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ーコラムー
相続財産の基本
税理士監修記事

遺産(相続財産)とは?手続きの流れやもらえる割合は?

公開日:2019.11.7 更新日:2022.10.25

「遺産(相続財産)とは故人の所有物全体である」と説明できる人は多くいます。しかし自 身や家族の保有資産ともなると、後世代が受け継ぐべきものを具体的かつ漏れなく挙げられる人はあまりいません。

相続手続きの第一歩は、遺産の定義とそこに含まれる資産の種類を把握し、今後の相続に備えてリストアップできるようにしておくことです。

今回のコラムでは、相続の性質を踏まえて「遺産とはそもそも何を指しているのか」を解説し、不動産や現金などの個別の資産を相続財産一覧として紹介します。

【この記事で分かること】
・故人の財産に占める遺産(相続財産)の範囲
・相続できるプラスの資産の一覧&承継時の留意点
・相続できるマイナスの資産一覧&適切な対処法
・相続財産に含まれない資産一覧

目次

1.遺産(相続財産)とは
  1-1.故人の持つ「モノ・金銭・権利義務」の全てが遺産となる
  1-2.相続財産扱いとなる資産には2種類ある
2.遺産の相続方法
  単純承認
  限定承認
  相続放棄
3.プラスの資産
4.マイナスの資産
5.相続順位と受け取れる遺産の割合について
6.遺産(相続財産)とならないものとは
7.遺産相続に必要な書類
8.遺産相続に必要な手続きの流れ
9.財産目録はなるべく作成を
10.遺産相続でよくあるトラブルと解決方法
11.まとめ

1.遺産(相続財産)とは

遺産(相続財産)とは、被相続人がその死亡時点で保有する財産全体を指します。
死亡時点から相続人全員の共有となり、遺言の執行または遺産分割協議を終えるまで勝手に持ち出すことは出来ません(民法892条・896条)。

遺産の性質とそこに含まれる資産種類を把握しておくことは、相続トラブル防止の観点で大切なことです。

実際に相続が開始された際、遺産の内訳を曖昧にしたまま協議を始めると、相続人の間に「自分の知らない財産が他にあるのではないか」といった不信感が芽生えてしまいます。持ち出し禁止のルールを知らずに共有中の相続財産を使い込む人物がいると、協議が停滞し法的措置を取る手間もかかるでしょう。

このようなトラブルは、いったん遺産全体をリスト化し家族全体に周知しておくことで防止できます。

1-1.故人の持つ「モノ・金銭・権利義務」の全てが遺産となる

遺産と言えば不動産や現金ばかり連想されがちですが、決してそれだけではありません。
そもそも相続とは「故人が所有するモノ・金銭・権利義務の全体をまるごと受け継ぐ手続き(包括承継/民法896条1項上段)」です。目に見えて価値のわかりやすい資産だけが後の世代に受け継がれるのではなく、承継したい資産を相続人が個別に選択することも認められていません。

こうした法律上の前提をもとに、相続財産と解釈されるものには有形無形のあらゆる資産が含まれます。

【一例】相続財産に含まれるもの
・未回収の売上金(被相続人=個人事業主の場合)
・ゴルフの会員権
・特許権・商標権
・貸金庫に収納されている貴金属や宝石類

1-2.相続財産扱いとなる資産には2種類ある

相続が包括承継であるという性質上、借金や約束履行義務などの負の遺産(マイナスの資産)も遺産として受け継ぐ必要がある点にも注意しましょう。

【“遺産”は2種類に分かれる】
①プラスの資産…モノの所有権+契約履行を求める権利
②マイナスの資産…約束を果たす義務

個別に承継する財産を選ぶことは認められない一方で、相続そのものをするか・しないかは相続人自身の意志で決められます。マイナスの資産がプラス資産を超過しているようであれば、一切を放棄して損失を回避することが出来るのです。

