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ーコラムー
不動産の相続
税理士監修記事

「家なき子特例」とは?概要や要件を解説!

公開日:2020.10.19 更新日:2022.07.12

被相続人名義の持ち家の課税価格が80%減額される「小規模宅地等特例」は、原則として配偶者もしくは同居親族のみ利用できます。

では、別居親族が住まいを相続しようとする場合はどうなるのでしょうか。
結論として、相続開始前の直近3年間にわたって賃貸暮らしを続けているようなケースには「家なき子特例」による減額措置が用意されています。

本特例については、最近になって節税策の一部が封じられたことも見逃せません。

本記事では、実家相続に有利な「家なき子特例」の適用条件や手続き方法の他に、平成30年度法改正のポイントについて解説します。

目次

1.そもそも「小規模宅地等特例」とは?
2.家なき子特例とは?
3.家なき子特例の要件
4.税制改正後の家なき子特例
  4-1.法改正で封じられた相続税対策
  4-2.【参考】その他の改正のポイント
  4-3.「家なき子特例」改正の経過措置
5.被相続人が老人ホームに入居していた場合
6.家なき子特例に必要な添付書類
  6-1.「家なし親族」の証明書類
  6-2.老人ホーム等への入居が分かる証明書類
  6-3.「課税価格の計算明細書」に記載する内容
7.家なき子特例における適用面積と減額率
  7-1.【参考】宅地の課税価格の計算方法
8.家なき子特例での相続対策
9.まとめ

「家なき子特例」とは?概要や要件を解説!

1.そもそも「小規模宅地等特例」とは?

そもそも小規模宅地等特例(正確には“小規模宅地等の特例”)とは、相続した土地の課税価格を50%または80%減額できる税制上の特例です。例えば、評価額1億円の土地を相続して本特例を適用した場合、税計算の際には評価額2,000万円(元の課税価格の20%)と考えることができるのです。

なお、小規模宅地等特例の対象となる土地には3種類存在します。

【小規模宅地等の特例の対象となる土地】

  • 特定居住用宅地等
    …所有者やその親族の居住に使われている土地
  • 特定事業用宅地等
    …第三者(個人や一定の法人)に貸し付けられている土地
  • 貸付事業用宅地等
    …その他、事業用に使っていた土地

以下で紹介する家なき子特例は、上記3種類のうち「特定居住用宅地等」を対象にしたものです。

2.家なき子特例とは?

配偶者以外の人(子や孫など)にあたる人が、特定居住用宅地等として亡くなった人の住まいを相続しようとする場合、本来は「相続人の居住要件」を満たさなければなりません。つまり、これから相続する家の評価減を認めてもらう前提として、現に相続人自身が住んでいなければならないのです。

【例】就職を機に両親と別居し、住宅を購入してそのまま定住した子が、実家(課税価格5,000万円)を相続しようとする場合

→小規模宅地等特例は適用できないため、課税価格5,000万円(元の評価額のまま)として税計算する

本要件を厳格に運用することで不利益を受けるのは「仕事や学業の都合で一時的に別居する人」や「経済等の理由で当面は住宅購入できない(する予定がない)人」です。左記のような人が実家を相続する際に重税を課せば、せっかく自分のものになった家は売却せざるを得なくなり、結果として帰る家を失ってしまうでしょう。

このような不利益をなくすため、別居していても「直近で持ち家に住めていない」(=被相続人の家しか帰れる場所がない)相続人には、例外的に小規模宅地等特例の適用が認められています。

上記の制度上の仕組みには正式な名称がないものの、適用要件に合致する相続人は「家なき親族」、家なき親族とみなせる要件そのものを「家なき子特例」と税務上呼称します。

【家なき子特例を適用できる例】
転勤族として各地の賃貸物件を転々としている子が、実家(課税価格5,000万円)を相続しようとする場合

→「家なき親族」として小規模宅地等特例による評価減の対象になり、課税価格1,000万円(元の評価額の20%)で税計算できる

3.家なき子特例の要件

居住用宅地の相続人は、(A)被相続人の要件、(B)土地建物の要件、(C)相続人の要件の3つをすべて満たしたときに「家なき親族」とみなされます。

2020年9月現在のA~Cの各要件の詳細は下記の通りです。


【要件A】被相続人(=亡くなった人)の要件
・配偶者がいない(未婚or死別のどちらの理由でも可)


