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ーコラムー
相続のトラブル
税理士監修記事

相続人に兄弟が含まれる時の相続方法と注意点

公開日:2021.2.10 更新日:2022.10.25

亡くなった人の兄弟や姉妹が相続権を得たケースでは、遺産の取得分を巡って意見対立することもあります。また、配偶者や子が相続する場合に比べて課税額が上がる問題もあります。

兄弟姉妹が相続人となる可能性がある典型的な例は、子のいない夫婦や独身の高齢者です。

心当たりのある家庭で「生前準備を考えたい」「相続トラブルに巻き込まれそう」といった状況の場合は、本記事で相続権の仕組みを押さえ、事前準備に努めましょう。

目次

1.まずは「法定相続人」と「各人の取得分」の確認を
  1-1.法定相続人の範囲
  1-2.法定相続人の取得割合
2.【計3パターン】兄弟が相続人となるケース
  2-1.配偶者と一緒に相続するケース
  2-2.未婚or離婚済or配偶者が既に死亡しているケース
  2-3.兄弟が既に死亡しているケース
3.兄弟が相続人になるケースでの注意点
  3-1.注意点1:相続税の2割加算がある
  3-2.注意点2:代襲相続は1代のみ
4.兄弟が相続する際のトラブルの原因は?
5.兄弟間の相続トラブルを防ぐ3つの方法
  5-1.推定相続人を把握しておく
  5-2.遺言書を作成する
  5-3.「家族信託」を活用する
6.起きてしまった相続争いの解決方法
  6-1.「代償金」の授受
  6-2.遺留分侵害額請求の行使
  6-3.相続分の譲渡
7.まとめ

1.まずは「法定相続人」と「各人の取得分」の確認を

兄弟や姉妹が相続するケースの問題点を確認する前に、まず押さえておきたいのが「相続権の仕組み」です。

そもそも、相続人になれるのは「亡くなった人と一定の親族関係」にある人と定められています(民法第886条~第890条)。そして、死後実際に相続権を獲得し、遺産の取り分を主張できる人を「法定相続人」と呼びます。

ここで結論を述べると、兄弟や姉妹が法定相続人になれるのは、子や孫などの「直系卑属」・父母や祖父母などの「直系尊属」のどちらもいない場合に限られます

1-1.法定相続人の範囲

法定相続人になれる親族関係の範囲は、本人から見て「配偶者」「直系卑属のうち最も親等の近い人」「直系尊属のうち最も親等の近い人」「兄弟姉妹」までです。上記の範囲のうち、実際に法定相続人になれる人は「配偶者」+「血族の中で最も相続順位が高い人」となります。

なお、血族の相続順位は次のように定められています。

【血族の相続順位】
第1順位:直系卑属(子や孫)
第2順位:直系尊属(父母や祖父母)
第3順位:兄弟姉妹

1-2.法定相続人の取得割合

法定相続人には、それぞれ遺産の取得割合が定められています(=法定相続分/民法第900条~第901条)。また、各人の取得割合は、血族の相続順位によって変化します。

下記表のように、兄弟や姉妹が法定相続人になるケースだと、配偶者がいる場合は「遺産全体の4分の1」、配偶者がいない場合は「遺産全体の100%」となります。

【法定相続人の組み合わせ別】法定相続分の一覧表

法定相続人の組み合わせ 配偶者 子(第1順位) 直系尊属(第2順位) 兄弟姉妹(第3順位)
①配偶者のみ 1分の1
②配偶者と子 2分の1 2分の1
③配偶者と直系尊属 3分の2 3分の1
④配偶者と兄弟姉妹 4分の3 4分の1
⑤子のみ 1分の1
⑥直系尊属のみ 1分の1
⑦兄弟姉妹のみ 1分の1

なお、同一順位が複数人いる場合、法定相続分を等分するのが原則です。
ただし、複数いる兄弟姉妹のうち「異母兄弟(姉妹)」または「異父兄弟(姉妹)」にあたる人の取得分は、同一の父母を持つ兄弟(姉妹)の半分となります(民法第900条4号但書)。

2.【計3パターン】兄弟が相続人となるケース

ここまでの相続法に基づく解説だけでは、実際の状況から相続のイメージを固めることは難しいと思います。以降では、相続権の仕組みへの補足解説を交え、兄弟や姉妹が相続する典型的なパターンを3つ紹介します。