ここから先は、プラス・マイナスの各性質をもつ相続財産一覧を具体化して紹介します。

2.遺産の相続方法

遺産の相続方法には①単純承認・②限定承認・③相続放棄の3種類があります。 通常、被相続人の遺言や共同相続人の話し合いで遺産を承継しようとする場合、法的には①単純承認したものと認められます。しかし「マイナスの資産が多すぎる」と判断されるケースでは、②限定承認あるいは③相続放棄を適宜選択して家庭裁判所に申し立て、不利益を回避します。

単純承認

単純承認(民法第920条)とは、遺産全体を相続することを指します。承継する財産は当然、経済的利益をもたらす「プラスの資産」だけでなく、相続人の負担となる「マイナスの資産」も含まれます。

なお、単純承認はあえて意思を示す(家庭裁判所への届出等)までもなく、下記の行為があれば成立すると解されます。」

  • 相続財産の名義変更を始める
  • 遺産分割協議を始める
  • 相続財産の一部を売却する
  • 債務(マイナスの財産に含まれるもの)の全部または一部を履行する
  • 「相続の開始があったことを知った時」から3か月が経過する

参考:民法第915条・同法第921条第1項~第3項

限定承認

限定承認(民法第922条~第923条)とは、共同相続人全員の同意のもと「マイナスの資産」の価額を限度として遺産を相続することを指します。

より具体的には「遺産承継の前に債務の清算を行わなければならず、その後プラスの財産に残余分があるときに限り相続できる」というものです。清算しきれなかった場合、残った債務を承継する必要はなく、相続できる財産=ゼロとして扱います。

なお、限定承認は家庭裁判所への申立てが必要な手続きです(民法第924条)。 申立て後は債権者から裁判所に対して届け出てもらい、債務清算のため必要に応じて競売が行われます。

相続放棄

相続放棄(民法第939条)とは、遺産全体を相続しないことを指します。マイナスの資産を承継せずに済みますが、同時にプラスの資産を得ることも出来なくなります。 また、共同相続人の一部が相続放棄した場合、その放棄された相続分は他の相続人へと権利移転する点に注意しましょう。

限定承認と同じく、相続放棄も家庭裁判所への申立てが必要です(民法第938条)。 かえって相続人の不利益につながる可能性が否めない点から、申立て後は家裁側から照会が行われ「手続きに対する理解」や「単純承認にあたる事由が生じていないか」の確認がとられます。

3.プラスの資産

遺産に含まれるプラスの資産は7種類に分類できます(以下の表参照)。

相続財産の種類 詳細
①不動産 所有権・借地権など
②預貯金・現金 普通預金・定期預金・タンス預金など
③有価証券 証券口座で管理している株式や債券など
④動産類 自動車・家財など
⑤損害賠償請求権 慰謝料請求権も含む
⑥各種債権 個人事業や不動産運用で得られる収入(売上または賃料)
⑦知的財産権 特許権・著作権など
その他 ゴルフの会員権など

これらのなかには、事業承継(被相続人の経営する会社そのものの相続)と関わりの深いものや、遺産分割協議するまでに特別な措置を必要とするものがあります。
①から順に詳しく解説してみましょう。

①不動産

不動産の相続では、所有権のほかに「他人の土地建物を使用する権利」も遺産として扱えます。

【相続できる「他人の土地を使用する権利」】
・地上権
・土地賃借権
・借地権(賃借権)
・永小作権

いずれの権利も、複数の相続人で分割することが可能です。ただし、土地使用の権利を分割する際は、地主(所有権者)の承諾を得なければなりません。権利評価額の1割程度の承諾料を要することもあります。

借地権は、被相続人と同居し特別な関係にあった人が優先的に相続できます(借地借家法36条1項)。
この法令の趣旨は、賃貸住宅で故人と生活を共にしていた内縁のパートナー(あるいは義親子関係にある人)に住居保障を行うことです。故人と血の繋がった相続人が現れて追い出そうとしたり、あるいは相続人がいないことを理由に家主から退去を迫られたりしても、残された同居人が転居する必要はありません。