【要件B】土地建物の要件
・亡くなるまで被相続人の居住の用に供されていた
・相続開始の直前に、その土地建物に居住していた相続人※がいない
・相続税の申告期限(相続開始後10か月目)まで相続人名義で所有されている
※相続放棄した人も、本特例では「相続人」とみなされます。


【要件C】相続人(=宅地を受け継ぐ人)の要件
相続開始前3年以内において以下①~④のいずれにも居住したことがなく、かつ相続開始時点で居住している土地建物を過去に所有したことがない
①自己名義の持ち家
②自己の配偶者名義の持ち家
③自己の三親等以内の親族名義の持ち家
④自己と特別の関係がある一定の法人所有の家屋

4.税制改正後の家なき子特例

紹介した家なき子特例の要件は、平成30年度の税制改正(参照:平成 30 年度税制改正の大綱(財務省))で強化されたものです。具体的には、先述Cの「相続人の要件」に含まれる下記3点が新たに追加されました。

【平成30年度改正】追加された「相続人の要件」

  • 相続開始時点で居住している土地建物を過去に所有したことがない(上記要件Cの本文)
  • 相続開始前3年以内において「自己の三親等以内の親族名義の持ち家」に住んだことがない(上記要件Cの③)
  • 相続開始前3年以内において「自己と特別の関係がある一定の法人所有の家屋」に住んだことがない(上記要件Cの④)

4-1.法改正で封じられた相続税対策

法改正の前は、別居中の相続人が家を持っている場合でも、工夫すれば評価減の対象にできました。しかし、要件が追加されて「帰る家のない相続人に対する救済策」という本来の制度趣旨に立ち戻り、自分たちで持ち家を買った相続人を「家なし親族」扱いにすることは極めて難しくなっています。

より具体的には、かつて用いられていた下記のような節税策が封じられています。


【封じられた節税策1】直近で同居歴のある孫に実家を相続させるケース

子夫婦はすでに自分たちで住宅を購入しているため、家なし親族にあたる孫に遺言で持ち家を相続させる節税策です。祖父母と孫のあいだで養子縁組しておけば、法定相続人が増加することで相続税の基礎控除も増え、さらなる節税につながります。

しかし法改正以降は、孫がその親にあたる子夫婦(=三親等以内の親族)の持ち家に住み続ける限り、家なし親族として扱えません。


【封じられた節税策2】持ち家を親族等に売って住み続けるケース

別居中の子が自分で持ち家を購入していた場合、その持ち家を縁故のある人に売却させ、実際には売却した家に住みながら「家なし親族」として実家を相続させる節税策です。

リースバックと呼ばれるこの手法は、相続人の住む家を過去所有していた点で、法改正以降は使えなくなりました。

4-2.【参考】その他の改正のポイント

平成30年度税制改正では、小規模宅地等特例の対象となる「貸付事業用宅地等」に関して、相続開始前3年以内に貸付事業を開始した宅地を減額対象外とする措置も行われています。

法改正の影響で減額対象外となってしまう例として「一家全員が転出した後の居住用不動産を賃貸物件として活用しはじめたが、その後すぐ所有名義人が亡くなってしまった」といったケースが挙げられます。

4-3.「家なき子特例」改正の経過措置

急な法改正で対応できない相続人に対しては、経過措置があります。
平成30年4月1日から令和2年3月31日までの間に相続した居宅に関しては、旧法の「家なき子特例」の要件を満たしていれば減額可能です。

経過措置を知らずに土地建物の売却に踏み切ってしまうと、旧法にもある「相続税の申告期限までの所有」の要件が満たせなくなってしまいます。相続した時期に心当たりがあれば、税理士に相談して減額可能か診断してもらいましょう。

ここまでは節税策を封じるような改正内容を紹介しましたが、反対に旧法の小規模宅地等特例を適用できない人に対する救済策として、次の章で紹介する改正もありました。

5.被相続人が老人ホームに入居していた場合

旧法以前から、不動産を小規模宅地等特例上の「特定居住用宅地等」として扱うには、相続開始の直前まで亡所有者が住んでいなければなりません。

では、居宅の所有者が老人ホーム等に入居し、帰宅できないまま亡くなってしまった場合はどうなるのでしょうか。

結論を述べると、以上のようなケースでも小規模宅地等特例を適用できます。
同じく「両親は介護施設に入居し、相続人は勤務地で暮らしている」とのように空き家化した家を相続する場合でも、家なき子特例の要件に合致さえすれば評価減は可能です。

