはりここでも、相続トラブルに長けた弁護士のサポートが不可欠です。

4-4.不当利得返還請求権の時効

不当利得返還請求権の行使には時効があります。
時効成立の期間は民法大改正(2020年4月~)で解釈が変わっており、旧民法では10年であったところ、新民法では5年に短縮される可能性がある点に要注意です。

【参考】新民法での“不当利得返還請求権の時効“とは 新民法では、時効成立を「権利行使できることを知ったとき
(=主観的起算点)から5年」あるいは「権利行使できるとき(=客観的起算点)から10年」としています。
法律解釈では、ここでの“権利行使できるとき“を相続開始日だとします。また、日常的に被相続人の消息を知りうる立場なら、その死亡は当然すぐに知ることになり、時効起算点の主観と客観が一致します。 したがって、2020年5月時点ではまだ判例がないものの、不当利得返還請求権の時効は相続開始日から5年で成立すると今後解釈される可能性が高いと考えられます。

なお、時効成立は内容証明郵便での請求あるいは裁判上の請求で中断させられます。 注意したいのは「未成年の際に相続が開始され、成人に達してから不当利得の返還請求に踏み切る」等、相続開始から相当の時間が経過しているケースです。左記のようなケースでは、証拠収集と同じく請求開始の対応優先度も高くなります。

5.不当利得返還請求が難しい場合も

不当利得が認められず、認められたとしても返還させられないケースには、下記のような傾向が見られます。対応を始める際は十分注意しなければなりません。

「被相続人の意志に反して」引き出されていた証拠がない

被相続人の判断能力は健全だったとされ「財産の引き出し行為を内々に了解していた」と認められる場合があります。このようなケースでは、遺言書や生前贈与契約による明確な意思表示していなかったとしても、不当利得は認められません。

引き出された財産が「少額」かつ「頻度が低い」

金額・頻度から被相続人世帯の生活費目的だったと想定でき、被相続人自らが“おつかい”のように口頭で指示を出していたと思われるような引き出し状況は、不当利得が認められない傾向があります。

引き出しの対象が「現物で保管されていたもの」

金庫内で保管されていた現金など、引き出し記録が残りにくい財産を対象にした使い込みは、証拠不十分により不当利得が認められない傾向があります。

遺産使い込みを自覚していた証拠がない

「被相続人の財産が死亡時点で遺産に属することを知らなかった」等、故意のない(=善意)不当利得は、請求時点での残余額のみ返還義務が生じます(民法第703条)。したがって、不当利得そのものは立証できても、まったく取り戻せない可能性があります。

不当利得の返還義務を負う人が破産手続きに入った

自己破産の手続きが開始されると、申立人への強制執行は禁じられます。不当利得は破産債権に組み入れられ、裁判所による分配手続きを待たなければなりません。 破産者の資力は当然限りなくゼロに近いと考えられるため、分配は期待できません。

不当利得が否定された判例

東京地裁平成25年3月28日判決では、通帳管理していた家族による計155万円もの引き出しについて不当利得返還請求権が否定されました。

私的な目的での支出と認められる証拠がなく、かつ提出された書証だけでは「最晩年の預金口座からの出金が被相続人の意思に反していたとは断定しがたい」と判断されたためです。

本判決内容でも、返還請求者が収集した証拠に基づく“具体的事実”が重視されています。

6.まとめ

預貯金の使い込み・不動産の無断売却などの「不当利得」を巡る相続トラブルは多発しています。

その多くは弁護士のサポートを得ており、決め手になる“遺産横領or使い込みの証拠”を獲得することで、裁判外での早期解決に至っています。

【不当利得返還請求を成功させるためのポイント】

  • 財産引き出しの金額・頻度が分かる立証資料を複数揃える
  • 被相続人の判断能力を示す医学的資料(診断書や入院記録)をできるだけ確保する
  • 相続開始から相当の時間が経っている場合は、請求による時効中断を優先する

相続財産の独り占めや無断着服の問題は、時間経過とともに資料が散逸するだけでなく、費消されて返還が実現できない恐れもあります。

後見人・相続人の動きに怪しさを覚えたときは、すぐ専門家のフォローを得ましょう。

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