「親の支援を受けてマイホームを買いたいけれど、非課税措置は受けられる?」
「住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税枠は2024年以降どうなる?」
祖父母や両親から購入資金の支援を受けたうえで住宅を購入しようと考えている方は、こんな悩みをお持ちではないでしょうか。
マイホーム購入資金を援助してもらう場合、援助してもらった金額は贈与とみなされるため贈与税が発生します。
しかし、住宅取得等資金の支援特例には非課税枠が設けられているので、適用要件を満たせば納税額を抑えられるでしょう。
本記事では、住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税枠の概要や適用要件をくわしく解説します。
2024年以降の非課税措置についても記載するので、これから家を購入する予定の方はぜひご覧ください。
目次
1. 住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置とは?
マイホームを購入する際、祖父母や両親から資金援助を受ける予定の方も多いでしょう。
経済面で無理をせずに家を買える点は大きなメリットですが、支援されたお金は贈与とみなされるため、贈与税が発生する点に注意が必要です。
贈与税が発生すると、贈与を受けた翌年に課税額を納めなければならないので大きな負担が生じます。
そんな負担を軽減するべく設けられたのが、住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置です。
非課税枠を活用すれば納税額を抑えられるので、費用負担を少なくしつつ住宅を購入できるでしょう。
ここでは、住宅を購入する際に受ける贈与に適用できる非課税枠と、法改正の内容を解説します。
1-1. 最大1,000万円までの非課税枠がある
住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税枠は最大1,000万円です。
1,000万円までの支援であれば贈与とみなされても、贈与税が発生しないので納税負担を大きく抑えられます。
また1,500万円の贈与を受けても、要件を満たしていれば500万円の部分に発生する贈与税の支払いで済むため、支払い負担を抑えてマイホームを購入できるでしょう。
1-2. 改正によって非課税枠が縮小された(2024年改正)
令和5年12月に閣議決定された令和6年度税制改正によって、非課税枠の適用要件が厳しくなりました。
税制改正前と改正後の非課税枠を見てみましょう。
<税制改正前と改正後の非課税枠>
質の高い住宅の条件 | 一般住宅の非課税枠 | 質の高い住宅の非課税枠 |
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税制改正前 (断熱等性能等級4以上又は一次エネルギー消費量等級4以上) |
500万円 | 1,000万円 |
税制改正後 (断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上) |
500万円 | 1,000万円 |
参考:国土交通省「令和6年度税制改正における住宅関係税制のご案内」
どちらの非課税枠にも変更はありませんが、質の高い住宅は適用要件が厳しくなっています。
断熱等性能等級と一次エネルギー消費量等級が高くなっているため、要件を満たせない場合は500万円の非課税枠になると考えておきましょう。
2. 住宅取得等資金非課税措置の利用条件と適用期限
マイホームを購入する際に祖父母や両親から資金面で援助を受ける予定の方は、以下の項目をチェックしておきましょう。
<非課税措置を利用する前にチェックしたい項目>
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3つの項目をチェックしておかないと、非課税措置を受けられるのかが判断できません。
くわしく解説するので、非課税措置を利用しようと考えている方はぜひ参考にしてください。
2-1. 受贈者の要件
非課税措置を適用するには、受贈者(援助を受ける人)が要件を満たしているかを確認しなければなりません。
受贈者の要件をまとめました。
<受贈者の要件>
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参考:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」
贈与者が直系卑属である場合、非課税措置が適用されます。
配偶者の祖父母や両親は直系卑属にあたらないため注意が必要です。
合計所得金額は、取得する住宅の広さによっても異なります。