このように、被相続人が老人ホーム等に入居したまま亡くなったケースでも小規模宅地等特例を適用できるとされたのは、平成30年度法改正以降のことです。

介護医療院に入所したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地等について、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして本特例(執筆者注:小規模宅地等特例のこと)を適用する。
引用:平成 30 年度税制改正の大綱(財務省)

6.家なき子特例に必要な添付書類

税申告時に家なき子特例を適用するには、標準的な申告書類(相続税の申告書・戸籍謄本・遺言書の写しなど)の他に、下記3種類の書類を全て用意する必要があります。

【家なき子特例】適用申請時の必要書類
①小規模宅地等についての課税価格の計算明細書
②家なし親族であることの証明書類
③老人ホーム等に入居していたことが分かる証明書類(※必要な場合)

書類①に関しては後述とし、以下ではまず上記②・③について具体的に解説します。

6-1.「家なし親族」の証明書類

書類②「家なし親族であることの証明書類」は、下記②-1から②-3までの書類をセットにして提出します。

書類②-1:相続開始前3年以内の「相続人の住所」が分かる書類
…2015年10月5日以降に日本国内の住民票に記載されている人は、本書類は不要です(別途申告書に記載するマイナンバーで転居歴が確認できるため)

書類②-2:相続開始前3年以内の「相続人の居宅の所有名義」が分かる書類
…賃貸契約書のコピーなど(居宅のオーナー名と居住契約が分かるもの)

書類②-3:相続開始時点で住んでいた家屋を「過去に所有したことがない」と証明する書類
…法務局で取得した登記簿の写し(過去行われた所有権移転登記が全て把握できるため)


本書類の補足事項として2点あります。
②-2については、該当期間内に住んだことのある居宅はすべて「所有名義の証明書類」が必要です。仕事の都合等で転居が多い相続人には、以前住んでいた貸家の契約書も大切に保管するよう伝えておきましょう。

②-3に関しては、平成30年度の適用要件追加に伴って提出義務が課されています。旧法を参考にして必要書類を準備すると不足が出るため、注意しましょう。

また、登記簿の写しは誰でも取得できるため、取得にあたって貸家オーナーの許可を得る必要はありません。

6-2.老人ホーム等への入居が分かる証明書類

居宅の所有者が老人ホーム等に入居したまま亡くなったケースでは、追加で施設入居が分かる下記③-1から③-3までの書類をセットにして提出します。

③-1:施設入居後の被相続人の住所移転記録が分かる書類…本籍地役場で取得できる「戸籍の附票の写し」

③-2:要介護者または要支援者であったことが分かる書類…介護保険の被保険者証の写し、要介護や障害者支援区分の認定書など

③-3:相続開始の直前において法適格施設に入所していたことが分かる書類…入居先施設との契約書など


③-1の戸籍の附票は、老人ホーム入居後に本籍地の移転があった場合、移転元と移転先両方の本籍地役場で写しを取得する必要があります。附票の管理は本籍地役場ごとに行われ、市区町村をまたいで転籍があった場合、以降の住居の移転記録は新しい本籍地で更新されるからです。

③-2の認定書に関しては、入居中は介護施設に預けておくのが一般的です。入居者の死後は速やかに返却してもらい、忘れずコピーをとってから自治体に返納しましょう。

6-3.「課税価格の計算明細書」に記載する内容

「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」は、国税庁指定の申告書式(相続税の申告書等の様式一覧(令和元年分用))からPDF形式でダウンロードできます。ダウンロードする際は「第11・11の2表の付表1」を選択しましょう。

なお、計算明細書に記載する項目は以下の通りです。

記載項目1:特例の適用にあたっての同意

明細書冒頭にある同意欄には、特例適用対象の宅地を相続する人がサインします。宅地を2人以上の相続人の共有とする場合は、共有者全員でサインしなければなりません。

記載項目2:小規模宅地等の明細

続いて、宅地を相続した人ごとに課税価格の計算明細を記入します。同一の宅地を複数の相続人が共同で受け継いだ場合は、共有者ごとに記入しなければなりません。

計算明細を書き始める前に、まず小規模宅地等特例を適用する不動産の種類(居宅相続のケースでは“特定居住用宅地等”)を選択しましょう。その後、下記①~⑧を埋めます。

【特例適用対象の土地の基本情報】
①相続した人の氏名
②特例適用対象の土地の「所在地番」
③相続した人の持分の「面積」
④相続した人の持分の「価額」

【課税価格の計算明細】
⑤適用面積(特例の上限を超える場合は“330㎡”と記入)
⑥相続した人の持分に対応する適用面積の価額(④×③分の⑤)
⑦課税価格から減じられる金額(⑥の80%)
⑧減額後の課税価格(④-⑦)