②預貯金・現金

銀行の預金または自宅で保管している現金は、当然すべて遺産に含まれます。遺産分割協議により各自の相続分が決まるまで、特定の人が出金したり消費したりすることは出来ません。

被相続人の同居人(子供などの法定相続人に含まれる人も対象)が勝手に消費している場合、不当利得返還請求権などを行使し、相続人に返すよう求めることが出来ます。

③株式・債券(有価証券)

有価証券は現金化されるまでもなく相続対象ですが、自社株式には要注意です。
自社株式とは経営権(または会社の所有権)そのものであり、故人に次いで経営者となる人が得るべきものです。廃業もしくは事業売却をしてしまおうと考えているなら、実際にその手続きを行う人に株式をすべて移転する必要があるでしょう。

被相続人の会社を継ぐ人(もしくは処分しようとしている人)がいるなら、その人に自社株式をすべて相続させた上で、法定相続分に見合った額の現金支払いか遺産分割を行うのが妥当です。

④動産類

自動車や家財などの遺品はまとめて「動産」と呼ばれ、全て相続対象となります。トロフィー・メダル・貴金属や宝石類など、日常的に使用しないものも含まれます。

動産の難点は、細々としていて被相続人本人ですら把握しづらい点です。
故人の死亡からずっと後になって高級品の納められた貸金庫が見つかったり、趣味のコレクション品に意外な値がついたりするケースも、決して稀ではありません。

⑤損害賠償請求権

被相続人が行使することの出来た損害賠償請求権・慰謝料請求権は、やはり相続財産として扱われる財産です。

被相続人に代わって相続人が権利行使しようとする際は、消滅時効(損害および加害者を知ったときから3年/民法724条)に注意しましょう。請求できる状態にもかかわらず故人も相続人も相手方に主張しない場合、3年目で権利消滅してしまいます。

⑥個人事業や不動産運用で得られる収入

個人事業で取引先から後払いの約束を得た時に生じる「売掛債権」・所有する賃貸アパート等から得られる「賃料収入」については、実際に支払われる前の権利の状態で相続財産となります。

問題は、遺産分割協議が終わるまで直接支払いを受けることが出来ない点です。うっかり故人の同居家族などが支払いを受けてしまうと、他の相続人から横領を指摘されてトラブルになることもあります。

いったんは債権者不確定を理由とする供託(民法464条)を利用し、被相続人の死亡から収入の帰属先が決まるまでの間、供託所を支払い受付窓口として収入を預かってもらうのが適当です。

⑦知的財産権

発明や創作物を占有する権利である「知的財産権」は、重要な相続財産のひとつです。
被相続人が自分のアイデアをもとに会社経営していたケースでは、次の経営者となる人が特許権・商標権なども承継しなければ、事業継続が立ち行きません。

さらに気を付けなければならないのが、それぞれ下記の存続期間が設けられている点です。

【種類別】知的財産権の存続期間
特許権:出願から20年
著作権:死後または公表後70年※
商標権:登録から10年(更新可)
意匠権:登録から20年
実用新案権:出願から10年
回路配置利用権:10年
育成者権:登録から25年

※著作権の存続期間の起点は、著作権者が個人の場合は「死後」・著作権者が法人の場合は「公表後」である点に注意。

知的財産権の評価額は社会貢献度の高さに比例しますが、まもなく存続期間が終わるものを受け継いでも、それほど多くの金銭的価値が発生するとは言えません。こうした状況を踏まえて、公平に相続分を決める必要があります。