2-1.配偶者と一緒に相続するケース

第1に想定できるパターンは、子のいない夫婦のうち一方が亡くなったケースです。
一般的な家庭観で考えると「遺された配偶者が遺産をまるごと相続するのが当然」とイメージしがちですが、亡くなった人の兄弟姉妹も相続権を得ることになります。

【例1】子のいない夫婦のうち、夫が亡くなったケース

  • 妻:存命
  • 子・孫:なし
  • 父母:すでに死亡
  • 兄弟姉妹:全員存命

→妻は4分の3、兄弟姉妹は計4分の1の法定相続分を主張できる

2-2.未婚or離婚済or配偶者が既に死亡しているケース

第2に想定できるパターンは、子もパートナーもいない人や、子をもうけないまま夫婦両名とも亡くなったケースです。
この場合、家族として親交があるかどうかに関わらず、父母や兄弟姉妹に相続権が発生します。

【例2】子のいない夫婦のうち、夫の死亡で両名とも故人になったケース

  • 妻:すでに死亡
  • 子・孫:なし
  • 父母:すでに死亡
  • 兄弟姉妹:全員存命

→兄弟姉妹で遺産分割する

2-3.兄弟が既に死亡しているケース

第3に想定できるのは、法定相続人になるはずの兄弟姉妹がすでに亡くなっているケースです。
民法では、上記の場合「法定相続人としての地位」が兄弟姉妹の子に承継されるとしています。このように、亡くなった人の甥や姪にあたる人が法定相続人になることを「代襲相続」と呼びます(民法第887条2項・第889条2項)。

【例3】子のいない夫婦のうち、夫の死亡で両名とも故人になったケース

  • 妻:すでに死亡
  • 子・孫:なし
  • 父母:すでに死亡
  • 姉は存命、弟は長男をもうけた後に死亡

→姉(法定相続人)と甥(代襲相続人)の2名で遺産分割する

※代襲相続については、コラム「代襲相続と相続放棄とは ~ 基本的なルール(子・兄弟姉妹・養子)について」でも開設しています。併せてご参考ください。

3.兄弟が相続人になるケースでの注意点

兄弟姉妹が遺産を承継することが明らかになったケースでは、課税額に加算がある点に注意しなければなりません。また、甥や姪が法定相続人になる場合は「代襲相続」の仕組みの理解も必要です。

ここでは、兄弟姉妹が相続人になることが確定している状況の家庭向けに注意点を2つ紹介します。

3-1.注意点1:相続税の2割加算がある

兄弟姉妹が遺産をもらい受ける際、所定の方法で算出した相続税(※税額控除前)の2割にあたる部分が納税すべき額に上乗せされます。

課税価格(遺産+生前贈与のうち課税対象となる部分)が非課税枠である基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数) を上回る場合、基本的に相続税が発生します。そこで、税額軽減などに繋がる特例を積極的に検討しなければなりません。

3-2.注意点2:代襲相続は1代のみ

先で紹介した具体例では、先に亡くなった兄弟(姉妹)の子にあたる甥・姪は「代襲相続人」として相続権を得ると紹介しています。ここで注意したいのは、代襲相続は1代限りであり、亡くなった兄弟の孫(=姪孫“てっそん”)は遺産を取得する権利を主張できない点です。

【参考】直系卑属の代襲相続

被相続人本人の直系卑属(子・孫など)には、代襲相続の世代制限がありません。「子・孫ともに亡くなっていれば曾孫が代襲相続人になる」とのように、何代でも世代を超えて相続権を獲得できます。

4.兄弟が相続する際のトラブルの原因は?