※小規模宅地等特例の適用面積と減額率(上記⑥と⑧)に関しては後述します。

最終的な計算結果があっていても、明細①~⑧のどこかで誤ったままでは提出できません。また、記入の際は登記簿や測量図を取り寄せて計算する必要があり、独力での対応は時間がかかります。

以上の点から、ミスを防いで手間をかけずに申告書を作成するため、税理士に任せるのがベストです。

7.家なき子特例における適用面積と減額率

そもそも小規模宅地等特例には「適用面積の上限」があり、土地建物全体が課税価格の減額対象になるわけではありません。また、課税時の減額率は固定されています。
別居親族が家なき子特例を適用した場合でも、上記の点に変更はありません。

【小規模宅地等特例による減額の詳細】
※家なき子特例で減額する際も同じ
・適用面積の上限:330㎡
・減額率:80%

減額可能な金額をイメージできるよう、以下で想定例を挙げます。

【例】「家なき子特例」を適用して実家(課税価格1億円・面積500㎡)を相続する場合

  • 適用面積:330㎡
    課税価格=1億円÷500㎡×330㎡=6,600万円
  • 減額率:適用面積のうち80%
    減じられる金額=6,600万円×80%=5,280万円

→相続税申告時の課税価格は1億円-5,280万円=4,720万円
(※例以上に面積の広い土地建物でも同様)

※ここで紹介する計算方法はあくまでも一例であり、実際の相続事例ではより複雑な計算を必要とする場合があります。個別ケースについては税理士に相談しましょう。

7-1.【参考】宅地の課税価格の計算方法

参考までに、ここで相続時の宅地の課税価格を計算する方法を紹介します。
計算方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、相続する宅地の場所ごとに用いるべき方式が異なります。まずは国税庁サイトで相続不動産の住所を検索し、課税価格計算の方式を特定しましょう。

方式が特定できた後は、以下の式に情報を当てはめて課税価格を求めます。

【宅地】課税価格の求め方
路線価方式:隣接する道路の「路線価」×土地の面積(㎡)
倍率方式:固定資産税評価額※×国税庁指定の倍率

※固定資産税評価額は、被相続人が受け取っていた納税通知書あるいは役場発行の証明書で確認できます。

小規模宅地等特例の減額シミュレーションは、上記方法で土地の課税価格を把握できることが前提です。路線価と倍率は毎年更新されるため、生前準備の段階では相続時点での課税価格を求められない点にも要注意です。

8.家なき子特例での相続対策

現状の家なき子特例は、ざっくりと表現すれば「相続人に当面のあいだ賃貸暮らしを継続する予定がある」ことが活用の前提になります。生前準備の段階で特例活用を検討できる例は、以下のようなものが典型的です。

  • 勤務地で貯蓄しながら賃貸暮らしを続ける子に、将来は実家を売却するなどして生活設計に役立ててほしい。売却代金を出来るだけ手元に残せるよう、税負担を軽くしておきたい。
  • 孫が大都市所在の大学に進学して寮に移り、そのまま現地で就職する計画を立てている。これを機に将来を見据え、養子縁組や小規模宅地等特例の適用を駆使して、実家相続の税負担を軽くしておきたい。

まとめ

亡くなった人の住まいに対する「小規模宅地等特例」は、本来なら同居する相続人しか適用できません。ただし、今の住まいを過去に所有したことがなく、相続開始前3年以内に一定関係者名義の家にも住んだことのない相続人に関しては、例外的に「家なき子特例」による評価減が認められます。

なお、家なき子特例を適用できるかどうかはケースバイケースです。
例えば「持ち家のある別居親族」を家なし親族扱いとするテクニックは法改正で封じられましたが、その相続人の居住歴や生活設計、さらに生前準備を始める時期によっては、特例を活用する方法が見つかる可能性があります。

以上の点から「別居親族による実家相続の問題」は、相続を巡る諸問題のなかでも、税理士のサポートが必要なテーマの代表格だと言えます。一人で悩まず、登記簿・固定資産税証明書などを用意して税理士に相談してみましょう。

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