4.マイナスの資産

借金・納税義務・死亡時点までの故人の生活費などは“負の遺産”であり、相続財産評価額全体の価値を下げるものです。

もし相続で損失が出る可能性が高いのなら、死亡日から3ヵ月以内に相続放棄・限定承認のいずれかを家庭裁判所に申し立てるのが適切です。

【相続開始時点で負債が多いときに検討できる手続き】
・相続放棄:相続財産全体を放棄
・限定承認:相続財産評価額全体がプラスになる場合のみ相続

マイナスの資産のなかには、契約変更や保険金などで解消できるものもあります。代表的なものを以下で4種類に分類し、留意点・解消方法について紹介します。

①借入金・保証債務

負の資産となるのは、被相続人自身が返済義務を負う契約ばかりではありません。保証人という立場・相続財産に付着した抵当権についても、相続人が承継することになります。

【相続財産として扱われる金銭債務の一例】
・消費者金融からの借金
・返済中の住宅ローン
・自社の資金調達のために行った経営者保証の事業融資

返済中の住宅ローンについては、団体生命保険を契約していれば保険料による残債清算が行われます。抵当権も外され、実質的に相続する上で問題となりません。

事業融資については、経営者交代を済ませた上で金融機関と交渉を行い、新経営者を保証人とする契約変更に応じてもらう必要があります。不動産を担保とする契約であれば、抵当権の付着した不動産は新経営者がまるごと承継すべきです。

②個人事業の買掛債務

個人事業主が後払いの約束で仕入を行った時の債務(買掛債務)は、相続人が果たさなければなりません。

家族の一員による事業承継の予定があるなら、取引先との信頼関係を壊さないよう期日までに支払う必要があるでしょう。

③未払いの税金・健康保険料

被相続人が滞納している税金は相続人負担であり、猶予や免除を受ける事も困難です。

亡くなった人の住民税については「死亡日が1月2日以降なら1年分を課税」というルールがあり、死後もなお請求書が届くことがあります。滞納前であれば納付猶予に応じてもらえる可能性があるため、プラスの財産や相続人の資力が心もとないケースでは、前もって役場に納付計画について相談しておくのも良いでしょう。

④死亡までの固定費・生活費・医療費

死亡まで発生していた家賃・水道光熱費・医療費の支払い義務も相続対象です。故人の身の回りを整頓する際、忘れず支払っておく必要があります。

被相続人が生前に「死後事務委任契約」を結んでいれば、弁護士または司法書士が管理する預託金(葬式や遺品整理等のための資金)から捻出可能です。

マイナスの遺産(相続財産)とは?

5.相続順位と受け取れる遺産の割合について

相続人が2人以上存在する場合、プラスの資産・マイナスの資産ともに「法律で定められる承継割合」(=法定相続分)に沿って分割します。個別事例での各人の法定相続分は、相続人の構成により異なります(下記表参照)。

【相続人の構成別】法定相続分の一覧表

相続人の構成 配偶者 直系尊属 兄弟姉妹
配偶者のみ 2分の1 2分の1
配偶者と直系尊属 3分の2 3分の1
配偶者と兄弟姉妹 4分の3 4分の1
子のみ 全部
直系尊属のみ 全部
兄弟姉妹のみ 全部

表で紹介した法定相続分は「必ずこの通りに遺産分割しなければならない」というものではありません。実際の遺産分割の割合は、共同相続人の合意(遺産分割協議によるもの)または遺言書で変更できます。

【参考】相続人構成の決まり方

存命の親族のうち相続人になれるのは「配偶者」と「相続順位が最も高い人」です。 相続順位については、子が第1順位、父母や祖父母などの直系尊属が第2順位、兄弟姉妹が第3順位と定められています。

なお、子や兄弟姉妹がすでに死亡している場合は、子から孫へ・兄弟姉妹から甥や姪へのように、法定相続分そのものが承継されます(=代襲相続)。

6.遺産(相続財産)とならないものとは

故人の財産に含まれる「お弔いや家庭行事のために最低限必要なもの」「受取人が決まっており分割・処分の一切が出来ないもの」は相続財産として扱われません。遺産分割協議で相続分を決める必要がなく、死亡と同時に特定の人が単独で受け継ぐことが認められます。

