不動産の相続

家なき子特例とは?要件チェックリストと使えないケース

家なき子特例とは、亡くなった親と同居していなかった子でも、一定の要件を満たせば、実家の土地に小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を使える仕組みです。適用されると、実家の土地の相続税評価額を330㎡まで80%減らせます。

ただし要件は細かく、平成30年の税制改正で厳しくなりました。この記事では、6つの要件をチェックリストで確認したうえで、賃貸住まい・社宅・老人ホームなどケース別に使えるかどうかを解説します。

結論:家なき子特例で実家の土地は最大80%減額

項目 内容
対象 亡くなった方(被相続人)が住んでいた自宅の土地
減額 330㎡までの部分の評価額を80%減額
使える人 被相続人と同居していなかった親族で、6つの要件をすべて満たす人
手続き 相続税の申告が必要(特例を使って税額が0円になる場合も申告が必要)

たとえば、評価額1億円・面積500㎡の実家の土地なら、330㎡分(6,600万円)の80%にあたる5,280万円が減額され、課税価格は4,720万円になります。

家なき子特例の要件チェックリスト

実家の土地を取得した親族(取得者)が、次の6つをすべて満たす必要があります。

  1. 国籍・居住の要件:制限納税義務者のうち日本国籍を有しない人でないこと(例:日本国籍がなく海外に住む人や、一時的に日本に住む外国籍の人などは対象外)
  2. 被相続人に配偶者がいないこと
  3. 被相続人と同居していた相続人がいないこと(相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして判定)
  4. 相続開始前3年以内に、持ち家に住んでいないこと。取得者本人、取得者の配偶者、取得者の三親等内の親族、取得者と特別の関係がある法人が所有する国内の家屋に住んだことがないことが条件です(被相続人の自宅だった家屋は除く)
  5. 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に一度も所有したことがないこと
  6. 相続税の申告期限まで、その土地を持ち続けること

1つでも判断に迷う項目がある場合は、申告前に専門家と確認することをおすすめします。日本クレアス税理士法人では、無料相談で要件の確認を承っています。

ケース別:家なき子特例は使える?

ケース 判定の目安 ポイント
子が賃貸マンションに住んでいる 使える可能性あり 3年以内に持ち家に住んでいないこと、他の要件も満たすことが前提
子が会社の社宅に住んでいる 使える可能性あり 社宅の所有者が、取得者と特別の関係がある法人(自分や親族が経営する会社など)でないこと
子が配偶者名義の持ち家に住んでいる 使えない 配偶者の所有する家屋に住んでいるため要件4を満たさない
子が自宅を親族に売り、そのまま住み続けている 使えない 三親等内の親族が所有する家屋に住んでいるため要件4を満たさない
過去に所有していた家に、売却後も賃借して住んでいる 使えない 今住んでいる家屋を過去に所有していたため要件5を満たさない
子が海外に住んでいる(日本国籍あり) 使える可能性あり 日本国籍があれば要件1は満たす。国内の持ち家に住んでいないことなど他の要件で判定(ただし、海外で自分が所有する家に住んでいる場合は要件5を満たさない)
親が老人ホームに入居していた 使える可能性あり 要介護・要支援認定を受けていたなど一定の要件を満たせば、入居直前まで住んでいた自宅として扱われる
兄弟の一人が親と同居していた 別居の子は使えない 同居していた相続人がいるため要件3を満たさない(同居していた兄弟は同居親族として適用を検討)
申告期限前に実家を売却した 使えない 申告期限まで保有していないため要件6を満たさない

平成30年の改正で使えなくなったケース

平成30年度の税制改正で、要件4の「三親等内の親族や特別の関係がある法人が所有する家屋」と、要件5の「過去に所有していた家屋」が加わりました。これにより、次のような方法では家なき子特例を使えなくなっています。

  • 持ち家のある子ではなく、孫(持ち家なし)に実家を遺贈して特例を使う
  • 自分の持ち家を親族や自分の会社に売却し、借りる形で住み続けて「持ち家なし」にする

改正時の経過措置(令和2年3月31日までの相続などが対象)はすでに終了しています。

減額の計算例

評価額1億円・面積500㎡の実家の土地を、家なき子特例の要件を満たす子が一人で相続した場合です。

項目 計算 金額
適用できる面積 500㎡のうち330㎡まで 330㎡
330㎡部分の評価額 1億円 × 330㎡ ÷ 500㎡ 6,600万円
減額される金額 6,600万円 × 80% 5,280万円
特例適用後の評価額 1億円 − 5,280万円 4,720万円

他の財産と合わせた相続税額への影響は、家族構成や他の財産によって変わります。おおよその税額は相続税の早見表も参考にしてください。

家なき子特例を使うための申告と書類

家なき子特例は、相続税の申告書に特例を使う旨を記載し、必要な書類を添付して初めて適用されます。特例を使えば税額が0円になる場合でも、申告は必要です。

  • 相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに、遺産分割で実家の土地の取得者が決まっていること。間に合わない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておくと、分割後に特例を適用できる場合があります
  • 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書(申告書第11・11の2表の付表1)
  • 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し、相続人全員の印鑑証明書
  • 相続開始前3年以内の住所を証明する書類(住民票の写し等)、相続開始前3年以内に住んでいた家屋が自己や親族等の所有でないことを証明する書類(賃貸借契約書等)、相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないことを証明する書類
  • 被相続人が老人ホームに入居していた場合は、戸籍の附票の写しや要介護認定等を受けていたことが分かる書類、施設の契約書の写しなど

必要書類は個別の状況で変わります。詳しくは小規模宅地等の特例を受ける場合に必要な書類のまとめもご覧ください。

よくある質問

Q. 賃貸に住んでいれば家なき子特例は必ず使えますか?

使えるとは限りません。被相続人に配偶者や同居していた相続人がいないこと、3年以内に配偶者や三親等内の親族の持ち家に住んでいないことなど、6つの要件をすべて満たす必要があります。

Q. 相続した実家をすぐに売っても使えますか?

相続税の申告期限まで土地を持ち続けることが要件のため、申告期限より前に売却すると使えません。

Q. 実家を相続しない兄弟がいても使えますか?

使えます。家なき子特例は、実家の土地を取得した人ごとに要件を判定します。ただし、親と同居していた相続人がいる場合は、別居の子は特例を使えません。

Q. 親が老人ホームに入っていた場合はどうなりますか?

入居時に要介護・要支援認定を受けていたなど一定の要件を満たし、入居後に自宅を他人に貸していなければ、入居直前まで住んでいた自宅として特例の対象になります。詳しくは親が老人ホームに入居している場合の小規模宅地等の特例をご覧ください。

まとめ

家なき子特例を使えれば、実家の土地の評価額を330㎡まで80%減らせます。一方で、要件は6つあり、配偶者や親族の持ち家に住んでいた期間、申告期限までの保有など、見落としやすい点も多い制度です。特例は申告して初めて適用されるため、要件の確認と書類の準備は早めに進めましょう。

日本クレアス税理士法人では、家なき子特例を含む小規模宅地等の特例の判定から相続税の申告まで、相続税申告・相続手続コースで対応しています。お電話(0120-55-4145/平日・土曜 9:00〜18:30)または無料相談フォームからお問い合わせください。

あわせて読みたい:小規模宅地等の特例とは?要件・限度面積・計算例

出典:国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(根拠:租税特別措置法69条の4)。本記事は2026年10月時点の情報に基づいています。