実のところ、兄弟や姉妹が法定相続人になるケースで、トラブルに発展することは少なくありません。

その原因の多くは、成人してから兄弟姉妹間の交流が途絶えがちになり、お互いの事情への配慮が行き届かなくなってしまっている点にあります。また、先に亡くなった父母の代で「相続関係を複雑にしてしまう事情」が起きている可能性も、当然否めません。


【相続トラブルの例】

  • 被相続人の住まいを相続する兄弟や姉妹が「土地も当然自分のもの」だと主張するが、納得できない
  • 遺された高齢の妻が、亡夫の兄弟や姉妹に強制されて不利な遺産分割に応じてしまった
  • 兄弟姉妹で円満に遺産分割しようとしたところ、突然「亡父が以前の結婚でもうけた子」が現れた
  • 遺言書に書き直された形跡があり、亡くなった本人がやったものかどうか疑いが生じている

いったんトラブルが発生してしまうと、専門家が介入しているかどうかに関わらず解決が長期化してしまう場合がほとんどです。生前の間にトラブルの原因となる事情を把握しているのであれば、早めに対策をとりましょう。

5.兄弟間の相続トラブルを防ぐ3つの方法

相続トラブル対策の基本は「誰が相続人なのか把握する」「遺産の承継先を法的効力のある方法で指定しておく」の2点です。兄弟や姉妹の間で起こるもめ事に対しては、上記を踏まえて具体的にどのような生前対策がとれるのでしょうか。

5-1.推定相続人を把握しておく

ある人物が現時点で死亡したと仮定した場合、法定相続人の地位を得る人を「推定相続人」と呼びます。あらかじめ推定相続人を調べておけば「疎遠になっている兄弟姉妹が相続開始のタイミングで突然現れる」という事態に備えられます。

なお、推定相続人の調査は煩雑です。
具体的な手順として、まずは将来被相続人となる人につき「出生から死亡までの間に作成された全ての戸籍謄本」を収集しなければなりません。次に、収集した戸籍に記載されている婚姻歴や転籍・除籍の記録を確認しながら、親族の戸籍謄本も必要に応じて請求することになります。

調査の手間だけでなく、戸籍の読み方に苦慮する可能性も考慮すると、専門家に任せるのがベストです。

5-2.遺言書を作成する

法定相続分に従うかどうかに関わらず、遺産の承継先を生前の本人が指定する方法が「遺言」です。

特に、配偶者・内縁の妻・福祉施設などの「特定の人(団体)に財産を全て承継させたい」あるいは「兄弟姉妹間の事情を考慮して法定相続分にこだわらない遺産分割を実現したい」といった考えがある場合、遺言書の準備は必須です。

また、遺言書で指定できるのは「遺産分割の配分指定」や「相続人でない人への贈与」(=遺贈)だけではありません。以下のように、家庭事情に応じて様々な指定が可能です。

【一例】遺言書で指定できること(財産処分に関すること以外)

  • 遺言内容の実現に関すること
    …信頼できる人を被相続人の代理人である「遺言執行者」に指定し、死後速やかな相続人への通知を含め、相続登記や預金の払戻しなどの必要な手配を委任できます(民法第1006条~第1013条)
  • 相続人の変更に関すること
    …子の認知(民法第781条2項)や、特定の相続人から遺産を取得する権利をはく奪する「廃除」(民法第792条)が可能です。
  • 遺産分割の時期に関すること
    …最大5年間に渡り、遺産分割を禁止できます(民法第908条)

また、遺言書をどんな方法で認めるかは本人の自由ですが、有効性に関しては「公正証書遺言」が最も信頼できます。法務大臣に任命された公証人が作成することで、内容の真正と法的拘束力が保証されるためです。

5-3.「家族信託」を活用する

家族信託とは、生前のうちに財産管理を特定の家族(=受託者)に任せ、同時に「定期定額給付」や「死後の財産の帰属先」などを指定する契約です。信託法に基づいて運用されており、銀行などの認可を得た業者が商品として取り扱っています。

家族信託のメリットは、本人が存命かどうかに関わらず、契約終了の条件を満たすまで効力を持つ点です。この性質を利用すれば、生前は自身を「受益者」に指定して信託財産から生活費給付を得つつ、死後は「内縁の配偶者」や「お世話になった人や施設」へと確実に遺産を受け継いでもらうプランを実現できます。

6.起きてしまった相続争いの解決方法

既に兄弟や姉妹間で争いに発展してしまっているケースでは、当事者の考えが2パターンに分かれます。

1つは「何としてでも公平な遺産分割を実現したい」、もう1つは「面倒なので一刻も早くトラブルの現場から離脱したい」というものです。もめ事に巻き込まれた人の意向を叶える具体的な解決策としては、以下3点が考えられます。

