ーコラムー
遺言書を作成する

遺言執行とは「誰が」、「何を」することなのか?

2018.7.18

相続に関する説明会などで遺言の解説をする場面では、とりわけ遺族が揉めないための遺言内容の工夫などをメインに扱うことが多いですが、実際に相続が起きて遺言書が有効になった後の実務のことを考えてみたことはあるでしょうか?

遺言書に書かれた故人(被相続人)の遺志を実際に実現するには、現実の人の手によって各種の手続きが必要になります。

遺言書の内容を実現させることを「遺言の執行」といいますが、今回はこのテーマについて解説します。

「遺言の執行」とは?

遺言の執行とは遺言書に記載された内容を実現することで、そのための具体的な行為を行う人のことを「遺言執行者」といいます。

遺言執行者は相続財産の管理や遺言を執行するために必要な一切の行為をする権利を有し、また義務も負います。 重い責任を負うことになるので誰でもなれるわけではありません。

遺言執行者には誰がなれるのか?

法律上、未成年者と破産者は遺言執行者になれないことになっています。 手続きの実務や財産を扱うことを考えると、これらの人が執行者になると不都合や危険を伴うからです。

逆に言えば上記外の人であれば誰でも遺言執行者になれるわけですが、大切な相続財産を扱うのですから信頼できて公平かつ忠実に職務を遂行してくれる人でなければ安心できませんね。

ですから誰がなれるのかというよりも、「どのような人を選ぶべきか」という視点で見ることが大切になります。

遺言執行者の選び方

遺言執行者は被相続人となる人が事前に遺言で指定することができます。

相続人のうち特定の誰かを指定したり、弁護士など第三者を指定することもできます。またNPOなど法人を指定することもでき、複数人を遺言執行者に指定することもできます。

複数人の遺言執行者を指定した場合、各執行者に仕事を分担させるような遺言になっていればその指示に従いますが、分担が明確になっていない場合は遺言執行者の過半数の意思によって執行していきます。

ただし、財産を維持するための保存行為は各遺言執行者が単独で行えます。

 

遺言執行者の選定においては相続人となる人のうちから選ぶことも可能ですが、共同相続人はお互いに利害関係者となるため、他の共同相続人から反感を持たれてしまう可能性もあります。

ですから複数の相続人予定者があまり仲が良くない、トラブルが起きやすいようなケースでは弁護士などの第三者に遺言執行者をお願いする方が安心と言えるでしょう。

また相続人となる人は遺言の中で遺言執行者そのものでなく、遺言執行者を選任してくれる人を指定することも可能です。 もし遺言の中で遺言執行者の指定などがされていない場合、相続人は家庭裁判所で手続きをとることで遺言執行者を選任してもらうことができます。

  さてここまでで「どのような人」を遺言執行者に選ぶとよいのかがわかったのではないでしょうか。ご自身の相続を取り巻く状況に応じて、最適な人を遺言執行者に選びたいものです。

それではこの遺言執行者は、どのようなことを行えるのでしょうか?また存在していてくれることのメリットにはどのようなことがあるのでしょうか? 

こちらでは遺言執行者を選ぶメリットと、遺言執行者が行えることを詳しく見ていきましょう。

遺言執行者を選定するメリット

遺言執行者は単独で必要な行為を行うことができるので、各種手続きのためにその都度相続人全員から署名押印をもらうなどの手間と時間を要せず、迅速に遺言内容を実現することができます。

各相続人は遺言執行者の職務を妨げる行為はできないので、確実に故人(被相続人)の遺志を叶えることが可能になります。

ケースによっては事後処理に必ずしも遺言執行者を必要としない場合もありますが、遺言執行者がいればより迅速に、かつ確実に遺言執行の実務を進めることができるのがメリットです。

遺言執行の責任者が明確になることによって各方面の手続きがスムーズに進められるので、被相続人となる人はぜひ遺言執行者についても一考されることをおススメします。 ただし、もし遺言書の中で「相続人の廃除や廃除の取り消し」または「子の認知」についての指示があった場合、必ず遺言執行者が必要になります。

この場合はもし遺言書の中で遺言執行者の選任について指示が無いと、相続人は家庭裁判所で遺言執行者の選任手続きをとらなければならなくなります。 事後的に相続人を慌てさせないためにも、遺言書であらかじめ指示をしておくと安心です。

遺言執行者ができること

遺言執行者は相続財産の管理や遺言を執行するために必要な一切の行為をすることができるとお話しました。

実際の行為としては例えば不動産や預貯金、有価証券などの各相続財産の名義を承継する権利のある相続人に変更したり、受遺者に財産の交付を行ったりします。

また不動産など相続財産の換価処分が必要な場合は売却をすることもできます。不動産業者との折衝も遺言執行者が行うので相続人は手間がありません。

もし相続人の誰かが遺産を独り占めにしようとするなどして遺言執行者の職務を妨害した場合、訴訟を提起して妨害を排除することもできます。

遺言執行者の目線は常に被相続人が残した遺言の内容に向けられ、これを確実に実現させることが職務になります。

相続人の一人が遺言執行者となる場合は相続人としての立場と遺言執行者としての立場がぶつかることになるので、これを心配に思うならばやはり被相続人となる人は相続人以外の第三者を遺言執行者に選んだ方が安心でしょう。

まとめ

今回見てきた遺言の執行については、遺言書講座などでもあまり解説されることがないので考えたこともなかったという人も多いと思います。

遺言書は被相続人の「遺志」を伝えるものですが、遺言執行者がいればその遺志をスムーズに実現することができます。 遺言執行者は必須でないケースもありますが、自分が希望する遺言を確実に実現したいならば遺言で指定しておきましょう。 ご自身の周りで誰が適任か、一度ゆっくり考えてみては如何でしょうか。