税務署で相続税に関する相談が可能、税理士との違いは?

監修
中村亨
日本クレアス税理士法人 代表 税理士 公認会計士
「相続税の申告相談はどこですればいいの?」「税理士と税務署の違いが分からない」と悩んでいる方も多いでしょう。
相続税の申告は税理士に頼まなくても、税務署に行けば自分で申告できます。とはいえ、それぞれにメリットがあるため、自分に合っている相談方法をとることが重要です。
そこで今回は税理士、税務署それぞれで相続税の申請相談をするメリットを紹介します。


目次
相続税の申告期限は?期限を過ぎた場合には加算税も
相続税は、被相続人の死亡を知ってから10か月以内に申告しなければいけません。
相続税の申告は、被相続人の居住地を管轄する税務署に提出します。
納税は、税務署以外に、金融機関や郵便局の窓口でも対応可能です。
相続税の納税期限は、申告期限と同じく10か月以内となっています。
納税が遅れてしまうと延滞税がかかる可能性があります。
期限までに申告を終えないと、無申告加算税がかかりますが、特別な事情がある場合、2か月の猶予が与えられることがあります。
主な理由は以下のとおりです。
- 相続人となる胎児が生まれたとき
- 遺贈に関わる遺言書が見つかったとき
- 遺留分の侵害額請求があったとき
- 相続人の異動があったとき
特例が適用されることは少ないので、10か月以内に申告、納税を済ませておきましょう。
税務署で相続税の相談は受け付けている?
税金のことであれば税務署でも相談に乗ってもらえます。
税務署と聞くと怖いイメージを持つ方もいるかもしれませんが、素人でもわかりやすいように、丁寧に説明してもらえるので安心です。
また、匿名相談ができるので、税務署に相談したからといって目をつけられる心配はありません。
税務署に相談に行くと監視が厳しくなるのではないかと心配になりますが、そのようなこともないので安心してください。
税務署に相談するメリット
ではここからは税務署に相談するメリットをご紹介します。
メリットを見比べた上で、税務署に相談するかどうかを決めることが大切です。
・無料で相談できる
税務署での相談方法には電話と面談の2種類があり、それぞれ自分の都合の良い方を選ぶことができます。
電話でも面談でも職員が丁寧に対応してくれるので安心です。
そしてなんといっても嬉しいポイントなのが無料で相談できることです。
相続税の申告の準備を始める段階では、ほとんどの方がお金の心配を抱いているのではないでしょうか?
どのくらいのお金を納めなければいけないのか、申告準備のためにどれだけの費用がかかるのか、税理士に依頼するとなればどれだけの費用がかかるのかなど、いろいろな不安がつきものですよね。
そんな中で、無料で相談に乗ってもらえるのはとても心強いと言えるでしょう。
最近では無料で相談に乗ってくれる税理士も増えてきていますが、それでもまだ数は少ないです。
無料で相談を受け付けてくれるといえども初回のみの30分程度が基本的。
たった30分で相続税のいろいろな心配を解決するのは難しいと言えるでしょう。
しかし、税務署に行けば時間制限なく不安なことをいろいろ聞けます。
自分が疑問に思っている点をしっかり解決した上で準備を進められるので、効率よく申告できると言っても過言ではありません。
・何度でも相談できる
税務署では何度でも相談できます。
何回電話かけても、何度足を運んでも、そのたびに職員が丁寧に対応してくれるので安心です。
もちろん相談費用は無料。
何度でも相談を受け付けているので、初めは基本的なことから知識を身に付けて、3回目くらいから本格的に相談を進めていくというのもあり。
せっかく無料で何度でも相談できる機会が揃っているのですから、無駄なく利用することが大切です。
さらに、職員は基本的なことから丁寧に教えてくれます。
「そもそも、相続税って何なの?」というレベルから相談できるので、初めて申告する方にとってはとても心強いと言えるでしょう。
・気軽に相談できる
税務署の職員は基本的なものから教えてくれます。
初歩的な知識を身に付けてから実際の申告に至るまで、残念ながら数回程度の相談では済まないでしょう。
少なくても10回程度の相談は必要になると考えられます。
10回以上も無料で相談するのは申し訳なく感じるかもしれませんが、納税者に正確に申告・納税してもらいたいと考えている税務署にとっては、むしろ多くの方に相談に来てほしいと思っているのです。
基礎知識すらなくても、1から丁寧に教えてもらえるので、気軽に相談できるのは大きなメリットですね。
相続相談は税理士にするべき?
