ーコラムー
相続財産の基本

特定の財産を特定の人へ~特定遺贈のメリットとデメリット

2016.7.4

遺言で自分の財産を相続人などに無償で贈与することを「遺贈(いぞう)」といい、遺贈の中で特定の財産だけを特定のある人に遺贈することを「特定遺贈(とくていいぞう)」といいます。

特定遺贈は便利な制度なのでさまざまなケースで使われますが、トラブルを招きやすく、注意しなければならない点が多くあります。

今回は、特定遺贈について詳しく解説したいと思います。

特定遺贈とは?~特定遺贈の具体例

特定遺贈1

特定遺贈とは、特定の財産だけを特定のある人に遺贈することです。その特定の財産については、遺言で具体的に示す必要があります。

たとえば、「住所○○の土地と建物」、「住所○○にある土地○○坪のうち○○坪」、「株式○○株のうちの○○株」などのように遺言に記載します。自宅を同居している家族に相続させたい場合や、事業承継などの場合にも便利な制度です。

これに対して、包括遺贈(ほうかついぞう)という方法もあります。包括遺贈は、「遺産全体のうちの1/3」というように配分割合を示して遺贈する方法です。

特定遺贈のメリット

(1)遺贈の放棄がいつでもできる。

特定遺贈は、放棄をするときに、家庭裁判所に申請する必要がありません。放棄するときは、他の相続人に放棄することを意思表示すればできます。

(2)プラスの財産だけ遺贈させることができる。

包括遺贈の場合は、借金などのマイナスの財産も割合に応じて引き継ぐ方法ですが、特定遺贈の場合は、特定のプラスの財産だけ遺贈することができます。

ほかに借金などのマイナスの財産があっても、引き継ぐ義務はありません。

特定遺贈のデメリット

(1)遺言作成から遺贈するまでの間に、特定遺贈対象の遺産が処分されている場合に、対応できない。

遺言作成から遺贈までの期間が長い場合に、遺産の内容が処分されたりして変更になっている場合があります。この遺産に特定遺贈の対象になっているものがあった場合には、その遺言は無効になってしまいます。

(2)相続人以外が特定遺贈された場合には、不動産取得税がかかる。

相続人が特定遺贈された場合には不動産取得税がかかりませんが、相続人以外に特定遺贈された場合には、不動産取得税がかかります。

さて、ここまで見てきたように特定遺贈は上手く使うと、被相続人の希望どおりに相続財産を財産を遺贈することができる、有用な制度です。特定の財産を特定のある人に遺贈することが出来る「特定遺贈」の制度。ここからは特定遺贈の注意点を紹介していきます。

特定遺贈の注意点

(1)特定遺贈を放棄するとき

特定遺贈を放棄する場合には、他の相続人に放棄することを意思表示するだけでできますが、後からトラブルになることもありますので、内容証明郵便で行う方法がよいでしょう。

放棄するかどうか決められずに意思表示をしない場合、他の相続人から期間を定めて、承認するか放棄するかの催促をされることがあります。

この期間中に意思表示がない場合には、特定遺贈を受けたとみなされてしまいますので注意が必要です。

(2)遺贈する財産に変化があった場合

特定遺贈する財産を処分してしまうなど遺産内容に変化があった場合には、その遺言は無効になってしまいます。遺産内容に変化があった場合には、遺言書を書き換える必要があります。

(3)遺言執行者についての注意点

特定遺贈を行うとき、不動産登記の移転や相続財産の管理などを相続人が行えば、遺言執行者は特に必要ありません。

しかし特定遺贈は、特定の財産をある人に遺贈するものですので、ほかの相続人とトラブルになることも多く、不動産登記の移転や相続財産の管理などを相続人がすみやかに行ってくれないケースもあります。

トラブルを避けるためにも、あらかじめ第三者である相続の専門家を、遺言執行者として指定しておくほうがよいでしょう。

(4)遺留分に対する配慮

特定遺贈で遺留分を侵害しているときには、遺留分減殺請求の対象となります。

相続人が保証されている最低限の取り分が特定遺贈によって減ってしまった場合には、最低限の取り分が減ってしまった相続人は、最低限の取り分を請求する権利が発生し、これを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。

特定遺贈を行う場合、せっかく特定の財産を遺贈するために遺言をしたのに、遺留分減殺請求がされると、その財産の遺贈が難しくなってしまう場合もあります。

特定遺贈でトラブルを避け、特定の財産を確実に遺贈するためには、相続人の遺留分を侵害しないように注意する必要があります。

(5)特定遺贈と相続税

特定遺贈でも相続税はかかってきます。

相続人ではない第三者が特定遺贈をされた場合にも、贈与税ではなく相続税がかかり、通常よりも2割も多い金額となります。この第三者は法定相続人の人数に含まれませんので、相続税の基礎控除の計算にも含まれません。

特定遺贈のまとめ

特定遺贈は、ある人に特定の財産を遺贈するとても便利なものですが、その分、相続でトラブルになるケースも多いのです。 遺留分に対する配慮を行うにも、相続人や相続財産全体について考えなければなりませんし、相続税の計算も専門知識が必要です。

相続のトラブルを最小限におさえていくためにも、相続対策を行うときには、早めに税理士などの信頼できる相続の専門家に相談されることをおすすめします。