遺言を残すことは、人生を終えて家族に別れを告げる者として最後の礼儀と言えるかもしれません。遺産のことで一族が揉めてしまうことのないように工夫しながら、且つ自分の遺志をどうやって実現させるか、大いに悩みながら作り上げていきます。
しかし遺言は生前に作成するものですから、完成させた後で状況が変わることはよくあります。 状況の変化によって古い遺言の内容がそぐわなくなった時には古い遺言を取り消したり、内容を変更したりすることができます。
目次 |
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1.遺言の変更、取消し(撤回)とは? |
遺言の変更、取消し(撤回)とは?
一度作成した遺言が状況にそぐわなくなった時、以前の遺言内容の全部または一部を取り消すことを正式には「撤回」と言います。
一部の内容を撤回した場合は、それ以外の遺言の内容は効力を持ちます。また、全部または一部の条項を撤回するのではなく、その内容を変更することもできます。
この変更や撤回にはルールがあるので、これに従って行わなければなりません。
遺言には大きく自筆証書遺言と公正証書遺言があるので、その別に変更と撤回を行う方法について次項から見ていきます。
遺言の取消し(撤回)の方法
まずは以前作成した遺言の全部または一部を撤回する方法を見てみましょう。
自筆証書遺言の場合
自筆証書遺言の場合、焼却してしまう、あるいは破って捨てるなどして破棄するとその遺言の効力が全て失われ、遺言全体を撤回したことになります。
また、新しい自筆証書遺言または公正証書遺言を作成し、その文面で旧遺言の内容の全部または一部の内容を指定して「撤回する」旨の記載をすることで撤回することも可能です。
公正証書遺言の場合
公正証書遺言の原本は<公証役場に保管されているので、交付を受けた正本や謄本を破棄するだけでは撤回することができません。
この場合は公証役場に出向いて以前の遺言の撤回手続きをすることができます。撤回だけであれば費用は11,000円で済みます。
また日付のより新しい自筆証書遺言で前の遺言の全部または一部内容を指定して撤回することもできますが、自筆証書遺言が発見されない恐れもあるためお勧めできません。
遺言作成者が遺言に記載されている財産を処分や贈与した場合
また、例えば遺言書に「Aに不動産Bを相続させる」と記載しておいて、その不動産Bを生前に売却する、誰かに贈与するなどして処分してしまった場合、遺言の内容と現実が抵触する部分について撤回したものとみなされます。
従ってAは不動産Bを相続できないことになります。
ここまで遺言書の取消し(撤回)の方法を確認してきました。遺言書の方式によって手順が異なってきますので、実際に取消し(撤回)する場合は注意が必要です。 ここからは遺言の「変更」の方法について確認をしていきます。実務上のポイントも解説しています。早速みていきましょう。
遺言の変更の方法
自筆証書遺言の場合
新たに作成する自筆証書遺言または公正証書遺言で、前の遺言の特定の内容を指定して、変更後の内容を書き記すことで変更することができます。
ただ、遺言の変更は後で矛盾箇所、抵触箇所の取扱いを巡って相続人の間で争いの種になることがあるので、実務では前の遺言を全て撤回したうえで新たに作り直すことが強く推奨されています。
公正証書遺言の場合
新たに作成する自筆証書遺言または公正証書遺言で、前の遺言の特定の内容を指定して、変更後の内容を書き記すことで変更することができます。
新たな遺言も公正証書遺言とする場合、原則として前の公正証書遺言を全て撤回したうえで新たな公正証書遺言を作成するように指導されます。
変更内容が小さく、「補充または更生」の範囲内と認められる場合には「補充証書」、「更生証書」というものを作成することで変更とすることもできます。こちらは別途所定の費用がかかります。
新たな遺言を自筆証書遺言にすることもできますが、発見されない恐れもあるためやはりお勧めできません。
撤回と変更の方式は前と違ってもOK
上述しましたように、新しい遺言で旧遺言を撤回、または変更する場合には古い遺言の方式と同じ方式でもできますし、以前のものとは別の方式でも可能です。
例えば公正証書遺言の内容を新しい自筆証書遺言で撤回・変更することができますし、その逆も可能です。
ポイントは自筆証書遺言や公正証書遺言などの方式によって優劣が付くのではなく、「日付の新旧」の差で優劣がつけられ、より新しい方の遺言の内容が優先されるということです。
内容的に新旧二つの遺言で抵触する箇所がある場合も、新しい遺言に記載された内容の方が優先します。
効力が発生した遺言を取り消すことはできるのか?
被相続人が死亡し効力が発生した遺言について、遺族がこれを取り消すことはできません。 相続人間で遺言の有効性に争いがある場合、その効力をなくすには遺言無効確認訴訟による必要があります。
まとめ
今回は遺言の撤回と変更について見てきました。
変更と一部のみの撤回は矛盾箇所、抵触箇所を生み相続発生後に遺族間で思わぬ争いを生む種になることがあるので、実務上は旧遺言については全体を撤回し、新たに遺言を作成することが多いです。
また、撤回や変更ももちろんですが、遺言の作成自体にも細かいルールがあり、これに則っていないと遺言全体が無効になる恐れがあります。
自筆証書遺言ではわずかなルール逸脱により無効になってしまうケースも散見されるので注意が必要です。
この点、専門家である公証人が関与して作成される公正証書遺言であれば間違いのない遺言を作れるので安心です。
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相続相談はどこにするべき?専門家(税理士、司法書士、弁護士)の強み
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