例外的に相続財産に含まれるケースを含め、遺産として扱われない代表的な資産種類を3つに分けて紹介します。

①退職金・生命保険金(死亡時に給付されるもの)

死亡退職金・生命保険金は、いずれも原則として受取人が単独でもらうことができます。
受け取った金額は相続分算定に加味されず、他の相続人から差し引くよう求められる法的根拠(遺留分侵害請求権や特別受益分など)もありません。

注意しなければならないのは、受取人指定がないものは相続財産扱いとなる点です。それだけではなく、支給ルールや金額の大きさにより例外的に遺産分割を行わなければなりません。

退職金は弔慰金という名目なら相続財産扱いとならない可能性が高い一方で、生命保険金なら「金額が大きすぎる場合は遺産分割を行うべき(最高裁平成16年10月29日判決)」という明確な結論があります。

②墓地や仏壇など(祭祀財産)

お弔いや家族の宗教的慣習に必要な財産は「祭祀財産」と総称し、行事の主宰者となる人がひとりで承継することが出来ます(民法817条)。主宰者は被相続人が遺言または口頭で指定でき、生前に指定がなかった場合には家庭裁判所の審判で決めてもらえます。

【祭祀財産の例】
・墓地(永代使用権)
・お寺の永代供養権
・仏壇・仏具・神棚
・家系図

③一身専属権(老齢年金・生活保護受給権)

一身専属権とは「故人以外の人に移転したりすることのできない性質の権利」を指します。下記の権利・資格はいずれも死亡届提出と同時に消滅し、相続人が誤って利益を受け取った場合は返還義務が生じます。

【一例】一身専属権の一覧
・老齢年金・障碍者年金の受給権
・生活保護受給権
・職業資格
・扶養請求権(民法878条・881条)

7.遺産相続に必要な書類

遺産を相続するときは「死亡証明になるもの」と「各相続人の身分と取得財産が分かる書類」を準備し、銀行や法務局などの関係各所で手続きする必要があります。必要書類は手続き先(銀行や法務局など)により異なりますが、どの場合でも下記の一式は必ず揃えなければなりません。

【遺産相続の必要書類】

  • 被相続人の死亡を証明する書類
    …住民票(除票)、戸籍謄本、除斥謄本など、死亡が明記されている公的書類を取り寄せます。
  • 相続人全員分の戸籍謄本
    …現在の戸籍謄本に加え、被相続人との身分関係(=続柄)が分かるよう、婚姻や出生時の戸籍謄本を取り寄せます。代襲相続が発生しているときは、亡被相続人の死亡が分かる戸籍謄本も準備します。
  • 遺言書or遺産分割協議書
    …被相続人から相続分の指定があったときは「遺言書」、共同相続人で話し合った内容を書面化した「遺産分割協議書」と押印した印鑑の登録証明書を提示します。

8.遺産相続に必要な手続きの流れ

単純承認で相続しようとする場合は、次の1~4のステップで手続きを進めます。被相続人の収入に頼っていた家族の生活や、最後に実施する相続税申告の期限(相続開始から10ヶ月)を考慮し、次に行うことを理解しながら段取りよく進めることが大切です。

Step1-1.遺言書の捜索・検認

遺品捜索・貸金庫の開扉手続き・公証役場(公文書の作成を行う官公庁)での遺言検索サービスなどを通し、遺言書を捜索します。 発見した遺言書は未開封のまま保管し、家庭裁判所に「検認」の申立てを行った後、期日当日に裁判所で開封します(民法第1004条1項~第3項※)。

※例外的に、公正証書遺言は検認を要しません。正本(公証役場保管の遺言書原本と同じ効力を持つ写し)があれば、そのまま家裁を通さずにStep2へと手続きを進められます。