6-1.「代償金」の授受

換価性が低く分割しづらい高額資産(不動産や自社株など)が遺産の大半を占めるケースでは、兄弟(姉妹)の1人が「分割せずに単独で取得したい」と主張しはじめてトラブルに発展しがちです。

上記のような場合は、法定相続分より多くもらい受ける立場にある人から他の相続人へと「代償金」を支払い、最終的に各人の取得額が公平になるよう調整する方法が考えられます(=代償分割)。

【代償金を支払った場合の課税関係】

なお、代償金の授受は課税額に反映されます。
支払った人は課税価格から代償金が控除され、反対に代償金を受け取った人は課税価格に代償金が加算されるのです。また、支払いの対象となった財産の価値が変動している場合、その変動率が控除または加算できる代償金の額に反映されます。

【例】亡兄から土地建物(相続開始時の評価額3,000万円/代償分割時4,000万円)を取得した弟が、妹に1,500万円の代償金を支払った場合

  →当事者それぞれの課税価格に対し控除or算入できる額は1,125万円
  計算式:1,500万円×(3,000万円÷4,000万円)

6-2.遺留分侵害額請求の行使

配偶者と兄弟姉妹が共に相続人になったケースでは、配偶者には遺産総額の2分の1相当の「最低限の取得分」(=遺留分/民法第1042条各項)が認められています

兄弟姉妹側が遺産の大半、もしくは全部を取得しようとするトラブルでは、遺留分のうち不足している部分の金銭支払いを求めることの出来る「遺留分侵害額請求権」(旧遺留分減殺請求権)を根拠に話し合う方法が考えられます。

【兄弟姉妹に遺留分はない】

一方の兄弟姉妹には、遺留分が一切認められていません
亡くなった人の兄弟(姉妹)の立場で「どうしても自身の取得分に納得できない」と考える場合は、亡くなった人に対する療養看護や経済的援助を「寄与分」(民法第904条各項)として主張し、取り分に反映させる方法を検討できます。

6-3.相続分の譲渡

トラブル解決までの対応する労力と比較した時に「もらえる遺産が割に合わない」と感じた時は、相続分を他の人に譲渡してしまう方法があります。自身の法定相続分を手放すことで、遺産分割協議や家庭裁判所での話し合い(調停)に参加する義務がなくなるのです。

また、譲渡の条件は基本的に自由です。譲渡相手は「自分以外の相続人」でも「遠縁の親類などの第三者」でも合意できる限り自由に選択でき、譲渡対価も譲渡人と譲受人との話し合いで決められるのです。

【相続分譲渡の注意点】

相続分譲渡には下記2つの注意点があり、急いで契約を決めてしまうのは禁物です。 なるべく弁護士や税理士にアドバイスを仰ぎ、譲渡契約や相続手続きの離脱のための必要書類(相続分譲渡証明書・相続分譲渡通知書など)の作成も出来るだけ任せましょう。

相続譲渡の注意点1:税の問題

譲渡者が対価を得た場合、相続税あるいは譲渡所得税の申告が必要になります。
譲受者側も、第三者であれば贈与税、相続人であれば相続税または譲渡所得税の申告義務が発生します。

相続譲渡の注意点2:「マイナスの財産」の存在

亡くなった人に債務がある場合、相続分譲渡と共に債務の履行義務も相手に発生してしまいます。
譲渡の前に遺産の内容をよく調べ、譲受者に財産目録の交付をするなどして相続財産の内容説明を徹底しましょう。

7.まとめ

兄弟姉妹が相続するケースでは、元々親交が途絶えがちになっている状況を背景にトラブル化しやすいのが現状です。

もめ事を防止し、さらに配偶者やお世話になった施設などの「必要とする人(団体)」が遺産を取得できるようにするには、推定相続人を把握した上で「遺言書を作成する」「家族信託を活用する」などの準備が欠かせません。

また、実際に兄弟姉妹が相続権を得たケースでは、経済的負担の増加に繋がる問題として「相続税の2割加算」があります。いったん起きたトラブルを解決するための手段を駆使する場合でも、法的交渉の進め方と課税関係の両面で専門的な判断が必要になります。

生前対策でも、また相続開始後の対応でも、早めに弁護士や税理士に相談してみる事をおすすめします。

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