40㎡以上50㎡未満の家を購入する際は、合計所得金額1,000万円以下になるため、手続き前に購入予定の家の床面積を確認しておきましょう。
援助を受けた人は、贈与された年の翌年3月15日までに取得した住宅に住まなければなりません。
翌年12月31日を迎えても居住していない場合は、申告内容を修正する必要があるため、早めに引っ越すことがおすすめです。
2-2. 住宅の要件
受贈者の要件に加え、住宅の要件を満たすことで非課税措置が適用されます。
住宅の要件は新築・取得と増改築によって分かれるため、それぞれの要件を見てみましょう。
<新築・取得住宅の要件>
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参考:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」
購入する住宅を店舗兼自宅にする予定の方は、居住スペースの広さをチェックすることが大切です。
店舗側が広く、居住スペースが狭い場合は適用要件を満たさない恐れがあるので注意しましょう。
住宅建築後に誰からも使われていなければ、適用要件を満たせます。
しかし、中古住宅を購入する場合は昭和57年1月以降に建築された、または自身への安全性を証明できる書類を用意するかのどちらかを満たさなければなりません。
どちらも満たしていない中古住宅を購入する際は、住宅取得までに耐震改修が行われていることを証明する必要があります。
耐震改修が行われている物件に関しては、購入時に耐震基準適合証明書や建設住宅性能評価書のコピーをもらえるため、非課税措置の申請時に提出しましょう。
続いて、増改築の住宅要件を紹介します。
<増改築の住宅要件>
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参考:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」
床面積や居住用スペースの広さは新築・取得の住宅要件と同じです。
自身が所有する物件への増改築と一定の工事に該当することを証明するには、書類が必要になります。
申請時に書類を提出しなければならないので、捨てずに保管しておきましょう。
2-3. 適用期限:令和8年(2026年)末まで延長
住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税措置は令和4年1月1日~令和5年12月31日までと定められていました。
しかし、令和6年度税制改正で適用期限が令和6~8年に延長されたため、令和8年まで非課税措置を利用できます。
前述したように、税制改正によって1,000万円の非課税枠の適用要件が厳しくなっています。
援助を受ける額によっては1,000万円の非課税枠が必要になるので、取得予定の物件の断熱等性能等級や一次エネルギー消費量等級を確認しておきましょう。
3. 住宅取得等資金の非課税措置の手続き方法と必要書類
住宅取得等資金の非課税措置の適用要件を満たしているなら、必要書類を用意して手続きを行いましょう。
手続きに必要な書類をまとめました。
<住宅取得等資金の非課税措置に必要な書類>
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3つの書類のほか、取得する住宅に応じて用意する書類があります。
<住宅に応じて用意する書類>
新築住宅の取得 | ・請負契約書 ・登記事項証明書 |
使用されたことのある 耐震基準を満たした住宅の取得 |
・耐震基準適合証明書 ・建設住宅性能評価書のコピー ・既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約の締結を証明できる書類 |
耐震改修を行った住宅の取得 | ・耐震基準適合証明書 ・建設住宅性能評価書のコピー ・既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約の締結を証明できる書類 |
所有する住宅の増改築 | ・確認済証のコピー ・検査済証のコピー ・増改築等工事証明書 |
1000万円の非課税枠を希望している | ・住宅性能証明書 ・建設住宅性能評価書のコピー ・住宅省エネルギー性能証明書 ・長期優良住宅建築等計画等の認定通知書のコピー ・住宅用家屋証明書 ・認定長期優良住宅建築証明書 ・低炭素建築物新築等計画の認定通知書のコピー ・認定低炭素住宅建築証明書 ・増改築等工事証明書 |
参考:国税庁「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税等のあらまし」