Step1-2.遺産分割協議の実施

どうしても遺言書が見つからない時は、共同相続人の話し合いで各人の取得分を決定します。話し合いで合意に至ったときは、相続人の一覧と各取得分を「遺産分割協議書」にまとめます。

意見対立等が原因で遺産分割協議が進まない時は「遺産分割調停」を提起し、裁判所で調停委員仲介のもと話し合いを進められます。

Step2.必要書類の収集

先に紹介した必要書類を収集し、今後手続きを行う場所(銀行や法務局など)に確認をとりながら追加書類を適宜準備します。
なお、相続人全員分の戸籍謄本(身分関係を示すもの)に関しては、法務局で取得できる「法定相続情報一覧図」で代用できます。

参考:『法定相続情報証明制度の具体的な手続きについて』(法務局)

Step3.遺産の名義変更

預貯金は銀行で、不動産は法務局で…とのように、資産ごとに相続人への名義変更手続きを行います。添付書類だけでなく、所定の申込書や登記申請書を準備しましょう。

Step4.相続税の申告

遺産の名義変更手続きが終わり次第、相続税申告を行います。 相続開始後10ヶ月目までに手続きが間に合いそうにないときは、早めに「申告期限の延長の特例」を申請することで、利子税や延滞税などのペナルティを免れられます。

9.財産目録はなるべく作成を

親世代と離れて暮らす人が増えた影響で「被相続人の財産状況を全く知らない」というケースが目立つようになりました。

こういった状況では遺産調査が適当ですが、故人の近況をよく知らないと、財産のある場所に見当をつけることすら困難です。家族が力を合わせて何とか調査を終えられたとしても、あとから何らかの財産が見つかってしまうリスクが残されています。

そこで役立つのが、被相続人自身の手で生前作成された財産目録です。

9-1.財産目録に記載すべき内容

財産目録の目的は、相続開始時点ですぐに資産を発見できるようにすることです。 どこでどんな資産を保管しているのか・数や面積はどのくらいなのかという情報を、遺産調査の手間が省けるよう出来るだけ細かく記載しましょう。

【財産目録に記載すべき内容】

  • 不動産…………所在地・地番・家屋番号・地目・建物の種類・構造・地積・床面積・持ち分・固定資産評価額
  • 預貯金…………金融機関・支店名・口座番号(記号番号)・財産目録作成時点の残高
  • 有価証券………種類・銘柄名・保有数・財産目録作成時点の単価・証券口座の情報
  • その他の資産…生命保険や現金など、資産の種類・保管場所・財産目録作成時点の評価額をそれぞれ詳しく記載

9-2.故人の遺した財産が分からないときは

財産目録がなく相続人の手で遺産調査をするときは、次のような手段を組み合わせ、地道に調査をしなければなりません。

【遺産調査の方法例】
・金融機関で名寄せ(残高証明発行)を行う
・役場保管の課税台帳を閲覧する
・法務局に不動産登記事項証明書(登記簿謄本)を請求する※
※少なくとも不動産の所在地を把握している必要があります。

これは極めて労力が大きい作業です。故人と疎遠になっていたり遺品が災害等で滅失していたりすると、ますます調査難易度は上がるでしょう。

相続を専門とする法律事務所に任せてしまうのも、相続人にとって手間のかからない方法の一つです。依頼することで弁護士法23条照会※が行えるため、調査そのものの迅速化を図ることが出来ます。

※弁護士法23条照会…依頼人のトラブルを解決するため、職権に基づき行政や民間企業に事実関係の開示を求める弁護士権限。

10.遺産相続でよくあるトラブルと解決方法

遺産相続を巡っては、遺産の内訳を把握していないことによる下記のようなトラブルが想定されます。併せて紹介する対策・解決方法を参照し、各事例での相続手続きに備えましょう。