そもそも税理士とはどのような存在なのでしょうか。
税理士とは税理士法で定められた国家資格を保有している税金や税務のスペシャリストのことをいいます。
税金の相談はもちろんのこと、書類の作成や税務の代理も行っています。
税金に関するスペシャリストだからこそ、相続相談は税理士に依頼した方が良いのでしょうか?
ここからは税理士に相談するメリットをご紹介します。
税務署での相談と同じように、税理士に相談する場合もメリットが多くあります。
見比べた上で、どちらに相談を依頼するか決めてみてください。
税理士に相談するメリット
ここからは、税理士に相談するメリットについて見ていきましょう。
・正確なアドバイスが得られる
税理士に依頼すれば、最低限知っておきたい税務の基礎知識から深いところまで正確なアドバイスがもらえます。
上記でもお伝えしましたが、税理士は税金に関するスペシャリストです。
所得税や法人税はもちろんのこと、その他の税金のことまで熟知しているのです。
そのため、幅広い税務相談が可能で、正確で的確なアドバイスが得られます。
もちろん税務署も税理士も税法に則ってアドバイスをしてくれますが、その中でも税理士は現実的で具体的なアドバイスをしてくれるのがポイント。
・節税に関するアドバイスが得られる
物に対してもサービスに対しても、何にも税金がかかってきます。
どんなものに対しても税金がかかってくるからこそ、少しでも節税したいと思っている方も多いでしょう。
税務署では節税に関するアドバイスをもらうことができませんが、税理士なら相談が可能なのです。
節税する方法や注意点などを詳しく教えてもらえるので、企業や個人事業主の方にとってはとても心強い味方と言えるでしょう。
税理士に依頼するかしないかで、払う税金の額が異なってくることもあり得るのです。
・申告手続きまで任せられる
独占業務に対応している税理士なら、相談した上で申告手続きまで任せられます。
書類の作成から申告手続きまで正確かつスピーディーに対応してくれるので、効率よく相続税申告できるのがポイント。
税務署では税務相談は受け付けてくれるものの、申告は自分で行わなければいけません。
代理で申告してくれるわけではないので、申告に関わる雑務などは全て自分で行う必要があります。
税理士に任せれば一貫して担当してくれますし、空いた時間を他の作業に回せるので、業務の効率化アップが図れると言っても過言ではありません。
税理士に相談する場合の注意点
税理士に依頼することで多くのメリットが得られるのですが、注意しなければいけない点もあります。
・相談する際に費用がかかる
初回30分もしくは1時間無料で相談に対応してくれる税理士もいますが、2回目からは通常料金がかかる可能性があります。
相談だけではなく、書類の作成代行や手続き代行も依頼する場合は、追加で費用が必要になるでしょう。
税理士はそんなに安く依頼できるものではありません。
しかし、費用がかかるからこそお客様の相談に寄り添った的確なアドバイスがもらえるのです。
公平中立な立場をとっている税務署ではもらえないようなアドバイスもしてもらえるので、少しでも節税したいと考えている方に向いていると言えるでしょう。
・税理士によって得意分野が異なる
税理士は税金のスペシャリストではありますが、すべてのものに対して知識を熟知しているわけではありません。
人は誰しも得意不得意があるものです。それは税理士も例外ではありません。
そのため、税理士によって得意分野としているジャンルが違うことがあるのです。
相続税の相談をしたい場合は、相続税の実績がある税理士を選ぶ必要があります。
税理士のホームページにはこれまでどのような案件を対応してきたか、どのようなジャンルに強みを持っているかなどが掲載されていることが多いです。
税理士に相談する前にホームページを確認して、自分の相談内容に合っているかどうかチェックしてみましょう。
特に節税が目的なら、税金に関する実績や経験豊富な税理士を選ぶことが重要なポイント。