取得する住宅や非課税枠の上乗せを希望する方は、多くの書類を用意しなければなりません。
とくに1,000万円の非課税枠を希望する場合は書類数が多くなるため、漏れのないよう注意しましょう。
また、贈与税の申告書は様式が定められているため、自身で作成せずに国税庁のホームページから書類をダウンロードすることがおすすめです。
必要な書類を準備したら、住んでいる地域を管轄する税務署に提出します。
税務署に直接提出するほか、インターネットから手続きを行うe-Tax・郵便での提出も可能です。
手続きで不明点がある場合は足を運び、不明点がない場合は手間なく申請できるe-Taxや郵便を活用しましょう。
4. 住宅購入資金が親からの支援だった際の注意点やデメリット
住宅取得等資金の非課税措置を利用する際は、以下の点に注意が必要です。
<非課税措置の注意点>
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注意点を把握することでトラブルに備えられるため、ここでくわしく解説します。
4-1. 贈与税が発生しなくても申告が必要
非課税措置の適用によって贈与税が0円になっても、申告する必要があります。
非課税措置は申告によって適用されるため、無申告だと適用されません。
贈与税を払わなくていいと思っていたら、延滞税や無申告加算税などの追徴課税金を支払うことになるため、忘れずに申告しましょう。
また、非課税措置は申告期限を1日でも過ぎると不適用になるので、期限を覚えておくことも大切です。
申告期限は贈与を受けた年の翌年2月15日~3月15日までです。
申告までに期間があるとつい忘れがちですが、非課税措置を受けるためにも書類を準備して申告に備えておきましょう。
4-2. 相続時にトラブルの要因になる可能性がある
マイホーム購入にあたり両親から贈与を受けると、相続時にトラブルが発生する恐れがあります。
兄弟・姉妹がいて自分だけマイホーム資金の援助を受けた場合、ほかの兄弟姉妹から批判が出るのも無理はありません。
両親が亡くなった際、ほかの兄弟姉妹が遺産を多くもらったり、分配方法で揉めたりする可能性が高まってしまいます。
遺産配分を少なくしてもらう、円満解決できるよう話し合いをするなどの配慮が必要です。
4-3. 小規模宅地等の特例が使えなくなる
住宅取得等資金の非課税措置を受けると、将来小規模宅地等の特例が使えなくなるためよく考えたうえで贈与しましょう。
小規模宅地等の特例とは、最大330㎡までの敷地の評価額を最大80%減額し相続税の支払い負担を抑える制度です。
子どもや孫が無理なく土地を相続できるため、特例の活用を検討している方もいるかと思います。
ただし、小規模宅地等の特例は自身の住宅を持っていない人にしか適用されません。
マイホーム購入資金を贈与して住宅を取得している場合は、小規模宅地等の特例の適用要件から外れるため、どちらか一方しか選択できないと考えておきましょう。
贈与税の非課税枠は大きな魅力を持つ制度ですが、小規模宅地等の特例を使えば相続税の支払い負担を最大限に抑えられます。
どちらも高い節税効果が得られるため、よりメリットの大きい方法を選びましょう。
4-4. 相続時精算課税制度と混同しやすい【併用可能】
住宅取得等資金の非課税措置は相続時精算課税制度と混同しやすいため、2つの特徴を把握することが大切です。
相続時精算課税制度とは、直系卑属の子どもや孫への贈与額が2,500万円以下であれば贈与税が発生しない制度です。
ただし相続時には制度を利用した贈与分に相続税が発生するため、後々納税しなければなりません。
なお、2つの制度は併用することも可能です。
500〜1,000万円までの贈与で足りる場合は住宅取得等資金の非課税措置のみ、2,000万円以上の費用が必要なときは非課税措置と相続時精算課税制度の併用を検討しましょう。
5. そもそも贈与税とは?2つの課税方式がある
贈与税とは、誰かから財産をもらう際に発生する税金のことです。
贈与税には暦年課税と相続時精算課税の2つの課税方式があり、状況にあわせて選べます。
ここでは、暦年課税と相続時精算課税の特徴をみていきましょう。
5-1. 暦年課税
暦年課税とは、1年間にもらった贈与額から基礎控除額110万円を差し引き、課税金額別に定められた税率を掛けて税額を算出する課税方式です。
税率には一般と特例があり、両親や祖父母などの直系尊属からの贈与は特例税率が適用されます。
特例の方が課税金額が安くなるため、計算に用いる税率を間違えないようにしましょう。
5-2. 相続時精算課税
相続時精算課税は、1年間にもらった贈与額から基礎控除額110万円を差し引き、さらに特別控除も適用できる課税方式です。
特別控除額は2,500万円となっているため、適用要件を満たす場合は、多くのケースで非課税になるでしょう。特別控除の適用条件をまとめました。