トラブル例①:相続手続き後に未分割の遺産が出てきた

義変更や相続税申告が一通り終わったところで「新しく未分割の遺産が判明する」というケースは、決して稀ではありません。同居家族など特定の相続人が(相続財産と知らずに)未分割の遺産を独占している事例もあり、このような例では相続税申告から1年~2年程度で行われる可能性がある「税務調査」で発覚することもあります。

対策として何よりも有効なのは、生前のあいだに「財産目録」を作成しておくことです。記載に漏れがないよう、弁護士や司法書士と相談しながら作成するのが適切でしょう。 すでに相続が始まっているのなら、遺言執行(もしくは遺産分割協議)を行う前に、徹底した「相続財産の調査」を実施しましょう。

トラブル例②:相続税が高く手元資金では支払えない

相続財産が現金以外の資産に偏っている事例では、相続税を支払うための現金が足りなくなる可能性があります。評価額が高く換金性の低い資産(※市街地周辺の不動産 や非上場株式が代表例)は、特に納税資金不足のトラブルを招きやすいと言えます。

解決方法として考えられるのは、一部資産に関しては売却してその対価を遺産分割の対象にする(=換価分割)など、現金をより多く確保できる相続の仕方です。 もっとも、被相続人の代での資産売却など相続開始前に納税資金を確保しておくのが理想的です。当然ながら、確保を要する金額にあたりをつけるには、相続税の試算 が欠かせません。

11.まとめ

遺産とは「故人が一生の間に築き上げた財産の全て」であり、実際に把握するには知識と被相続人からの手がかりが欠かせません。しかし、相続人全員がお互いに信頼しあって遺産分割協議を終える上では、避けては通れない道です。

相続の性質とはなにか・遺産としてどういったものが後世代に受け継がれるのかを知る上で、次の3つのポイントを押さえましょう。

①遺産とは「故人所有のモノ・金銭・権利義務の一切」
…不動産における土地使用の権利や損害賠償請求権なども遺産に含まれる。

②遺産にはプラスの資産・マイナスの資産の両方が含まれる
…保険金による清算・保証債務の付け替え等でなおマイナスの資産が超過する場合、死亡日から3ヵ月以内に相続放棄または限定承認を行うのが適当。

③故人の財産には「遺産に含まれないもの」もある
…祭祀財産は被相続人指定の主宰者・死亡時退職金や生命保険金は契約で指定された受取人が単独で受け継ぐことができる。

ここで紹介した相続財産一覧があれば、生前の財産目録の作成・死後の遺産調査の両方において、迷いや調査漏れを防げます。

調査のための時間が取れない場合・故人と疎遠で財産の保管場所に関する手がかりが全くないケースでは、相続の専門家に一任することも前向きに検討してみましょう。

日本クレアス税理士法人では、相続専門の経験豊富な税理士による専門チームが、必要に応じて弁護士・司法書士と提携しながら、相続の生前対策から相続税の申告、相続後の各種対応までお客様のサポートを行っています。

生前対策、節税、遺言書の作成、相続税の申告、申告後の税務署対応など、皆様の状況に合わせたお悩みに、相続専門のプロが丁寧に対応します。まずはお気軽にお問合せください。

この記事を監修した税理士

日本クレアス税理士法人
執行役員 税理士 中川義敬

2007年 税理士登録(近畿税理士会)、2009年に日本クレアス税理士法人入社。東証一部上場企業から中小企業・医院の税務相談、税務申告対応、医院開業コンサルティング、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等に従事。事業承継・相続対策などのご相談に関しては、個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスを行う税理士として定評がある。(プロフィールページ

・執筆実績:「預貯金債券の仮払い制度」「贈与税の配偶者控除の改正」等
・セミナー実績:「クリニックの為の医院経営セミナー~クリニックの相続税・事業承継対策・承継で発生する税務のポイント」「事業承継対策セミナー~事業承継に必要な自己株式対策とは~」等多数

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