納税者によって適切な節税方法は異なるので、豊富な実績と経験があれば自分に適した節税アドバイスをしてくれるでしょう。
・信用できる税理士か見極めが必要
また、信頼できる税理士かどうかも重要なポイントです。
中にはお金を騙し取ったり、多額の費用を請求したりする税理士もいます。
そのような税理士に騙されれば、相続税や節税に関する最適なアドバイスはもらえません。
間違った知識のまま申告を進めることで、もしかしたら税務署に目をつけられることもあるかもしれないのです。
これまでの実績や経験だけを調べるのではなく、実際に利用した方の口コミや評判も確かめてみましょう。
実際に利用した方のリアルな口コミを調べることで、税理士の内情がわかるかもしれません。
自分が信頼できる税理士を選んだ上で、依頼するようにしましょう。
相続の「困った」はどこに相談すればいい?
人生の中で相続の問題に直面する機会はそう多くはありません。
相続についてわからないこと、迷うことがあったらどう対処したら良いのでしょうか。
相続の問題に対応できる専門家ごとの強みを以下にまとめました。
弁護士
相続について弁護士に相談するケースは、遺産相続で揉めていて、第三者が介入しないと話がまとまらないときです。
弁護士は、遺産分割協議のサポートや、調停・審判・遺留分侵害額請求など相続人間で揉めごとがある際の代理人になり問題の解決に努めます。
このほかに弁護士が携わる業務は、事業承継の支援、遺言書作成の支援、遺言執行者の就任などが挙げられます。
弁護士は法律の専門家として、法律のもとに適切なアドバイスを行ってくれるでしょう。
司法書士
司法書士は、主に書類手続きのサポート、代行に携わります。
具体的には、不動産の名義変更、銀行口座の解約、名義変更などの手続きのほか、遺言書の作成、執行、検認の立ち合いも司法書士の業務範囲です。
書類手続き全般は、司法書士に相談すると適切なアドバイスを貰えるでしょう。
税理士
税理士は税務の専門家として相続税の申告や財産の評価に携わります。
生前の相続税の試算や、生前贈与、事業承継のサポートやアドバイスも業務の範囲内です。
相続税の対応は知らないと損をすることが多く、贈与と相続の違い、相続時精算課税制度など、普段は身近に感じないことが多く、分からないことがたくさんあります。
相続税対策に税理士は頼れるアドバイザーとなるでしょう。
まとめ
今回は相続相談について税務署に行った方がいいのか、税理士に対応してもらった方が良いのか悩んでいる方に向けて、それぞれの特徴をお伝えしました。
結論として、税務署と税理士、どちらともメリットがあるため、自分に適した相談方法を選ぶことが大切です。
税務署では無料で何回でも相談できるものの、具体的なアドバイスや節税に関するコツなどは教えてもらえません。
一方で税理士では、節税などに関する具体的なアドバイスはもらえるものの、それなりの費用が必要になります。
もし相続税に関する申告が初めてなら、まずは税務署に相談に行ってみると良いでしょう。
税務署で基本的な知識を身に付けてから、税理士に本格的に相談するのも1つの手です。
うまく利用することでよりスムーズで正確な申告ができるでしょう。
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中村亨
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公認会計士
2002年8月に会計事務所として創業、2005年には税理士事務所を開業し、法人や個人のお客様の会計・税務の支援をする中で、「人事労務の問題を相談をしたい」「事業承継を検討している」といったお客様のニーズに応える形でサービスを拡大し続け、現在では社会保険労務士法人など複数の法人からなるグループ企業に成長してきました。お客様に必要なサービスをワンストップで提供できることが当社の強みです。