<特別控除の適用条件>
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贈与者・受贈者別に要件が定められているため、制度を選ぶ前に確認しておきましょう。
贈与者は受贈者の父母や祖父母であり、贈与をする年の1月1日時点で60歳を迎えていなければなりません。
また、受贈者は贈与を受ける年の1月1日時点で18歳を迎える直系卑属(子どもや孫)でなければ適用されません。
なお、基礎控除や特別控除を適用しても残額が残る場合、残額に20%を掛けた金額を贈与税として納める必要があります。
贈与税についてさらに詳しく知りたい方は下記記事をご覧ください。
関連記事:贈与税とは?税金がかかる条件や税率をわかりやすく解説
6. 過去の住宅取得等資金非課税措置の改正情報
住宅取得等資金の非課税措置は、2003年の税制改正で制定されました。
制定以降、複数回の改正が行われ、一部内容が変更されています。
ここでは、過去の住宅取得等資金非課税措置の改正情報を紹介します。
6-1. 2022年の改正情報
2022年に税制改正が行われ、住宅取得等資金非課税措置の内容も一部変更されています。
変更された内容は以下の通りです。
<2022年の税制改正で変更された点>
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住宅取得等資金非課税措置は2021年12月31日までとなっていましたが、2022年の改正により期限が2年延長されています。
期限の延長によって2021年以降も非課税枠を利用できるようになったものの、そのほかの条件が厳しくなっています。
2022年の税制改正により、耐震・省エネなどの一定基準を満たす物件の非課税額が1,500万円から1,000万円、そのほかの物件は1,000万円から500万円に引き下げられました。
また、非課税措置の対象となる中古物件に定められる要件も変更されています。
改正前は物件を取得する20年以内に建築された家屋に限られていましたが、改正後は1982年1月以降に建築された新耐震基準に適合する家屋に変わっています。
要件が緩和されているように見えるものの、新耐震基準に適合している必要があるため、物件購入時に確認することが大切です。
民法改正に伴い、受贈者の年齢が変更された点も把握しておきましょう。
2022年4月から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられたことによって、受贈者の年齢も変更されています。
よりくわしく知りたい方は下記記事をご覧ください。
関連記事:マイホーム検討中の方必見!住宅取得等資金の贈与税の非課税措置【令和3年度税制改正】
6-2. 特例制定から2021年12月末までの非課税限度枠
住宅取得等取得金の非課税措置の制定から2021年12月までの非課税限度枠は以下の通りです。
<2022年以前の非課税限度枠>
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2003年の住宅取得等資金非課税措置の制定時は1,000万円、以降の改正によって1,000~1,500万円までの非課税措置を適用できました。
2022年の税制改正によって限度枠が引き下げられ、2024年の税制改正でも限度枠は上がっていません。
以前ほど非課税措置の恩恵は受けられない点はデメリットだといえるでしょう。
しかし、期間が長く延長されているため、多くの人が贈与税の負担を抑えられます。
両親や祖父母から援助を受けて住宅を購入する際は、非課税措置を活用することがおすすめです。
7. 2024年以降住宅取得等資金の非課税措置はどうなる?
住宅取得等資金の非課税措置が始まった当初は、2022~2023年までの期限が定められていました。
しかし、子育て支援を強化する必要があることや住宅価格が高騰していることから、令和6年税制改正で非課税措置の延長が決まっています。
制度は令和6~8年まで延長されたので、期間内に住宅購入の手続きを進めるといいでしょう。
将来直系卑属の子どもや孫に自身の居住している土地を相続する予定、または相続時精算課税制度との併用に悩んでいる方は、税理士に相談することもおすすめです。
税理士に相談すれば大きな節税効果を得る方法を提案してもらえるので、納税負担を抑えつつ念願のマイホームを入手できるでしょう。
土地の贈与税について詳しく知りたいという方は、下記記事も参考してみてください。
関連記事:土地の贈与税はいくらからかかる?評価額の調べ方や計算・申告方法を解説
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